事業報告(2024年4月1日から2025年3月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過およびその成果

当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日)におけるわが国の経済は、企業収益や雇用・所得環境の改善を背景に、緩やかな回復基調が継続されました。一方で、原材料価格の高止まり、円安とエネルギーコスト上昇等による物価高は依然として続いており、米国の政権交代による政策動向の変化が各国の政治、経済に及ぼす影響は現時点では不透明であり、為替相場の変動や不安定な国際情勢の継続等により、景気の先行きは不透明な状況が継続しております。

このような状況の中、当社グループは、競争力強化と顧客満足の向上および製品の販売価格改定に取り組んでまいりました。

この結果、当連結会計年度の業績は、製品の販売価格改定が一定程度進捗したことおよび販売活動を強化したこと等により、売上高が468億6百万円で前年度比28億8千4百万円の増収(6.6%増)、営業利益は13億9百万円で、前年度比5億4千万円の増益(70.3%増)となりました。経常利益は7億5百万円で、米国連結子会社である東京インキ株式会社U.S.A.における出資金運用損8億円の計上および外貨建資産の為替評価等の影響により、前年度比2億8千1百万円の減益(28.5%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は11億8千万円で、政策保有株式の縮減に伴う投資有価証券売却益8億3千3百万円の計上および2023年12月に連結子会社である荒川塗料工業株式会社で発生した火災に伴う受取保険金1億8千5百万円の計上等により、前年度比2億9千8百万円の増益(33.9%増)となりました。

今後のわが国の経済については、緩やかな回復基調が継続すると見込んでおります。一方で、米国の政策動向による経済への下振れリスクに対する警戒感が強まっており、また、物価高の長期化による消費マインド自体の低下や、不安定な国際情勢等の継続による当社グループの業績への影響が不透明であるため、引き続き市況を注視しつつ、持続的成長と中長期的な企業価値向上に努めてまいります。

セグメント別概況

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オフセットインキおよび印刷用材料は、産業構造の変化に伴う市場縮小が継続する中、選択と集中を進めることで利益確保に努めてまいりました。前年度に実施した製品販売価格改定効果に加え、引き続き、重要顧客への販売強化を行った結果、売上高・利益ともに前年度に比べ増加いたしました。

グラビアインキは、安定した食品パッケージ市場において、印刷物に各種機能を付与する機能性製品の拡販を中心に、利益改善に努めてまいりました。前年度に実施した製品販売価格改定効果および機能性製品が伸長したことに加え、第3四半期より株式会社T&K TOKAから承継した製品の販売が本格化した結果、前年度に比べ売上高は増加し、利益は改善いたしました。なお、株式会社T&K TOKAからのグラビアインキ関連事業の承継は計画通り、2025年3月31日付にて完了いたしました。

インクジェットインクは、産業用途市場が堅調に推移する中、受託製品と自社製品の両輪により利益拡大に努めてまいりました。海外向けの受託製品および建材用途等の自社製品が堅調に推移した結果、売上高・利益ともに前年度に比べ増加いたしました。

この結果、インキ事業の当連結会計年度の業績は、前年度に比べ増収となり、利益は損失を計上した前年度から黒字転換いたしました。

この結果、インキ事業の当連結会計年度の業績は、前年度に比べ増収増益になりました。

今後のインキ事業につきまして、オフセットインキ市場の縮小が継続することが考えられますので、より一層の選択と集中により、事業構造の改革を進めてまいります。グラビアインキおよびインクジェットインク市場は堅調に推移することが見込まれますので、利益拡大に向けた製品開発および販売活動強化に努めてまいります。事業全体を通じて、持続可能な社会の実現に向け、環境負荷低減もしくは社会貢献に寄与する製品(以下、サステナブル対応製品)の開発・拡販を進めてまいります。

オフセットインキ
グラビアインキ
インクジェットインク

TOPICS

環境負荷低減製品>ライスインキ/高バイオマスオフ輪インキ

社会貢献製品>抗菌・抗カビ・抗ウイルス製品

オフセットインキ、グラビアインキ、インクジェットインクを中心に、地球環境に配慮した高機能・高品質な印刷インキを提供しています。

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化成品事業は、プラスチック用着色剤・機能性付与剤であるマスターバッチおよび樹脂コンパウンドを中心に事業を展開し、利益改善に努めてまいりました。

自社製品は、国内自動車生産台数の減少影響が継続する中、自動車用途向け製品の販売活動を強化した結果、前年度に比べ増加いたしました。また、プラスチック製消耗材市場の縮小が継続する中、市況が大きく落ち込んだ前年度に比べ、フィルムおよび容器用途製品等が増加した結果、売上高は増加いたしました。

受託製品は、前年度に比べ、受注数量が増加したことに加え、引き続き光学用途製品が好調に推移した結果、売上高は増加いたしました。

この結果、化成品事業の当連結会計年度の業績は、前年度に実施した製品販売価格改定効果に加え、海外事業におけるタイ国の業績が堅調に推移したこともあり、前年度に比べ増収増益になりました。

今後の化成品事業につきまして、国内におけるプラスチック製消耗材市場縮小の継続が考えられます。そのため、国内の事業領域を周辺領域まで拡げることに加え、ASEAN地域の成長に合わせた海外事業拡大により、利益改善に努めてまいります。また持続可能な社会の実現に向け、プラスチックリサイクルに貢献できるサステナブル対応製品の開発・拡販を進めてまいります。

プラスチック用着色剤
プラスチック用機能性添加剤
樹脂コンパウンド
洗浄剤
パウダーレジン
その他機能性製品

TOPICS

環境負荷低減製品>生分解性樹脂用マスターバッチ/パウダーレジン

さまざまな生活シーンで活用されているプラスチック部品・製品に、マスターバッチをはじめとする色彩や機能を付与する各種高機能製品を提供しています。

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幅広い分野にプラスチック製品を提供している加工品事業は、回転異形成形技術を駆使したネトロン®(注)、一軸延伸フィルム、土木資材、農業資材を中心に利益拡大に努めてまいりました。

ネトロン®の売上高は、製品販売価格改定効果があったものの、第2四半期に発生した原材料メーカーのプラント事故の影響に加え、顧客におけるBCP対策による受注減等の影響により、前年度に比べ減少いたしました。また、利益は売上高の減少に加え、生産体制の再構築に伴う一時的な経費増加も影響し、減少いたしました。

一軸延伸フィルムの売上高は、産業用途フィルムの増加および製品販売価格改定効果等により、前年度に比べ増加いたしました。一方、利益は在庫の受払調整の影響等により減少いたしました。

土木資材の売上高は、引き続き、当社主軸製品であるジオセル各工法が防災・減災用途および基礎地盤用途等で需要が高まり、前年度に比べ増加したものの、一般土木資材が低調であった影響が大きく、減少いたしました。一方、利益は高付加価値品が伸長した影響等により、増加いたしました。

農業資材の売上高は、燃油使用量削減に寄与する保温資材等の高機能製品が減少したものの、一般農業資材が増加したことにより、前年度に比べ増加いたしました。一方、利益は前年度並みとなりました。

この結果、加工品事業の当連結会計年度の業績は、ネトロン®の影響が大きく、前年度に比べ減収減益になりました。

今後の加工品事業につきまして、ネトロン®は、市場成長が期待できる水処理用資材を中心に業績の改善に努めてまいります。一軸延伸フィルムは、食品包装用途と産業用途を中心に利益の向上を目指してまいります。土木資材は、引き続き国が推進している「国土強靭化計画」に貢献できる防災・減災用途製品を中心に更なる成長を目指してまいります。農業資材は、保温資材等の高機能製品の製品開発・拡販により、利益の向上を目指してまいります。また、事業全体を通じて、持続可能な社会の実現に向けたサステナブル対応製品の開発・拡販を進めてまいります。

(注)ネトロン®は三井化学株式会社の登録商標です。

包装資材
工業・農業資材
土木・環境資材

TOPICS

環境負荷低減製品社会貢献製品>多層断熱被覆資材(布団資材)ジオセル/各工法・周辺部材

多層断熱被覆資材(布団資材)エナジーキーパー®の普及拡大を図る取り組みが「みどりの食料システム法」に基づき農林水産省の認定を受けました。

特徴ある加工技術を駆使したプラスチックネットや一軸延伸フィルムを中心に、さまざまな産業用途の包装資材、工業・農業資材、土木・環境資材を提供しています。

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不動産賃貸事業は、賃貸戸建て住宅「パレットパークタウン」および本社ビル賃貸オフィスの稼働が堅調に推移いたしました。

この結果、不動産賃貸事業の当連結会計年度の業績は、前年度並みとなりました。

賃貸戸建て住宅「パレットパークタウン」
賃貸オフィス「TIC王子ビル」

当社グループは、賃貸オフィスビル、ファミリー向けの賃貸戸建て住宅を保有しており、皆様に快適なオフィス環境、プライベート空間を提供しています。

対処すべき課題

①長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」

当社グループは、2023年12月に創立100周年を迎えたタイミングに、2030年に目指す姿として「持続可能な価値を提供し続ける企業グループへ」を掲げた長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」を策定いたしました。その際、当社グループは、これからの持続可能な社会のために何ができるのかを問い直し、パーパス(存在意義)を明文化いたしました。

▶パーパス(存在意義)『「伝える」「彩る」「守る」ことで、豊かな未来を実現する』

長期ビジョンの実現に向け、当社グループは、優先的に対処すべき課題として、マテリアリティ(重要課題)を決定し、その達成のためのアプローチを設定しております。

詳細につきましては、当社ホームページもしくは下記URLよりご覧ください。

https://www.tokyoink.co.jp/about/long_term_vision/

具体的な施策や指標については、期間中の中期経営計画の中で決定し推進してまいります。

②中期経営計画「TOKYOink 2024」振り返り

最終年度である2024年度の営業利益目標20億円は達成できませんでしたが、製品販売価格改定の進捗と高付加価値製品の伸長により、2023年度以降利益は回復してきております。

セグメント利益 計画達成状況(単位:百万円)

営業利益とROE推移

③中期経営計画「TOKYOink 2027」策定

前中期経営計画「TOKYOink 2024」の結果を踏まえ、長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」実現に向け、「変革の実践」と位置付けた、2025年度を初年度とする3カ年計画である中期経営計画「TOKYOink 2027」を策定いたしました。高付加価値品への製品ポートフォリオのシフト、高効率化による収益性の向上により、目標達成を目指してまいります。

イ.事業ポートフォリオ変革

既存事業内での高付加価値製品、サステナブル対応製品の構成比アップ、周辺領域探索による事業領域拡大、生産体制の再構築、効率化・自動化の推進による高収益化、新規事業探索から新たな事業の創出等の取り組みを進めてまいります。

ロ.主要3事業の戦略と目標

インキ事業

オフセットインキでの選択と集中による利益の最大化、グラビアインキ、インクジェットインクでの機能性製品の伸長により事業内のポートフォリオを変革し、利益拡大を目指してまいります。

化成品事業

機能性包材用途を中心とした自社製品の販売強化とASEAN地域での販売促進により収益力改善を目指してまいります。

加工品事業

市場成長が期待される土木資材の事業規模の拡大を軸に、ネトロン®、一軸延伸フィルム、農業資材における高機能製品開発・拡販により収益拡大を目指してまいります。

<サステナブル対応製品>

環境負荷低減、社会課題解決に寄与できる高付加価値製品であるサステナブル対応製品の伸長により収益拡大を目指してまいります。

サステナブル対応製品定義

・バイオマス素材の積極的な採用や、生分解、リサイクルに対応した設計を盛り込んだ、環境に配慮した製品

・従来型の工法ではなく、環境に配慮した工法に向けた製品

・人々の生活や財産を守り、社会課題の積極的な解決に貢献する製品

ハ.資本政策・財務戦略

ニ.サステナビリティへの取り組み

E(環境)

気候変動対応を重要な社会的責任と捉え、温室効果ガス(GHG)排出量の削減を実施いたします。

S(社会)

<人権と人的資本>

パーパスの浸透と多様性の確保により、人的資本を高めるよう努めてまいります。

<健康経営>

活気ある職場作りに向け、従業員の健康への取り組みを実施いたします。

<労働安全衛生>

従業員を守るための安全・安心な職場の実現を目指してまいります。

強度率:労働災害の程度を表す指標

度数率:労働災害による死傷者数を表す指標

<社会貢献活動>

社会貢献活動を通じて、地域社会との関係構築や従業員育成を図ってまいります。

G(ガバナンス)

<ガバナンス体制の強化>

企業価値の向上、競争力の強化に向けて、ガバナンス体制を強化してまいります。

ホ.モニタリング体制とKPIマネジメント

▶中期経営計画「TOKYOink 2027」の詳細につきましては、当社ホームページもしくは下記URLよりご覧ください。

https://www.tokyoink.co.jp/ir/management/mid-termplan/

連結計算書類