事業報告(自 2022年3月1日 至 2023年2月28日)

会社の現況に関する事項

⒈ 主要な事業内容(2023年2月28日現在)

当社の主要な製品は、データベース開発支援ツール「SI Object Browser」シリーズ、プロジェクト管理パッケージ「SI Object Browser PM(OBPM Neo)」、ECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」、そしてWeb-ERPパッケージ「GRANDIT」という4つの市場・製品群から構成されています。

「SI Object Browser」と「SI Object Browser PM(OBPM Neo)」はパッケージの販売と保守及びクラウドサービスの提供を主体とした事業形態です。「SI Web Shopping」、「GRANDIT」はこれらに加えてお客様のニーズに合わせてカスタマイズを行いソリューションとしても提供しています。前者が高い利益率、後者が売上拡大の牽引事業という役割をバランスさせ、市場環境の変化に対応し、幅広い技術を習得しやすい製品構成になっています。

⒉ 事業の経過及びその成果

当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が薄まり、経済活動は回復傾向にありますが、ロシアのウクライナ侵攻の影響による世界情勢不安や物価高によって先行き不透明な状況が続いております。
一方、IT業界においてはDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を背景に追い風が吹いています。

当事業年度は、中期経営計画「SDGs Mind 2021」の2年目であり、中期経営計画で掲げた①「既存事業の拡大とブランド力向上」、②「海外展開」、③「新事業の収益化」、④「社員のスキル向上」、⑤「アジアTOPの合理化企業」という5つの目標に向けて取り組んでまいりました。

当事業年度の業績は、売上高4,486,027千円(前期比6.9%減)、売上総利益1,576,595千円(前期比6.4%減)、営業利益406,848千円(前期比30.7%減)、経常利益416,189千円(前期比29.3%減)、当期純利益280,103千円(前期比28.4%減)となりました。

当事業年度はE-Commerce事業及びERP事業ともに堅調な市場ニーズはあるものの、お客様における検討時間が長期化していること、見込案件の開発規模や開発時期に十分な開発リソースを用意できないことなどにより、案件の受注に進捗遅れが影響して減収減益となりました。

なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を当事業年度の期首から適用しております。収益認識会計基準等の適用による影響の詳細については、計算書類の個別注記表(会計方針の変更に関する注記)をご参照ください。

セグメント別の業績

セグメント別の業績は次のとおりです。なお、組織変更に伴い、当事業年度から「ERP・AI事業」として区分していた報告セグメントを「ERP事業」と「AI事業」に区分変更しております。前期比については、変更後の報告セグメントに組み替えた数値で比較、分析しております。

売上高
前期比 %増
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売上高構成比率 %

(単位:

Object Browser事業は、データベース開発支援ツール「SI Object Browser」、データベース設計支援ツール「SI Object Browser ER」、統合型プロジェクト管理ツール「OBPM Neo」及びアプリケーション設計ツール「SI Object Browser Designer」の4製品から構成されています。

「SI Object Browser」と「SI Object Browser ER」は、ソフトウエア開発の生産性向上ツールとして業界で多く利用されており、安定した収益源となっています。「SI Object Browser」は「EDB(PostgreSQL)」や「Microsoft SQL Server 22」対応など「Oracle」以外の最新のデータベース対応、「Amazon RDS for PostgreSQL」や「Aurora PostgreSQL」など多様化するプラットフォームへの対応など、お客様の要望を積極的に取り入れ利便性を向上させることで長期的に売上を堅持しています。

統合型プロジェクト管理ツール「SI Object Browser PM」は、プロジェクト管理を合理化するツールとしてIT業界を中心に着実にお客様を増やしています。2021年3月に従来の買取モデルからクラウドサービスモデル「OBPM Neo」へとリニューアルし、累計導入実績は約240社にのぼります。リニューアル当初は販売モデルが変わったことにより一時的に売上成長率が鈍化しましたが契約社数は順調に増加しており、安定的なストック収益を獲得しております。

2022年7月から「OBPM Neo」のお客様に対し、オンラインでPMO業務を支援する「リモートPMOサービス」の提供を開始しました。DXやビジネス変革などにより、全社横断的にプロジェクトの状況を監視、支援するPMOのニーズの高まりを受けて、当社がこれまで培ってきたPMOに関するノウハウを活かし、お客様に代わってプロジェクト管理を支援するという画期的なサービスです。

アプリケーション設計ツール「SI Object Browser Designer」は、2019年6月からクラウドサービスとして販売しておりましたが、収益化の目途、市場性など様々な指標をもとに検討した結果、事業撤退することを決定いたしました。なお、業績に与える影響は軽微です。

前述のとおり、「OBPM Neo」のストック収益が安定的に伸びており「リモートPMOサービス」や「導入支援サービス」などフロー収益も好調であるため、Object Browser事業の当事業年度の売上高は695,322千円(前期比2.6%増)、営業利益は182,032千円(前期比20.1%増)となりました。今後も安定的なストック収益を増加させて収益のベースを作り、フロー収益を積み上げて事業の成長を目指してまいります。

売上高
前期比 %減
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売上高構成比率 %

(単位:

E-Commerce事業は、日本初のECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」をベースに、消費者様向けネットショッピングに限定することなくWeb上での商取引全般を対象に、お客様のニーズに合わせたE-Commerceサイトを構築し販売しています。

昨今、大手企業がIT子会社を設立し、DX戦略のもと自社ECサイトの構築保守運用業務の内製化に取り組んでいます。このような背景から、当社が販売開始時から続けてきた「SI Web Shopping」プログラムソースコードをお客様に公開することに加えて、当事業年度からは新たに「SI Web Shopping」とクロスセルする以下の2つのビジネスを立ち上げています。

  • 内製化支援を強化する「EC&リテールDXサポート」
  • 多機能PaaS「Adobe Commerce」

「EC&リテールDXサポート」は、DXを推進したい企業に対して、継続的かつ持続的開発が可能となる体制作りをサポートするプログラムとなっています。「SI Web Shopping」により、高品質なECサイトを素早く立ち上げることができるだけでなく、その後の社内開発体制構築支援まで含まれていることが最大の特長となります。

「Adobe Commerce」は、越境ECや複数のサイト、ブランドを容易に展開できるソリューションです。「SI Web Shopping」とは異なる新たなターゲット層のお客様を獲得することを目指してまいります。

以上のように、新たな取り組みを積極的に行いましたが、お客様からの新規商取引サイト立ち上げニーズが多いにもかかわらず新規案件獲得活動による受注が遅れ、開発リソースに依存しないビジネスとして立ち上げた「Adobe Commerce」の案件化も遅れていることから、開発業務量が十分に確保できませんでした。その結果、E-Commerce事業の当事業年度の売上高は916,023千円(前期比24.2%減)、営業利益は207,019千円(前期比49.8%減)となりました。

しかしながら、当事業年度末には大手メーカー向けの「Adobe Commerce」案件がスタートしており、内製化支援においてもお客様との共同開発案件が進んでおります。また、ECサイト構築ニーズについても、独自性あるビジネスモデルでお客様固有の要件を取り込む必要があるECサイトの開発や自社でECサイトの内製化を進めたいなど順調に増加しています。

売上高
前期比 %減
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売上高構成比率 %

(単位:

ERP事業は、Web-ERPパッケージ「GRANDIT」をベースに主に製造業、IT業、卸売業のお客様に各社の業務要件に基づく基幹業務システムを構築し販売しています。

「GRANDIT」はコンソーシアム方式をとっているため、同一製品を複数のコンソーシアム加盟企業が販売しています。当社はGRANDITコンソーシアム内で1年間に最も「GRANDIT」を販売した企業に与えられる「GRANDIT AWARD Prime Partner of the Year」を過去6回受賞するなど、名実ともにERP事業をリードしています。また、当社は「GRANDIT」の企画・開発から携わった開発力と業務知識を強みに、以下のアドオンモジュールを自社開発し、当社のお客様だけでなく他のコンソーシアム企業にも販売しています。

  • 生産管理アドオンモジュール
  • 工事管理アドオンモジュール
  • 原価管理アドオンモジュール
  • プロジェクト管理アドオンモジュール
  • 電子保存アドオンモジュール

これら製品の販売効果により製造業、工事・エンジニアリング業及びプロジェクト管理を必要とする業種向けに販売数が増えています。

最近はクラウド上に基幹業務システムを構築するケースがほとんどです。当社でも中小企業向けクラウドERPサービス「GRANDIT miraimil」やそれを当社のアドオンモジュールでIT業向けに特化させた業種特化型クラウドERPサービス「GRANDIT SaaS」を提供しています。

2022年11月より、電子帳簿保存法に適応したオプションの提供を開始しました。法改正に速やかに対応した今回のオプションにより、ワンプラットフォームで帳簿類の一元管理が可能となるため、業務効率を落とさずに法定要件に適応することができます。

ERP事業では基幹業務システムの更改ニーズの高まりに対応するため、多数の新卒及び中途社員の採用を実施しましたが、企業内の幅広い業務領域での業務知識やお客様固有の業務要件を分析して製品に適合させるスキルなど、その育成には時間を要します。新規案件の規模や内容がスキルレベルに適合せず計画通りに受注出来ていないことや案件中断などが発生した影響から、ERP事業の当事業年度の売上高は2,755,986千円(前期比3.9%減)、営業利益は152,353千円(前期比31.5%減)となりました。なお、採用数が増加したことによって間接コストが増加したため、利益率を大きく低下させていますが事業拡大推進のための計画的な投資であり、中長期的には売上・利益ともに貢献するものと考えています。

翌事業年度は、既存のお客様に対するインボイス制度対応案件が数多く見込まれております。小中規模案件をとおして、新卒及び中途社員の早期戦力化を図ります。また、当事業年度に開設した福岡支社の地方採用が好調に推移しており、順調に成長しております。今後も社内開発体制の強化を図り、これまで以上に新規案件の獲得を目指してまいります。

売上高
前期比 %増
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売上高構成比率 %

(単位:

AI事業は、ディープラーニング異常検知システム「AISI∀ Anomaly Detection(アイシアAD)」をベースにAIの画像認識技術を使って製造ラインの検査作業自動化を実現しようというビジネスです。前事業年度までERP事業と同一セグメントで管理しておりましたが、当事業年度からAI事業を報告セグメントとして記載しております。

「AISI∀ Anomaly Detection(アイシアAD)」は、製造業の生産工程における目視検査を自動化したい、検査の精度を高めたいというニーズを受け開発した製品です。AI・ディープラーニング画像処理ソフト市場は今後急成長する市場といわれておりますが日本企業が求める高品質基準に対応することは非常に難しく、この市場で成功するためには外観検査の実績を増やしていき、より高度な実用化レベルに達することが重要だと考えています。当事業年度には実運用に向けて多くのPoC(概念実証)を実施し、最終検証まで進んだ案件が出てきました。引き続き、知識と経験を増やし続け、日本企業が求める高品質基準に対応しうる製品にアップデートし続けていきます。

前述のとおり、実運用に向けた案件が順調に進捗しているため、AI事業の当事業年度の売上高は67,366千円(前期比254.9%増)、営業損失は36,749千円(前期は98,030千円の営業損失)となりました。

翌事業年度中に実運用に進める見込みの案件が数件あるため、早期の収益化に向けて邁進してまいります。

売上高
前期比 %増
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売上高構成比率 %

(単位:

その他の事業には、プログラミングスキル判定サービス「TOPSIC」、カスタマーサクセス支援サービス「VOICE TICKETS」、アイデア創出プラットフォーム「IDEA GARDEN」の3つの新規事業が含まれています。

「TOPSIC」は、オンライン・リアルタイムで受験者のプログラミングスキルを判定できるクラウドサービスです。中途採用における受験者のスクリーニングや社員のプログラミング教育などのニーズをとらえて、契約社数は順調に増加しています。また、2021年2月より、「TOPSIC」の新たなシリーズ製品として、データベース言語であるSQLのスキルを判定する「TOPSIC-SQL」をリリースしました。これにより、「TOPSIC」は、アルゴリズム能力を問う「TOPSIC-PG」とSQLスキルを問う「TOPSIC-SQL」の2つのサービスとなりました。

イベント事業としては、2018年から毎年開催しているプログラミングコンテスト「PG Battle」に加え、2022年7月からSQLのコーディング力を競うイベント「TOPSIC SQL CONTEST」も開催しております。「PG Battle」は、年々知名度が高まり、2022年10月に開催した第5回大会では、378チーム1,134名が参加する大きなイベントに成長しました。「TOPSIC SQL CONTEST」はすでに第5回大会まで開催し、会員登録数は2023年2月末時点で1,314人にのぼる規模に成長しました。このような各種イベントを通じてIT業界全体の活性化にも貢献してまいります。

2022年11月より、IT人材育成を専門とした学校の授業に「TOPSIC」が導入されました。2022年4月から小・中学校だけでなく高校でもプログラミング教育が必修になるなど、プログラミングスキルの可視化に対する需要が高まっているため、新たなお客様の獲得を目指してまいります。

「IDEA GARDEN」は2021年11月にアイデアの創出と育成を促すアイデア創出プラットフォームとして誕生しました。2023年2月には、今話題の「ChatGPT」にも利用されている自然言語処理モデル「GPT-3」を活用したアイデア発想支援機能を実装いたしました。これまで社員がゼロベースで行っていたアイデア発想について、AIのアシストを介することにより、短時間で効果的なアイデアを創出することが可能となりました。また、2023年3月にも「ChatGPT」を活用した新機能「AIブレスト機能(β)」を実装致しました。チャット形式でAIとブレインストーミングが行えるため、誰でも簡単に短時間でアイデアをブラッシュアップする事が可能となりました。本サービスは国内企業におけるイノベーション文化を醸成するため使用価値及び製品の認知度向上を最重要課題として取り組んでまいります。

「VOICE TICKETS」は2021年10月にエンドユーザー様の声を蓄積・管理できるカスタマーサクセス支援サービスとしてリリースしましたが、収益化の目途・市場性・事業拡大の難易度など、様々な指標をもとに検討した結果、事業撤退することを決定いたしました。なお、業績に与える影響は軽微となります。

以上の結果、その他事業の当事業年度の売上高は51,328千円(前期比15.1%増)、営業損失は97,808千円(前期は100,749千円の営業損失)となりました。プログラミング教育は、今後も成長を続けるものと想定しておりますので、教育市場やITエンジニア採用のためのスキルチェックサービスとして認知度を向上してまいります。また、新規イノベーションへの関心は常に高く、お客様の声をもとに製品の強化を続け認知度向上を進めてまいります。

(ご参考)
今後の見通し

IT業界はDX推進を背景に堅調に推移していくものと想定しておりますので、ITエンジニア確保のため新卒、キャリアともに積極的な採用を続けてまいります。一方で、新規採用者が参入障壁の高い当社各事業において戦力となり、お客様に規定品質以上のサービスを提供するには、従来にも増して高度なスキルと知識が要求されます。社内教育を経て部分的な業務や小規模プロジェクトを経験するなど、その育成には設計や開発など初期レベルの業務を担うエンジニアでも通常2年程度の育成期間を要しています。早期戦力化のための育成プログラムを強化しておりますので、翌事業年度中には市場との需給バランスが取れるよう改善する見込みとなっております。

当社の各事業に対する市場ニーズは衰えていませんがこのような状況を踏まえ、中長期目標及び2024年2月期の業績見通しを修正いたしました。詳細は、2023年4月14日発表の「中期経営計画の業績目標修正及び新たな経営計画策定に関するお知らせ」をご確認ください。これにより、2024年2月期の業績見通しは、売上高5,000,000千円(前期比11.5%増)、営業利益392,000千円(前期比3.6%減)、経常利益398,000千円(前期比4.4%減)、当期純利益336,000千円(前期比20.0%増)となる見込みです。

対処すべき課題

当社の中長期的な経営目標達成のために対処すべき課題は以下のとおりです。

(1)新規顧客開拓力の強化

当社の主力事業であるE-Commerce事業及びERP事業についてはパートナー企業による間接販売や案件紹介の仕組みがすでに構築されております。そのため、これらの事業では「待ちの営業姿勢」となり、それが新規案件の受注遅れの一つの要因になっています。そのため各事業に分散していた新規顧客開拓担当者やマーケティング部門を新設の「事業戦略本部」に集約することで、チームでの活動を強化し、あらためて自社での新規顧客開拓営業スタイルを推進していきます。

(2)開発エンジニアの確保と早期戦力化

IT業界はここ数年好景気が続いています。DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れもあり、システム化投資を進める企業からの引き合いの増加が続いています。こうした市場環境のなか、IT業界ではエンジニア不足が深刻化しています。この課題に対処するため、ベトナム開発拠点の設立や積極的に新卒及び中途社員の採用を実施しておりますが、社員の育成に遅れが生じており早期の戦力化が新たな課題となっています。

翌事業年度も積極的な採用を継続しつつ、社内教育を経て部分的な業務や小規模プロジェクトを経験するなど育成プログラムを強化し早期戦力化を図ってまいります。

(3)インキュベーション事業の収益化

当社には開始から5年の事業が2つと2年以内の事業が1つありますが、未だ黒字化できておりません。分散していたこれら事業を「インキュベーション事業部」として集約し、人的リソースやその活動量をバランスさせながら、最小の投資で最大成果が得られるよう早期の黒字化を目指してまいります。また、それぞれの事業には短い期間でのKPIを定め事業継続性の判断を定期的に行ってまいります。

(4)新規主力事業の創出

当社の主力事業はE-Commerce事業、ERP事業、Object Browser事業の3つですが、時代の変化とともに、市場のニーズや技術も大きく変わっています。その変化をしっかりと捉えて、当社の強みを活かした5番目の新規事業を早期に創出する必要があります。2023年度はそのための全社プロジェクトを立ち上げ早期製品化のための投資をしてまいります。

計算書類