事業報告(自2022年4月1日 至2023年3月31日)

1)日立グループの事業の経過及びその成果

当期の業績

半導体不足や部材価格・エネルギー価格高騰の影響などにより厳しい経営環境が続きましたが、Lumada事業の拡大やパワーグリッド事業・鉄道システム事業の堅調な推移、自動車メーカーの生産量回復を受けた日立Astemo社の増収に加え、為替影響などもあり、売上収益は、10兆8,811億円となりました。Adjusted EBITAは、8,846億円となり、Adjusted EBITA率は、8.1%となりました。上場グループ会社株式の売却に伴う事業再編等利益などにより、親会社株主に帰属する当期利益は、3年連続で過去最高を更新する6,491億円となりました。
資金面でも、4,164億円のコア・フリー・キャッシュ・フロー*を計上しました。
このように、厳しい経営環境が続く中でも、収益力・キャッシュ創出力を維持できたことから、年間配当金額は、前期比20円増配の145円(中間70円、期末75円)とさせていただいたほか、約2,000億円の自己株式取得を実施しました。

*コア・フリー・キャッシュ・フローは、フリー・キャッシュ・フローから、M&Aや資産売却他にかかるキャッシュ・フローを除いた経常的なキャッシュ・フローです。

当期の施策とねらい

当期は、「デジタル」「グリーン」「イノベーション」の3つを柱に、グローバルな成長をめざす「2024中期経営計画」の初年度として、主に以下の取り組みを行い、成長モードへのシフトを推進しています。

  • DX・GX*需要の高まりに応えるデジタル事業のグローバルな成長
    DX需要がグローバルに高まっているデジタル事業の加速に向け、北米に日立デジタル社を発足しました。同社を中心に、Lumadaをはじめとする日立グループ横断でのデジタル戦略を推進しており、GX需要の高まりも受けて、日立エナジー社や日立レール社などで受注を拡大しています。
    また、成長を続けるGlobalLogic社は、日本にも拠点を設けて、その開発手法を日立の国内プロジェクトにも適用するとともに、ルーマニア及びウルグアイのデジタルエンジニアリング会社を買収し、欧州やラテンアメリカにおける新たな拠点や顧客、人財の獲得を図ることで、さらなる成長を見据えています。

    *DX:デジタルトランスフォーメーション、GX:グリーントランスフォーメーション

  • 成長を支えるグローバルリスクマネジメント
    不透明な経営環境が続く中、事業の成長とともに増大するリスクへの対応として、グローバルなリスク情報を一元的に把握するとともに、リスクに先行して対応する体制を構築しました。物価高騰や地政学リスク、大規模災害リスクなど、日立グループに影響を及ぼすリスクを把握し、優先リスクを迅速に見極めた上で、日々変化する事業環境に先行した対応を図っています。
  • オートモティブシステム事業の再編
    大変革期を迎えている自動車・二輪車業界において、日立Astemo社の持続的成長と企業価値向上を実現するため、同社株式の一部譲渡などを決定しました。この取引の実行により、同社は当社の持分法適用会社となります。日立は、新たな共同パートナーも加えて成長する同社との電動化・自動運転分野を中心とした連携を続け、ともに成長していきます。

2022年度連結決算の概要

(注)
  • (1)当社の連結計算書類は、国際財務報告基準(IFRS)に基づいて作成しています。
  • (2)Adjusted EBITAは、調整後営業利益(売上収益から、売上原価並びに販売費及び一般管理費の額を減算して算出)に、企業結合により認識した無形資産等の償却費を足し戻した上で、持分法による投資損益を加算して算出しています。
  • (3)ROICは、(税引後の調整後営業利益+持分法損益)÷投下資本×100 により算出しています。なお、税引後の調整後営業利益=調整後営業利益×(1-税金負担率)、投下資本=有利子負債+資本の部合計です。
【ご参考】部門別の業績
売上収益
Adjusted EBITA(Adjusted EBITA率)
(注)
  • (1)各部門の売上収益は、部門間内部売上収益を含んでいます。
  • (2)「売上収益」における( )内の数値は、各部門の売上収益の売上収益合計に占める割合です。
  • (3)「Adjusted EBITA(Adjusted EBITA率)」における( )内の数値は、Adjusted EBITA率です。
【ご参考】
海外売上収益の推移
地域別売上収益
(注)
  • (1)「海外売上収益の推移」における青色は海外売上収益、赤色は国内売上収益です。( )内の数値は、海外売上収益の売上収益合計に占める割合です。
  • (2)「地域別売上収益」における( )内の数値は、各地域の売上収益の売上収益合計に占める割合です。

日立グループの事業の経過及びその成果 - 部門別の状況

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為替影響に加え、Lumada事業の拡大等により、増収増益となりました。また、高成長を続けるGlobalLogic社は、前期(買収が完了した2021年7月以降)に比べ184%(米ドルベース154%)の売上収益となり、Adjusted EBITA率は21.8%となりました。

【当期の施策】

グローバルなDX需要に応え、社会やお客さまのニーズや課題に対しさまざまな協創活動を通じたデジタルソリューションの提供に取り組みました。GlobalLogic社のデジタルエンジニアリングと日立の高信頼なシステムインテグレーションなどの強みを掛け合わせた強固なLumada事業の成長基盤をベースに、グローバルでのサービス開発・提供拠点を拡充するとともに、採用・育成プログラムの強化によるデジタル人財の拡充を図ってきました。また、日立グループ全体で事業分野を横断したシナジーの創出も加速しています。

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  • *1MaaS (Mobility as a Service) : 複数の公共交通や移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービス。
  • *2EFaaS (Energy & Facility Management as a Service) : 設備の効率的な運用・管理を一括サポートするサービス。

為替影響に加え、日立エナジー社及び鉄道システム事業が堅調に推移し、増収増益となりました。日立エナジー社は、部材価格高騰の影響を受けたものの、受注の堅調な推移、収益性向上や為替影響等により、増収増益となりました。

【当期の施策】

デジタル事業との連携を中心としたOne Hitachi体制の強化などにより、IT×OT×プロダクトを融合したサービス・ソリューションの提供に取り組みました。
エネルギー分野では、送電網などの重要設備の点検・監視・最適化のためのデジタルソリューション「Lumada Inspection Insights」を開発しました。また、CO2排出量削減に貢献するカーボンニュートラルソリューションの提供を開始しました。
鉄道分野では、スマートモビリティソリューションや蓄電池ハイブリッド車両の納入などにより、クリーンかつ利便性の高い移動手段の拡大に貢献しました。

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半導体製造装置及び生化学免疫自動分析装置等の販売が増加した計測分析システム事業や、為替影響に加え、ビルサービス事業が拡大したビルシステム事業を中心に、増収増益となりました。

【当期の施策】

トータルシームレスソリューション*1とリカーリングビジネス*2の展開に注力するとともに、お客さまとの協創によるLumadaソリューションの展開を加速しました。また、北米において、プロダクト領域のマーキング事業や、OT・IT領域のシステムインテグレーション事業の強化を目的とした企業買収など、トータルシームレスソリューション展開に向けた体制強化にも取り組みました。

  • *1「プロダクト×OT×IT」を有する強みを生かして、業務間や企業間に存在するギャップをつないで課題を解決し、全体最適を実現するソリューション
  • *2アフターサービスなどを含めた継続的・循環的なサービス
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半導体不足の継続や中国におけるサプライチェーンの混乱の影響を受けたものの、為替影響や自動車メーカーの生産量の緩やかな回復により、増収増益となりました。

【当期の施策】

自動車業界におけるCASE(Connected、Autonomous、Shared&Service、Electric)の潮流を捉え、コネクテッドカー用サイバーセキュリティソリューション*の商用化に向けた取り組みをはじめ、自動運転の全周囲センシングシステムや次世代シャシーシステムの開発、電動駆動システムの供給拡大などを通じて、お客さまの企業価値向上に貢献しました。
なお、当社は、日立Astemo株式の一部譲渡を決定しました。同社は、新たな共同パートナーを迎え、さらなる成長を実現していきます。

  • *インターネットとつながり、ソフトウェアの更新など様々なサービスを受けることができる自動車において、サイバー攻撃をリアルタイムで監視し、被害を最小限に抑制するシステム

2022年8月23日付で、日立建機株式の一部売却が完了し、同社は当社の持分法適用会社となったことから、減収減益となりました。

原材料価格高騰による価格スライドや為替影響があったものの、2023年1月5日付で、日立金属株式の売却が完了し、同社は当社のグループ会社ではなくなったことから、減収となりました。一方、利益面では、コスト削減施策等により増益となりました。

2)日立グループの事業のめざす方向性

日立は創業以来、「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」ことを企業理念としており、社会インフラを支える技術・製品の開発によって社会が直面する課題を解決してきました。
「2024中期経営計画」においても、データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現して人々の幸せを支えることをめざしています。「デジタル」「グリーン」「イノベーション」の3つを柱とし、グループ一体となったOne Hitachiでのグローバルな成長により、めざす社会を実現すべく、以下の施策に注力しています。

  • Lumadaの価値協創サイクルの強化と展開

    お客さまの経営課題を理解した上で、その解決方法を設計・実装し、運用・保守するとともに次の課題解決に取り組むという、Lumadaにおけるお客さまとの価値協創サイクルを強化しています。DX・GX需要の高まりも追い風に、エネルギーや交通、産業など、日立グループのあらゆる事業と連携して、Lumadaソリューションを展開していきます。
  • 環境課題解決のイノベーターをめざして

    日立は、ステークホルダーとの協創による社会イノベーション事業を通じて、環境課題の解決と人々の生活の質の向上の両立に取り組んでいます。
    特に脱炭素化に向けた取り組みを加速しており、環境長期目標「日立環境イノベーション2050」では、2030年度までに日立の事業所での、2050年度までにバリューチェーン全体でのカーボンニュートラルを目標としています。この実現に向けて、日立におけるCO2排出削減は目標を上回るペースで進捗しており、エネルギー消費量の削減や再生可能エネルギーの活用等によって削減をさらに推進するとともに、環境に配慮した効率的な製品によるソリューションを提供してお客さまのCO2排出量削減を支援していきます。
  • 成長に向けたイノベーションの創生

    日立は、グローバルな事業成長へ向けてイノベーション創生を推進しており、先端研究を含めた研究開発投資に加え、スタートアップ企業との協業のためのコーポレートベンチャリング投資も拡大を図っています。社会やお客さまの課題を探索し、その課題解決に向けたイノベーションを創生していくことで、次世代まで続く持続的な成長を実現していきます。

    これらにより、資源価格高騰や世界的なインフレ継続など不安定な経営環境でも安定してキャッシュを創出できるよう、事業の成長を図るとともに、拠点統廃合等の合理化推進によるコスト構造改革にも取り組んでいきます。キャッシュ創出力を高める一方で、成長に必要な投資は、厳選して迅速に実行するとともに、株主の皆さまへの還元も安定的に実施していきます。

日立のESG(環境、社会、ガバナンス)の取り組み

日立は、「2024中期経営計画」でめざすサステナブルな社会の実現のため、様々なESGの取り組みを行っています。

連結計算書類

計算書類