事業報告(2024年5月1日から2025年4月30日まで)

当事業報告において、使用する名称の正式名称及びその説明は下記のとおりです。

企業集団の現況

当連結会計年度の事業の状況

事業の経過及び成果

当社グループは、「Being The NET Frontier!(Internetをひろげ、社会に貢献する)」という企業理念を掲げ、インターネットに関わるコアテクノロジーの開発、大規模システムの運用といった技術力の蓄積を強みとして、主に法人向け、個人向けにインターネット関連サービスを提供しています。

当連結会計年度における報告セグメントは以下のとおりです。

なお、連結子会社である株式会社ギガプライズ(以下、「ギガプライズ」)及びその子会社は、前連結会計年度において決算日を3月31日から当社の連結決算日と同じ4月30日に変更しました。そのため、前連結会計年度における当該連結子会社は、2023年4月1日から2024年4月30日までの13ヶ月を連結対象期間とした変則的な決算となっております。

当社グループを取り巻く経営環境におきましては、依然として不安定な国際情勢や資源価格の変動、物価上昇などが経済全体に影響を及ぼしており、先行き不透明な状況が続いています。一方で、生成AIをはじめとする先端技術への投資意欲の高まりや、業種・業態を問わず加速するDX化の進展を背景に、国内のIT市場環境は堅調な成長を続けております。また、5Gの普及とともに、インターネットサービスにおいては従来のWeb2.0(中央集権型)からweb3(非中央集権型)へという新しい概念が登場し、非中央集権的なインフラやサービスを活用した新たなビジネスの創出が国内外で活発化しています。

このような環境のもと、当社グループが事業を行う情報通信市場では、テレワークやクラウドの普及、リッチコンテンツやSNS利用の拡大により、固定回線網・モバイル回線網いずれのインターネットサービスも需要が引き続き増加しており、より高品質な回線網やサイバーセキュリティ対応など、信頼性の高いネットワーク及びシステムの安定的な運用の重要性が増していくと予想されます。また、集合住宅向けインターネットサービス市場においては、インターネット常設化やオートロック・防犯カメラ等のセキュリティ機器の標準化が進み、今後も通信回線を介した安心・安全な住まいへの需要は堅調に推移すると見込まれており、物件の快適性を重視した資産価値向上を図る動きが進んでいます。加えて、インターネットマーケティング市場においても、デジタル化やモバイル技術の進展により成長が継続しており、SNS広告やインフルエンサーマーケティングが市場を牽引しています。動画コンテンツとeコマースの統合が進み、顧客体験の最適化を重要視したアプローチ手法や新たなサービス分野の出現、事業参入者の増加など競争が激化しており、今後さらに差別化の必要性が増していくと考えられます。そして、当社グループが目指すweb3の社会実装という新たな社会インフラの提供においては、web3の非中央集権型技術と「Trusted Web」構想をベースとしたユーザー主導での個人情報を含むデータ管理が可能なID基盤を構築し、この基盤と連携した非中央集権型のサービスを、スマートフォン端末をはじめとする様々な機器にも搭載していくことで、情報の信頼性と公平性の確保、向上を目指してまいります。

このような状況において、当社グループは2021年から2030年の10ヵ年計画を視野に入れた企業経営を推進しており、2027年4月期を最終年度とする3ヵ年の中期経営計画『SiLK VISION 2027』を当連結会計年度よりスタートしています。中期経営計画『SiLK VISION 2027』では世界規模で直面している社会課題の解決に必要なものとして「信用の所在地」を追求することをテーマとしています。これは、我々を取り巻く環境が不透明な情報で溢れていることに対して、信用がおける状態を作っていくことが重要であるとの考えのもと、当社が有するweb3技術や特許技術等を活用していくことで、その実現に取り組むものです。そして、これまで培ってきた通信分野におけるノウハウと、当社が独自開発したレイヤ1ブロックチェーン技術を組み合わせ、Web2.0とweb3をハイブリッドで段階的・補完的に運用しながら様々なモノを「Trust化」していくことで社会課題の解決を目指しております。

こうした取り組みをさらに加速させるべく、2025年1月31日に「ソフトバンク株式会社との資本業務提携及び第三者割当による自己株式の処分に関するお知らせ」及び、「株式会社ギガプライズ株式(証券コード:3830)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」(以下、「本公開買付け」)を公表いたしました。その後、2025年3月18日に本公開買付けが成立、2025年4月3日にはソフトバンク株式会社(以下、「ソフトバンク」)への第三者割当による自己株式の処分が完了しました。そして、本公開買付けの成立を受け、スクイーズアウト手続きとして2025年3月27日に株式売渡請求を実施し、これに基づき、2025年4月22日、ギガプライズの普通株式の全て(但し、本公開買付けの公開買付者である株式会社LERZが所有する普通株式及びギガプライズが所有する自己株式を除く。)を取得いたしました。

当社グループは、ソフトバンクとの資本業務提携において、「web3/AIの社会実装のさらなる推進、加速化」「新たなサービスをさらに幅広い層に届けていくためのモバイル事業の充実」「IoTやUnmanned Device(無人デバイス)の拡大」そして「住宅市場での競争力拡大」といった事業戦略の実現を企図しております。また、ギガプライズにつきましては、集合住宅向けインターネット接続関連サービスにおける今後のさらなる成長と当社グループ全体の企業価値の最大化を目指す上で、当社の経営資源をギガプライズに柔軟に投入し、その競争優位性向上のための抜本的施策を講じる必要があると考え、ギガプライズの議決権の全てを取得するにいたりました。

当社グループは、成長戦略の一環として上記のような取り組みを行うことで、通信サービスにとどまらない、「通信生まれのweb3実装企業」へとカテゴリーチェンジを行うとともに、中期経営計画『SiLK VISION 2027』の最終年度である2027年4月期の連結業績においては、売上高630億円~700億円、営業利益80億円を目標とし、当社グループ全体で総力をあげて事業領域の拡大と中期経営計画の達成を推し進めてまいります。

事業区分別の概況

報告セグメント別の業績は、次のとおりです。

なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を一部変更しており、以下の前連結会計年度比較については、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。

売上高
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売上高構成比 %

(単位:

固定回線網においては、働き方や生活スタイルの変化に伴い、自宅でのオンライン動画の視聴やゲームをはじめとしたリッチコンテンツ及びSNSの利用等の増加、テレワークや在宅学習の普及などに伴うオンライン形式の会議や学習の一般化により、インターネットを介した多くのサービスの利用増加が継続しており、それによって回線利用量が増加することでネットワーク原価の高止まり基調が続いています。

モバイル回線網においては、大手モバイル通信キャリアによる格安プランの提供やサブブランドでの展開が独自型MVNOサービス事業者の成長に影響を与える傾向が続いておりますが、IoTやインバウンド向けの利用が増加する見込みであるなど、モバイル市場全体としての成長は継続しており、今後も拡大していくと捉えています。

このような状況のもと、5Gインフラ支援事業においては、MVNEとしてのMVNO向け事業支援サービスの規模拡大が堅調に推移した一方、通信品質の向上や人材強化に係る費用などが増加した結果、売上高は10,567,877千円(前連結会計年度比6.4%増)、セグメント利益は1,405,438千円(前連結会計年度比13.0%減)となりました。

売上高
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売上高構成比 %

(単位:

「5Gインフラ支援事業」における説明のとおり、固定回線網サービス市場においては、ネットワーク原価は上昇しているものの、5G Homestyle(集合住宅向けインターネットサービス)につきましては、建物の資産価値及び入居率の向上を目的とした高速ブロードバンド環境が標準化しつつあることに加え、テレワークやオンライン学習、動画コンテンツ視聴等の利用がスタンダードなものとして認識されたことから、その市場規模は今後も着実に成長していくものと考えられます。そのような事業環境を踏まえ、集合住宅向けインターネットサービスや戸建賃貸住宅向けサービスに加え、防犯・監視クラウドカメラサービスといったセキュリティ関連サービスなどへと提供範囲を拡大し、さらなる収益基盤の拡充を図りました。

また、5G Homestyle(集合住宅向けインターネットサービス)を提供するギガプライズは、新築物件及び既存物件ともにサービス提供戸数を伸ばし、集合住宅向けISPサービスの提供戸数については、前連結会計年度末1,209,522戸に比べ132,844戸増加し、1,342,366戸となりました。

そして、5G Lifestyle(個人向けのモバイル通信サービスやインターネット関連サービス)では、当社グループが提供する独自のテクノロジーを活用したスマートフォンサービス「トーンモバイル」で培った技術やサービスを自社以外のスマートフォンや幅広い機器でも利用可能とし、IoTを始めとした他分野へと展開していく「TONE IN」戦略に則り、サービス対象のスマートフォン機種を拡大することで利用者の増加を推進するとともに、「トーンモバイル」における獲得コストのコントロール等による利益改善を図っております。

このような状況のもと、5G生活様式支援事業においては、主に5G Homestyle(集合住宅向けインターネットサービス)におけるサービス提供戸数が順調に推移した結果、売上高は26,307,622千円、セグメント利益は3,545,579千円となりました。

なお、前連結会計年度より、連結子会社であるギガプライズ及びその子会社は決算日を3月31日から4月30日に変更しており、前連結会計年度は決算期変更の経過期間であったことから、対前連結会計年度比増減率は記載しておりません。

売上高
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売上高構成比 %

(単位:

連結子会社である株式会社フルスピード及びその子会社が展開するインターネットマーケティング、アドテクノロジーサービスにおいては、消費者のデジタルシフトが進む中、コロナ禍を契機とした社会や働き方の多様化によるデジタル施策の加速に伴い、広告需要が引き続き増加しました。そのような環境のもと、アドテクノロジーサービスのアフィリエイト事業における海外での需要獲得が好調に推移しました。

また、5G/web3時代におけるファンコミュニティの形成とクリエイターエコノミー(クリエイターが自らのスキルによって収益化をおこなう経済圏)の拡大を目指した、クリエイターが大手プラットフォーマーを介さずに自ら情報発信し、その価値を最大化できるクリエイタープラットフォーム「StandAlone」サービスの提供件数も伸長いたしました。

このような状況のもと、企業・クリエイター5G DX支援事業においては、アフェリエイトを中心とした海外事業等の業績が堅調に推移した一方、「StandAlone」の多面展開及びEC事業の先行投資による費用増加等の結果、売上高は20,699,423千円(前連結会計年度比7.4%増)、セグメント利益は954,448千円(前連結会計年度比14.0%減)となりました。

以上により、当連結会計年度の売上高は、各報告セグメントにおいて環境の変化に対応した事業展開を図ったことで、総じて需要の取り込みが堅調に推移した結果、55,073,206千円となりました。

営業利益については、売上高の増加に加え、『SiLK VISION 2027』の実現に向けた「新たな成長ドライバー」への投資を実行しつつも、原価抑制をはじめとしたコストコントロールや効率的なマーケティング戦略の実施、グループ内リソースの最適化等の施策が奏功したことで、5,883,783千円となりました。

経常利益については、事業収益が増加した一方、営業外費用においてソフトバンクとの資本業務提携及びギガプライズ100%子会社化(議決権)に係る関連費が一時的に発生したことにより、5,230,578千円となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益についても、上記一時費用の発生を受け、2,748,537千円となりました。

なお、前連結会計年度より、連結子会社であるギガプライズ及びその子会社は決算日を3月31日から4月30日に変更しており、前連結会計年度は決算期変更の経過期間であったことから、対前連結会計年度比増減率は記載しておりません。

対処すべき課題

当社が中期経営計画『SiLK VISION 2027』においてweb3の社会実装を目指し、「信用の所在地」を追求していく取り組みにおいては、それぞれ次のような課題があると認識し、対応方針を策定しております。

① インターネット接続サービス市場環境の変化について

モバイルデータ通信において5G StandAlone(LTEとの併用ではない5G単独の通信規格)方式の普及が始まっており、これまでの「超高速・大容量」に加えて「超低遅延」「多数同時接続」といった特徴を備えることにより、仮想的にネットワークを分割する「ネットワークスライシング」が実現し、多種類のネットワークの安定的な運用により、IoTをはじめとした様々な技術分野において急速な発展を促すことが見込まれております。また、各キャリアが衛星通信の消費者への提供を開始しており、モバイル通信分野においてはネットワーク設備側の更新の他、MNOキャリアとの技術的な調整や端末製造における投資が課題となっております。

当社グループでは、このような環境の変化を機敏に捉え、ユーザーのニーズを見据えた新たなサービスを開発し、いち早く提供を行い、また当期においてはソフトバンクとの資本業務提携を行い、研究開発を含めた連携を深めるなど、必要と考えられる施策を推進しておりますが、今後も5G、6Gといったモバイル通信網の技術革新により、インターネット接続サービスの市場環境は影響を受ける可能性があるため、これらの変化を見据えた事業開発を行うとともに、市場環境の変化にスピーディに対応するためにこれまでの実績や経験に裏付けされた安定したサービスの開発及び適切な戦略投資が重要であると認識しております。

② 回線・帯域調達コストについて

インターネット上では帯域を多く利用するリッチコンテンツや、IoTのための通信が増加しており、流通データ量も急激に増えております。また、在宅勤務・オンライン会議等の利用が多くなったことで、職場だけではなく家庭での通信に対する需要が増えたことにより、インターネット業界全体で、通信回線設備の需給バランスの不安定化や、帯域の不足の可能性が指摘されております。当社では回線・帯域調達の効率化やデータの最適化を含めた高効率のネットワーク運用を行うなどの努力を行い、また、長年培ってきた技術力を最大限に活かし、これらの環境に対応すべく努めており、このような取り組みは継続的に行っていく必要があると認識しております。

③ 最新技術への対応について

5G/web3/AIなどの最新技術は、これまでの既存の産業構造の形を変えてしまう可能性を持っており、当社グループもこれらの技術へ深くかかわるとともに、既存事業の着実な成長と利益創出を行うことで安定的な事業の運用をし、同時にこれら最新技術の既存事業へのネガティブな影響も考慮しながら、今後のビジネスモデルの構築を推進しております。

当社グループでは、長年のインターネット接続サービスの提供で培ってきたネットワーク技術やノウハウを活用することで、web3領域においてレイヤ1ブロックチェーンにおいて世界でも有数のノード数を運用するなど、一定の成果をあげております。また、近年急激な発達を見せているAI技術は、通信と連携することにより日々新たなビジネス手法を生み出す源泉となっております。

当社グループの特徴的なサービス提供形態として、これまで通信事業者向けにビルディングブロック(顧客のニーズにあわせ、サービスを選択・組み合わせて提供できるビジネスモデル)を提供してきましたが、今後は最新技術のソリューションを加えた上で、さらに一定の設計思考(エンタープライズアーキテクト思考)のもとにこれらを組み上げることで、通信事業者以外の事業者に対してもソリューションサービスの提供や共同ビジネスの提案を行っております。

また、当社グループでは、これらの新たな技術・市場において重要な役割を担うべく、グループ内で保有する技術やデータを有機的に管理するように推進し、アルプスアルパイン株式会社やソフトバンクをはじめ、国内外を問わず多くのパートナー企業との連携を充実させるように努めております。今後、積極的に当社グループの技術・サービスを多くの顧客に提供すべく、新技術に関する営業力の強化、継続的な技術開発による最先端のサービスの提供及び当社グループの技術を保護するための知財関連の強化等も肝要であると認識しております。

④ 関係会社管理の徹底及び社内管理体制と従業員教育の強化

当社グループでは、当社のみならず各子会社を通じて、インターネットに関わる多岐にわたる事業を展開しており、各社にて新規人員の採用や教育を行っております。人員の交流も積極的に行っておりますが、事業の拡大に伴い、さらにグループ全体の管理の徹底及び従業員教育の向上が必要であると認識しております。

そのため、子会社の計数管理の徹底、統一的な監査の実施を通じて適切な管理を行い、グループ内の内部通報制度の周知等を通じてコンプライアンス意識の向上に努めるとともに、企業理念や経営方針、統一的な教育プログラムをグループ各社で共有し浸透させることで、当社グループ社員の連帯意識の強化を図り、グループ会社間の枠にとらわれない発展を促します。

また、当期においては、ギガプライズの議決権の全てを取得したことに伴い共同調達やサービスの協働といったより深い連携を目指した組織の刷新を進めている一方で、内部統制強化のための連携・改善等を継続的に行っていく必要があると認識しております。

そのため、各グループ会社の監査役、内部監査室の連携を促進し、また継続的な従業員教育を通して、コーポレートガバナンスの充実及び法令遵守の徹底にグループ全社をあげて取り組んでおります。

⑤ 就業環境の整備について

新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、当社グループでは、デジタルアセットを最大限に活用した働き方を従業員一丸となって推進してまいりました。また、当社の推進しているweb3分野の事業であるレイヤ1ブロックチェーンを活用し、従業員の健康管理や福利厚生の利用、ステークホルダーコミュニティへの参加など、従業員が当社事業の社会実装化をより身近なものとして実感できるようになっております。

これらの施策の実行は、当社グループで働くことの魅力を向上させるとともに、通信事業者として社会経済活動の支えとなるようなサービスの提供が可能であることを示しております。今後もネットワークを活用した新たな事業形態の創出や、安定的なサービス提供を行う健全な企業体力の維持、従業員及び関係者の健康と安全を守るための新しい働き方の推進等について継続的に取り組むことで、持続可能な開発目標を掲げる社会への貢献を積極的に進めていくことが必要であると考えております。

連結計算書類