事業報告(2023年4月1日から2024年3月31日まで)
経営の基本方針
経営理念および行動準則
積水化学グループは、経営に対する理念を体系化しています。企業活動の根底にある考え方や方針を示す「社是」、社是をうけて中長期で当社グループが目指す姿を示した「グループビジョン」、グループビジョンを実現していくための具体的な「経営戦略」により構成されています。
(1) 社是「3S精神」
当社の社章は、創業当時の社名「積水産業」の頭文字の「S」3つを化学記号ベンゼン環の中に配置して、「水」という文字をかたどったものです。1959年11月、当社は、このマークに「3S精神」という明確な定義づけを行い、社是として制定しました。
「企業活動を通じて社会的価値を創造する(Service)」「積水を千仞の谿に決するスピードをもって市場を変革する(Speed)」「際立つ技術と品質で社会からの信頼を獲得する(Superiority)」の3S精神は、積水化学グループの理念体系の根幹をなすものであり、約2万7千名の全社員の間で、しっかりと共有されています。
<社是「3S精神」>
(2) グループビジョン
積水化学グループは、ステークホルダーの期待に応え、社会的価値を創造し、事業を通して社会に貢献することを目指しています。
地球規模での人口増加や気候変動、先進国を中心とする高齢化、都市基盤の老朽化などに加え、これらすべてに関連する資源エネルギー問題がこれまで以上に喫緊な社会的課題になりつつある中、グループがこれまで蓄積してきた「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」の分野に関する経験・知見を活用して、これらの社会課題の解決に資する価値を創造し続けることを目指しています。
<グループビジョン>
積水化学グループは、際立つ技術と品質により、「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」のフロンティアを開拓し続け、世界のひとびとのくらしと地球環境の向上に貢献します。
(3) 積水化学グループ 企業行動指針
積水化学グループは、グループの役員・従業員が従うべき行動指針である「積水化学グループ企業行動指針」を定め、日々の事業活動を通じて社会的信頼を高め、より一層魅力ある会社を目指しています。
<企業行動指針>
1 社会の発展に役立つ事業活動を行う。
2 個人の能力を最大限に発揮し、活力ある組織をつくる。
3 お客様・取引先・株主・地域など広く社会から信頼される企業をめざす。
4 あらゆる企業活動において法およびその精神を遵守し、誠実に行動する。
5 よき企業市民として、サステナブルな視点で地球環境問題と社会貢献に取り組む。
グループビジョンを実現するための経営戦略
積水化学グループは、社是「3S精神」の下、グループビジョンに掲げる「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」を両輪として成長していくため、長期ビジョン「VISION 2030」、ならびに2023年度から2025年度までの3か年を対象期間とした中期経営計画「Drive 2.0」を策定し、以下の取り組みを推進しています。
(1) 長期ビジョン「VISION 2030」
長期ビジョン「VISION 2030」では、積水化学グループがイノベーションを起こし続けることにより、「サステナブルな社会の実現に向けてLIFEの基盤を支え『未来につづく安心』を創造していく」という強い意志を込めたビジョンステートメント「Innovation for the Earth」を掲げています。レジデンシャル(住まい)、アドバンストライフライン(社会インフラ)、イノベーティブモビリティ(エレキ/移動体)、ライフサイエンス(健康・医療)の4つの事業領域を設定し、「ESG経営を中心においた革新と創造」を戦略の軸にして現有事業の拡大と新領域への挑戦に取り組み、2030年の業容倍増を狙います。
<長期ビジョンの全体像>
<ESG経営>
積水化学グループは、「サステナブルな社会の実現」と「当社グループの持続的な成長」の両立の実現を目指し、その鍵となる以下の3つのステップをステークホルダーとともに取り組んでいます。
①環境・CS品質・人材の「3つの際立ち」と「ガバナンス」の磨き上げ
②3つのアプローチ(量を増やす・質を高める・持続的に提供する)で社会課題解決を加速
③4つの事業領域で「未来につづく安心」の創出・拡大
このESG経営を加速するため、当社グループ主要施策について中長期目標を定めるとともに、今中期経営計画ではESG強化費550億円(設備投資+費用)を設定し、重大インシデントにつながるリスク軽減に向けた取り組みやDX(デジタル変革)・人材・環境など経営基盤の強化を進めています。
ESG経営概念図
(2) 中期経営計画「Drive 2.0」
長期ビジョンの第2フェーズとなる中期経営計画「Drive 2.0」では、積水化学グループの業容倍増に向け、“持続的成長”と“仕込み充実”により、長期ビジョンの実現を目指すことを基本方針とし、①戦略的創造、②現有事業強化、③ESG経営基盤強化の3つの基本戦略に取り組み、企業価値の向上を推進します。
<中期経営計画「Drive 2.0」の全体像>
<中期経営計画の数値目標>
- 「純利益」は「親会社株主に帰属する当期純利益」を表しています。
- 上記数値目標から新規M&A等は除きます。
- 2024年度の計画については招集ご通知の53ページに記載のとおりです。
<基本戦略>
中期経営計画「Drive 2.0」の基本戦略は、ESG経営を実践し持続的に企業価値を向上させていくために、長期ビジョンの第2フェーズとして①戦略的創造、②現有事業強化、③ESG経営基盤強化の3つに取り組むこと、それらを牽引するドライバーとしてサステナビリティ貢献製品の創出と拡大を加速させることにあります。
-
①戦略的創造(Strategic Innovation)
新事業領域の創出を目指した仕込みの具体化 -
②現有事業強化(Organic Growth)
現有事業の着実な成長とポートフォリオの磨き上げ -
③ESG経営基盤強化(Strengthen Sustainability)
持続的成長と仕込み充実に資するESGマネジメント強化
<投資・財務戦略>
中期経営計画「Drive 2.0」の3年間に獲得するキャッシュに加え、適切かつ機動的な資金調達を行うため、投資枠6,000億円を設定します。設備投資枠(戦略投資+通常投資)、M&A投資枠としてそれぞれ3,000億円を設定し、市場開拓に伴う増産投資や、M&Aによる技術やノウハウ、グローバルの販路獲得などに活用します。また、環境負荷低減、人的資本投資、デジタル変革など長期的に資本コストを抑制し、企業価値向上に寄与する取り組みを実行するために、ESG強化費550億円(設備投資+費用)を設定しています。
<株主還元>
中期経営計画「Drive 2.0」では、株主の皆様への「剰余金の配当等に関する基本方針」の内容を見直し、株主還元のコミットを強化・明確化しました。連結配当性向40%以上、総還元性向50%以上(D/Eレシオ(負債資本倍率)が0.5以下の場合)としつつ、DOE(自己資本配当率)3%以上を確保し、業績に応じ、かつ安定的な配当政策を実施いたします。
(3) 気候変動課題への取り組み
積水化学グループは、気候変動は大きな社会課題であると同時に、当社グループにとって大きなリスクであると認識し、その解決に積極的に取り組んできました。2018年、化学業界初となるSBT認証(注)を取得し、2030年にGHG(Greenhouse Gas:二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガス)排出量削減率についてはScope1+2を2019年度比で50%減、Scope3を2019年度比30%減とする目標を掲げ、これまでは老朽設備更新の促進などの「エネルギー消費革新」、購入電力の再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)転換や自家消費型太陽光発電設備の導入などの「エネルギー調達革新」を進めてきました。
今後は、燃料使用設備の電化や低炭素燃料への転換の促進、さらには「生産プロセス革新」による燃料由来GHG排出量の削減という技術的難易度の高い取り組みも進め、中長期のGHG排出量削減目標の達成を目指します。なお、当社の目標値はSBT認証を取得しています。
GHG排出量削減目標
- 1.Scope1:
- 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
(燃料の燃焼、工業プロセス)
- 2.Scope2:
- 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
- 3.Scope3:
- Scope1、Scope2以外の間接排出
(事業者の活動に関連する他社の排出)
2023年度から開始した中期計画において、最終年度である2025年度は以下の目標を目指して取り組みを進めています。
【脱炭素化】
GHG排出量削減率(Scope1+2) ▲33%(基準年2019年度)
購入電力の再エネ比率 70%
2023年度のGHG排出量の削減率については、生産量減少と電力の再エネ転換が進みました。また、エネルギー調達革新を進めた結果、購入電力を100%再エネに切り替えた事業所は国内外31拠点、自家消費型太陽光発電設備の導入事業所は同19拠点となりました。グループ全体における購入電力の再エネ比率は計画通りに進捗しています。
(4) 資源循環の実現に向けた対応
積水化学グループは2050年にサーキュラーエコノミーを実現し、持続可能な社会を目指しています。この長期ゴール実現のために2020年度に下記の資源循環方針を定めました。
- 資源循環に関するイノベーションを推進する
- 事業活動で使用する非化石由来および再生材料の使用を拡大する
- ライフサイクルにおいて排出される廃棄物においてはマテリアルへの再資源化を最大化する
2023年度から開始した中期計画において、最終年度である2025年度は以下の目標を目指して取り組みを進めています。
【再資源化の促進】
廃プラスチックのマテリアルリサイクル率(国内)65%
2023年度の廃プラスチックのマテリアルリサイクル率(国内)は、事業所ごとに廃棄物の性状を再調査するとともに、再生技術を有するリサイクラーの適用範囲の再確認を行うことでマッチングを行い、リサイクラーの見直しを進め、計画通りに進捗しています。
(5) サステナビリティ貢献製品による持続可能な開発目標(SDGs)への貢献
気候変動などの社会課題が深刻化し、企業に対しては持続可能な社会の実現への貢献を求める声が高まっています。積水化学グループにおいても、さまざまな製品や事業を通じて、2030年までに世界が成し遂げるべき「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた企業活動を推進しています。
なかでも、自動車向け遮音・遮熱中間膜や太陽光発電システム搭載住宅、管路更生SPR工法といった、自然環境および社会環境における課題解決への貢献度が高い製品をサステナビリティ貢献製品と認定し、連結売上高に占めるサステナビリティ貢献製品比率を高めています。
グループビジョンに「世界のひとびとのくらしと地球環境の向上に貢献する」ことを掲げる企業として、サステナビリティ貢献製品の創出と市場における拡大を通じ、SDGsをはじめとする社会課題解決への貢献と企業としてのさらなる成長を目指します。
(6) 人的資本経営の取り組み
当社は人材理念に「従業員は社会からお預かりした貴重な財産である」と定め、人的資本を企業価値向上の源泉と位置づけています。長期ビジョンを実現し、全員が挑戦したくなる活力あふれる会社の実現に向け、今中期は「挑戦する風土の醸成」「適所適材の実現」「ダイバーシティの実現」を人事戦略に掲げ、各種施策を展開しています。また従業員のキャリア拡大への投資、ならびにグループ各社の人員確保(労働条件の改善、人員の補強、働く環境の整備)として、3年で120億円を人的資本に投資することとしています。
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①挑戦する風土の醸成
“挑戦の場づくり”としては、グループ人材公募などによるキャリア機会の実現とともに、社内起業制度の導入など新たなチャレンジ機会の提供を推進しています。“挑戦の後押し”としては、上司層の意識改革を図るための長期ビジョン展開活動の継続とともに、キャリアに関する上司部下間の面談を強化しています。挑戦風土の醸成状況は、年に1回“挑戦行動発現度”として測定し改善に努めています。 -
②適所適材の実現
持続可能な組織とするためには、人材のバトンを次に繋げることが必要です。“ビジネスリーダーの育成”としては、役割型人事制度に基づき、年功によらず最適な人材をライン長に任命するとともに、全社をあげて後継者候補の認定およびその育成に取り組んでいます。“プロ人材の確保”としては、競争力の源泉となる高度専門人材の確保に努めるとともに、事業ニーズに即したリスキルを強化すべく2023年度からDXやグローバル領域における育成プログラムを開始しました。 -
③ダイバーシティの実現
“多様な人材の活躍推進”としては、多様な人材(女性、障がい者、キャリア採用等)を受けいれる環境整備と雇用の実現、両立支援(育児、介護、病気)と定着支援を推進しています。“個と職場の活力を高める環境の実現”としては、働き方改革を通じた働きやすい環境の整備とともに、健康経営の推進(からだ・こころ・そしき)を通じた安心して働き続けられる環境確保に努めています。
TOPICS
「健康経営ホワイト500」に8年連続グループ会社32社で選定
「健康経営ホワイト500」に8年連続グループ会社32社で認定
2024年3月、当社グループは健康経営推進をグループ一体で取り組み、積水化学工業株式会社および国内関係会社32社が「健康経営優良法人2024大規模法人部門(ホワイト500)」に認定されました。認定は8年連続となります。
積水化学グループの現況に関する事項
事業の経過およびその成果、対処すべき課題
積水化学グループ2023年度の業績
積水化学グループの長期ビジョン「VISION 2030」に基づき策定した、中期経営計画「Drive 2.0」の初年度となる2023年度の事業環境として、国内の新築住宅市況の低迷が長期化しましたが、自動車関連需要などは一定の回復が見られました。
そのような環境のもと、高付加価値品の販売拡大に加え、為替の効果もあり、売上高は過去最高となりました。
また、高付加価値品の販売拡大、スプレッドの確保、固定費の抑制に努め、為替の効果もあり、営業利益は増益となりました。経常利益は、為替差益などにより過去最高益を更新しました。親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益などにより過去最高益を更新しました。
その結果、売上高は前年度比1.1%増の1兆2,565億円、営業利益は3.0%増の943億円、経常利益は1.6%増の1,059億円、親会社株主に帰属する当期純利益は12.5%増の779億円となりました。
2024年度の計画概要
2024年度は、中期経営計画「Drive 2.0」の2年目として、引き続き事業ポートフォリオ改革に取り組み、「成長」へのシフトを加速していきます。
市況については緩やかに回復していくと見込んでいます。引き続き社会課題解決に資する高付加価値事業・製品販売の拡大を図るとともに、スプレッドの維持、新築住宅事業の収益体質強化策の着実な推進などにより、全てのセグメントで増収増益、全社での売上高の過去最高更新、営業利益および親会社株主に帰属する当期純利益の最高益更新を目指します。
これらの取り組みにより、売上高は前年度を701億円上回る1兆3,267億円、営業利益は前年度を76億円上回る1,020億円、経常利益は前年度を34億円下回る1,025億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年度と同水準の780億円を目指します。
また、長期的成長のための仕込み、フィルム型ペロブスカイト太陽電池やバイオリファイナリーの事業化、DX推進、研究開発強化や賃上げなども含めた人的資本投資などの成長投資も加速していきます。
株主の皆様におかれましては、持続的な成長を目指す積水化学グループに、引き続き、厚いご支援を賜りますようお願いいたします。
事業区分別の概況
住宅カンパニー
住宅カンパニー2023年度の業績
リフォーム事業および不動産事業が増収となる一方、新築住宅事業において受注棟数が前期を下回ったことで、売上高は前期をやや下回り、前年度比1.4%減の5,296億円となりました。また、営業利益は為替影響を含む部材価格上昇の影響もあり、前年度比15.5%減の277億円となり、減収減益となりました。
施策面については、新築住宅、リフォーム、まちづくりの各事業でスマート&レジリエンスの訴求を図りました。
新築住宅事業では、物価上昇による購買意欲減退の影響などにより、受注棟数は前期を下回りました。ウェブサイトと展示場・ショールーム・工場見学やイベントを連携したマーケティング活動に注力したほか、商品や分譲地のデザイン向上を図りました。加えて、リフォーム事業などの成長領域への人員シフトを中心とした、新築住宅事業の収益性強化策が進捗しました。
リフォーム事業は、営業体制強化や、断熱リフォームを軸とした改装などの拡販により、受注が前期を上回りました。
2024年度の計画概要
2024年度は、リフォーム、不動産、まちづくり各事業の売上拡大や、新築住宅事業におけるコスト削減により、増収増益を目指します。
新築住宅事業では、2023年度の受注棟数減少の影響があるものの、売上高は2023年度並みの見通しです。引き続きリフォーム事業などの成長領域への人員シフトなどによる収益性強化に取り組むとともに、各エリアのニーズに応じた商品開発や販売戦略を推進し、受注棟数増大や棟単価向上を図ります。
リフォーム事業では、営業人員の拡充や、断熱リフォームを軸とした改装の拡販に加え、セキスイハイムオーナー以外の一般リフォーム市場における需要獲得に向けた取り組みに注力します。
不動産事業では、管理戸数増大による賃貸事業の拡大や、仲介や買取再販など流通事業の拡大に注力します。
まちづくり事業では、新規プロジェクトの発売により、売上増大を図ります。
TOPICS
『セキスイハイムの循環型モデル』が
第32回「地球環境大賞」フジサンケイグループ賞を受賞
※すべての電力を賄えるわけではありません。電力会社から電力を購入する必要があります。
『セキスイハイムの循環型モデル』の特長
2024年3月、建てる時も建てた後も住宅の一生を通じて地球環境に配慮した『セキスイハイムの循環型モデル』の構築と取り組みが評価され、第32回「地球環境大賞」において「フジサンケイグループ賞」を受賞しました。
セキスイハイムの強みである「工場生産」「ユニット工法」を生かし、工場での再生可能エネルギー活用や、住宅展示場をユニットに分解して再築するなど、建設・生産時から居住・生活時、住み終えた後の不要・廃棄時に至るまで、各段階でCO2排出量の抑制に貢献します。今後も循環型モデルに沿った事業を拡大・推進することで、地球にやさしい住まいと持続可能な社会の実現に貢献していきます。
環境・ライフラインカンパニー
環境・ライフラインカンパニー2023年度の業績
国内の住宅・非住宅建築市況が低調であったことに加え、塩素化塩ビ(CPVC)樹脂の需要低迷の影響があったものの、売値改善によるスプレッドの確保、水道・建築・工場向けポリエチレン管、耐火材料などの重点拡大製品の販売伸長により、売上高は前年度比0.2%増の2,347億円、営業利益は前年度比4.4%増の221億円となり、2期連続で過去最高益を更新、増収増益となりました。
パイプ・システムズ分野では、国内の住宅向け非住宅向けとも需要が想定を下回るも、売値改善の定着、重点拡大製品の拡販により、売上高は前期を上回りました。
住・インフラ複合材分野では、耐火・不燃材料、大型高排水システムなどの重点拡大製品や合成木材(FFU)の国内での売値改善、堅調な受注が進んだものの、住宅向け需要が低迷し、売上高は前期を下回りました。
インフラ・リニューアル分野では、管路更生の海外での新規物件の獲得、パネルタンクの需要回復などにより、売上高は前期を上回りました。
2024年度の計画概要
2024年度は、国内の住宅・非住宅建築市況は、上期は引き続き停滞するものの下期から緩やかに回復すると想定します。社会課題解決に資する重点拡大製品と海外売上の拡大に注力し、増収増益を目指します。また諸原料高、物流費の上昇に加え、賃上げなど事業に関わる総コストの増加に対応した売値改善を進めます。
パイプ・システムズ分野では、引き続き人手不足やインフラ老朽化などの社会課題解決に資する重点拡大製品の拡販を図るとともに、下期より回復が見込まれる半導体向けプラント設備投資需要の取り込みと、CPVC樹脂の販売エリア拡大に注力します。
住・インフラ複合材分野では、不燃性ウレタン製品を中心に耐火材料事業の拡大、大型高排水システムや介護用製品の拡販を推進します。またFFUについては、欧州工場の安定稼働を早期に実現し、海外での鉄道まくらぎ用途の採用を加速させます。
インフラ・リニューアル分野では、管路更生の海外での受注拡大、高機能パネルタンクの販売強化などにより売上拡大を図ります。
TOPICS
鉄道枕木向け合成木材(FFU)の欧州生産工場開設
工場外観
2023年10月、オランダに所在するグループ会社SEKISUI ESLON B.V.内に建設を進めていた、FFU製まくらぎの生産工場が完成しました。
当社が製造する「FFU」は、軽量かつ耐久・耐候性、加工性に優れるなど、天然木材とプラスチックの長所を兼ね備えた合成木材です。1974年の発売以降、さまざまな用途に展開してきましたが、鉄道の枕木用途での採用は40年を超え、国内において多くの鉄道会社に採用していただいています。海外においても、鉄道大国であるドイツ、イギリスなど需要の拡大が見込まれる欧州を中心に事業規模を拡大、世界34ヵ国で販売実績があります。
これまで、FFU製まくらぎはほぼ全量を日本の滋賀栗東工場で生産していましたが、海外における鉄道分野最大の需要地である欧州工場開設により、さらなる事業拡大とグローバル化を推進していきます。
高機能プラスチックスカンパニー
高機能プラスチックスカンパニー2023年度の業績
欧米や国内における建築・消費財需要の低迷の影響がありましたが、自動車関連の需要回復や、為替の効果、売値の維持・改善に努めたことなどにより、売上高は前年度比4.2%増の4,128億円、営業利益は前年度比27.0%増の509億円となり、増収増益となりました。
エレクトロニクス分野では、スマートフォン市況は一定程度回復したものの、半導体関連の需要については低迷が継続する中、主に非液晶製品の拡販が進捗し、売上高は前期を上回りました。
モビリティ分野では、売値の改善が進捗したことや為替の効果、自動車関連の需要の回復、ヘッドアップディスプレイ用を中心とした高機能中間膜の拡販などにより、売上高は前期を大きく上回りました。またSEKISUI AEROSPACE社の生産性改善の取り組みが進捗しました。
インダストリアル分野では、欧米や国内の建築・消費財需要の低迷が続き、売上高は前期を下回りました。
2024年度の計画概要
2024年度は、労務費の増加や原材料高騰の影響を受けるものの、為替の効果に加え、モビリティ分野や半導体を中心としたエレクトロニクス関連需要の回復を見込み、販売数量を大幅に拡大することにより、増収増益を目指します。
エレクトロニクス分野では、スマートフォン市況については当期並みと想定する一方、半導体関連の需要については緩やかな回復を見込んでおり、基板・半導体関連をはじめとする非液晶分野での拡販を加速させ、増収を図ります。
モビリティ分野では、引き続き自動車関連需要は堅調に推移すると見込んでおり、ヘッドアップディスプレイ用を中心とした高機能中間膜の拡販を推進するとともに、航空機需要についても一定の回復を見込み、増収を図ります。
インダストリアル分野では、欧米や国内の建築・消費財需要の低迷が続くも、下期の市況回復を見込み、成長領域に定めている断熱材、長尺クラフトテープなどの施工省力化製品や環境対応製品の拡販を推進するとともに、売値改善の継続により増収を図ります。
TOPICS
介護施設向け見守りセンサー「ANSIELTM」の拡張機能「NEZAMELTM」を発売
見守りセンサー「ANSIELTM」
2023年11月、介護施設向け見守りセンサー「ANSIEL(アンシエル)」の拡張機能として、覚醒・睡眠の検知およびそれらのデータが取得できる「NEZAMEL(ネザメル)」を新たにリリースしました。
ANSIELは、当社が独自開発した高精度センサーを搭載し、ベッドのマットレス下に設置することで、ベッド上の要介護者の動きを検知・解析できる見守り支援機器です。起き上がりなどのベッド上での動きの検知と、心拍・呼吸や在床・不在などのライフログが取得できる機能を搭載し、2020年の発売以降、多くの介護施設で採用いただいてきました。このたび、より多くのご要望にお応えするべく、ANSIELのハードはそのままで、ソフトウェアをアップグレードすることにより「覚醒」「浅眠」「睡眠」状態を、検知・モニタリングできるサービスを開発・発売しました。この拡張機能により、利用者居室への夜間訪室回数の削減ができ、介護士の業務負担軽減と、利用者の安眠時間確保につなげることが期待できます。
メディカル事業
2023年度は、感染症を中心に増加した国内検査需要の確実な取り込みや医療事業での新規原薬の販売が堅調に推移し、中国での血液凝固機器・試薬の拡販に注力するとともに、為替影響もあり、売上高は前年度比3.3%増の926億円、一方、営業利益は、米国での新型コロナウイルス感染症検査キットの販売減などの影響が大きく、前年度比12.5%減の109億円と増収減益となりました。
2024年度は、国内外での検査需要の確実な取り込みと、医療事業での新規受注獲得に注力します。国内および中国での血液凝固機器・試薬の拡販に加え、米国において、新製品となるインフルエンザ・新型コロナウイルス感染症検査コンボキットの拡販に注力し、大幅な増収増益、過去最高益の更新を目指します。
R&D(研究開発)の取り組み事例
国内初、ペロブスカイト太陽電池をビル外壁に実装-大阪本社リニューアル工事-
2023年10月、当社は、大阪本社が入居する堂島関電ビルに国内で初めてフィルム型ペロブスカイト太陽電池(以下「PSC」)を実装しました(建物外壁へのPSC「常設設置」として2023年10月4日現在、当社調べ)。
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて再生可能エネルギーの拡大が求められる中、当社が開発中のPSCは軽量で柔軟という特長があり、シリコン系太陽電池では設置が難しかったビルの外壁などへの設置が可能となります。
現在、堂島関電ビルは大規模リニューアル工事を実施中であり、2025年4月に完工予定です。当該工事に合わせてPSCを壁面に設置することで、ビルの環境負荷低減に加え、PSCによる発電量のモニタリングや経年変化など、長期的な品質評価に活用します。
世界初 フィルム型ペロブスカイト太陽電池による高層ビルでのメガソーラー発電の計画について
2023年11月、当社は、東京都千代田区内幸町で建設予定のサウスタワーに、開発中のPSCが設置されることをお知らせしました。
定格で発電容量が1,000kWを超えるPSCがサウスタワーのスパンドレル部に設置され、世界初の「PSCによるメガソーラー発電機能を実装した高層ビル」となる予定で、都心部における創エネルギーの最大化およびエネルギーの地産地消の拡大への取り組みに寄与していきます。
従来、高層ビルの壁面における太陽電池の設置については、荷重や風圧への対応や更新時コストが多額になる等の課題が多く、採用が進んでおりませんでしたが、今般、PSCの「薄い」、「軽い」、「曲げられる」といった特長を活かした新たな設置方法により、従来の課題を解決できる見通しです。
本件を通じてPSCの設置(施工~維持管理~交換)に関する技術を高め、PSCの普及拡大を加速させ、カーボンニュートラルの実現に大きく貢献していきます。
大阪本社 リニューアル完工イメージ
(赤枠内がPSC)
内幸町一丁目街区南地区
第一種市街地再開発事業
完成イメージ
PSC設置イメージ
※本資料中のイメージパースについては計画段階のものであり、今後の行政指導等により変更が生じる可能性があります。