事業報告(2023年4月1日から2024年3月31日まで)
当社グループ(企業集団)の現況に関する事項
事業の経過および成果
2023年度の世界経済は、総じて、緩やかに減速しました。イスラエル・パレスチナ情勢やウクライナ情勢などの地政学リスクに加え、欧米を中心とした金融引き締めが下押ししました。一方、日本経済は、緩やかに持ち直しました。個人消費を中心に、物価高によるマイナス影響があったものの、設備投資が堅調に推移したほか、インバウンド需要が回復したことなどが背景となります。
当社は2022年度から持株会社と事業会社からなる新しいグループ体制における3カ年の中期計画を実行しています。このような経営環境のもと、同戦略の2年目となる2023年度は、中期経営指標(KGI)として掲げた「累積営業キャッシュ・フロー2兆円、ROE(株主資本利益率)10%以上、累積営業利益1.5兆円」の達成に向けて、競争力の徹底強化を推進し、各事業におけるキャッシュ・フロー重視経営の定着と成長領域での事業基盤の構築を進めてきました。 重点投資領域と定めた車載電池事業では、パナソニック エナジー㈱が、ゼロエミッションモビリティとインフラソリューションを製造するノルウェーのHexagon Purus ASAと、北米における商用車向け車載電池供給契約を2023年4月に締結し、また、マツダ㈱および㈱SUBARUとそれぞれ中長期的パートナーシップの構築に向けた協議を開始し、その結果2024年3月に、車載用円筒形リチウムイオン電池供給につき、マツダ㈱とは供給に向けた合意書を、㈱SUBARUとは供給に関する協業基本契約を締結するなど、顧客基盤の拡大を図ってきました。 さらに投資領域に定めたサプライチェーンマネジメント(SCM)ソフトウェア事業(以下、「SCMソフトウェア事業」)では、パナソニック コネクト㈱の子会社であるBlue Yonder Holding, Inc.(以下、「Blue Yonder」)が、米国のOne Network Enterprises, Inc.を買収する契約を2024年3月に締結するなど、成長に向けた事業変革を行ってきました。
また、当社は各事業の成長性を見極め、ベストオーナーの視点に基づく事業ポートフォリオの見直しを実施しており、2024年3月には、当社とApollo Global Management, Inc. をはじめとするアポロ・グループは、パナソニック オートモーティブシステムズ㈱(以下、「PAS」)の事業に関して両社が共同パートナーになることを目的に、PASの株式の譲渡に関する株式譲渡契約および株主間契約を締結しました。
当年度の連結売上高は、8兆4,964億円(前年度比1%増)となりました。インダストリー・エナジーが減収となりましたが、オートモーティブ・コネクトの販売増に加え、為替換算の影響もあり、増収となりました。
営業利益は、3,610億円(前年度比25%増)、税引前利益は4,252億円(前年度比34%増)となりました。戦略投資などの固定費の増加や原材料高騰の影響はありましたが、価格改定・合理化の進捗や為替の影響に加え、米国IRA(インフレ抑制法)に係る補助金(以下、「米国IRA補助金」)の計上などにより、増益となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期純利益は、上記に加え、パナソニック液晶ディスプレイ㈱の解散(特別清算)および同社に対する債権放棄を決議したことに伴う法人所得税費用の減少があったことから、4,440億円(前年度比67%増)と増益となりました。
セグメント別の状況
当社グループは、経営管理上、事業の成果を「くらし事業」「オートモーティブ」「コネクト」「インダストリー」「エナジー」の5つの報告セグメントに区分して評価、開示しております。
- 記載金額は、億円未満を、前年度比は小数点以下第1位を、利益率は小数点以下第2位を、それぞれ四捨五入して表示しております。
- 売上高および営業利益の前年度比は、前年度のセグメント情報を当年度末の形態に合わせ、組み替えて算出しております。
- 各セグメントの売上高には、セグメント間の取引が含まれております。
- 「その他」は、エンターテインメント&コミュニケーション、ハウジング、原材料の販売等が含まれております。
- 「消去・調整」には、セグメント業績の管理上、特定のセグメントに帰属しない損益や、連結会計上の調整およびセグメント間の内部取引消去が含まれております。
対処すべき課題
2024年度の世界経済は、先行きの見通しにくい状況が続きます。イスラエル・パレスチナ情勢やウクライナ情勢などの地政学リスクに加え、欧米を中心に、これまでの金融引き締めによる実体経済への影響が懸念されます。日本経済においては、緩やかな持ち直しが見込まれます。地政学リスクなどの懸念材料はあるものの、設備投資需要が堅調に推移し、実質賃金の改善を背景に個人消費も持ち直すことが期待されます。
このような経営環境のもと、当社は2022年4月から取り組む中期計画の最終年度として、ROE(株主資本利益率)向上に資する取り組みに注力します。特に、投資領域と定めた車載電池・空質空調・SCMソフトウェアの3事業について、事業基盤をより強固にするために収益性の向上に取り組んでいます。車載電池事業では資本収益性の改善と顧客需要に基づき柔軟かつ慎重に投資戦略を決定してまいります。 空質空調事業では欧州のヒートポンプ式温水給湯暖房機(A2W)の需要回復に備えた基盤の強化、SCMソフトウェア事業ではBlue Yonderが進める改革を継続推進してまいります。また、人的資本経営や競争力強化のスピードを加速する取り組み(現場革新活動・PXなど)によるグループ全体の経営基盤強化も進めています。加えて、各事業の成長性を見極め、資本収益性(ROIC)に基づいて厳格に管理し、次期中期計画に向けて成長性と収益性を軸に事業ポートフォリオ改革に取り組んでまいります。これらの活動を通して、中長期的に収益成長を果たすグループへと変革してまいります。