事業報告(2024年4月1日から2025年3月31日まで)
経営の基本方針
経営理念および行動準則
積水化学グループは、経営に対する理念を体系化しています。企業活動の根底にある考え方や方針を示す「社是」、社是をうけて中長期で当社グループが目指す姿を示した「グループビジョン」、グループビジョンを実現していくための具体的な「経営戦略」により構成されています。

(1) 社是「3S精神」
当社の社章は、創業当時の社名「積水産業」の頭文字の「S」3つを化学記号ベンゼン環の中に配置して、「水」という文字をかたどったものです。1959年11月、当社は、このマークに「3S精神」という明確な定義づけを行い、社是として制定しました。
「企業活動を通じて社会的価値を創造する(Service)」「積水を千仞の谿に決するスピードをもって市場を変革する(Speed)」「際立つ技術と品質で社会からの信頼を獲得する(Superiority)」の3S精神は、積水化学グループの理念体系の根幹をなすものであり、約2万7千名の全社員の間で、しっかりと共有されています。
<社是「3S精神」>

(2) グループビジョン
積水化学グループは、ステークホルダーの期待に応え、社会的価値を創造し、事業を通じて社会に貢献することを目指しています。
地球規模での人口増加や気候変動、先進国を中心とする高齢化、都市基盤の老朽化などに加え、これらすべてに関連する資源エネルギー問題がこれまで以上に喫緊な社会的課題になりつつある中、グループがこれまで蓄積してきた「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」の分野に関する経験・知見を活用して、これらの社会課題の解決に資する価値を創造し続けることを目指しています。
<グループビジョン>
積水化学グループは、際立つ技術と品質により、「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」のフロンティアを開拓し続け、世界のひとびとのくらしと地球環境の向上に貢献します。
(3) 積水化学グループ 企業行動指針
積水化学グループは、グループの役員・従業員が従うべき行動指針である「積水化学グループ企業行動指針」を定め、日々の事業活動を通じて社会的信頼を高め、より一層魅力ある会社を目指しています。
<企業行動指針>
1 社会の発展に役立つ事業活動を行う。
2 個人の能力を最大限に発揮し、活力ある組織をつくる。
3 お客様・取引先・株主・地域など広く社会から信頼される企業をめざす。
4 あらゆる企業活動において法およびその精神を遵守し、誠実に行動する。
5 よき企業市民として、サステナブルな視点で地球環境問題と社会貢献に取り組む。
グループビジョンを実現するための経営戦略
積水化学グループは、社是「3S精神」の下、グループビジョンに掲げる「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」を両輪として成長していくため、長期ビジョン「Vision 2030」、ならびに2023年度から2025年度までの3か年を対象期間とした中期経営計画「Drive 2.0」を策定し、以下の取り組みを推進しています。
(1) 長期ビジョン「Vision 2030」
長期ビジョン「Vision 2030」では、積水化学グループがイノベーションを起こし続けることにより、「サステナブルな社会の実現に向けてLIFEの基盤を支え『未来につづく安心』を創造していく」という強い意志を込めたビジョンステートメント「Innovation for the Earth」を掲げています。レジデンシャル(住まい)、アドバンストライフライン(社会インフラ)、イノベーティブモビリティ(エレキ/移動体)、ライフサイエンス(健康・医療)の4つの事業領域を設定し、「ESG経営を中心においた革新と創造」を戦略の軸にして現有事業の拡大と新領域への挑戦に取り組み、2030年の業容倍増を狙います。
<長期ビジョンの全体像>

<ESG経営>
積水化学グループは、「サステナブルな社会の実現」と「当社グループの持続的な成長」の両立の実現を目指し、その鍵となる以下の3つのステップをステークホルダーとともに取り組んでいます。
①環境・CS品質・人材の「3つの際立ち」と「ガバナンス」の磨き上げ
②3つのアプローチ(量を増やす・質を高める・持続的に提供する)で社会課題解決を加速
③4つの事業領域で「未来につづく安心」の創出・拡大
このESG経営を加速するため、当社グループ主要施策について中長期目標を定め、重大インシデントにつながるリスク軽減に向けた取り組みや、環境・人的資本などに注力し、経営基盤の強化を進めています。
ESG経営概念図

(2) 中期経営計画「Drive 2.0」
長期ビジョンの第2フェーズとなる中期経営計画「Drive 2.0」では、積水化学グループの業容倍増に向け、“持続的成長”と“仕込み充実”により、長期ビジョンの実現を目指すことを基本方針とし、①戦略的創造、②現有事業強化、③ESG経営基盤強化の3つの基本戦略に取り組み、企業価値の向上を推進します。
<中期経営計画「Drive 2.0」の全体像>

<中期経営計画の数値目標>

- 「純利益」は「親会社株主に帰属する当期純利益」を表しています。
- 上記数値目標から新規M&A等は除きます。
- 2025年度の計画については招集ご通知の55ページに記載のとおりです。
<基本戦略>
中期経営計画「Drive 2.0」の基本戦略は、ESG経営を実践し持続的に企業価値を向上させていくために、長期ビジョンの第2フェーズとして①戦略的創造、②現有事業強化、③ESG経営基盤強化の3つに取り組むこと、それらを牽引するドライバーとしてサステナビリティ貢献製品の創出と拡大を加速させることにあります。
-
①戦略的創造(Strategic Innovation)
新事業領域の創出を目指した仕込みの具体化 -
②現有事業強化(Organic Growth)
現有事業の着実な成長とポートフォリオの磨き上げ -
③ESG経営基盤強化(Strengthen Sustainability)
持続的成長と仕込み充実に資するESGマネジメント強化
<投資・財務戦略>
中期経営計画「Drive 2.0」の3年間に獲得するキャッシュに加え、適切かつ機動的な資金調達を行うため、投資枠6,000億円を設定します。設備投資枠(戦略投資+通常投資)、M&A投資枠としてそれぞれ3,000億円を設定し、市場開拓に伴う増産投資や、M&Aによる技術やノウハウ、グローバルの販路獲得などに活用します。また、環境負荷低減、人的資本投資、デジタル変革など長期的に資本コストを抑制し、企業価値向上に寄与する取り組みを実行するために、ESG強化費550億円(設備投資+費用)を設定しています。

<株主還元>
中期経営計画「Drive 2.0」では、株主の皆様への「剰余金の配当等に関する基本方針」の内容を見直し、株主還元のコミットを強化・明確化しました。連結配当性向40%以上、総還元性向50%以上(D/Eレシオ(負債資本倍率)が0.5以下の場合)としつつ、DOE(自己資本配当率)3%以上を確保し、業績に応じ、かつ安定的な配当政策を実施いたします。
(3) 気候変動課題への取り組み
積水化学グループは、気候変動は大きな社会課題であると同時に、当社グループにとって大きなリスクであると認識し、その解決に積極的に取り組んできました。2018年、2℃目標ベースのGHG(Greenhouse Gas:二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガス)削減ロードマップをベースに化学業界初となるSBT認証(注)を取得しましたが、2022年にはマイルストーンの前倒し達成を受け、1.5℃目標ベースのロードマップへと見直し、SBT認証を再取得しました。この目標とは2030年にGHG排出量削減率についてはScope1+2を2019年度比で50%減、Scope3を2019年度比30%減とするものです。これまでは老朽設備更新の促進などの「エネルギー消費革新」、購入電力の再生可能エネルギー(以下「再エネ」)転換や自家消費型太陽光発電設備の導入などの「エネルギー調達革新」を進めてきました。
現在は、燃料使用設備の電化や低炭素燃料への転換の促進、さらには「生産プロセス革新」による燃料由来GHG排出量の削減という技術的難易度の高い取り組みも進めており、中長期のGHG排出量削減目標の達成を目指します。
(注)SBT(Science Based Targets)認証:企業が定めた温室効果ガス削減目標が、長期的な気候変動対策への貢献と科学的に整合していると、国連グローバル・コンパクトをはじめとする共同イニシアチブにより認証されたもの
・GHG排出量削減目標

- 1.Scope1:
- 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
(燃料の燃焼、工業プロセス)
- 2.Scope2:
- 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
- 3.Scope3:
- Scope1、Scope2以外の間接排出
(事業者の活動に関連する他社の排出)
2023年度から開始した中期計画において、最終年度である2025年度は以下の目標を目指して取り組みを進めています。
【脱炭素化】
GHG排出量削減率(Scope1+2) ▲33%(基準年2019年度)
購入電力の再エネ比率 70%
2024年度のGHG排出量の削減率については、生産量減少と電力の再エネ転換が進みました。グループ全体における購入電力の再エネ比率は計画通りに進捗しています。
(4) 資源循環の実現に向けた対応
積水化学グループは2050年にサーキュラーエコノミーを実現し、持続可能な社会を目指しています。この長期ゴール実現のために2020年度に下記の資源循環方針を定めました。
- 資源循環に関するイノベーションを推進する
- 事業活動で使用する非化石由来および再生材料の使用を拡大する
- ライフサイクルにおいて排出される廃棄物においてはマテリアルへの再資源化を最大化する
2023年度から開始した中期計画において、最終年度である2025年度は以下の目標を目指して取り組みを進めています。
【再資源化の促進】
廃プラスチックのマテリアルリサイクル率(国内)65%
2024年度は、工場から排出される廃プラスチックに対して、既存技術の活用によるマテリアルリサイクルの水平展開に加え、難リサイクル材に対しての新しいリサイクル技術の検討が進みました。今後は実装に向けて検討を進めます。
更に、真のサーキュラーエコノミーの実現をめざし、使用する原料について、再生可能もしくはバイオマス由来の原料など循環可能な資源に転換する取り組みも加速します。
(5) サステナビリティ貢献製品による持続可能な開発目標(SDGs)への貢献

気候変動などの社会課題が深刻化し、企業に対しては持続可能な社会の実現への貢献を求める声が高まっています。積水化学グループにおいても、さまざまな製品や事業を通じて、2030年までに世界が成し遂げるべき「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた企業活動を推進しています。
なかでも、自動車向け遮音・遮熱中間膜や太陽光発電システム搭載住宅、管路更生SPR工法といった、自然環境および社会環境における課題解決への貢献度が高い製品をサステナビリティ貢献製品と認定し、連結売上高に占めるサステナビリティ貢献製品比率を高めています。
「サステナブルな社会の実現に向けて、LIFEの基盤を支え『未来につづく安心』を創造する」企業として、サステナビリティ貢献製品の創出と市場における拡大を通じ、SDGsをはじめとする社会課題解決への貢献と企業としての更なる成長を目指します。
『未来につづく安心』を創造する今後のサステナビリティ貢献製品としては、フィルム型のぺロブスカイト太陽電池やCO2固定化技術、バイオリファイナリー技術などがあり、社会実装をめざし、実証・スケールアップなどを行っている段階です。
(6) 人的資本経営の取り組み
積水化学グループは人材理念に「従業員は社会からお預かりした貴重な財産である」と定め、人的資本を企業価値向上の源泉と位置づけています。長期ビジョンの実現、ならびに全員が挑戦したくなる活力ある会社の実現に向け、今中期は「挑戦する風土の醸成」「適所適材の実現」「ダイバーシティの実現」を人事戦略に掲げています。役割軸の人事制度や挑戦の促進など、人材マネジメントの転換に向けて各種施策を展開しています。なお、従業員のキャリア拡大への投資、ならびにグループ各社の人員確保(労働条件の改善、人員の補強、働く環境の整備)として、3年で120億円を人的資本に投資することとしています。

-
①挑戦する風土の醸成
重点KPI:挑戦行動発現度。『挑戦の“場づくり”』としては、人材公募などを通じてチャレンジ機会を提供するとともに、『挑戦の“後押し”』としては、挑戦風土の醸成やキャリア自律を促進しています。 -
②適所適材の実現
重点KPI:後継者候補準備率。『次代を担うリーダー育成』としては、全社をあげて後継者候補の認定・登用および計画的育成に取り組むとともに、『際立つプロ人材確保』としては、高度専門人材の確保および事業ニーズに即したリスキルを実施しています。 -
③ダイバーシティの実現
重点KPI:定着率。『多様な人材の活躍』としては、多様な人材の雇用と定着促進、DEI(Diversity・多様性、Equity・公平性、Inclusion・包括性)の推進および両立支援、『活力あふれる環境づくり』としては、働き方改革ならびに健康経営を推進しています。
積水化学グループの現況に関する事項
事業の経過およびその成果、対処すべき課題
積水化学グループ2024年度の業績



積水化学グループの長期ビジョン「Vision 2030」に基づき策定した、中期経営計画「Drive 2.0」の2年目となる2024年度の事業環境は、国内の新築住宅市況が低迷し、自動車生産、スマートフォン出荷などグローバル市況も低調に推移しました。
そのような環境のもと、高付加価値品の販売拡大に加え、為替の効果もあり、売上高は過去最高を更新しました。
また、高付加価値品の販売拡大、スプレッドの確保に加え、固定費の抑制に努めるとともに、為替の効果もあり、全てのセグメントで増益となり、全社での営業利益は1,000億円超えを達成し、各段階利益は過去最高益を更新しました。
その結果、売上高は前年度比3.3%増の1兆2,977億円、営業利益は14.4%増の1,079億円、経常利益は4.8%増の1,109億円、親会社株主に帰属する当期純利益は5.1%増の819億円となりました。
2025年度の計画概要



2025年度は、中期経営計画「Drive 2.0」の最終年度として、様々な市況の変化や低迷にあっても、中期経営計画達成を狙うところまで着実に成長を継続していきます。
不透明な市況のもと、引き続き社会課題解決に資する高付加価値事業・製品販売の拡大、スプレッドの維持に努め、全てのセグメントで増収増益、全社での過去最高売上高更新、中期計画通りの営業利益、各段階利益の過去最高益更新を目指します。
これらの取り組みにより、売上高は前年度を667億円上回る1兆3,645億円、営業利益は前年度を70億円上回る1,150億円、経常利益は前年度を56億円上回る1,166億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年度と同水準の820億円を目指します。
また、ペロブスカイト太陽電池事業を推進し、DX推進・研究開発強化など長期的成長のための仕込みも加速していきます。
なお、米国の政策による関税や為替の変動については、状況を注視し、販売価格への反映や追加CR・固定費の抑制などの対策を継続していくことにより、影響の最小化を図っていきます。
株主の皆様におかれましては、持続的な成長を目指す積水化学グループに、引き続き、厚いご支援を賜りますようお願いいたします。
事業区分別の概況
住宅カンパニー
住宅カンパニー2024年度の業績





リフォーム事業および不動産事業の売上は伸長しましたが、新築住宅事業において売上棟数が前期を下回ったことで、売上高は前期をやや下回り、前年度比1.1%減の5,240億円となりました。また、営業利益は新築住宅事業における収益性強化策の効果が発現するとともにリフォーム事業が順調に拡大し、前年度比13.6%増の314億円となり、減収増益となりました。
施策面については、引き続き新築住宅、リフォーム、まちづくりの各事業でスマート&レジリエンスの訴求を図りました。新築住宅事業では、エリア別商品戦略強化やデザイン向上を図るなどマーケティング活動強化に注力しました。
新築住宅事業の受注は、物価上昇の影響により地方部での需要回復が鈍く、棟数は前期をやや下回ったものの、都市部での需要は比較的堅調に推移し、受注金額は前期を上回りました。
リフォーム事業の受注は、営業体制強化、定期診断の継続、断熱リフォームを軸とした改装などの拡販により、前期を上回りました。
2025年度の計画概要

2025年度は、新築住宅事業での高価格帯商品拡販による棟単価上昇の効果、またリフォーム、レジデンシャル(不動産、まちづくり)事業の売上拡大により、増収増益を目指します。
新築住宅事業では、都市部での受注回復、棟単価上昇を中心に、増収の見通しです。引き続き、戸建請負、集合住宅など高価格帯商品の受注拡大を図るとともに、各エリアのニーズに応じた商品開発や販売戦略を推進し、受注金額の伸長を図ります。
リフォーム事業では、営業体制強化、定期診断の充実化を継続し、受注拡大に注力します。
レジデンシャル事業では、不動産事業は、管理戸数増大による賃貸事業の拡大、仲介や買取再販など流通事業の拡大に注力します。まちづくり事業は、新規案件確保に注力し、持続的な売上増大を図ります。
TOPICS
セキスイハイムの買取再販によるアップサイクル住宅『Beハイム』が2024年度グッドデザイン賞を受賞

ハイムの買取&再販『Beハイム』
※商品イメージです。(現物ではありません)
2024年10月、買取再販ブランド『Beハイム』が、2024年度グッドデザイン賞を受賞しました。
『Beハイム』は、既存のセキスイハイムの住宅を買い取りアップサイクル住宅として新たな価値に再生し、次の住まい手につなげる買取&販売ブランドです。
今回、セキスイハイムの高度工業化住宅の特性を活かした品質確保とリノベーションによる再価値化により、売り手と買い手の双方が安心・納得できる住み継ぎの実現を図る提案が高く評価されました。
今回の受賞を機に『Beハイム』のブランドイメージをさらに強化し、住まいの価値向上・継承を加速していくことで、サステナブル社会への貢献を目指してまいります。
※条件により事前のリノベーションを行わず、別途リノベーションの提案付きで再販する場合があります。
環境・ライフラインカンパニー
環境・ライフラインカンパニー2024年度の業績





国内の住宅・非住宅建築市況が低調であったことに加え、第4四半期に工事遅延などによる荷動きの悪化があったものの、売値改善、重点拡大製品の販売伸長により、売上高は前年度比2.4%増の2,404億円、営業利益は前年度比3.7%増の229億円となり、3期連続で過去最高益を更新、増収増益となりました。
パイプ・システムズ分野では、国内の住宅向け非住宅向けとも需要は低調で、塩素化塩ビ(CPVC)樹脂はインド市場の低迷の影響を受けましたが、売値の改善、重点拡大製品の拡販などにより、売上高は前期を上回りました。
住・インフラ複合材分野では、耐火・不燃材料などの重点拡大製品の拡販、欧州を中心に合成木材(FFU)の鉄道まくらぎ用途の受注が進み、売上高は前期を上回りました。
インフラ・リニューアル分野では、管路更生が国内外で工事遅延などの影響を受けるも、給水用パネルタンク需要は堅調に推移し、売上高は前期を上回りました。
2025年度の計画概要

2025年度は、国内の住宅・非住宅建築市況は2024年度並みに推移し、設備投資需要は下期に向け拡大していくと想定します。総コストの上昇傾向は継続するものの、人手不足やインフラ老朽化などの社会課題解決に資する重点拡大製品の拡販と海外売上の拡大、新値の定着でカバーし、増収増益を目指します。
パイプ・システムズ分野では、引き続き重点拡大製品の拡販、下期より回復が見込まれるプラント設備投資需要の着実な獲得、CPVC樹脂の新製品の拡販に注力します。
住・インフラ複合材分野では、耐火・不燃材料、介護用製品、大型高排水システムなどの拡販に注力します。またFFUは、欧州を中心に鉄道まくらぎ用途の採用を加速させます。
インフラ・リニューアル分野では、管路更生は、国内下水道の全国重点調査を受けて発現する物件の獲得、海外での施工パートナー連携による受注拡大、給水用パネルタンクの販売強化などにより売上拡大を図ります。
TOPICS
雨水排水・貯留用強化プラスチック複合管「エスロンRCP雨水3種管」の品揃え拡充!

当社が製造・販売する雨水排水・貯留用強化プラスチック複合管(FRPM管)『エスロンRCP雨水3種管』は2024年8月より口径1350の品揃えを追加し、これまでに発売済みの口径600~1200と併せ、全サイズの品揃えが完了しました。
「エスロンRCP」は、1974年に発売以来、下水道管、農業用水管、工業用水道管、小水力発電用管など、さまざまな用途で使用されてきました。
近年、特に都市部では下水道の雨水排水能力を上回る浸水被害が増加しており、早急な雨水設備の整備増強が求められます。エスロンRCPの特長である施工性・水理性等はそのままに、雨水に特化した「エスロンRCP雨水3種管」を新たに品揃えすることで、雨水管をさらに整備しやすくし、浸水対策に貢献いたします。
高機能プラスチックスカンパニー
高機能プラスチックスカンパニー2024年度の業績





グローバル市況の低迷が継続しましたが、高機能品の販売が拡大するとともに、為替の効果もあり、売上高は前年度比8.3%増の4,473億円、営業利益は前年度比20.2%増の612億円となり、増収・大幅な増益となり、過去最高益を更新しました。
エレクトロニクス分野では、半導体関連の需要が回復し新規需要獲得も順調に進捗したことにより、売上高は前期を上回りました。
モビリティ分野では、一部の航空機関連の需要低迷や自動車生産停滞の影響があったものの、新高機能中間膜(ヘッドアップディスプレイ用、遮熱、カラー・デザイン)の拡販が着実に進捗し、売上高は前期を上回りました。
インダストリアル分野では、欧州の建築・消費財需要は想定を下回るも、売値の改善が進捗、フォーム材、テープなどの省力化・環境貢献製品の拡販も寄与し、売上高は前期を上回りました。
2025年度の計画概要

2025年度は、グローバル市況は不透明ながら、すべての分野で売上拡大を図り、増収増益、3期連続の最高益更新を目指します。また、米国の関税政策や為替の変動を注視し、販売価格への反映やアロケーション推進などの対策を速やかに実施し、影響の最小化を図っていきます。
エレクトロニクス分野では、スマートフォン市況については2024年度をやや上回って推移し、大型パネル需要も堅調であると想定します。引き続き高性能半導体向けを中心とした非液晶分野での拡販を加速させ、増収を図ります。
モビリティ分野では、ヘッドアップディスプレイ用を中心とした新高機能中間膜の拡販を推進するとともに、航空機需要の一定の回復を見込み、増収を図ります。
インダストリアル分野では、売値の維持に努めるとともに、成長領域に定めている施工省力化製品や環境対応製品の拡販を継続し、増収を図ります。
TOPICS
先端半導体製造用工程材料の国内生産能力増強および台湾R&D拠点の新設並びに導電性微粒子の生産能力増強について
2024年7月、武蔵工場(住所:埼玉県蓮田市)における先端半導体製造工程に使用される高接着易剥離UVテープ「SELFA®」の生産能力増強および同製品を含む半導体関連材料の評価・分析が可能なR&D拠点を台湾に新設することを決定しました。
高接着易剥離UVテープ「SELFA®」は、高い接着性とUV照射による易剥離※性を両立させたテープです。今後、継続的な需要拡大が見込まれることから、安定的な供給体制確立と高度な品質要望に応えるため、生産能力増強と品質管理レベル強化を図ります。
また、2024年10月多賀工場(住所:滋賀県犬上郡多賀町)において、ディスプレイや機構部品の回路接続に使用されている導電性微粒子「ミクロパール AU®」の生産能力を増強することを決定しました。2028年度上期より稼働開始を計画しています。
※ テープと被着体間にガスを発生させ、密着力をゼロにして簡単に剥がすことができる

高接着易剥離UVテープ
「SELFA®」

半導体材料R&D拠点
(デザイン図)

導電性微粒子
(ミクロパールAU®)
メディカル事業





2024年度は、免疫項目を中心とした国内検査需要の確実な取り込みや、米国での感染症検査キット拡販に注力、医療事業における主要原薬、創薬支援の受注も堅調に推移したことにより売上高は前年度比7.1%増の991億円、営業利益は、前年度比16.8%増の127億円と増収増益となり、過去最高益を更新しました。
2025年度は、検査事業では、国内および中国での凝固機器のラインナップの拡充、新規顧客の獲得を推進し、医療事業では、引き続き新規受注の獲得に注力し、増収増益および2期連続の最高益更新を目指します。
R&D(研究開発)の取り組み事例
ペロブスカイト太陽電池の量産化を発表
2024年12月、当社は、経済産業省のGXサプライチェーン構築支援事業の採択が決定したことを受け、政府の目指す2030年までの早期GW(ギガワット)級の供給体制構築を当社が中心となり実現するため、まずは2027年に100MW製造ライン稼働を目指し設備投資を行うことを決定しました。
・量産化の内容
大阪府堺市にあるシャープ株式会社の本社工場の建物や電源設備、冷却設備などを譲り受け、ペロブスカイト太陽電池製造設備を導入し、製造・販売を行います。
なお、新たな事業開始にあたりペロブスカイト太陽電池の設計・製造・販売を行うことを目的とした新会社「積水ソーラーフィルム株式会社」を設立し、事業運営を行います。
当初は軽量フレキシブルの特徴を活かし耐荷重性の低い屋根、公共部門(災害時避難場所となる体育館等)を中心に導入を進め、量産効果でコストを低減し、民間の工場・倉庫等の屋根・外壁面もターゲットに需要創出を行い、事業拡大を狙ってまいります。
今後は海外展開も視野に入れ、需要の獲得を進め段階的に増強投資を行い2030年にはGW級の製造ライン構築を目指します。

ペロブスカイト太陽電池 量産化発表会見
(2024年12月)