1. 第4号議案取締役佐藤英志氏解任の件

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    1.議案の要領

    取締役佐藤英志氏を解任すること。

    第4号議案及び第5号議案の提案の理由

    当社にはコーポレートガバナンス及び事業運営に関する以下の懸念があることから、当社の取締役佐藤英志氏(佐藤氏)及び髙野聖史氏(髙野氏)の解任を提案します。また、当社株主は、両氏の再任やDIC株式会社(DIC)関係者を取締役として選任する議案には反対すべきです。


    (1)既存株主の希薄化を目的とした第三者割当増資
    当社は2017年にDICに対して大規模な第三者割当増資を行い、既存株主の議決権を希薄化しました。当該増資の主要な目的は、企業価値向上や資金調達ではなく、増資直後の2017年定時株主総会で、前年度に株主の反対により上程撤回を余儀なくされた医療・医薬品事業参画にかかる定款変更議案や取締役報酬議案を可決させることであったと推察されます。


    (2)佐藤氏に対する過大な報酬
    佐藤氏が上記で可決させた取締役報酬議案により、2017年定時株主総会以降、佐藤氏の報酬水準は他の上場企業と比較して極めて高くなっています。


    (3)医療・医薬品事業への過剰な投資と失敗
    佐藤氏が主導する医療・医薬品事業は、多額の投資に対して収益が低く、減損を重ね、当社の企業価値を毀損しています。


    (4)タイ現地法人の不祥事と不適切な対応
    当社元監査役大木勝氏(大木氏)は、当社タイ現地法人の責任者在任時、タイ政府に虚偽の内容の書類を提出しています。当該行為に対し、大木氏が当社の現任監査役であった2021年に逮捕状が発付され、2024年には有罪判決を受けました。当社の取締役・監査役は2021年に逮捕状の存在を認知したにも関わらず、何ら有効な対策を取らなかったことから、善管注意義務に違反している可能性が高いです。


    (5)DIC派遣取締役による監督の失敗
    当社と、筆頭株主であるDICとの間には多額の取引があり利益相反が存在するため、タイ不祥事における対応でもそうであったように、DIC派遣取締役は実効的な監督機能を果たすことが期待できません。

    【取締役会の意見】

    〈第4号議案 取締役佐藤英志氏解任の件〉

    当社取締役会は、本議案に反対します。理由は以下のとおりです。


    佐藤氏は2011年4月の当社代表取締役社長就任以来、コーポレートガバナンスの強化に尽力するとともに、当社の主力事業であるエレクトロニクス事業の更なる成長のための投資やM&Aはもちろんのこと、事業の多角化を背景に医療・医薬品事業に進出、発展させてまいりました。その結果、過去最高の売上高・営業利益を何度も更新し続けており、当社代表取締役社長就任当時と比較すると、当社の連結売上高は約3倍、連結営業利益は約4倍となるなど(2011年3月期対比)、事業成績・企業価値を飛躍的に伸ばしております(株価は2011年4月1日対比で約4倍となり、過去最高値となっております。)。このように、佐藤氏は取締役として非常に高い職務遂行能力を有しており、引き続き当社の企業価値向上への主導的な役割が期待できることから、取締役としての適格性に疑義を生ずる余地はありません。


    本株主提案が指摘する点が解任の理由にあたらないことは以下に述べるとおりであり、佐藤氏の高い職務遂行能力やこれまでの実績も踏まえ、当社取締役会は、本株主提案に反対いたします。

    なお、本株主提案に対する当社取締役会の意見については、指名報酬委員会の答申を踏まえ、当社取締役会において審議し、決議されております。


    (1)本第三者割当増資が既存株主の希薄化を目的としたものでないこと

    2017年に実施したDICに対する第三者割当増資(以下「本第三者割当増資」といいます。)は、2017年1月25日付当社プレスリリース「DIC株式会社との資本業務提携、第三者割当による新株式発行及び自己株式の処分並びに主要株主、主要株主である筆頭株主及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ」に記載のとおり、2017年当時の事業環境の変化の中で新たな事業機会を捉え、飛躍的な成長を目指すために、優れた素材開発力、生産・物流拠点及び資金力を持ち、当社グループの事業展開を補完することができるDICとの戦略的パートナーシップを組むとともに、当社グループの短期的な経営課題の解決と中長期的な経営戦略の推進に必要な資金を調達することを目的として行ったものです。


    本第三者割当増資によるDICとの資本業務提携の成果として、プリント配線板以外の新規市場開拓としての、MID(立体成形基板)材料の相互評価・改良や新規用途への展開の進行、次世代通信規格5G以降の高周波帯域で使用される電子機器向け材料の共同開発(高周波対応配線形成用新シードフィルムの共同開発(第53回 日化協技術特別賞を受賞)など)、当社製品の原料をDICから調達可能にし、原料の主要な調達先を複数確保することによるBCPの強化などの様々なシナジーが創出されております。また、本第三者割当増資により調達した資金は、これらの新規事業や、エレクトロニクス事業における台湾工場の建て替え及び生産性向上、北九州事業所のドライフィルムライン増設、IT基盤の再構築、並びにM&Aの実行などに活用されております。


    なお、2016年度の第70回定時株主総会における医療・医薬品事業参画に係る定款変更議案や取締役報酬議案の上程撤回は、より多くの株主の皆様にこれらの議案の趣旨・目的をご理解いただくことを目的としたものであり、当社の特定の株主様の反対によりこれらの議案の上程撤回を余儀なくされたとの事実は存在しません。したがって、当社がこれらを可決させるために本第三者割当増資を行ったとの本株主提案の主張は事実に反しております。


    (2)佐藤氏に対する報酬が過大なものでないこと

    佐藤氏は、上記のとおり、過去最高の売上高・営業利益を何度も更新し続けるなど、当社の事業成績を飛躍的に伸ばしており、取締役として非常に高い職務遂行能力を有しています。現在の佐藤氏の報酬水準は、かかる職務遂行能力に見合ったものとなっております。


    また、当社の報酬制度は、①基本報酬、②業績連動金銭報酬、③業績連動株式報酬(3年間の譲渡制限)及び④譲渡制限付株式報酬(10年間の譲渡制限)で構成されます。このうち、①及び②は現金報酬ですが、佐藤氏の現金報酬①及び②の合計はプライム市場の他社代表取締役の現金報酬の平均値以下であって、かつ中央値に近い水準にとどまっております。特に、①は、業績に連動しない固定報酬ですが、プライム市場の他社代表取締役と比較すると、下位25%の水準です。当社の業務執行取締役の報酬は、③及び④の株式報酬の比率が高く、株主の皆様と価値を共有し、かつ、報酬全体として、業績連動性が高い設計になっています。そのため、業績次第で報酬の金額は増額し得ますが、これは佐藤氏の貢献により当社の業績が好調であることによるものです。


    さらに、当社の2017年度の第71回定時株主総会で承認可決いただいた取締役報酬議案は、税制改正及び経済産業省による「攻めの経営」を促す役員報酬制度の提示に伴い、普通株式による譲渡制限付株式報酬制度の導入が可能になったことを受けて提案させていただいたものであり、佐藤氏に対して過大な報酬を付与するために提案を行ったものではございません。株主の皆様との価値共有は、佐藤氏が代表取締役社長になる以前からの当社の役員報酬に関する考え方であり、また、当社は、その方針に沿って、2014年度という早期から、当時は先進的であった株式報酬制度を導入しておりました。

    勿論、こういった報酬制度の導入は、業務執行取締役の独断で決定しているものではなく、社外役員及び社外有識者が過半数を占める報酬諮問委員会(現:指名報酬委員会)等、客観的・中立的な視点を有する機関での議論、答申を踏まえて行ってきたものです。


    (3)医療・医薬品事業への投資が不適切な経営上の判断でないこと

    当社は半導体市況等に左右されがちな連結業績に安定感と持続的な成長をもたらすため、長期収載品の事業承継等による医薬品の製造販売から医療・医薬品事業に参入し、その後CDMOに展開いたしました。医療・医薬品事業とエレクトロニクス事業との間には、生産プロセスや海外展開含めた工場運営ノウハウの相互活用といった事業面のシナジーや、医療・医薬品事業を有することにより全社で活躍できる幅広いスキルと視野を持つ優秀な人材を採用・育成できる、といった人材面のシナジーが存在します。すなわち、医療・医薬品事業は、創業以来の化学メーカーである当社において、エレクトロニクス事業と一体と考え得る事業です。医療・医薬品事業をエレクトロニクス事業と分けて比べるとROIC(投下資本利益率)において低い水準なのは事実ですが、医療・医薬品事業は、事業の立ち上げと拡大のフェーズにおいてM&Aや事業譲受を実施した際ののれんの存在や、事業の成熟度及び事業サイクルの面においてエレクトロニクス事業とは異なる性質を有するものであり、かかる資本効率のみの観点から単純比較することはできません。加えて、EBITDAマージンなどではエレクトロニクス事業や全社事業を上回る事業年度もございます。


    また、当社の医薬品製造販売、CDMOはいずれも多額の投資を必要とする上、成功確度の見通しが難しい創薬事業ではなく、当社に対し確実な売上・利益貢献をしております。


    こうした点を踏まえ、当社取締役会としては、医療・医薬品事業は、当社経営の一翼を担う重要な事業であると認識しております。


    なお、医療・医薬品事業では、事業の立ち上げ・拡大の際のM&Aや事業譲受によるのれんが存在するため、会計上は減損が発生する形となっておりますが、この点を大きく上回る上記のような事業価値が存在しております。このように、医療・医薬品事業は、断じて当社の「企業価値を毀損」するものではなく、「失敗」などと結論付けられるものではありません。現に、2026年3月期は医療・医薬品事業が過去最高の売上・利益となる増収・増益の業績予想となっており、着実に成長し業績に貢献しています。その結果、エレクトロニクス事業は為替の影響もあり減益の見通しですが、医療・医薬品事業の成長により、全社では233億円(前期比105%超)の過去最高益を見込んでおります。


    なお、医療・医薬品事業への参入については、取締役会において十分な審議をした上で決議しております。また、医療・医薬品事業への参入のための定款変更については、2017年の定時株主総会において株主の皆様のご承認もいただいております。このように、医療・医薬品事業への参入にあたっての意思決定プロセスにも何ら問題はないと考えております。


    (4)タイ現地法人の不祥事対応

    本株主提案が指摘する事案に関し、当社が実施した調査結果からは、(i)当社グループの旧タイ現地法人(現在清算済み)において、大木氏の同社役員在任当時、株主総会に出席していない元当社関係者A氏(旧タイ現地法人の当時の株主名簿上、発行済株式数30,000株のうち1株の保有株主)について、出席した旨の議事録が作成されていたこと、(ii)かかる出席した旨の記載のある記録をタイ政府に提出したことを理由に、大木氏に対する逮捕状がタイにて2021年3月に発付されていたこと、及び(iii)2024年、タイの裁判所より大木氏に対して有罪判決が下されたことは認識しております。

    なお、A氏は、旧タイ現地法人及び当社を被告としてタイの裁判所に民事訴訟を提起しており、自らが真の株主であるとの主張のもと、旧タイ現地法人の株主総会議事録の不備を理由として、旧タイ現地法人の株主総会決議の効力を争い、損害賠償の請求を行っていましたが、2021年、一審においてA氏の請求は棄却され、その後控訴されたものの、A氏の敗訴判決が確定しております。判決では、A氏は当社の代理人として無償で株主となっていたため、自己が真の株主であるとのA氏の主張は認められず、A氏の損害も発生していない旨の認定がされております。


    本株主提案においては、当社が2021年に逮捕状の存在を認知したにもかかわらず有効な対策を取らなかったとご主張されておりますが、当社としては、逮捕状の発付をもって大木氏の有罪が確定するものではないことから、事実確認及び再発防止策の徹底等を優先し、直ちに大木氏の解任などの処分までは行わず、その後、大木氏は2022年6月をもって任期満了により当社監査役を退任となりました。


    当社は、今後同様の事態が生じないよう、リスク事案発生時における取締役会への報告体制(透明性)の強化、対応方針の明確化を徹底しております。加えて、旧タイ現地法人は、当社グループ内における人員・売上・利益の規模が僅少であり、モニタリングの深度において他の主要子会社と比べ差があったことなどに鑑みて、今後他の非主要子会社において同様の事態が発生することを防止するため、グループ全体のリスク評価と対応の強化、教育・啓発の強化及び継続的な内部統制・子会社管理の強化といった対応を行っております。当社としては、今後もこれらの再発防止策を継続的に強化する予定です。

    当社の元監査役及び旧現地法人での業務に関しかかる事案が生じたことについては厳粛に受け止めておりますが、上記のような再発防止策を実行していることからも、当社取締役会としては、佐藤氏が本件に関して何ら有効な対策を取らなかったとのご指摘は妥当ではないものと考えております。