事業報告(2023年4月1日から2024年3月31日まで)
企業集団の現況に関する事項
事業の経過及びその成果
当連結会計年度における世界経済は、北米では堅調に推移しているものの、欧州及び中国において経済減速がみられることに加え、中東情勢の緊張も影響し、減速感が強まりました。また、為替レートは、対米ドル及び対ユーロを中心に円安傾向が継続いたしました。
当社の連結業績に影響を与えるエレクトロニクス市場におきましては、最終需要の低迷が続き、ICT(情報通信技術)関連製品の生産動向は、前期と比べて低調に推移いたしました。中国市場におけるスマートフォンの生産台数は、第3四半期以降において前期を上回る水準で推移いたしました。一方、ノートパソコンやタブレット端末の需要は減少するとともに、データセンター向けニアライン用HDD(ハードディスクドライブ)の需要も大幅に減少いたしました。また、産業機器市場では、設備投資需要全般が低調に推移いたしました。自動車市場においては、xEV(電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車等の電動車)等の生産台数は前期を上回りましたが、一部地域での部品在庫調整が長引き、期初に想定していた部品需要を下回る結果となりました。
これらの結果、当連結会計年度における当社の連結業績は、次のとおりとなりました。

部門別概況
当社グループの売上高は[受動部品]、[センサ応用製品]、[磁気応用製品]及び[エナジー応用製品]の4つの報告セグメントと、これらに属さない[その他]で構成されます。セグメントを構成する事業区分別の売上高の概況は、次のとおりであります。


(単位:)

当セグメントは、コンデンサ、インダクティブデバイス、その他受動部品で構成され、製品の主な用途には自動車、産業機器、通信機器、コンピューター等があります。エネルギートランスフォーメーション、デジタルトランスフォーメーションの潮流を確実につかみ、成長を実現しております。
コンデンサ及びインダクティブデバイスは、自動車市場向けの販売が増加した一方、産業機器市場向けの販売が減少いたしました。
その他受動部品は、産業機器市場向け及びICT市場向けの販売が減少いたしました。
これらの結果、当セグメントは、産業機器市場向け及びICT市場向けの販売が低迷し減収減益となりました。
(単位:)

当セグメントは温度・圧力センサ、磁気センサ及びMEMSセンサで構成され、製品の主な用途には、通信機器、自動車、産業機器等があります。AI(人工知能)の普及等、デジタルトランスフォーメーションの進展により、様々な物理情報をデジタル化するニーズが広がっております。
自動車市場向けの販売が好調に推移いたしましたが、産業機器市場向け及びICT市場向けの販売が減少したことにより、当セグメントは増収減益となりました。
(単位:)

当セグメントはHDD用ヘッド、HDD用サスペンション及びマグネットで構成され、製品の主な用途には、データセンター用HDDストレージ、コンピューター周辺機器、自動車等があります。大容量ストレージ時代のニーズに応える先進技術を提供しております。
HDD用ヘッド及びHDD用サスペンションは、HDD市場の停滞により前期比で減収となりましたが、前期に実施した構造改革効果により収益性が改善いたしました。
マグネットは、主に産業機器市場向けの販売が減少いたしました。
(単位:)

当セグメントはエナジーデバイス(二次電池)及び電源で構成され、製品の主な用途には通信機器、コンピューター、産業機器、自動車等があります。二次電池・電源事業を通じて持続可能な社会の実現に貢献しております。
エナジーデバイスは、主に産業機器市場向けの販売が減少いたしましたが、ICT市場向け販売数量の増加及び合理化等のコスト改善努力により増益となりました。
(単位:)

その他は、メカトロニクス(製造設備)及びスマートフォン向けカメラモジュール用マイクロアクチュエータ等で構成され、産業機器や通信機器に使用されております。
メカトロニクスは、産業機器市場向けの販売が減少いたしました。スマートフォン向けカメラモジュール用マイクロアクチュエータは、ICT市場向けの販売が増加いたしました。
《ご参考》2025年3月期の連結業績予想(2024年4月26日公表)

直前3事業年度の財産及び損益の状況







対処すべき課題
① 当社グループの中長期的な経営戦略
世界経済は、技術を含む経済安全保障を巡る覇権争いを背景に、米中間の対立が進行したことにより、分断の危機に直面しております。しかしながら、このような危機に直面してもなお、地球温暖化への対策、エネルギー安全保障等の観点から、再生可能エネルギーへのシフトは今後も継続することが予想されます。また、AI(人工知能)、メタバース(インターネット上の仮想空間)、ロボット技術、ADAS(先進運転支援システム)等の高度化・普及により、産業における省人化や効率化、都市機能の高度化といった大きな社会の変革が進行しております。 このように、デジタルトランスフォーメーション(DX)、エネルギートランスフォーメーション(EX)を含む社会の変革は、未来に向けてさらに加速していくことが予想されます。
このような中、当社グループは「創造によって文化、産業に貢献する」という社是の基で、事業を通じて社会の変革に貢献するため、新たに長期ビジョンを制定いたしました。
<長期ビジョン>

当社グループは、長期ビジョン実現のため、「変化を先んじて検知できる地位獲得」と「変化に迅速に対応できる仕組みの確立と運用」に取り組んでまいります。「変化を先んじて検知できる地位獲得」を目指し、材料、プロセス、ソフトウェア等の領域で培った強みをさらに深化させるとともに、新たな強みを探索し、電子デバイス領域でのリーディングポジションを確立するための各種施策に取り組みます。 また、「変化に迅速に対応できる仕組みの確立と運用」を目指し、獲得した「変化を先んじて検知できる地位」を活かし、未来構想力の強化と、多様で優れた人材の獲得・育成に注力することで、構想した未来を迅速かつ効率的に実現する実行力を強化いたします。これらの取り組みにより、恒常的な投資余力を確保し、最適な投資を実現することで、変化を先んじて検知できる地位をさらに高めることを目指してまいります。
② 当社グループの対処すべき課題
化石燃料に対する投資不足等の複合的な要因によるエネルギー価格の高騰や、ロシアによるウクライナ侵攻、中東情勢の緊張等により世界のエネルギー情勢はますます混迷しております。また、米中間の政治的緊張から、米国が中国への半導体製造設備や技術の輸出を規制するなど、経済分野におけるデカップリング(分断)が進行しております。この分断は、各国の重要鉱物の争奪戦を激化させるなど、サプライチェーンに対しても大きな影響を及ぼす恐れがあります。
しかしながら、このような社会構造・産業構造の変化の中にあっても、エレクトロニクス市場において、EXやDXの潮流は拡大し、当社グループの事業領域に新たな市場の創造をもたらすことも見込まれます。例えば、EXにおいては再生可能エネルギーや電気自動車の普及、DXにおいては、現在の第5世代移動通信システム(5G)をさらに高度化させた新たな移動通信システム(Beyond 5G)への移行、自動車におけるADASの実用化、IoT(モノのインターネット)製品やAI、クラウドサービスのさらなる普及等が、当社グループにおける大きな成長機会であると捉えております。 これらの大きな変化に乗り遅れることなく、成長機会を確実に捉えるため、積極的な研究・技術開発を行い、競争力を持つ新製品のタイムリーな投入と需要に応じた生産能力の拡大を行ってまいります。
当社グループは、企業価値をさらに向上させるため、長期ビジョンに基づき、当社グループが取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を設定いたしました。この重要課題では、「事業活動による価値創造と競争優位の確立」のために、「顧客価値の創出と強固な信頼関係の構築」、「社会のTransformation実現に貢献するR&D」及び「高品質な製品の安定供給と生産の高効率化」を取り組むべき3つの領域として設定いたしました。また、これらを支える「未来を構想し実現する経営基盤の強化」として、「競争力を生み出し続ける多様な人材の活躍推進と育成による変革」、「グループガバナンスの高度化」、「社会・環境課題解決の進行」の3つを取り組むべき領域として設定いたしました。 それぞれの領域においてテーマを定め、各テーマにおいて具体的な施策を実行してまいります。例えば、「グループガバナンスの高度化」においては、事業ポートフォリオの継続的改善とEmpowerment & Transparencyの2つのテーマを定め、事業ポートフォリオの継続的改善のテーマに対しては、事業ポートフォリオマネジメント体制の確立とその継続的な運用を行ってまいります。このように、重要課題への取り組みを推進し、事業活動による価値創造サイクルを継続的に循環させることで、当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を目指してまいります。
また、財務面においては、事業リスクを考慮した経営資源の配分とフリーキャッシュフローの拡大を行い、資本効率・株主還元・財務の健全性のバランスを適正化することで、当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を支える強固な財務基盤の構築を目指してまいります。
<TDKグループの価値創造サイクルと重要課題(マテリアリティ)>

TDKグループのサステナビリティの取り組み
気候変動への取り組み
再生可能エネルギーの導入を加速
当社は、2050年CO2ネットゼロ社会の実現に向けた、適切な活動KPI及びモニタリング指標を設定し、温室効果ガス削減活動を強化しております。
また、当社は、2022年11月、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指す国際的なイニシアティブ「RE100※1」に加盟し、2050年までに、国内外のすべての事業所で使用する電力の100%を再生可能エネルギー由来にすることを目指しております。
2023年7月には、国内すべての生産開発拠点の電力の100%を再生可能エネルギー由来とし、グループ全体での再生可能エネルギー導入率は約40%となりました。
今後も、国内外の拠点において再生可能エネルギーのさらなる導入を進め、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。


製品によるCO2排出削減貢献量の拡大
TDKのTMRセンサは、HDD用ヘッドの製造で培った薄膜プロセス技術を応用展開して製品化した新タイプの磁気センサで、車載電装機器をはじめ、ICT機器、産業機器等の角度センサや電流センサとして、幅広く使用されております。
このTMRセンサは、従来品センサから置き換えることで消費電力削減を実現しており、2022年度の環境貢献量はCO2換算で6,098トンになりました。今後も、自動車市場やICT市場向けの販売拡大による貢献量の増加が見込まれております。

気候変動対応の詳細については、以下の当社ウェブサイトに掲載しております。
https://www.tdk.com/ja/sustainability2023/environmental_responsibility/climate-action

健康経営への取り組み
基本的な考え方
当社は、2023年4月に健康宣言を制定し、従業員が心身ともに健康に働き続けることができるよう、健康推進活動に取り組んでおります。

推進体制及び取り組み
当社は、人事担当役員を健康推進責任者とし、人財本部内に健康推進課を設置して、健康推進活動に取り組んでおります。健康推進課が中心となり、健康管理事業推進委員会を発足させ、各種活動を展開しております。
健康経営の推進にあたっては、健康経営で実現したい姿である、チームメンバーの健康クオリティの向上につながる健康課題を特定し、それらを解決するための具体的取り組みを整理した戦略マップを作成しております。
また、当社は、「社員の健康をつうじた日本企業の活性化と健保の持続可能性の実現」というビジョンに共感する日本の企業・団体が活動する組織「健康経営アライアンス」に参画しております。健康に関する様々なデータを活用し、会社としてチームメンバーの健康管理、増進を積極的にサポートしてまいります。
※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

<生活習慣の改善等を目的とした取り組み事例>
・運動習慣の定着を目的としたウォーキング大会の開催
・禁煙サポートキャンペーンの実施
・質の良い睡眠をとるためのe-learningの実施
健康経営に関する情報は、以下の当社ウェブサイトに掲載しております。
https://www.tdk.com/ja/sustainability2023/social/health-and-productivity/
