事業報告(2024年1月1日から2024年12月31日まで)
企業集団の現況に関する事項
当事業年度の事業の概要
事業の経過及び成果
当連結会計年度における世界経済は、ロシア・ウクライナ情勢の長期化によるエネルギー資源・原材料価格の高騰や中国における不動産市場の低迷、中東地域をめぐる情勢不安などもあり先行き不透明な状況が続きました。国内経済においても、好調なインバウンド需要や個人消費の持ち直しが見られたものの、エネルギー資源・原材料価格の高騰や為替の影響による物価上昇が続き厳しい状況が継続しました。
このような状況の中、当連結会計年度は、バルブ事業において、国内市場・海外市場ともに販売量が減少したことや半導体製造装置向けが需要回復の遅れから減収となったものの、価格改定の効果や為替の影響のほか、伸銅品事業において、銅相場上昇に伴う販売価格の上昇等があったことにより、売上高の総額は前期比3.1%増の1,720億42百万円となりました。
損益面では、営業利益は、バルブ事業において、販売量の減少及び賃上げを実施したことによる人件費の増加やインフレに伴う経費の増加等はあったものの、伸銅品事業において、減耗率の低減のほか、銅相場上昇に伴い利幅を確保したこと等により、前期比3.9%増の142億20百万円となりました。経常利益は、為替差益の計上等により、前期比5.7%増の152億76百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、政策保有株式の売却による投資有価証券売却益の計上等により、前期比11.6%増の118億24百万円となりました。
事業セグメント別の概況は以下の通りです。
事業セグメント別の概況
事業セグメント別連結売上高構成

売上高構成比 81.1%

バルブ事業の外部売上高は、国内市場・海外市場ともに販売量が減少したことや半導体製造装置向けが需要回復の遅れから減収となったものの、価格改定の効果や為替の影響等により、前期比2.6%増の1,395億56百万円となりました。
営業利益は、販売量の減少のほか、賃上げを実施したことによる人件費の増加やインフレに伴う経費の増加等により、前期比1.2%減の174億19百万円となりました。
売上高構成比 17.3%

伸銅品事業の外部売上高は、業界全体の需要低迷に伴う販売量の減少はあったものの、銅相場上昇に伴う販売価格の上昇等により、前期比5.0%増の298億38百万円となりました。
営業利益は、減耗率の低減のほか、銅相場上昇に伴い利幅を確保したこと等により、前期比72.9%増の8億86百万円となりました。
売上高構成比 1.6%

その他の外部売上高は、ホテル事業が堅調に推移したこと等により、前期比5.9%増の26億47百万円となりました。
営業利益は、売上高の増加等により、前期比38.9%増の1億46百万円となりました。
直前3事業年度の財産及び損益の状況
企業集団が対処すべき課題
当社グループは、2025年2月に公表した第2期中期経営計画「SHIN Global 2027」を策定するにあたり、長期経営ビジョンにおいて定めたマテリアリティ(経営重点テーマ)の見直しを行いました。これにより、あらためて当社グループが持続的な成長を実現するためのマテリアリティとして「デジタル社会の発展への貢献」、「地球環境の保全への貢献」及び「進化によるゆたかな暮らしへの貢献」を定め、それらを支える経営基盤を確立するためのマテリアリティとして「未来をひらく人財力の強化」、「持続可能なサプライチェーンの確立」及び「攻守の効いたガバナンスの追求」を定めました。
当社グループでは、社員一人ひとりがこれらのマテリアリティを意識して事業活動に取り組むことにより、持続可能な未来の創造に貢献してまいります。
① 第2期中期経営計画の位置づけ
当社グループは、長期経営ビジョン『Beyond New Heights 2030 「流れ」を変える』の実現に向け、全社一丸となって取り組んでおります。第1期中期経営計画2024(2022~2024年度)では、コア事業と成長分野で収益を上げられる両利きの経営を推進し、投下資本収益率(ROIC)を重視し、事業基盤であるコア事業を強化するとともに半導体市場等の成長分野に対して積極的に投資を進めてまいりました。
第2期中期経営計画「SHIN Global 2027」では、「収益性と成長性の両立」を掲げ、“ROIC×ESG”経営の実現に向けて、第1期中期経営計画2024に基づいて実行した投資を着実に成果に結びつけるとともに、成長分野及び成長エリアへのさらなる投資を進めてまいります。
※長期経営ビジョン及び中期経営計画は下記URLをご参照ください。
長期経営ビジョン:https://www.kitz.co.jp/investor_ir/management-policy/m_vision/
中期経営計画:https://www.kitz.co.jp/investor_ir/management-policy/m_plan/

② 事業戦略
イ.バルブ事業
a.市場別
バルブ事業では、第1期中期経営計画2024においてターゲット市場を8つに区分し、市場を起点にした事業を展開しております。コア市場に位置付けている建築設備、石油化学、水処理及び機械装置市場では、国内外のデータセンターや都市開発、次世代エネルギー事業等の需要の高まりを背景に当社グループの中核となる事業基盤をさらに強化します。グロース市場に位置付けている半導体装置、半導体材料(フィルター)、機能性化学及び水素・脱炭素市場では、第1期中期経営計画2024に基づいて実行した投資を着実に成果に結びつけるとともに、成長市場に向けた製品開発と市場投入により、さらなる収益構造の変化を図ってまいります。


<コア市場>

<グロース市場>

b.地域別

ロ.伸銅品事業
成長分野における高付加価値製品及び新材質製品の販売拡大のほか、歩留まりの向上等の施策による原価低減を通じてさらなる収益性の向上に取り組んでまいります。
ハ.市場別ビジネスユニット(BU)制組織への移行
当社グループは更なる事業成長を目指し、2025年1月より従来の機能別組織から市場別BU制に組織改革を行いました。BU制組織のもと、製・販・技が一体となり、より顧客志向となることによって、各市場におけるお客様のニーズに素早く応え、事業戦略の遂行を加速させてまいります。各BUが管轄する各事業及び各市場については、下記をご参照ください。

③ 財務戦略・資本政策
「ROE向上」及び「PER改善」の両輪による取り組みを軸とし、「ROE向上」については、セグメント別に設定したROIC目標を達成するための戦略投資に向けて、適切なキャッシュアロケーションを実施してまいります。また、「PER改善」については、財務目標の安定的な達成及び株主還元の強化を図るとともに、サステナビリティ経営のさらなる浸透やIR戦略及び投資家との対話の強化等の非財務ファクターの拡充を通して、継続的な株主価値の向上を目指してまいります。
④ ESG戦略
当社グループは、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関わるマテリアリティに取り組み、ゆたかな地球環境と持続可能な未来を創造してまいります。
イ. 環境(E)
当社グループは、地球環境の保全を重要な使命と捉え、クリーンエネルギーを推進するとともに安全な水の安定供給を支える技術の提供に努めています。また、環境に配慮した商品の開発と事業活動を通じた環境負荷の低減に取り組んでおり、持続可能な社会の実現に寄与しています。今後も革新的な技術開発を進め、地球環境に優しい製品やソリューションを提供することにより、未来につながる価値創造を目指してまいります。
※当社グループの詳細な取り組みについては、下記URLをご参照ください。
環境:https://www.kitz.co.jp/sustainability/environment/
ロ. 社会(S)
当社グループでは、未来をひらく人財力を強化するため、人財の多様性と個々の働き方を尊重するとともに、働きがいと働きやすさの向上に取り組んでいます。すべての従業員が能力を最大限に発揮し、自ら成長を実感できる環境を整えることで、個人と会社の持続的な成長を目指します。また、多様性を力に変え、全員が活躍できる組織を築くことにより、新しい価値の創造と競争力の強化を目指してまいります。
※当社グループの詳細な取り組みについては、下記URLをご参照ください。
社会:https://www.kitz.co.jp/sustainability/social/
ハ. ガバナンス(G)
当社グループでは、公正で透明性の高い経営基盤の強化を図るとともに、成長に向けた果断な挑戦を支える攻守の効いたガバナンスの実現を目指しております。その一環として、当社は2024年3月に指名委員会等設置会社へ移行し、コーポレート・ガバナンスの強化と経営のスピード向上を図っております。
※当社グループの詳細な取り組みについては、下記URLをご参照ください。
ガバナンス:https://www.kitz.co.jp/sustainability/governance/