事業報告(2024年4月1日から2025年3月31日まで)
事業の経過及びその成果並びに対処すべき課題
事業の経過及びその成果




当期の我が国経済は、物価上昇や世界的な需要低迷を背景に一部で足踏みが見られるものの、賃金、雇用情勢の改善等による個人消費や企業の生産活動を中心に持ち直しの傾向が継続しました。海外経済は、米国では、物価高や金融引き締めによる影響があるものの、堅調な個人消費を背景に景気は底堅く推移しました。欧州では製造業や建設業の低迷は継続しておりますが、サービス業を中心に景気は緩やかな回復を辿りました。中国では不動産市場の低迷の継続や個人消費の伸び悩み等により、景気回復のペースは鈍化しました。
このような中、当社はKOBELCOグループ中期経営計画(2024~2026年度)に掲げた「稼ぐ力の強化」と「成長追求」に取り組むとともに、物価上昇に対する価格転嫁の推進や自助努力によるコストアップの抑制に取り組んでまいりました。
この結果、当期の売上高は、前期比118億円増収の2兆5,550億円となり、営業利益は、鉄鋼アルミや素形材での物価上昇分の価格転嫁の進展や機械・エンジニアリングでの既受注案件の進捗による売上高の増加等があったものの、固定費を中心としたコストの増加に加え、電力での燃料費調整の時期ずれによる増益影響の縮小や売電価格に関する一過性の増益影響(売電価格の指標となる石炭の輸入貿易統計価格と当社購入価格の差異)の縮小等により、前期比279億円減益の1,587億円となりました。経常利益は、前期に計上した自動車向けアルミパネル事業の再構築に伴う持分法による投資損失の解消や、建設機械における欧州でのエンジン認証に関する補償金収入の増加等があったものの、営業利益の減益により、前期比37億円減益の1,571億円となりました。特別損益は、関西熱化学(株)の子会社化に伴う負ののれん発生益の計上があったものの、建設機械等で固定資産の減損損失を計上したこと等から161億円の損失となりましたが、税金費用の減少等により、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比106億円増益の1,201億円となりました。
当社は、配当につきましては、継続的かつ安定的に実施していくことを基本としつつ、財政状態、業績の動向、先行きの資金需要等を総合的に考慮して決定することとしております。これに基づき当期の期末配当につきましては、1株につき55円とすることを決議いたしました。これにより年間の配当は、先にお支払いいたしました中間配当と合わせて、1株につき100円となります。
事業別の事業の経過及びその成果
当社グループの事業別の事業の経過及びその成果は次のとおりであります。

- (注)粗鋼には高砂製作所の電炉の生産数量を含めております。
●鉄鋼
鋼材の販売数量は、自動車向けの需要が減少した一方、厚板工場・仕上圧延機の更新完了による増加等から、前期並となりました。販売価格は、物価上昇分の価格転嫁は進展したものの、原料価格の下落の影響等により、前期並となりました。
この結果、売上高は、前期比2.6%増の9,144億円となりました。経常利益は、米国関係会社の業績の改善等があったものの、自動車向け販売数量の減少等の販売構成の悪化や固定費を中心としたコストの増加等により、前期比149億円減益の243億円となりました。
●アルミ板
アルミ板の販売数量は、自動車向けの需要が減少したこと等により、前期を下回りました。販売価格は、地金価格が上昇したこと等により、前期を上回りました。
この結果、売上高は、前期比5.6%増の2,017億円となりました。経常損益は、ハードディスクドライブ向けの販売数量の増加に加えて、前期に計上した自動車向けアルミパネル事業の再構築に伴う持分法による投資損失の段差により、前期比224億円改善の6億円の損失となりました。
鉄鋼アルミ全体では、売上高は、前期比3.1%増の1兆1,161億円となり、経常利益は、前期比75億円増益の236億円となりました。

素形材の販売数量は、自動車向け需要を取り込んだ銅板で、前期を上回りました。一方、中国での一般産業向け需要の減少により、チタンは前期を下回りました。
この結果、売上高は、前期比6.4%増の3,171億円となり、経常利益は、価格転嫁の進展等により、前期比74億円増益の107億円となりました。
溶接材料の販売数量は、自動車・建築向け需要の減少、東南アジアでの需要減少等により前期を下回りました。販売価格は、価格転嫁の進展等により、前期を上回りました。
この結果、売上高は、前期並の939億円となり、経常利益は、販売数量は減少したものの、価格転嫁の進展等により、前期比3億円増益の52億円となりました。

受注高は、エネルギー・化学分野を中心に需要が堅調に推移したものの、前期における大型案件の受注の反動等により、前期比4.1%減の2,625億円となり、受注残高は2,544億円となりました。
売上高は、既受注案件の進捗やサービス案件の増加により、前期比13.1%増の2,651億円となり、経常利益は、本体・サービス売上が堅調に推移したこと等から、前期比29億円増益の325億円となりました。

受注高は、廃棄物処理関連事業で複数の大型案件を受注した前期に比べ、23.1%減の1,647億円となり、受注残高は4,419億円となりました。
売上高は、既受注案件の進捗等により、前期比2.5%増の1,748億円となり、経常利益は、前期比36億円増益の161億円となりました。
油圧ショベルの販売台数は、金利の高止まり等により、北米、欧州の需要が低迷したこと等から、前期を下回りました。一方、クローラクレーンの販売台数は、エンジン認証問題対応の進展等で北米を中心に増加したことにより、前期を上回りました。
この結果、売上高は、前期比4.0%減の3,880億円となり、経常利益は、固定費を中心としたコストアップがあったものの、価格転嫁の進展やエンジン認証問題に関する補償金収入等により、前期比96億円増益の187億円となりました。
販売電力量は、前期を下回りました。販売電力単価は発電用石炭価格の変動に伴い前期比で下落しました。
この結果、売上高は、前期比18.1%減の2,588億円となり、経常利益は、神戸発電所3・4号機における燃料費調整の時期ずれによる増益影響の縮小や神戸発電所1~4号機における売電価格に関する一過性の増益影響の縮小等により、前期比334億円減益の523億円となりました。
売上高は、前期比17.4%減の89億円となり、経常利益は、前期比9億円減益の38億円となりました。
- (注)1.
- 受注高・受注残高には、当社グループ間での受注の額を含んでおります。
- (注)2.
- 当社グループの売上高には、調整額△679億円を含んでおります。なお、売上高構成比は、調整額を除いた各事業の売上高の合計をもとに算出しております。
対処すべき課題等
<KOBELCOグループ中期経営計画(2024~2026年度)>
昨年5月に公表した「KOBELCOグループ中期経営計画(2024~2026年度)」では、「“稼ぐ力の強化”と“成長追求”」、「カーボンニュートラル(CN)への挑戦」の2つを最重要課題といたしました。
「稼ぐ力の強化」により事業の土台をさらに強固なものとするとともに、経営資源を将来の成長機会に重点的に投入することで、安定的にROIC6%以上、将来の姿としてROIC8%以上を確保し、持続的に成長する企業グループを目指します。
「CNへの挑戦」については、当社グループの保有する多様な技術により、CO₂排出削減貢献と、新たな事業機会の創出を積極的に推進してまいります。また、当社グループの生産プロセスについても、2030年で2013年度比30~40%のCO₂を削減し、2050年でのCN実現に挑戦してまいります。
これらを実現・加速させる手段・ドライバーとして、「KOBELCO-X(コベルコ エックス)」と総称する様々な「X=変革・かけ算」に取り組み、当社グループ全体でサステナビリティ経営の強化、魅力ある企業への変革を果たし「未来に挑戦できる事業体」の確立を目指してまいります。
<当社グループを取り巻く事業環境>
「KOBELCOグループ中期経営計画(2024~2026年度)」策定時点では、当社グループを取り巻く事業環境は、「持続可能な社会に向けた要請の高まり」や、「原材料調達コストの高騰」、「地産地消へ向かうサプライチェーンの再構築」、「国内人口減少に伴う国内需要逓減や働き手不足の顕在化」、「デジタル技術の急激な進歩」等の変化が起こることを想定していました。足もとにおいては、特に米国政権交代に伴う関税政策やエネルギー政策の変更により、サプライチェーンやCNの潮流に想定以上に急激な変化が生じています。一方で、時間軸に変化はあるものの、長期的な事業環境の想定に大きな変化はなく、引き続き、「“稼ぐ力の強化”と“成長追求”」、「CNへの挑戦」の2つの最重要課題に取り組んでまいります。

<4つの重点施策>
最重要課題である「“稼ぐ力の強化”と“成長追求”」、「CNへの挑戦」を実現するために、「将来の外部環境を見据えた“事業基盤の再整備”」、「既存事業における“新たな需要の捕捉”、“事業の幅の拡大”による成長」、「生産プロセスのCO₂削減」、「変革を通じたサステナビリティ経営の強化」の4つの重点施策を着実に実行してまいります。
「将来の外部環境を見据えた“事業基盤の再整備”」については、収益化に時間を要しているアルミ板分野の自動車パネル事業において、中国鉄鋼業最大手の中国宝武鋼鉄集団有限公司が過半出資する宝武鋁業科技有限公司と、アルミパネルの製造・販売にかかる合弁会社を設立し中国国内における事業競争力の強化に着手しました。アルミ素形材事業及び建設機械事業においては、価格改善やコストダウン等のベース収益改善の取組みに注力し収益力強化に取り組んでまいります。加えて、鉄鋼や溶接等その他の素材系事業においても、国内需要の縮小や、新興国での需要の増加、CN対応等、グローバルでの競争力維持への取組みを検討してまいります。
「既存事業における“新たな需要の捕捉”、“事業の幅の拡大”による成長」については、エネルギー転換等に関連した事業拡大や新規需要を成長の機会と捉え、機械やエンジニアリング事業を中心に、既存製品の拡販強化に加えて、これまでの事業活動で培った情報や技術・ノウハウと、DX関連技術のかけ算により、コト売りやソリューションビジネス等の新たな事業領域の拡大にも取り組んでまいります。

「生産プロセスのCO₂削減」については、電力事業において、アンモニア20%混焼の既設改修について、電力広域的運営推進機関による長期脱炭素電源オークションへ応札し、落札されるなど、更なる高効率化・低炭素化への取組みを進めています。鋼材事業では高炉へのHBI多配合等に取り組むなど、生産プロセスにおけるCO₂削減目標の達成への道筋具体化を進めてまいります。
「変革を通じたサステナビリティ経営の強化」については、AX~GXの「KOBELCO-X」の活動を通じて、事業戦略の実現を図り、サステナビリティ経営を強化してまいります。
<事業管理指標について>
当社グループは、昨年4月にグループ企業理念の実現に向けた中長期的な重要課題であるマテリアリティに関する指標及び目標を設定しています。引き続き非財務指標も含めたサステナビリティ経営に取り組み、グループ全体で企業価値向上に取り組んでまいります。
なお、「KOBELCOグループ中期経営計画(2024~2026年度)」の進捗の詳細につきましては、当社ホームページ(https://www.kobelco.co.jp)をご参照ください。
