事業報告(2023年4月1日から2024年3月31日まで)
企業集団の現況に関する事項
(1)主要な事業内容(2024年3月31日現在)
azbilグループは、人々の安心・快適・達成感と地球環境への貢献を目指す「人を中心としたオートメーション」を追求し、“計測と制御”の技術のもと、建物市場でビルディングオートメーション事業を、工場やプラント市場でアドバンスオートメーション事業を、ライフラインや健康等の生活に密着した市場でライフオートメーション事業を展開しております。
(2)事業の経過及びその成果
azbilグループを取り巻く事業環境認識は次のとおりです。
国内大型建物向け空調制御機器・システムにつきましては、都市再開発計画に基づく需要が高い水準で継続し、省エネ・CO2排出量削減対策を含めた改修案件の需要も堅調に推移しています。生産設備向けの各種機器・システムにつきましては、工場・プラントの脱炭素化やDX推進に向けた需要は継続していますが、ファクトリーオートメーション(FA)市場で需要低迷が継続しました。
この結果、当連結会計年度における業績につきましては次のとおりとなりました。
受注高は、アドバンスオートメーション(AA)事業がFA市場における市況の低迷により減少したことを主因に、前連結会計年度比3.1%減少の2,878億5千1百万円(前連結会計年度は2,969億3千万円)となりました。一方、売上高は、前連結会計年度における受注増加及び強化した調達・生産体制を背景に、ビルディングオートメーション(BA)・AA・ライフオートメーション(LA)の3事業全てで増加し、全体として前連結会計年度比4.5%増加の2,909億3千8百万円(前連結会計年度は2,784億6百万円)となりました。
損益面につきましては、営業利益は、中期経営計画に基づく研究開発費の計上、DX関連費用、人件費やその他経費の増加がありましたが、増収及び価格転嫁も含めた収益力強化施策により前連結会計年度比17.9%増加と大きく改善し、368億4千1百万円(前連結会計年度は312億5千1百万円)となりました。経常利益も、営業利益の増加により前連結会計年度比21.3%増加の389億9千9百万円(前連結会計年度は321億4千万円)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、営業利益の増加に加えて前連結会計年度における製品保証引当金繰入額の特別損失での計上の影響等により、前連結会計年度比33.6%増加の302億7百万円(前連結会計年度は226億2百万円)となりました。
BA ビルディングオートメーション事業
あらゆる建物に求められる快適性や機能性、省エネルギーを独自の環境制御技術で実現。
建物のライフサイクルに応じたサービスによって、健康で生産性の高い働き方をサポートする執務・生産空間の創造と環境負荷低減に貢献します。
事業フィールド
●オフィスビル ●ホテル ●ショッピングセンター ●病院
●学校 ●研究所 ●工場 ●データセンター ●空港 など
※各数値には、セグメント間の内部取引高が含まれております。
BA事業を取り巻く環境は、国内市場においては、都市再開発案件におけるオフィスビルや設備投資が続く工場向け空調の需要が高い水準で継続しています。省エネ・CO2排出量削減の需要に加えて、新型コロナウイルス感染拡大後の安全や新しい働き方に適応した新たなソリューション対応への関心も継続しています。海外市場では新型コロナウイルス感染拡大後に回復した投資が引き続き堅調です。
こうした事業環境のもと、採算性に配慮しつつ着実に受注を獲得するとともに、働き方改革への対応も踏まえ、施工・サービスの現場を主体に業務の遂行能力の強化と効率化を進めてまいりました。また、IoTやクラウド等の技術活用を志向する国内外のお客様のニーズに対応するための製品・サービスの拡大も進めてまいりました。
この結果、BA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。
受注高は、複数年サービス契約の更新が少ない時期にあたり、前連結会計年度における大型案件受注の影響や採算性重視の取組みにより新設建物向け分野が減少しましたが、市場環境は堅調であり、主に既設建物向け分野と海外事業が増加したことにより、全体としては前連結会計年度と同水準となる1,367億8千2百万円(前連結会計年度は1,353億1千1百万円)となりました。売上高は、堅調な事業環境を背景に新設建物向け分野が高い水準を維持し、既設建物向け分野、サービス分野、海外事業それぞれが増加したことから、前連結会計年度比4.7%増加の1,346億5千5百万円(前連結会計年度は1,285億6千1百万円)となりました。セグメント利益は、労務費・外注費のほか、DX関連費用やその他経費の増加等がありましたが、増収及び価格転嫁を含む収益力強化の効果により、前連結会計年度比20.5%増加の193億7千3百万円(前連結会計年度は160億7千4百万円)となりました。
中長期的に、引き続き大型の再開発案件や多数の大型建物の改修が計画されています。BA事業では、納入実績等を基にこれらの需要に確実に応じてまいります。さらに、脱炭素化の動きを受けての省エネ・CO2排出量削減に向けたニーズや、新型コロナウイルス感染拡大に起因する安全・安心ニーズ、さらには利便性や快適性を備え、新しい働き方にも適応したウェルネスオフィス・空間づくりの需要に対し、クラウドサービスや新空調システムといったソリューションを提供することで、持続的な成長を目指してまいります。あわせて、DXの推進や事業プロセス変革を含めた取組みを進め、更なる高収益体質を実現してまいります。
AA アドバンスオートメーション事業
製造現場における課題解決に向け、装置や設備の最適運用をライフサイクルで支援する製品やソリューション、計装・エンジニアリング、保守サービスを提供。
さらに、IoT・AIやビッグデータを活用し、省エネルギーの実現と安定的かつ安全な操業をサポートします。
事業フィールド
●石油化学・化学 ●石油精製 ●電力・ガス ●鉄鋼 ●ごみ処理・上下水道 ●紙パルプ ●船舶 ●食品
●薬品 ●自動車 ●電気・電子 ●半導体 など
※各数値には、セグメント間の内部取引高が含まれております。
AA事業を取り巻く国内外の市場の動向につきましては、プロセスオートメーション(PA)市場は、中国での市況停滞が継続していますが、全体では保守・改造需要を中心に堅調に推移しています。一方、FA市場では、製造装置市場の市況低迷が継続し、前連結会計年度における先行発注の反動もあって需要が低迷しました。
このような事業環境のもと、従来から取り組んでいる3つの主要施策である「海外での事業成長」、「新しいオートメーションの創造」、「収益力強化」に継続して取り組むとともに、部品調達難への対応としての調達・生産プロセスの改善に取り組みました。
この結果、AA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。
受注高は、半導体製造装置市場での循環的な需要の落ち込みなどにより大きく減少し、前連結会計年度比11.0%減少の1,014億8千1百万円(前連結会計年度は1,139億6千8百万円)となりました。一方、売上高は、豊富な受注残のもと、調達・生産体制の強化及び部品調達難の緩和により生産が進んだことから売上高が増加し、前連結会計年度比2.9%増加の1,070億5千2百万円(前連結会計年度は1,039億8千8百万円)となりました。セグメント利益は、DX関連費用等の増加や研究開発投資がありましたが、増収及び価格転嫁を含む収益力強化の取組みにより、利益水準が向上し、前連結会計年度比10.6%増加の161億1千8百万円(前連結会計年度は145億7千9百万円)となりました。
足元ではFA市場の市況低迷が継続していますが、前述の3つの主要施策が着実に進展しており、今後の市況回復期での成長に寄与するものと考えます。また、長期的には工場の脱炭素化、人手不足対応、設備老朽化対応、新しい生産方式の導入等、お客様のオートメーションへのご要求は強く、工業系オートメーション市場はグローバルに拡大していくことが期待できます。引き続き3つの事業単位※(CP事業、IAP事業、SS事業)を軸に、先進的なオートメーションの展開を通じて、持続可能な社会へ貢献する高収益な事業体を目指してまいります。
- ※
- 3つの事業単位(管理会計上のサブセグメント)
- CP事業:
- コントロールプロダクト事業(コントローラやセンサ等のファクトリーオートメーション向けプロダクト事業)
- IAP事業:
- インダストリアルオートメーションプロダクト事業(差圧・圧力発信器やコントロールバルブ等のプロセスオートメーション向けプロダクト事業)
- SS事業:
- ソリューション&サービス事業(制御システム、エンジニアリングサービス、メンテナンスサービス、省エネソリューションサービス等を提供する事業)
LA ライフオートメーション事業
高齢化や環境問題への対応、安全・安心な暮らしの実現、生活の充実等、人々の毎日の生活に関わるニーズに対して、オートメーション技術を活用して応えています。
ガス・水道等のライフライン、家庭の空調システムをはじめとした生活空間の質の向上、人の健康に貢献する研究、製薬・医療に至るまで幅広い分野で一層の安心と快適、省エネルギーを実現します。
事業フィールド
ライフサイエンスエンジニアリング分野
●製薬工場 ●研究所 ●医療施設 など
ライフライン分野
●ガス(都市ガス、LPガス) ●水道 など
住宅用全館空調システム分野
●住宅メーカ など
※各数値には、セグメント間の内部取引高が含まれております。
LA事業は、ガス・水道等のライフライン、製薬・研究所向けのライフサイエンスエンジニアリング、そして住宅用全館空調システムの生活関連の3つの分野で事業を展開しており、事業環境はそれぞれ異なります。
売上の大半を占めるライフライン分野は、法定によるメーターの交換需要を主体として一定の需要が継続的に見込まれますが、現在LPガスメーター市場が循環的な不需要期にあります。また、海外で事業展開しているライフサイエンスエンジニアリング分野では、製薬プラント設備への需要は継続していますが、インフレ継続による投資・景気への影響も見られました。こうした事業環境において、LA事業として品質・コスト管理の強化とあわせて価格転嫁を含む収益力強化に取り組みました。
この結果、LA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。
受注高は、ライフライン分野での増加を主体に、ライフサイエンスエンジニアリング、生活関連の分野も増加し、LA事業全体では前連結会計年度比4.1%増加の516億8千9百万円(前連結会計年度は496億4千6百万円)となりました。売上高についても、ライフライン分野を主体に他の分野も増加し、前連結会計年度比7.3%増加の514億4百万円(前連結会計年度は479億1千5百万円)となりました。セグメント利益は、増収及び収益力強化の取組みにより大きく改善し、前連結会計年度比133.6%増加の13億7千5百万円(前連結会計年度は5億8千8百万円)となりました。
LA事業では、価格転嫁の取組みを継続しつつ、品質管理や抜本的なコスト管理を通じて収益の安定化に取り組んでまいります。なお、これらと並行して、エネルギー供給市場における事業環境の変化を捉え、製品提供型の事業に加え、IoT等の技術を活用し、各種メーターからのデータを活用したサービスプロバイダーとしての新たな事業の創出にも取り組んでまいります。住宅用全館空調システム分野では新設建物から既設建物まで、省エネや空気質も含めて、幅広く空間の快適性を提供する事業を推進してまいります。
対処すべき課題
azbilグループは、「人を中心としたオートメーション」のグループ理念のもと、事業を通して持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を実践することで、社会のwell-beingの実現を通じてグループ社員全員のwell-beingを実現し、あらゆるステークホルダーと信頼関係を構築することにより継続的な企業価値の向上を図り、皆様のご期待にお応えしていきたいと考えております。
このため、“技術・製品を基盤にソリューション展開で「顧客・社会の長期パートナー」へ”、“地域の拡大と質的な転換で「グローバル展開」”、“体質強化を継続的に実施できる「学習する企業体」を目指す”の3つを基本方針に、事業収益力の強化及びグローバルな事業基盤の整備を進めつつ、これらを基にした事業成長施策を展開しております。具体的には、ビルディングオートメーション(BA)、アドバンスオートメーション(AA)、ライフオートメーション(LA)の3事業において、計測と制御の技術を核に、「人を中心としたオートメーション」の発想に基づく製品・サービスを提供し、お客様のニーズや社会課題の解決に貢献することで、お客様・社会とともに自らの持続的成長を目指しております。
当社グループでは、株主価値増大に向けて連結ROE(自己資本当期純利益率)の向上を基本的な目標としており、収益性と資本効率の向上を通して、2030年度をゴールとする長期目標※1として、売上高4,000億円規模、営業利益600億円規模、営業利益率15%程度、ROE13.5%程度を目指しております。また、この長期目標達成に向け、2024年度を最終年度とする4ヵ年の中期経営計画※1においては、最終年度に売上高3,000億円、営業利益360億円、営業利益率12%、ROE12%程度を達成することを目標としております。
長期目標の達成に向け、社会の環境、ニーズが大きく変化するなか、2022年8月にはグループ理念を基に「機会」と「リスク」の両面から、ダブルマテリアリティ(環境・社会が企業に与える財務的な影響と、企業活動が環境・社会に与える影響という2つの側面から重要性を評価する考え方)を取り入れ、当社グループが長期にわたり取り組む重点課題として10のマテリアリティ項目を特定し、2023年度は外部有識者からの助言も踏まえて、これらを再確認しました。これらのマテリアリティに基づき、事業や企業活動に関する7つの項目については、SDGs(Sustainable Development Goals-持続可能な開発目標)の領域において目標を「azbilグループSDGs目標」として具体的に定めるとともに、企業が社会に存立するうえで果たさなければならない基本的責務である3つの項目については、CSR活動において具体的な目標を定めております。それらの目標の達成に向けて様々な取組みを行うことで、「サステナビリティ経営※2」を推進しております。
2023年度も、2022年度に引き続き地政学的リスクに端を発したグローバルサプライチェーンの課題に加え、エネルギー・部品価格の高騰並びに、部品等の長納期化やインフレ等が世界経済に大きな影響を与えた年となりました。この厳しい状況下において当社グループとしましては、市場ごとに事業環境は異なるもののお客様の生産性改善ニーズ等による受注を着実に捉え、調達・生産プロセスの改善により売上を拡大するとともに、インフレ等によるコスト上昇に対し、価格転嫁対応を含む収益力強化と業務効率化の展開により過去最高業績を更新しました。
2023年度に実施してまいりました具体的な活動としましては、研究開発拠点「藤沢テクノセンター」内の新実験棟にてクラウドや人工知能を活用した先進的なシステム・ソリューションや、MEMS※3技術による高機能・高性能デバイスの開発プロジェクトが進展しました。また、あらゆる業務の変革に不可欠なDXの推進も強化しました。最新のデジタル技術を活用した製品・サービスの開発から、「仕事と働き方の創造」の観点での業務の効率化・高付加価値化まで積極的に取り組んでいます。加えて、昨今注目を集めている生成AIについても業務効率の観点で活用に着手しており、安全に利用するための基盤を整備しつつ、DXの促進を加速しています。生産面においても、2022年に竣工した中国大連生産子会社の新工場棟において全面稼働が開始されたことに続き、タイ生産子会社も2024年4月に新工場棟が竣工し、グローバルでの生産基盤の強化が進みました。さらに、成長領域における事業拡大に向け、出資を含む他社協業も継続して実施し、GX(グリーントランスフォーメーション)※4の推進を通じ脱炭素社会の実現に貢献してまいりました。
収益力という観点では、これまで取り組んできた受注時の採算性改善、海外生産・調達の拡大といった収益力強化施策に加え、価格転嫁等を含めたコスト上昇への適切な対応やDXの推進を通じた業務効率化をグローバルに展開することにより、一層の収益力強化を行いました。また、資本コストを意識した経営の観点からは、投下資本利益率(ROIC)を導入したことにより、投下資本からの収益性に基づく経営資源活用の最大効率化及び事業ポートフォリオ管理を強化することで、当社グループ全体の企業価値向上に繋げてまいりました。
また、経営体制におけるガバナンス強化の観点から、コーポレート・ガバナンスの強化を重要課題とし、取締役会の監督・監査機能強化、経営の透明性や健全性の強化、執行の責任体制の明確化等に取り組んでまいりました。その取組みの一つとして、2022年度に指名委員会等設置会社へ移行した後も、2023年度には中長期的な業績目標の達成及び企業価値向上に向けた動機づけを目的に、インセンティブ報酬としての株式報酬の構成比率を拡大することを決定し、報酬ポリシーを改定しました。今後も取締役・執行役等の企業価値向上への意識及び株主価値の最大化への意欲を一層高め、株主の皆様との価値共有に繋げてまいります。
2024年度におきましても事業環境の構造的変化が継続することを前提に、顧客・社会の変化を支援できることがオートメーション事業の価値との考えに基づき、アズビルならではの技術・製品・サービスを活かすことのできる「新オートメーション事業」、「環境・エネルギー事業」、「ライフサイクル型事業」という3つの成長事業領域に注力し、新たな課題の解決策を提供することにより、BA、AA、LAの3事業での成長を実現してまいります。
2024年度はこれまでの変革の実績を起点に、“更なる成長に向けた変革”の年度と位置付けております。2030年度の長期目標を達成するため、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献による社会のwell-beingの実現を通じて事業を拡大するとともに、社員全員のwell-beingを実現し、その過程において社員一人ひとりが達成感と成長実感を得られるような成長を目指します。具体的には、半導体市場のような技術革新により需要が拡大する市場とカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーなど社会課題対応として需要が拡大する市場を成長市場と定義し、それらにおける“計測と制御”領域での競争優位性を高めることによる事業成長を目指します。また、継続的に競争優位性を持った商品群を創り出すため、人的資本、製品開発、生産、DXの各分野に継続した投資を実施し、コア技術の強化、人材育成、DXによる技術伝承と業務効率化を図ります。加えて、成長領域としての海外事業では、市場シェアの拡大と商品力の強化を目指します。こうした取組みを通じて、方針に掲げたサステナビリティ経営の推進に向け、ガバナンス体制の強化と企業成長の原動力でもある人的資本への投資にも積極的に取り組むことで中期経営計画の着実な達成に繋げ、各社員のwell-beingを実現します。
今後も多岐にわたる事業環境において不安定な状況が継続することも想定されることを前提に、持続可能な社会に向けた取組みの強化が一層重要になると認識しております。アズビルの基幹事業であるオートメーション事業は、建物、工場、ライフラインといった領域の“空間の質”を向上させながら、資源・エネルギー使用量を適正に抑制することが可能であり、我々の事業を拡大することが地球環境負荷の低減に繋がります。持続可能な社会の実現のためには、資源・エネルギー使用量を適正に抑制する仕組みを構築する必要があり、当社グループは事業を通じて、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を実現してまいります。
- ※1
- 2021年5月14日、当社グループは長期目標、中期経営計画(2021~2024年度)を策定・公表いたしました。
- ※2
- 2022年8月に特定したマテリアリティと、その目標となるazbilグループSDGs目標の詳細については当社統合報告書(azbilレポート2023のP21、22)をご参照ください。
- ※3
- MEMS(Micro Electro Mechanical Systems):センサ、アクチュエータ、電子回路を一つの基板の上に微細加工技術によって集積した機器。
- ※4
- GX(グリーントランスフォーメーション):カーボンニュートラルの実現に向けた経済社会システムの変革。
2024年度においてもサステナビリティ経営の推進を基本に据えながら、研究開発・設備投資を積極的に行い、商品力強化を進めるとともに、これを支える人的資本を強化します。中期経営計画におきましても、経営資源を有効かつ戦略的に配分し、様々な取組みの加速・定着を図ってまいります。その具体的な内容は次のとおりです。
1[国内事業]
3事業とも国内では成熟産業に位置しておりますが、それぞれが置かれている環境は事業ごとに大きく異なります。
ビルディングオートメーション(BA)事業は、中期的には国内の大型建設需要は旺盛になっていますが、このような繁忙な環境下においても、お客様に満足いただけるより高い品質の製品やフィールドサービスを提供し続け、また、カーボンニュートラルやウェルネスを中心とした新しいニーズに対してもazbilグループならではの新規商品の提供や、事業開拓のための他社協業を推進しています。また、堅調な業況を背景に、業務処理体制をより強固なものとし、より効率的な運営を進めるべく社内DXを加速していきます。業界のトップランナーとして蓄えてきた社内のノウハウやデータを集積し、更なる高度化を進めることで、より高い収益性を実現する事業体制を強化してまいります。
商品としては、従来のモノ売り、フィールドでのエンジニアリングやサービスにとどまらず、クラウドを応用した分野での商品を拡充していきます。具体的には、設備管理者不足対策に貢献するべく、ビル向けクラウドサービスに新アプリケーションとしてクラウドMT(Manager’s Tool)を追加し、販売を開始しました。今後は、クラウドとビルディングオートメーション(BA)システムの連携により、ビル管理者の建物・設備運転業務の自動化による労働力不足への対応、カーボンニュートラルの推進、オフィス空間のウェルネス・快適性向上など様々な社会的課題の解決に貢献するサービスへと進化を続けます。
アドバンスオートメーション(AA)事業では、景気の循環による変動影響はあるものの、継続したグローバルでの市場拡大が期待されるなか、脱炭素化、サーキュラーエコノミー、生産高度化、安全・安定操業、人手不足対応等の要望に対して、計測・制御分野を中心に貢献できる領域は大きく、更なる事業領域の拡大と事業成長が期待できると考えています。AA事業は「グローバルに競争力のある事業展開を通じ、持続可能な社会へ貢献する高収益な事業体」となることを目指しています。そのために、成長戦略として、社会の環境変化や技術の潮流変化に対応した「azbilグループならではの新しいオートメーション領域」を創出していくとともに、原価低減、販売価格適正化等の各種収益力強化施策をCP事業、IAP事業、SS事業の3つの事業単位でのオペレーションを通じて着実に実行してまいります。
具体的な新しいオートメーション領域への導入事例としましては、クラウド型バルブ解析診断サービス「Dx Valve Cloud Service」が大手化学会社や大手ガス会社へ順次提供が開始されております。これはバルブの解析診断結果や運転中の稼働データをWebコンテンツで提供するクラウド型サービスで、プラントや工場で稼働するバルブの健全性を診断し、その結果を可視化することによって、生産設備の安定化や保安力強化に貢献し、お客様へ継続的な価値の提案・提供を実行しております。(詳細は後掲のニュース&トピックスをご参照ください。)
ライフオートメーション(LA)事業では、ライフライン分野において、主体であるガス・水道メーターの交換に関する安定した需要へ対応しています。さらに、エネルギー供給市場における事業環境の変化を捉え、従来の製品提供型の事業に加え、IoT等の技術を活用し、各種メーターからデータを活用したサービスプロバイダーとして他社との協業等も推進して新たなエネルギーマネジメント事業を創出し、売上高と利益の拡大を図ります。サービス型事業とスマートメーター事業を融合したSMaaS事業を推進してお客様や社会に新たな価値を提供し、さらにクラウド事業を強化してソリューション提供力の向上を目指します。また、住宅用全館空調システム分野では、新設建物から既設建物や小規模建物まで、幅広く快適性を提供する快適住空間プロバイダーへの事業拡大を推進し、お客様の生活の質を向上する快適さの実現を目指します。
以上のような3つの事業軸への取組みに加えて、持続可能な社会への貢献に「直列」に繋がる「新オートメーション事業」、「環境・エネルギー事業」の成長領域の目標達成のため、出資を含む他社との協業を実施してまいりました。具体的には2023年度は、外資系データセンターのトータルマネジメントシステムを手掛けるX1Studio株式会社と出資契約及び業務提携契約を締結し、今後市場拡大が見込まれている国内のデータセンター市場における事業機会の拡大を図ります。また、再生可能エネルギー領域でのソリューション拡大に向け、フォレストエナジー株式会社への資本参加を決定し、再エネ活用モデルの構築により、脱炭素化を支援することを目指します。さらには、成長が期待される国内未上場企業を投資対象としているジャフコSV7ファンドに出資し、拡大が見込まれる新たな事業領域の市場情報や革新的な技術情報の入手、投資先企業との関係構築等を行い、新規事業領域の探索に繋げてまいります。
2[海外事業]
長期目標達成に向けた成長実現のため、海外事業拡大に関する施策の検討・遂行及びグローバルでの経営基盤の強化を進めています。海外事業における変革をさらに加速させるために、地域特性を活かした事業推進・管理体制を確立し、各国・各地域のお客様に対して日本で培ってきた技術やノウハウを活かしたazbilグループ独自のソリューションをグローバルに展開していきます。具体的には、海外での市場シェア拡大、市場ニーズに合わせた商品の拡大、新規領域ビジネスへの参入を進め、売上高の伸長を目指していきます。
BA事業では、アジア地域の建物市場を中心に、都市化の進展が継続し、オフィスのグレードアップが進むことが見込まれています。そのため、国内事業モデルでの強みである省エネルギーのアプリケーション技術、エンジニアリング、サービス力を活用した製品・サービスの提供を推進していきます。一例として、タイではバンコク中心部に位置する五つ星ホテルにて、大手総合不動産会社との協業によりESCOサービスを開始し、当社ではBEMSの導入による空調・換気等の設備機器の運転管理の改善や効率化、各種省エネルギー制御の導入等、ESCO事業の推進をサポートしております。(詳細は前掲の納入事例をご参照ください。)このような活動は、スマートビルディングソリューションの分野においても高く評価され、その結果、「東南アジア スマートビルディングソリューション カンパニー オブ ザ イヤー アワード」をFrost & Sullivan (フロスト・アンド・サリバン)※5から2年連続で受賞しました。
AA事業では、中長期的な視点で循環的な景気変動はあるものの、グローバルでの経済成長の継続、更なる生産性改善の要求、設備老朽化への対応、環境規制の拡大、新技術の活用に対する期待等を背景とした生産設備の自動化投資は引き続き拡大が見込まれています。そのような状況下において、脱炭素社会へ向けた産業構造の転換を見据え、新市場向けの拡張製品開発や異常予兆検知・AI設備診断等、新しいオートメーション領域の開拓を進めていきます。加えて、戦略地域の営業体制強化や営業活動の質の改善を継続することで、顧客のカバレッジ拡大を通じた事業成長を継続し、さらには、価格転嫁を含む収益力強化施策も継続し、高い利益率を引き続き確保してまいります。
LA事業では、ライフサイエンスエンジニアリング領域で事業展開する欧州のアズビルテルスター有限会社において、欧州におけるこれまでの急速なインフレ進行による費用増加への影響に対応すべく、適切なコスト管理、販売価格適正化等、収益力の強化と装置販売とエンジニアリング、サービスの両輪による事業基盤の強化を継続してまいります。
以上に加えて、グローバルでの成長を支える経営管理の課題解決のため、①事業ラインと連携した業務運営の標準化・共通化・効率化、②内部統制等のグループ内ガバナンスを効かせた、強固な経営基盤・管理体制への注力、③グローバルでの競争を勝ち抜くために必要な人材育成・人材基盤整備の推進、という3つの切り口からアプローチを図り、各社の堅確な体制構築を進めてまいります。
- ※5
- Frost & Sullivan(フロスト・アンド・サリバン):国際的な成長戦略コンサルティング・リサーチ会社。
3[生産・開発]
azbilグループの事業拡大に向けて、グループ生産体制を再編し、商品力強化に向けて開発リソースの集約・強化を進めてまいりました。国内ではグローバル生産体制構築の一環として、生産の中核拠点である湘南工場の生産機能と藤沢テクノセンターの研究開発機能との連携を強化し、グループ内のマザー工場としての機能整備を継続して推進中です。また、今後の事業成長の基盤を強化していくために、研究開発の中核拠点である藤沢テクノセンターを中心に、競争力のある商品を創出するための体制と仕組みづくりへの変革を進めています。具体的には、2022年9月に竣工した、新たな実験棟、新たなクリーンルーム・校正室を基盤として研究開発活動の効率化を進め、高度でより先進的な技術開発を推進していきます。海外では、グローバルでの需要拡大に対応した生産能力の拡大、生産工程の高度化と更なる自動化の推進を目的に、2022年4月の中国大連生産子会社の新工場棟竣工に続き、2024年4月にはタイ生産子会社の新工場棟も竣工し、日本、タイ、中国を3極とした生産体制を強化しました。また、グローバル開発体制の強化に向け、今後成長が期待されるインドにおいては、インド工科大学ルールキー校※6と革新的なデジタルソリューションの共同研究について覚書を締結し、互いに関心の高い分野での共同研究やインターンシッププログラムを実施するなど、商品力の強化、課題解決に向けて様々な外部パートナーとの連携を深めていきます。
- ※6
- インド工科大学ルールキー校:engineering, sciences, management, architecture and planning, and humanities and social sciencesの高等教育を提供する機関。1847年の設立以来、同校は国に技術人材とノウハウを提供する重要な役割を果たしている。
なお、地政学的リスクによるグローバルサプライチェーンの課題、エネルギーや部品価格の高騰、インフレ等は今後も一定の範囲で継続すると想定しております。そのため、生産オペレーションの改善を継続しつつ、緊急事態発生時においてもお客様への影響を最小限にするBCPの取組み範囲の拡大や、グローバルな生産体制や適正な在庫管理を意識した調達体制を整備し、より一層のガバナンス強化を推進してまいります。
4[経営管理]
経営管理面では、リスクマネジメントにおいて、経営に大きな影響を及ぼすリスクを正確に把握し、その影響を最小限に抑えるため、プロセスの大幅な見直しと現場部門と経営層が一体となった取組みにより、不確実性への対策を強化しました。また、国際財務報告基準(IFRS)の任意適用に向けた準備と会計レベルの向上と、それに伴う内部統制の強化も進めてまいります。さらに、全てのステークホルダーの皆様からの信頼に応え、企業価値の持続的向上を進めるため、基盤となるコーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題と認識し、取締役会の監督・監査機能の強化、経営の透明性・健全性の強化、執行の責任体制明確化等に取り組んでいます。
なお、azbilグループとして、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点からも積極的な活動・取組みを進めております。E(環境)では、サステナブルな経済社会の実現に寄与するため、日本経済団体連合会の「生物多様性宣言・行動指針」への賛同を表明し、持続可能な社会の実現へ向け、気候変動対策、資源循環対策、生物多様性保全対策等、幅広い社会的な環境活動と、当社グループの事業活動の融合を進めております。気候変動対策では、製品やサービスを通じてお客様のCO2削減を支援し、2030年の温室効果ガス削減目標達成に向け省エネ技術を強化し、また、再生可能エネルギーの使用を進めています。なお、2050年のネットゼロ達成に向け、2023年6月にSBTi※7へのコミットメントレターを提出し、サプライチェーン全体のCO2削減にも注力しています。資源循環対策では、事業を通じて資源削減とサステナブルな製品設計に努め、2030年までに全新製品を100%リサイクル可能にすることを目標にしています。これにより、製品が適切にリサイクルされるような設計を実現し、天然資源の有効活用と廃棄物削減を目指しています。生物多様性保全対策では、ネイチャーポジティブ※8の視点から事業を通じて生物多様性に貢献し、サプライチェーンや国内外の組織と連携して自然保護の取組みを強化しています。
S(社会)では、「人権」、「労働」、「環境」、「腐敗防止」に係わる「国連グローバル・コンパクト」に署名し、中期経営計画において人的資本・知的財産への取組みを強化しています。また、社員が活き活きと仕事に取り組んでいけるようにするための総合的な取組みを「健幸経営」と定義し、様々な制度・施策の整備・展開を継続してまいりました。この取組みは経済産業省にも評価され、この度、「健康経営優良法人2024(大規模法人部門(ホワイト500))」※9に3年連続で認定されました。
G(ガバナンス)では、2022年6月に、監督機能と執行機能の明確な分離、さらに意思決定の迅速さと透明性を高める目的で「指名委員会等設置会社」へ移行しました。また、取締役会の実効性を高めるためにアズビル独自の「取締役執行役連絡会」を設置するなどの工夫により、経営戦略や事業ポートフォリオに関する議論、重要リスクの特定、法定委員会活動等につき従来以上に活発な議論を行っています。
これらの取組みの結果、環境省が主催する第5回ESGファイナンス・アワード・ジャパン※10環境サステナブル企業部門において、開示充実度が一定基準を満たしている企業として「環境サステナブル企業」に2年連続で選定されました。また、国際環境非営利団体であるCDP※11により、「気候変動」に対する取組みとその情報開示に関して世界的に優秀な企業として評価され、Aリスト(最高評価)に3年連続で選定されました。
2024年度においても、持続可能な社会の実現に「直列」に繋がり、企業価値の向上を目指してESGにおける各課題を整理し、今後更なる改善への取組みを継続してまいります。
なお、経営管理面の重要課題である、株主還元等の資本政策につきましては、連結業績を基に、純資産配当率(DOE)を参照し、中期経営計画で目標として掲げる自己資本当期純利益率(ROE)等の水準に加え、成長投資及び健全な財務基盤を確保するための内部留保等を総合的に勘案し、「規律ある資本政策」の方針に照らして、機動的な自社株取得とともに、配当水準の向上に努めつつ安定した配当を維持していきたいと考えております。
- ※7
- SBTi(Science Based Targets Initiative):CDP、国連グローバル・コンパクト、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)が共同で設立した、企業のCO2排出量削減目標が科学的な根拠と整合したものであることを認定する国際的なイニシアチブ。
- ※8
- ネイチャーポジティブ:自然生態系の損失を食い止め、回復させていくことを意味する。
- ※9
- 健康経営優良法人認定制度:地域の健康課題に即した取組みや日本健康会議が進める健康増進の取組みを基に、特に優良な健康経営を実践している企業を顕彰する制度で、その中で上位500法人のみが『ホワイト500』に認定される。
- ※10
- ESGファイナンス・アワード・ジャパン:ESG金融又は環境・社会事業に積極的に取り組み、インパクトを与えた機関投資家、金融機関、仲介業者、企業等について、その先進的取組みなどを広く社会で共有し、ESG金融の普及・拡大に繋げることを目的として環境大臣が表彰するもの。環境サステナブル企業部門では、重要な環境課題に関する「リスク・事業機会・戦略」「KPI」「ガバナンス」の開示充実度が一定の基準を満たしている企業を「環境サステナブル企業」として評価・選定する。
- ※11
- CDP:企業や自治体を対象とした世界的な環境情報開示システムを運営する国際環境非営利団体。2000年に英国に設立され、130兆米ドルを超える資産を保有する680以上の投資家と協働し、資本市場と企業の調達活動を介して、企業に環境情報開示、温室効果ガス排出削減、水資源保護、森林保護を働きかけている。
(ご参考)当社のコーポレート・ガバナンスの取組みについて
azbilグループは、自らの中長期的な発展を確実なものとし、株主の皆様をはじめとする全てのステークホルダーの皆様からの信頼に応え、企業価値の持続的向上を進めるため、基盤となるコーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題と認識し、取締役会の監督・監査機能の強化、経営の透明性・健全性の強化、執行の責任体制明確化等に取り組んでおります。
<企業統治の体制>
当社は、指名委員会等設置会社として、過半数の独立社外取締役によって構成され、かつ独立社外取締役が委員長を務める指名委員会、監査委員会、報酬委員会の3つの委員会を設置しております。加えて、取締役会から法的に明確な責任を負う執行役に大幅に業務執行権限を委譲することで、監督機能と執行機能の明確な分離を進め、機動的かつ効率的な意思決定に基づく執行体制を確保すると同時に、より客観的な経営の監督機能を強化しております。
また、取締役への情報提供や執行役との意見交換を行う場として取締役執行役連絡会を設け、加えて社外取締役間での意見交換会を定期的に実施するなど、指名委員会等設置会社としての取締役会によるモニタリングの実効性を確保するとともに、業務執行を担う執行役員制度を継続し、意思決定の質とスピードの向上実現を目指しております。
取締役会は原則月1回開催し、法令に定める事項のほか、経営の最高意思決定機関として経営の重要事項を議論・検討し、大きな方向性を示すとともに、ステークホルダーの意見を反映させるため適切な執行の監督を行っております。業務執行におきましては、代表執行役社長の決定を補佐する経営執行レベルの諮問機関として、執行役及び役付執行役員で構成される経営会議を設置しており、常勤監査委員がモニタリングの実効性確保のため出席しております。経営会議を原則月2回開催することで、迅速な意思決定と執行の徹底により事業推進力の強化を図っております。
2024年3月31日現在で、当社事業及び経営や監査に経験を積んだ取締役4名(曽禰 寛純、山本 清博、横田 隆幸、勝田 久哉)と、独立性があり、幅広い経験や優れた専門性・知見を有し、国際性やジェンダー等の多様性に富む独立社外取締役8名(伊藤 武、藤宗 和香、永濱 光弘、アン カー ツェー ハン、佐久間 稔、佐藤 文俊、𠮷川 惠章、三浦 智康)の合計12名の取締役を選任しており、取締役会における独立社外取締役の割合は過半数に達しております。これらの独立社外取締役は、取締役会にて意思決定を行う際、適切な監督・助言を通じ当社の企業価値の向上に寄与しているほか、取締役執行役連絡会等を通じて執行役等とも定期的に意見交換を行っております。また、当社は中期経営計画の実現等、持続的な企業価値の向上の観点から、取締役に期待するスキル等を定めており、現在の取締役会における独立性・多様性・期待するスキルを確認しております。
社外取締役の選任にあたっては、当社は独自の独立性判断基準を定めております。当社の社外取締役はこの独立性判断基準を満たしており、一般株主と利益相反の生ずるおそれがなく、いずれも充分な独立性を有していることから、東京証券取引所に対し、独立役員として届け出ております。
また、当社は、会社法第430条の3第1項に規定する役員等賠償責任保険契約を保険会社との間で締結しており、その被保険者の範囲は当社の取締役、執行役及び執行役員並びに子会社の取締役、監査役及び執行役員です。被保険者が職務の執行に関し責任を負うこと又は当該責任の追及に係る請求を受けることによって生じることのある損害を当該保険契約により保険会社が填補することとしております。ただし、被保険者の職務の適正性が損なわれないようにするための措置として、被保険者の故意、違法な私的利益供与、犯罪行為等に起因する損害については、填補の対象外としております。なお、被保険者は保険料を負担しておりません。
さらに、当社と社外取締役は、会社法第427条第1項の規定に基づき、同法第423条第1項の損害賠償責任を限定する契約を締結しております。当該契約に基づく損害賠償責任の限度額は、法令が定める最低責任限度額としております。なお、当該責任限定が認められるのは、当該社外取締役が責任の原因となった職務の遂行において善意であって、かつ重大な過失がないときに限られます。
<取締役会の活動状況>
2023年度は取締役会を合計12回開催し、12名の取締役はいずれの取締役会にも出席いたしました。取締役会で議論された主な事項は次のとおりです。
取締役会の実効性に関しては、毎年、自己評価・意見を収集したうえで取締役会において現状の評価と課題の共有を行い、更なる実効性の向上を図っております。2023年度の評価においては、前年度の実効性評価において認識された課題に対する実効性向上に向けた各取組みが、PDCAサイクルに沿って効果的に行われていることを確認するとともに、次年度において改善すべき課題の抽出を行いました。
<指名委員会・監査委員会・報酬委員会の活動状況>
当社は、指名委員会等設置会社として指名委員会、監査委員会、報酬委員会の3つの委員会を設置しております。各委員会の活動状況は以下のとおりです。
(指名委員会)
指名委員会は、2024年3月31日現在、伊藤 武(独立社外取締役)が委員長を、アン カー ツェー ハン(独立社外取締役)、𠮷川 惠章(独立社外取締役)及び山本 清博(取締役代表執行役社長)が委員を務め、独立社外取締役が過半数となる構成となっております。2023年度は指名委員会を12回開催し、4名の指名委員はいずれの委員会にも出席いたしました。指名委員会における具体的な検討事項は次のとおりです。
(監査委員会)
監査委員会は、2024年3月31日現在、佐藤 文俊(独立社外取締役)が委員長を、佐久間 稔(独立社外取締役)及び勝田 久哉(非業務執行社内取締役)が委員を務め、独立社外取締役が過半数となる構成となっております。2名の独立社外取締役及び1名の当社事業に精通した非業務執行の社内取締役が、内部監査部門と一体となり監査計画を立て、多角的な監査活動を行い、また社内監査委員が常勤体制を敷き、監査委員会監査の実効性を高めております。監査委員長の佐藤 文俊は、他事業会社にて長年経理財務管掌役員として財務諸表等の作成の責任者等に従事した経験があり、財務及び会計に関する相当程度の知見を有するものであります。また、監査委員会の職務を補助する専任の組織として監査委員会事務局を設置し、3名が監査委員会の職務遂行を補助しております。
監査委員会は原則月1回開催し、必要に応じて随時開催しております。2023年度は監査委員会を13回開催し、3名の監査委員はいずれの委員会にも出席いたしました。監査委員会監査における2023年度の主な重点監査項目と具体的な監査内容は次のとおりです。
(報酬委員会)
報酬委員会は、2024年3月31日現在、永濱 光弘(独立社外取締役)が委員長を、藤宗 和香(独立社外取締役)、三浦 智康(独立社外取締役)及び横田 隆幸(取締役代表執行役副社長)が委員を務め、独立社外取締役が過半数となる構成となっております。
2023年度は報酬委員会を10回開催し、4名の報酬委員はいずれの委員会にも出席いたしました。報酬委員会における具体的な検討事項は次のとおりです。
当社では、グループ一体となったコンプライアンス体制の整備について、信頼される企業グループを目指し、法令遵守を含む、役員及び社員の行動指針として、「azbilグループ企業行動指針」及び「azbilグループ行動基準」を制定しております。グループ理念、行動指針、行動基準、経営戦略までを持続可能な社会に対して「直列」に繋げ、社会課題の解決と持続可能な成長の両立の実現を目指してまいります。加えて、反社会的勢力との一切の関係の遮断をはじめとする企業の公共性、社会的責任の遂行や公正な取引の遵守、人間尊重の社会行動、会社財産の管理・運用及び環境保護の遂行を通して企業倫理の確立による健全な事業活動に取り組んでおります。
また、「対処すべき課題」に記載の通り、サステナビリティ経営を推進すべく、当社グループが長期にわたり取り組む重点課題として特定したマテリアリティで目指す姿の実現に向けて、azbilグループSDGs目標を設定するとともに、企業が社会に存立するうえで果たさなければならない基本的責務に関するマテリアリティ項目については、信頼される企業グループを目指したCSR活動において様々な取組みを進めております。具体的には、業務運営を適正かつ効率的に遂行するために、会社業務の意思決定及び業務実施に関する各種社内規程の制定等により、職務権限の明確化と適切な牽制が機能する体制を整備しております。内部統制機能としては、グループ監査部が、本社部門、各カンパニー及びグループ各社の経営諸活動の全般にわたる管理・運営の制度及び業務遂行・事業リスク・コンプライアンス・内部統制システム等の内部監査を定期的に実施しており、監視と業務改善に向けて具体的な助言・提案を行っております。また、金融商品取引法における内部統制への対応を強化するとともに、当社グループ全体のコンプライアンス活動を推進するため、当社担当役員を総責任者に、各社のコンプライアンス担当役員をメンバーとしてCSR活動を推進するための会議体を設置し、グループ全体の活動計画の策定、進捗管理を行うとともに、子会社に対する指導を行っております。さらに、内部通報制度による不祥事の早期発見の体制も整えております。また、業務執行全般にわたり適宜、顧問弁護士、公認会計士等、社外の専門家の助言及び支援を受けております。