事業報告(自 2024年3月1日 至 2025年2月28日)
企業集団の現況に関する事項
1.主要な事業内容(2025年2月28日現在)
当社グループは「Object Browser事業」「ERP事業」「AI事業」から成り立ち、自社ソフトウエアの開発及び販売に加え、他社製品の販売を行い、お客さまの業務や課題に合わせた最適な製品を提供しております。
主要な取扱製品は、データベース開発支援ツール「SI Object Browser」シリーズ、プロジェクト管理パッケージ「OBPM Neo」、そしてWeb-ERPパッケージ「GRANDIT」という3つの製品群から構成されています。
「SI Object Browser」と「OBPM Neo」はパッケージの販売と保守及びクラウドサービスの提供を主体とした事業形態です。「GRANDIT」はこれらに加えてお客さまのニーズに合わせてカスタマイズを行いソリューションとしても提供しています。前者が利益率の高い高収益事業、後者が売上拡大の牽引事業という事業特性をバランスさせ、市場環境の変化に対応しております。

2.事業の経過及びその成果
当社は「時間を与えるソフトウエアを創り続ける」をミッションに掲げ、時代のニーズにあった自社ソフトウエアプロダクトを用いて、時間という価値を提供しております。
当連結会計年度は、2年経営計画(2025年2月期~2026年2月期)の1年目にあたり、次の3つを重点施策として取り組み、持続的な成長及び株主価値の最大化を目指してまいりました。
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①事業ドメインの集中
3つのドメイン(業務システム、AI、開発ツール)にリソースを集中し、当社の強みを最大限に活かしたお客さまの課題解決モデルを確立してまいりました。 -
②新規事業の創出
上述3つのドメインで既存の製品・サービスに続く新たな事業の柱を築くべく、新規事業開発や企業間提携に積極投資してまいりました。 -
③持続的な収益基盤の確立
最小のコストで最大のパフォーマンスを生み出すため、単純なコスト削減にとどまらない継続的な「1%改善」を全社的に掲げております。利益率を1%改善するために何ができるかを社員一人一人が常に考え、無駄の削減及び効率的な投資を行い、収益性の改善を目指してまいりました。
当連結会計年度は、様々な投資を実施いたしました。2024年4月には、専門の組織を立ち上げてクラウド型ERPの「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」(以下「SAP」という)の提供を開始いたしました。また、人員増加に対応しプロジェクト単位で機動的に働きやすいオフィス環境作りを目的として、同年5月に福岡支社の移転・増床、同年7月に大阪支社の増床を実施いたしました。特に九州地区及び関西地区では、当社のミッションやビジネスモデル(自社製品を持ち、客先常駐を行わないプライムベンダービジネス)に共感いただき、UターンやIターンを希望する優秀な人材の確保が順調に進んでおります。
このような投資は、一時的に大きな費用を計上して減益要因となりますが、当社が今後成長していくための重要なファクターと捉えており、収支のバランスも鑑みながら今後も積極的に投資してまいります。
また、国内のIT人材不足を補うことを目的に、海外子会社であるKEYSTONE SOLUTIONS COMPANY LIMITEDを2022年10月に設立しましたが、当連結会計年度より同社を連結の範囲に含めております。同社は、当初想定していた当社案件の開発受託だけでなく、ベトナム国内の案件も受注しております。
2025年1月には、株式会社システム開発研究所(以下、「対象会社」という。)の株式の全てを取得することを決議し、同年3月に当社のグループ会社となりました。業務システム分野のIT人材育成には長い時間を要し、採用の難易度も高いため、本株式取得によりIT及び生産管理業務双方のスキルや知識を有する人材を包括的に確保できたことは、当社にとって大きな戦力強化になります。また、対象会社においても当社がプライムベンダーとしてビジネスを行う協業パートナーの位置付けでも高い付加価値を提供できるようになり、両社間のシナジー効果を確信しています。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高4,768,979千円、売上総利益1,549,119千円、営業利益271,544千円、経常利益302,357千円、親会社株主に帰属する当期純利益583,408千円となりました。
なお、当社は、当連結会計年度より連結計算書類を作成しているため、前連結会計年度及び前連結会計年度末との比較分析は行っておりません。
セグメント別の業績
セグメント別の業績の状況は次のとおりです。
(単位:)
Object Browser事業は、データベース開発支援ツール「SI Object Browser」、データベース設計支援ツール「SI Object Browser ER」及び統合型プロジェクト管理ツール「OBPM Neo」の3製品で構成しています。
「SI Object Browser」と「SI Object Browser ER」はソフトウエア開発の生産性向上ツールとして、「OBPM Neo」はプロジェクト管理の合理化ツールとしてIT業界を中心に多くのお客さまに利用いただいております。Oracleだけでなく「Microsoft SQL Server」、「Postgre SQL」などの主要なデータベースへの対応や、買取型からクラウドサービスへの移行など、お客さまの要望を取り入れながら利便性の向上を続けています。
当連結会計年度では、プロジェクト管理ツールの「OBPM Neo」が、既存大手IT企業の追加案件と新規契約の増加により、MRR(Monthly Recurring Revenue:月次計上収益)が前連結会計年度と比較して3,230千円増加しました。また、データベース開発・設計支援ツールの「Object Browser」も、継続的なバージョンアップにより、安定した需要を維持しています。
以上の結果、売上高は790,775千円、セグメント利益は333,550千円となりました。
(単位:)
ERP事業は、Web-ERPパッケージ「GRANDIT」をベースに、主に製造業、建設業、IT業及び卸売業等のお客さまを対象として、業界特化型の基幹業務システムを開発・販売しています。加えて、「GRANDIT」の商社・卸売業・IT・情報サービス業に特化したクラウド型ERPである「miraimil」の販売にも注力しています。さらに、2024年4月からはクラウド型ERPの「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」の提供を開始し、旺盛な需要にも支えられ同製品の販売、導入では、SAP AWARD OF EXCELLENCE 2025において「Emerging Partner Award」を受賞しました。「GRANDIT」は独自の業務要件に対応するためのカスタマイズやアドオン開発を重視する企業向けに最適です。一方「SAP」は、グローバルや業界標準のERPを活用し、AIや業界ベストプラクティスを取り入れたグループ経営管理や企業変革を目指す企業に提案しています。
従来よりERP事業では製造業を主要ターゲットとして来ましたが、同業界におけるより広い業務領域での課題解決を行えるよう2024年9月1日付で「スマート製造ソリューション部」を新設しました。当部門では、お客さまの製造現場におけるデータ活用技術の向上を通じた生産効率の向上、コスト削減及び品質管理の強化等に貢献することを目指しております。2016年から取扱って来た生産スケジューラ「Asprova」に加え、生産管理(SCM)システム、実績管理システムなどのソリューション展開を行ってまいります。
当連結会計年度では、新規のお客さまからの引き合いは堅調で、受注状況も当連結会計年度期初に策定した受注計画に基づき推移しております。また「SAP」については初受注を獲得し、現在順調に開発業務が進行しております。連結子会社のKEYSTONE SOLUTIONS COMPANY LIMITEDにおいては、当社グループ外の日系製造業向けのERP案件業務の受注も増加傾向にあります。
以上の結果、売上高は3,850,976千円、セグメント利益は701,920千円となりました。
(単位:)
AI事業は、ディープラーニング異常検知システム「AISIA Anomaly Detection(アイシアAD)」をベースに、AIの画像認識技術を使って外観検査作業を自動化、高精度化するビジネスです。
「AISIA Anomaly Detection(アイシアAD)」の導入では、検査工程の設備見直しや運用提案まで要求されるケースが多く、新しい技術であるAIの実用化レベルを慎重に見極めるお客さまが多いため、その検討や調査に時間がかかります。お客さまにAIの技術やそれによる効果をわかりやすく提示し、日本の製造業が求める高品質基準に対応できるようになることが重要だと考えています。
当連結会計年度においては、生成AI技術の進化に伴い外観検査以外のユーザーニーズを取込み積極的に新規分野の開発案件にも取り組んでまいりました。外観検査に対する引き合いは引き続き堅調ではあるものの、当社としては収益性改善を目指した取り組みも進行しております。
以上の結果、売上高は92,162千円、セグメント損失は22,128千円となりました。
(単位:)
その他の事業は、主にプログラミングスキル判定サービス「TOPSIC」の販売を行っております。「TOPSIC」は、オンライン・リアルタイムで受験者のプログラミングスキルを判定できるクラウドサービスとして2018年1月にリリースしましたが、2025年2月末日付でAtCoder株式会社へ事業譲渡いたしました。同社は、プログラミングコンテストの世界ランカーが多数在籍しているプログラミングコンテスト企画・運営企業であり、高品質な問題を提供するプログラミングプラットフォームをグローバル展開しています。「TOPSIC」の出題コンテンツの一部は同社から提供を受けておりました。本事業が同社に引き継がれることにより、今後より一層お客さまのお役に立つサービスへと成長するものと考えております。なお、業績に与える影響は軽微となります。
以上の結果、売上高は35,065千円、セグメント損失11,942千円となりました。
(ご参考)今後の見通し
現在の世界経済は、依然として不安定な要素が散見されますが、IT業界においてはAIやクラウド、SaaSなどの最先端テクノロジーの活用が進み、デジタル化及び自動化の動きが加速しています。このため、企業システムの再構築や機能追加に対する需要が高まり、IT投資は引き続き増加傾向にあります。これらの新しいテクノロジーは、開発効率を飛躍的に向上させる一方で、顧客ニーズの高度化や多様化、さらには急増する需要が影響し、業界全体で深刻なエンジニア不足が顕在化しています。
このような状況に対応すべく、当社の強みである「業務系システム」、「開発ツール」、「AI」の3つの事業ドメインに経営資源を集中させ、事業ポートフォリオの見直しを行いながら競争力を高めてまいります。
エンジニアの確保については、IT業界の資本である優秀な人材を採用するだけでなく、M&Aを通じて優れた技術や経験を持つ人材を戦略的に獲得し、企業の成長を加速させていく方針です。さらに、生産性向上をもたらす働きやすい労働環境の整備にも投資してまいります。
また、新たな事業の柱の育成にも大規模な投資を行い、中長期に掲げた数値目標の達成に向け取り組んでまいります。詳細は、2025年4月14日発表の「『2年経営計画』ローリングに関するお知らせ」をご確認ください。
以上により、2026年2月期の業績見通しは、売上高5,500,000千円、営業利益450,000千円、経常利益400,000千円、親会社株主に帰属する当期純利益255,000千円となる見込みです。
対処すべき課題
当社は、2032年に向けた長期ビジョンとして「ものつくり企業のビジネスプロセスをITの力で本質的に変革する」ことを掲げ、時間を奪うのではなく時間を与えるソフトウエアを創り続け、日常の課題解決のためのシステムインテグレータとなることを目指しております。
また、「2年経営計画(2025年度)」の数値目標(2026年度の売上高63.0億円、営業利益6.0億円(営業利益率9.5%))の達成に向け、エンタープライズ領域をターゲットとし、「業務系システム」「AI」「開発ツール」の3つの事業ドメインに経営資源を集中して事業運営を行っております。
当社は、「2年経営計画(2025年度)」の達成に向けて以下の各項目を重要課題と認識し、解決に向けて取り組んでおります。
(1)安定的な収益基盤の構築
収益性を改善して持続させるため、ERP事業での保守・運用に係る収益や既存ユーザーからのリピート収入を増やすとともに、ストック型ビジネスであるOBPM事業の拡大により、広義の意味でのストック型ビジネス比率を高めてまいります。
(2)営業企画力の向上
安定的な収益基盤を構築するためにもプロダクト志向から脱却して顧客中心のアプローチを強化する必要があります。顧客管理ツールや営業支援ツールなどを活用し、マーケットや顧客の動向を分析した効果的な営業戦略の立案とともに企画提案力を強化してまいります。
(3)開発生産性の向上
安定的な収益基盤を構築するには、開発業務の生産性の向上も重要です。AIを含むテクノロジーの活用による各種作業の自動化や標準化を推進するとともに、継続的な教育とトレーニングによるエンジニアのスキル向上やチームワークの強化を行うことで、若手社員の早期戦力化と生産力の増強を行ってまいります。
(4)新規事業の創出
会社の持続的な成長のため、マーケットやユーザーの動向を洞察し、次の収益の柱となる新たな事業を創ることが必要と考えております。
独自のステージゲート制度を定めた合理的なプロセスを通じて、短期間に試行錯誤を重ねる多産多死モデルで新規事業を創出してまいります。
(5)優秀な人材の確保及び育成
当社のビジネスは、エンジニアをはじめとする人に依存しており、優秀な人材が会社の競争力を左右します。優秀な人材を確保するため、企業ブランドの強化、効果的なリクルート戦略の検討、働き方の多様化、社員エンゲージメントの向上やオフィス環境の改善に取り組んでまいります。また、採用した人材を早期に戦力化するため、オンボーディングプログラムによる会社組織への適応支援、研修プログラムやプロジェクト参画機会などによる学習と成長の機会の提供にも取り組んでまいります。