事業報告(2023年4月1日から2024年3月31日まで)
企業集団の現況
当事業年度の事業の状況
事業の経過および成果
新型コロナウイルス感染症の位置づけが5類へ移行し、社会・経済活動は正常化に向けた動きが進みました。一方で、ウクライナ情勢の長期化や円安の影響等により原油をはじめとした資源・エネルギー価格が高騰するとともに、中東情勢の緊迫化の影響が懸念されるなど、社会・経済情勢は依然として不透明な状況が続きました。
このような状況のなかでも、企業や官公庁等におけるデジタル化が進められ、クラウド基盤の活用推進やビジネス変革、事業領域の拡大を目的としたデジタル投資は、様々な業種・業界で増加基調にあります。また、破壊的なテクノロジーともいわれる生成AIの登場により、あらゆる分野においてAI活用の可能性が探られるなど、デジタルビジネスを活性化させる動きも出ています。
このようなデジタル化の進展に伴ってサイバー脅威の領域が拡大しており、身代金要求型攻撃(ランサム攻撃)により部品製造業者がシステムを停止させられ、生産ラインも止めざるを得なくなったことでサプライチェーン全般にまで影響が及ぶようになるなど、サイバー被害は従来にも増して甚大化、複雑化しています。また、大手通信事業者の子会社において大規模な情報持ち出し被害などが報道され、内部不正対策は都度社会的な課題となり組織的な強化が図られるものの、年が経つにつれその記憶が忘れ去られてしまうことを改めて社会に認知させるに至りました。さらには、安全保障の観点で重要情報の管理を厳格化する動きがみられるなど、サイバーセキュリティ対策は一層の強化が求められる状況になっています。
当社は、セキュリティ事故において長年にわたりお客様に寄り添い対策してきた経験をもとに、検知から対策まで迅速かつ高度な対応を行う外部の脅威だけでなく内部不正を含めた対応力のさらなる向上のため、緊急対応サービスの事業体制強化や運用監視サービスのサービス力強化への取り組みを推進してきました。
当連結会計年度の売上高は、セキュリティソリューションサービス事業(SSS事業)は製品販売や診断サービスなどが拡大し、またシステムインテグレーションサービス事業(SIS事業)は開発サービスやHW/SW販売などが伸長したことにより、49,477百万円(前期比12.4%増)となりました。利益面では、営業利益は2,174百万円(同22.5%増)、経常利益は2,153百万円(同18.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,379百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失147百万円)となりました。

事業区分別の概況
当連結会計年度の事業別の状況は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、セキュリティソリューションサービス事業(SSS事業)のサブセグメント間において組み替えを行っています。エンドポイント対策支援サービスをセキュリティコンサルティングサービスからセキュリティ運用監視サービスに、また標的型メール訓練サービスをセキュリティ診断サービスからセキュリティコンサルティングサービスへと組み替えています。それに伴い、前期比較においては、前期の数値を変更後の数値に組み替えて比較しております。

<主要な事業内容>
情報セキュリティ対策の策定・導入・運用支援、サイバー攻撃緊急対応、セキュリティ構築・運用監視、セキュリティ診断および情報セキュリティ教育等のサービス、ならびにセキュリティ関連商品の販売とその保守サービスの提供
セキュリティコンサルティングサービスは、緊急対応サービス案件の減少はあったものの、体制・対策強化に向けたコンサルティング案件の拡大や標的型メール訓練など教育サービスが伸長したことにより、売上高は3,898百万円(前期比1.0%増)となりました。
セキュリティ診断サービスは、年間で手掛ける大型案件の売上計上があったことや実践的な疑似攻撃を行い潜在的な脅威を調査するペネトレーションテストの案件が拡大したことなどにより、売上高は3,018百万円(同17.2%増)となりました。
セキュリティ運用監視サービスは、特定企業向けに高度な対策を行う個別監視サービスや内部不正監視サービスが伸長するとともに、エンドポイント対策支援サービスが拡大したことにより、売上高は6,598百万円(同6.1%増)となりました。
セキュリティ製品販売は、エンドポイント対策向けおよびサービス妨害型攻撃にも対応したWebセキュリティ対策向けクラウド対応製品や、潜在的な脅威情報を収集・分析するセキュリティ製品などが大幅に拡大したことにより、売上高は7,773百万円(同29.5%増)となりました。
セキュリティ保守サービスは、クラウド対応製品の拡大等で需要が縮小している影響はあるものの、既存案件等が増加したことにより、売上高は869百万円(同1.0%増)となりました。
この結果、SSS事業の売上高は22,159百万円(同13.5%増)、セグメント利益は事業体制・サービス力強化のための先行投資などの影響により、2,260百万円(同4.5%減)となりました。

<主要な事業内容>
情報システムに関するコンサルティングサービスおよび情報システムの設計、開発・構築、運用・保守サービス、ならびに関連商品の販売およびその保守サービス等の提供
主力ビジネスである開発サービスは、大手銀行やクレジットカードなどの金融業向け案件に加え、公共向け案件が大幅に伸長したことにより、売上高は18,218百万円(前期比11.4%増)となりました。
HW/SW販売は、クラウドサービスの拡大等で需要は縮小しているものの、更新案件等の獲得により大幅に伸長し、売上高は3,530百万円(同43.5%増)となりました。
IT保守サービスは、更新案件等が減少したことにより、売上高は3,092百万円(同6.3%減)となりました。
ソリューションサービスは、サイバーセキュリティ対策にも寄与するクラウドソリューション製品の販売が拡大したことにより、売上高は2,475百万円(同3.9%増)となりました。
この結果、SIS事業の売上高は27,317百万円(同11.5%増)、セグメント利益は3,854百万円(同12.4%増)となりました。
直前3事業年度の財産および損益の状況



対処すべき課題
世界情勢や金融市場など不安定な状況が続く一方で、技術革新は急速に進んでおり、社会全体のデジタル化はますます促進されることが予想されます。あらゆる事業・業務領域でのクラウド活用、AIの発展・普及などにより、ITを取り巻く環境は常に変化と進化を続けております。
またデジタル領域の拡大と同時にサイバーセキュリティ対策の必要性が増し、加えて安全保障の観点からその重要度もより一層高まっており、これらに対応するための柔軟性とスピードが求められています。
当社では、「たしかなテクノロジーで『信じられる社会』を築く」というパーパスに基づき、このようなデジタル社会への対応が優先的に対処すべき課題と認識しております。セキュリティサービス・開発サービスを軸に既存事業を継続的に成長させながら、以下の取り組みを中心とした中長期的なさらなる価値創造を実現してまいります。
・セキュリティサービスへのAI活用
AI活用によるサービスの高度化を図り、市場競争力を強化するとともに自動化による大幅な生産性改善を進めることにより、これまで応えきれていない中小企業向けのニーズにも対応した費用対効果の高いサービスを提供します。
・統合セキュリティプラットフォームの構築
各種セキュリティサービスのデータ分析・活用基盤を統合し、分散した情報を統合されたインテリジェンスに昇華させ、サイバーリスクの一元的な可視化とサービス提供を行います。
・セキュリティツールの獲得
当社が約30年にわたり磨き続けてきた現場経験からの知見を活かし、自社開発だけでなく他社とのアライアンスも視野に入れた新たなセキュリティツールの獲得を推進するとともに、さらなるインテリジェンス蓄積とサービスの高度化に繋げます。