事業報告(自 2023年3月1日 至 2024年2月29日)

会社の現況に関する事項

1.主要な事業内容(2024年2月29日現在)

当社の主要な製品は、データベース開発支援ツール「SI Object Browser」シリーズ、プロジェクト管理パッケージ「OBPM Neo」、そしてWeb-ERPパッケージ「GRANDIT」という3つの市場・製品群から構成されています。

「SI Object Browser」と「OBPM Neo」はパッケージの販売と保守及びクラウドサービスの提供を主体とした事業形態です。「GRANDIT」はこれらに加えてお客様のニーズに合わせてカスタマイズを行いソリューションとしても提供しています。前者が利益率の高い高収益事業、後者が売上拡大の牽引事業という事業特性をバランスさせ、市場環境の変化に対応しております。

2.事業の経過及びその成果

当社は「時間を与えるソフトウエアを創り続ける」をミッションに掲げ、時代のニーズにあった自社プロダクト製品を用いて、時間という価値を提供しております。

当事業年度は、中期経営計画「SDGs Mind 2021」の最終年度かつ「新2年経営計画」の1年目となります。「新2年経営計画」では「SDGs Mind 2021」で掲げた5つの重点施策を再構築し、新たに①「新規顧客開拓力の強化」、②「開発エンジニアの確保と早期戦力化」、③「インキュベーション事業の収益化」及び④「新規主力事業の創出」の4つの重点施策に取り組んで参りました。

当事業年度の業績は、売上高4,835,591千円(前期比7.8%増)、売上総利益1,628,501千円(前期比3.3%増)、営業利益328,498千円(前期比19.3%減)、経常利益336,057千円(前期比19.3%減)、当期純利益944,456千円(前期比237.2%増)となりました。

セグメント別の業績

当事業年度は前事業年度から引き続いて受注確度の高い案件及び受注残の確保に注力したことやインボイス対応に関わる高採算の開発プロジェクトを多数獲得したことにより、売上高及び売上総利益が増加しましたが、他方で期中の人員増加により給料手当、賞与及び法定福利費等の人件費が増加したことや、新規事業開発への積極的な投資により研究開発費が増加したことにより、営業利益は減少しました。また、E-Commerce 事業の合弁化に伴う子会社株式の売却及びTOBに伴う政策保有株式の売却による各利益を特別利益に計上したことにより、当期純利益は大きく増加しました。

なお、当事業年度から、事業セグメントの利益又は損失の算定方法を変更しております。事業セグメントごとの経営成績をより適切に把握するため、各事業セグメントに帰属しない一般管理費の配賦を行わず、セグメント利益又は損失の調整額に全社費用として計上する方法に変更しております。また、前年同期の数値を変更後の事業セグメントの利益又は損失の算定方法により作成した数値で比較しております。

売上高
前期比 %増
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売上高構成比率 %

(単位:

Object Browser事業は、データベース開発支援ツール「SI Object Browser」、データベース設計支援ツール「SI Object Browser ER」及び統合型プロジェクト管理ツール「OBPM Neo」の3製品で構成しています。

「SI Object Browser」と「SI Object Browser ER」はソフトウエア開発の生産性向上ツールとして、「OBPM Neo」はプロジェクト管理の合理化ツールとしてIT業界を中心に多くのお客様に利用いただいております。OracleだけでなくMicrosoft SQL Server、PostgreSQLなどの主要なデータベースへの対応や、買取型からクラウドサービスへの変更など、お客様の要望を取り入れながら利便性の向上を続けています。

当事業年度においては、データベース開発・設計ツールの「Object Browser」が、AIによるSQL自動生成など開発生産性を高める機能強化により安定的な売り上げを実現しました。またプロジェクト管理ツールの「OBPM Neo」も、コロナ禍により停止していた各種マーケティング施策の再開による引き合い増から、MRR(注)が前事業年度と比較して約5,000千円伸長しました。以上の結果、売上高は739,455千円(前期比6.3%増)、セグメント利益は332,024千円(前期比16.0%増)となりました。プロジェクト管理ツール「OBPM Neo」は商談数も順調に増えており新規契約数の拡大によりさらなる成長を目指して参ります。

(注)MRR=Monthly Recurring Revenueは、OBPMの月次契約金額。

売上高
前期比 %減
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売上高構成比率 %

(単位:

E-Commerce事業は、日本初のECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」をベースとして、消費者様向けのインターネットショッピングに限定することなくWeb上での商取引全般を対象に、お客様のニーズに合わせた電子商取引サイトの開発・販売を行っています。

また、前事業年度より、「SI Web Shopping」とクロスセルするビジネスとして「EC&リテールDXサポート」と「Adobe Commerce」を立ち上げています。「EC&リテールDXサポート」はDXを推進したいお客様に対し、継続的かつ持続的開発が可能となる体制作りをサポートするプログラムであり、「Adobe Commerce」は越境ECや複数のサイトを容易に展開できるソリューションです。このようなサービスを通じ、「SI Web Shopping」とは異なる新たなターゲット層のお客様を獲得することを目指しています。

当事業年度においては、前事業年度から事業化した「Adobe Commerce」の開発プロジェクトが複数進捗しました。しかしながら、新規受注獲得に向け、アフターコロナを含めた昨今の市場環境の変化や顧客要望の多様化への対応が遅れておりました。以上の結果、売上高は713,565千円(前期比22.1%減)、セグメント利益は172,342千円(前期比46.3%減)となりました。

今後は、2023年11月9日に公表した「E-Commerce 事業の譲渡に伴う会社分割(簡易新設分割)および新設会社株式の譲渡に関するお知らせ」のとおり、EC運営事業者から求められるデジタルマーケティングや電子決済等の様々な機能及びサービスをグループ会社に保有する株式会社DGフィナンシャルテクノロジーと協同し、相互シナジーによる環境変化への対応及び競争性の向上を図って参ります。

売上高
前期比 %増
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売上高構成比率 %

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ERP事業は、Web-ERPパッケージ「GRANDIT」をベースとして、主に製造業、建設業、IT業及び卸売業等のお客様を対象として、お客様独自の業務要件に基づく基幹業務システムを開発・販売しています。

「GRANDIT」はコンソーシアム方式をとっているため、同一製品を複数のコンソーシアム加盟企業が販売しています。当社は、「GRANDIT」の企画・開発から携わった開発力とこれまでに培った業務知識を強みに、いくつかのアドオンモジュールを自社開発し、当社のお客様だけでなく他のコンソーシアム企業にも販売しています。

当事業年度においては、2023年10月より施行されたインボイス制度への対応として、「GRANDIT」既存ユーザー様向けの開発プロジェクトが進行し、2024年1月から義務化された改正電子帳簿保存法への対応を想定した「電帳法対応ソリューション」の販売も増加しました。また、新規大型案件の受注も堅調に推移しました。以上の結果、売上高は3,295,053千円(前期比19.6%増)、セグメント利益は652,039千円(前期比30.7%増)となりました。翌事業年度からのスタートを見据えた基幹システムリプレース案件の引き合いも多く、提案数・受注数ともに期初の計画水準で進行していますので、新規案件の立ち上げとともに、既存ユーザー向けの関連ソリューションの販売なども含めた営業活動による売上拡大を目指して参ります。

売上高
前期比 %減
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売上高構成比率 %

(単位:

AI事業は、ディープラーニング異常検知システム「AISIA Anomaly Detection(アイシアAD)」をベースに、AIの画像認識技術を使って外観検査作業を自動化、高精度化するビジネスです。

「AISIA Anomaly Detection(アイシアAD)」の導入では、検査工程の設備見直しや運用提案まで要求されるケースが多く、新しい技術であるAIの実用化レベルを慎重に見極めるお客様が多いため、その検討や調査に時間がかかります。お客様にAIの技術やそれによる効果をわかりやすく提示し、日本の製造業が求める高品質基準に対応できるようになることが重要だと考えています。

当事業年度においては、既存のお客様の増設に関わる受注を見込んでいたものの、成果検証やその検討に時間を要しました。また、お客様がより簡単に精度検証を行えるよう2023年10月からRUTILEA社製AI外観システム「Image Pro」の取り扱いも開始し、引合いの数は大きく増えましたが、売上高は37,188千円(前期比44.8%減)、セグメント損失は42,862千円(前期は13,796千円のセグメント損失)となりました。

売上高
前期比 %減
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売上高構成比率 %

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その他の事業は、プログラミングスキル判定サービス「TOPSIC」及びアイデア創出プラットフォーム「IDEA GARDEN」の2つの新規事業を行っています。

「TOPSIC」は、オンライン・リアルタイムで受験者のプログラミングスキルを判定できるクラウドサービスです。中途採用における受験者のスクリーニングや社員のプログラミング教育などのニーズに対応しています。

「IDEA GARDEN」は、2021年11月にアイデアの創出と育成を促すアイデア創出プラットフォームとしてリリースしましたが、収益化の目途・市場性・事業拡大の難易度など、様々な指標をもとに検討した結果、2025年2月末日付で事業撤退することを決定しました。なお、業績に与える影響は軽微となります。

当事業年度においては、新規顧客獲得とともに継続利用を促すカスタマーサクセス活動に注力しました。以上の結果、売上高は50,329千円(前期比1.9%減)、セグメント損失57,763千円(前期は75,129千円のセグメント損失)となりました。引き続き、新規顧客開拓及びカスタマーサクセス体制の強化に取り組んで参ります。

(ご参考)

今後の見通し

世界経済は未ださまざまな不安要素が存在するものの、昨今のIT業界ではAIやクラウド、SaaS等の新しいテクノロジーを活用したデジタル化や自動化の気運が高まる中、企業システムの再構築や機能追加等の需要が増加しており、IT投資は引き続き増加基調にあります。このような新しいテクノロジーは、開発効率を大幅に向上させますが、低コスト化や開発リードタイム短縮のニーズは高まり、顧客ニーズの高度化、多様化、そして需要の急増がエンジニア不足を加速させています。

このような状況に対応すべく、当社は当社の強みである企業の業務系システムおよび開発ツール、AIの分野に経営リソースを集中させて競争力を高めて参ります。なお、エンジニアの確保については、IT業界の資本である優秀な人材を積極的に採用し、生産性向上をもたらす働きやすい労働環境の整備にも投資して参ります。また、新たな事業の柱の育成にも大規模な投資を行い、中長期に掲げた数値目標の達成に向け取り組んで参ります。詳細は、2024年4月15日発表の「『2年経営計画』更新に関するお知らせ」をご確認ください。

以上により、2025年2月期の業績見通しは、売上高4,508,000千円(前期比6.8%減)、営業利益160,000千円(前期比51.3%減)、経常利益178,000千円(前期比47.0%減)、当期純利益109,000千円(前期比88.5%減)となる見込みです。なお、これには、事業所の人員増加に対応するための増床・移転に伴う各種費用約6千万円、特別損失約1千5百万円を計上すること、また、新規の製品・サービスの研究開発として約1億2千万円を投資することを見込んでおります。

対処すべき課題

当社の中長期的な経営目標達成のために対処すべき課題は以下のとおりです。

(1)新規顧客開拓力の強化

当社の主力事業であるERP事業については、パートナー企業による間接販売や案件紹介の仕組みを構築しております。しかしながら、このような体制が「待ちの営業姿勢」を生むことになり、それが新規案件の受注遅れの一つの要因になっています。そのため、各事業に分散していた新規顧客開拓担当者を含む営業部門を新設の「エンタープライズ営業本部」に集約することで、チームでの活動を強化してノウハウや情報の共有を促進し、あらためて自社での新規顧客開拓営業スタイルを構築・強化してまいります。

(2)開発エンジニアの確保と早期戦力化

IT市場は、DX推進の流れもあり、システム化投資を進める企業からの引き合いの増加が続いています。こうした市場環境のなか、IT業界ではエンジニア不足が深刻化しています。この課題に対処するため、ベトナム開発拠点の設立、積極的な新卒採用やキャリア採用を実施しておりますが、当社の事業はさまざまな業種、業態に対応する業務システムであるため知識や技術の習得には時間がかかります。そのため早期の戦力化が新たな課題となっています。

今後も積極的な採用を継続しつつ、社内教育を経て部分的な業務や小規模プロジェクトを経験させるなど、実践的な育成プログラムを強化し早期戦力化を図って参ります。また、一人当たりの生産性等の指標をタイムリーに把握し、戦力化の進捗状況を把握します。

(3)インキュベーション事業の収益化

当社では、複数の新規事業を立ち上げて製品・サービスの販売を行っておりますが、未だに収益化しておりません。

投資の効率化を図るため、社内で分散していた各事業を「インキュベーション事業部」として集約しましたが、引き続き早期の収益化に向けて戦略の練り直しを行い実行してまいります。また、KPIを定めて定期的に事業継続性の判断を行うことで、インキュベーションの取組みを加速化して成功確率を向上させます。

(4)新規主力事業の創出

当社の主力事業は、ERP事業及びObject Browser事業ですが、時代の変化とともに市場のニーズや最新のテクノロジーも大きく変わっています。このような変化を的確に捉え、当社の強みを活かした新規事業を早期に創出し、新たな事業の柱として育成する必要があります。

顧客課題を解決する観点から新規事業を創出するため、新しい技術の導入や他社との提携・M&A等にも積極的に投資を行います。

計算書類