事業報告(2022年4月1日から2023年3月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

(1)主要な事業内容(2023年3月31日現在)

azbilグループは、人々の安心・快適・達成感と地球環境への貢献を目指す「人を中心としたオートメーション」を追求し、計測と制御”の技術のもと、建物市場でビルディングオートメーション事業を、工場やプラント市場でアドバンスオートメーション事業を、ライフラインや健康等の生活に密着した市場でライフオートメーション事業を展開しております。

(2)事業の経過及びその成果

azbilグループを取り巻く事業環境は、国内大型建物向け空調制御機器・システムにつきましては、都市再開発計画に基づく需要が高い水準で継続し、換気改善、省エネ・CO2排出量削減対策を含めた改修案件の需要も着実に増加いたしました。生産設備向けの各種計測制御機器・システムにつきましては、第3四半期以降、半導体製造装置など一部の市場において市況が悪化いたしましたが、新型コロナウイルス感染拡大時における設備投資低迷からの緩やかな回復や工場・プラントのDX化に向けた需要の拡大を受けて、通期での設備投資需要は高い水準を維持しました。

その結果、当連結会計年度における業績につきましては次のとおりとなりました。

受注高は、ビルディングオートメーション(BA)事業が首都圏における都市再開発案件や海外での需要回復を主因に増加しました。アドバンスオートメーション(AA)事業は一部の製造装置市場が減速しましたが、製造業全体では需要が継続し、受注が増加しました。加えてガス・水道メータ分野での受注拡大を主因にライフオートメーション(LA)事業も増加したことから、全体として前連結会計年度比3.5%増加の2,969億3千万円(前連結会計年度は2,869億5千万円)となりました。また売上高につきましても、前年度における受注増加を背景にBA事業・LA事業が増加し、部品調達難への対応、生産能力の強化により、AA事業の売上高が第2四半期以降、回復、増加に転じたことから、3事業全てで増加し、前連結会計年度比8.5%増加の2,784億6百万円(前連結会計年度は2,565億5千1百万円)となりました。

損益面につきましては、営業利益は、中期経営計画施策に沿った研究開発費の計上に加えて、部品調達難に伴う費用や経費の増加等がありましたが、増収及び収益性改善により前連結会計年度比10.7%増加の312億5千1百万円(前連結会計年度は282億3千1百万円)となりました。経常利益は、前連結会計年度比8.9%増加の321億4千万円(前連結会計年度は295億1千9百万円)となり、特別損失にて製品保証引当金繰入額※1を計上する一方で投資有価証券の売却益を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度比8.8%増加の226億2百万円(前連結会計年度は207億8千4百万円)となりました。

※1
製品保証引当金繰入額:
当社グループが製造したLPガスメータ(LA事業)の一部に発生した不具合に対応するため、製品保証引当金繰入額(24億9千5百万円)を特別損失として計上しております。

事業区分別の概況

BA ビルディングオートメーション事業

詳細はこちらを閉じる

あらゆる建物に求められる快適性や機能性、省エネルギーを独自の環境制御技術で実現。
建物のライフサイクルに応じたサービスによって、健康で生産性の高い働き方をサポートする執務・生産空間の創造と環境負荷低減に貢献します。

事業フィールド

オフィスビル ホテル ショッピングセンター 病院 
学校 研究所 工場 データセンター  空港 など

※各数値には、セグメント間の内部取引高が含まれております。

BA事業を取り巻く環境は、国内市場においては、首都圏における都市再開発案件や工場向け空調の需要が継続しています。省エネ・CO2排出量削減に対する需要も継続しており、新型コロナウイルス感染拡大後の安全や新しい働き方に適応したビル環境に対する新たなソリューションへの関心も高まっています。また、海外市場においては、新型コロナウイルス感染症による建築計画順延・工事遅延等の影響からの着実な回復が見られました。

こうした事業環境のもと、採算性に配慮しつつ着実な受注の獲得に取り組むとともに、お客様・社員の安全に十分配慮し、働き方改革への対応も踏まえ、施工・サービスの現場を主体に業務遂行能力の強化と効率化を進めてまいりました。また、IoTやクラウド等の技術活用を志向する国内外の顧客ニーズに対応するための製品・サービスの拡大も進めてまいりました。この結果、BA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。

受注高は、前連結会計年度における複数年サービス契約の更新の反動がありましたが、堅調な市場環境を背景に、新築大型建物向けに機器・システムを販売・施工する分野と海外事業が伸長しました。また、換気改善、省エネ・CO2排出量削減等のソリューション需要の高まりから既設建物の改修に関する分野も増加し、全体としては前連結会計年度比2.1%増加の1,353億1千1百万円(前連結会計年度は1,325億1千1百万円)となりました。売上高は、前連結会計年度末における受注残を背景とする新築大型建物向け分野の増加及び海外事業の伸長を主因に、あわせて既設、サービス分野も増加したことから、前連結会計年度比7.3%増加の1,285億6千1百万円(前連結会計年度は1,197億6千4百万円)となりました。セグメント利益は、研究開発費やその他経費の増加がありましたが、増収及び採算性改善施策の効果により前連結会計年度比16.0%増加の160億7千4百万円(前連結会計年度は138億6千2百万円)となりました。

中長期的には大型の再開発案件や多数の大型建物の改修が計画されています。BA事業では、納入実績等を基にこれらの需要を確実に獲得してまいります。さらに、脱炭素化の動きを受けての省エネ・CO2排出量削減に向けたニーズや、新型コロナウイルス感染拡大に起因する換気・入退室管理等の安全・安心ニーズ、さらには利便性や快適性を備え、新しい働き方にも適応するオフィス需要等に対し、リモートメンテナンス、クラウドサービスや新空調システムといったソリューションを提供することで、持続的な成長を目指してまいります。あわせて、DXの推進や事業プロセス変革を含めた取組みを進め、更なる高収益体質を実現してまいります。

AA アドバンスオートメーション事業

詳細はこちらを閉じる

製造現場における課題解決に向け、装置や設備の最適運用をライフサイクルで支援する製品やソリューション、計装・エンジニアリング、保守サービスを提供。
さらに、IoT・AIやビッグデータを活用し、省エネルギーの実現と安定的かつ安全な操業をサポートします。

事業フィールド

石油化学・化学 石油精製 電力・ガス 鉄鋼 ごみ処理・上下水道 紙パルプ 船舶 食品 
薬品 自動車 電気・電子 半導体  など

※‌各数値には、セグメント間の内部取引高が含まれております。

AA事業を取り巻く国内外の市場の動向につきましては、第3四半期以降、第2四半期までにあった先行発注の反動や半導体製造装置市場の市況悪化がありましたが、コロナ禍からの緩やかな回復もあり、製造業全般では設備投資が高い水準を維持しました。

こうした事業環境のもと受注は引き続き高い水準を維持しました。売上高及びセグメント利益については、前年度から続く部品調達難の影響を第1四半期で大きく受けましたが、第2四半期以降、部品調達難に改善が見られるとともに、製品の設計変更をはじめとした各種の対策により、生産の回復が着実に進み、第3四半期・第4四半期は前年同期を大きく上回る改善を実現しました。この結果、AA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。

受注高は、製造業全般における設備投資需要の回復による増加や継続した海外での事業拡大により、前連結会計年度比4.0%増加の1,139億6千8百万円(前連結会計年度は1,095億6千2百万円)となりました。売上高は、部品調達難の影響を受けましたが、生産・調達面での対策により徐々に回復し、通期では前連結会計年度比10.3%増加の1,039億8千8百万円(前連結会計年度は942億7千6百万円)となりました。セグメント利益は、当連結会計年度全般を通じて部品価格高騰の影響を受けましたが、収益性改善の取組みに加えて、第2四半期からの生産回復による増収により前連結会計年度比10.1%増加の145億7千9百万円(前連結会計年度は132億3千6百万円)となりました。

AA事業では、短期的には半導体製造装置市場を中心に市況悪化の傾向が見られますが、豊富な受注残を背景に生産の回復に伴う売上高及びセグメント利益の改善が今後見込まれます。また、中長期的には、海外での顧客カバレッジの拡大を通じて継続した事業成長が見込まれ、また人手不足、脱炭素化への対応、新技術の導入による生産性向上等を目的とした生産ラインの自動化に係る投資の拡大、すなわち工場向けオートメーション市場の拡大が期待できます。引き続き3つの事業単位※2(CP事業、IAP事業、SS事業)を軸に、脱炭素社会に向けた対応等の新しいオートメーションが求められるなか、先進的なオートメーションの展開を通じて、更なる事業成長を目指してまいります。

※2
「3つの事業単位(管理会計上のサブセグメント)」
CP事業:
コントロールプロダクト事業(コントローラやセンサ等のファクトリーオートメーション向けプロダクト事業)
IAP事業:
インダストリアルオートメーションプロダクト事業(差圧・圧力発信器やコントロールバルブ等のプロセスオートメーション向けプロダクト事業)
SS事業:
ソリューション&サービス事業(制御システム、エンジニアリング・サービス、メンテナンスサービス、省エネソリューションサービス等を提供する事業)

LA ライフオートメーション事業

詳細はこちらを閉じる

高齢化や環境問題への対応、安全・安心な暮らしの実現、生活の充実等、人々の毎日の生活に関わるニーズに対して、オートメーション技術を活用して応えています。
ガス・水道等のライフライン、家庭の空調システムをはじめとした生活空間の質の向上、人の健康に貢献する研究、製薬・医療に至るまで幅広い分野で一層の安心と快適、省エネルギーを実現します。

事業フィールド

ライフサイエンスエンジニアリング分野

製薬工場 研究所 医療施設 など

ライフライン分野

ガス(都市ガス、LPガス) 水道 など

住宅用全館空調システム分野

住宅メーカ など

※各数値には、セグメント間の内部取引高が含まれております。

LA事業は、ガス・水道等のライフライン、製薬・研究所向けのライフサイエンスエンジニアリング、そして住宅用全館空調システムの生活関連の3つの分野で事業を展開しており、事業環境はそれぞれ異なります。

売上の大半を占めるガス(都市ガス/LPガス)・水道等のライフライン分野は、法定によるメータの交換需要を主体として一定の需要が継続的に見込まれますが、現在LPガスメータ市場が循環的な不需要期にあります。一方、ライフサイエンスエンジニアリング分野では、製薬プラント設備への投資が継続しています。こうした事業環境を背景に、LA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。

受注高は、ライフライン分野での増加を主因に前連結会計年度比6.0%増加の496億4千6百万円(前連結会計年度は468億4千5百万円)となりました。売上高は、受注増加によりライフライン分野が増加し、ライフサイエンスエンジニアリング分野も前連結会計年度における受注増加を背景に増加したことから、前連結会計年度比8.3%増加の479億1千5百万円(前連結会計年度は442億3千8百万円)となりました。セグメント利益は、増収ながら、欧州におけるインフレの影響を主因として人件費・経費が増加し、素材価格高騰、エネルギーコスト・輸送費も増加したことにより前連結会計年度比48.9%減少の5億8千8百万円(前連結会計年度は11億5千1百万円)となりました。

LA事業では、ライフサイエンスエンジニアリング分野において欧州における急速なインフレ進行による費用増加の影響が懸念されますが、適切なコスト管理、価格転嫁等に取り組んでまいります。また、LPガスメータの一部に発生した不具合については、対策実施に関わる費用として製品保証引当金繰入額を特別損失として計上しております。LA事業におきましては、品質管理も含め、抜本的なコスト管理を通じて収益の安定化に取り組んでまいります。なお、これらと並行しつつ、エネルギー供給市場における事業環境の変化を捉え、製品提供型の事業に加え、IoT等の技術を活用し、各種メータからのデータを活用したサービスプロバイダとしての新たな事業の創出にも取り組んでまいります。

対処すべき課題

azbilグループは、「人を中心としたオートメーション」のグループ理念のもと、事業を通して持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を実践することで、自らの中長期的な発展を確実なものとし、企業価値の持続的な向上を実現することで、ステークホルダーの皆様のご期待にお応えしていきたいと考えております。

このため、“技術・製品を基盤にソリューション展開で「顧客・社会の長期パートナー」へ”、“地域の拡大と質的な転換で「グローバル展開」”、“体質強化を継続的に実施できる「学習する企業体」を目指す”の3つを基本方針に、事業収益力の強化及びグローバルな事業基盤の整備を進めつつ、これらを基にした事業成長施策を展開しております。具体的には、ビルディングオートメーション(BA)、アドバンスオートメーション(AA)、ライフオートメーション(LA)の3事業において、計測と制御の技術を核に、「人を中心としたオートメーション」の発想に基づく製品・サービスを提供し、お客様のニーズや社会課題の解決に貢献することで、お客様・社会とともに自らの持続的成長を目指しております。

当社グループでは、株主価値増大に向けて連結ROE(自己資本当期純利益率)の向上を基本的な目標としており、収益性と資本効率の向上を通して、2030年度をゴールとする長期目標※1として、売上高4,000億円規模、営業利益600億円規模、営業利益率15%程度、ROE13.5%程度を目指しております。また、この長期目標達成に向け、2024年度を最終年度とする4ヵ年の中期経営計画※1においては、最終年度に売上高3,000億円、営業利益360億円、営業利益率12%、ROE12%程度を達成することを目標としております。

このように2030年度に向けた長期目標を掲げる当社グループは、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献とサステナビリティの観点から、SDGs (Sustainable Development Goals-持続可能な開発目標)を経営の重要な道標と位置付け、事業として取り組む領域として「環境・エネルギー」、「新オートメーション」の2つを、また企業活動全体で取り組む領域では「サプライチェーン、社会的責任」、「健幸経営※2、学習する企業体」の2つを「azbilグループSDGs目標」と定め、様々な取組みを進めております。

2022年度は、新型コロナウイルス感染症や地政学的リスクに端を発したグローバルサプライチェーンの混乱に加え、エネルギー価格の高騰やインフレ等が世界経済に大きな影響を与えた年となりました。このような厳しい状況下において当社グループとしましては、顧客の生産性改善ニーズ等による受注を着実に捉え、調達・生産プロセス改善により売上を拡大するとともに、インフレ等によるコスト上昇に対しサプライチェーンを意識した適正な価格転嫁を含む収益力強化と、業務効率化の展開により過去最高業績を更新しました。2023年度においても事業環境の構造的変化が一定範囲で継続することを前提に、顧客・社会の変化を支援できることがオートメーション事業の価値との考えに基づき、アズビルならではの技術・製品・サービスを活かすことのできる「新オートメーション事業」、「環境・エネルギー事業」、「ライフサイクル型事業」という3つの成長事業領域に注力し、新たな課題の解決策を提供することにより、BA、AA、LAの3事業での成長を実現してまいります。

 2023年度以降はこれまでの取組みを起点に、持続可能な社会へ“直列”に繋がる貢献に向け、“安全を継続”しながら、更なる成長を目指し“変革”を加速してまいります。具体的には、商品力強化に向けた、製品開発・生産面での積極的な投資に加え、外部パートナーとの共創に向けた投資も進めます。成長領域としての海外事業では、カバレッジの拡大と商品拡大を強化します。こうした取組みを通じて、方針に掲げたサステナビリティ経営の推進に向け、ガバナンス体制の強化と企業成長の原動力でもある人的資本への投資に積極的に取り組むことで中期経営計画の着実な達成に繋げてまいります。

2022年度における具体的な活動といたしましては、藤沢テクノセンター内に先進的なシステムソリューション、MEMS※3技術を活用した高機能・高性能デバイスの開発力強化に向け新実験棟が竣工し、技術開発環境の整備が進みました。また、生産面においても、中国大連生産子会社の新工場棟の竣工に続き、タイ生産子会社にも2024年春の竣工を目指し新工場棟の建設を計画するなど、グローバルでの生産基盤の強化が進みました。さらに、成長領域における事業拡大に向け、出資を含む他社協業を実施し、GX(グリーントランスフォーメーション)※4の推進を通じ脱炭素社会の実現に貢献してまいりました。

▲第103建物

▲第104建物

藤沢テクノセンター内に建設された新実験棟

収益力という観点では、これまで取り組んできた受注時の採算性改善、海外生産・調達の拡大、価格転嫁といった収益力強化施策に加え、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を通じた業務効率化をグローバルに展開することにより、一層の収益力強化を行いました。また、資本コストを意識した経営の観点からは、投下資本利益率(ROIC)を導入したことにより、投下資本からの収益性に基づく経営資源活用の最大効率化、並びに事業ポートフォリオ管理の強化を実践することで、当社グループ全体の企業価値向上(ROEの向上)に繋げてまいりました。

それに加え、持続的な企業価値向上の基盤として、コーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題とし、取締役会の監督・監査機能強化、経営の透明性や健全性の強化、執行の責任体制の明確化等に取り組んでまいりました。その取組みの一つとして、2022年6月23日開催の第100期定時株主総会にて「指名委員会等設置会社」へ移行し、各委員会の委員長は社外取締役といたしました。また、これを機に報酬委員会にて、移行後の体制に向けて役員報酬の決定方針を策定、株式報酬制度導入を含む役員報酬制度の改定を行ったことに伴い、新たな報酬ポリシーを開示いたしました。これにより、取締役・執行役等の企業価値向上への意識及び株主価値の最大化への意欲を一層高め、株主の皆様との価値共有に繋げてまいりました。

今後も不安定な事業環境は一定の範囲で継続することを前提に、持続可能な社会に向けた取組みの強化が一層重要になると認識しております。アズビルの基幹事業であるオートメーション事業は、建物、工場、ライフラインといった領域の“空間の質”を向上させながら、資源・エネルギー使用量を適正に抑制することが可能であり、我々の事業を拡大することが地球環境負荷の低減に繋がります。持続可能な社会の実現のためには、資源・エネルギー使用量を適正に抑制する仕組みを構築する必要があり、当社グループは事業を通じて、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を実現してまいります。

※1
2021年5月14日、当社グループは長期目標、中期経営計画(2021~2024年度)を策定・公表いたしました。
※2
健幸経営:健康で幸せ、活き活きとした“働きの場と人”を創るためのアズビル独自の取組み。
※3
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems):センサ、アクチュエータ、電子回路を一つの基板の上に微細加工技術によって集積した機器。
※4
GX(グリーントランスフォーメーション):カーボンニュートラルの実現に向けた経済社会システムの変革。

2023年度においても当社グループは着実に安定した収益基盤構築のための財務基盤の確保と更なる事業成長に向けた外部リソースの活用も含めた積極的な投資を継続します。中期経営計画におきましても、経営資源を有効かつ戦略的に配分し、様々な取組みの加速・定着を図ってまいります。その具体的な内容は次のとおりです。

1[国内事業]

3事業とも国内では成熟産業に位置しておりますが、それぞれが置かれている環境は事業毎に大きく異なります。

ビルディングオートメーション(BA)事業は、引き続き高水準で推移する首都圏での需要を着実に捉えるため、お客様・社員の安全に十分配慮し、働き方改革への対応も踏まえ、施工・サービスの現場を主体としたDX推進により、ジョブ遂行能力の強化と効率化を進めてまいります。またIoT、クラウド等の新しい技術活用も含めた商品力強化を推進することによりビジネスモデルの再構築を引き続き進めるとともに、拡大する省エネルギー・CO2削減等に関するソリューションへの関心に対しても対応してまいります。

具体的には、お客様のカーボンニュートラル※5への取組みに貢献するため、省エネルギーと再生可能エネルギーのソリューションをワンストップで提供するESP※6事業の展開を開始いたしました。また、働き方改革や感染症対策等による居住空間の価値や要件の大きな変化に対応し、空間の質向上による付加価値の提供を目指してまいります。新しい働き方やオフィス利用の多様化に対応する新空調システム等を導入し、お客様にご提案、ご体感いただけるイノベーションプラザを国内にもオープンいたしました。これらの取組みにより、お客様の事業展開にあわせて継続的な価値を提案・提供してまいります。

▲ESP事業

アドバンスオートメーション(AA)事業では、部品調達難等による製造業設備投資への影響は予断を許さないところではありますが、中長期的にはグローバルな経済成長の継続や更なる生産性の改善要求、生産現場での人手不足、設備老朽化、脱炭素化等を背景に生産設備の自動化への投資は引き続き拡大基調にあり、製造業全般では設備投資が高い水準を継続している市場環境にあります。技術の潮流変化を捉え、今後の成長と付加価値の提供が見込める製造業の領域を選択・創出・集中することにより成長を図るとともに、グローバルな共通事業モデルに経営資源を集中することにより競争力を強化いたします。これら成長戦略と価格転嫁を含む収益力強化策をCP事業、IAP事業、SS事業の3つの事業単位でのオペレーションにより着実に実行してまいります。

具体的には新しいオートメーションの創造に資する製品開発の加速に取り組んでおり、CP事業において2023年1月にMEMS加工技術でデポ※7対策を強化したサファイア隔膜真空計の発売を開始し、また、SS事業においてはAIを活用したプロセス・設備の異常予兆検知システム「BiG EYES™」がワクチン製造大手に納入開始されるなど、お客様へ継続的な価値の提案・提供を3つの事業体それぞれで実行しております。

▲BiG EYES

ライフオートメーション(LA)事業では、ライフライン分野にて水道・各種ガスメータのIoT対応を引き続き進めております。スマートメータで計測・計量し、様々なデータをクラウドで収集、それらを掛け合わせることで、脱炭素を含めた企業の環境経営及び生活品質の向上への新たな価値提供の検討等、SMaaS(Smart Metering as a Service)時代を見据えた新たなオートメーション領域への事業展開を進めており、この度、既設直読式水道メータに取付け可能な漏水検知機能付きOCR※8アタッチメントの開発にも着手いたしました。また、戸建て住宅向け全館空調分野においても、全館空調システム事業にて培った、こだわりの空気環境をより多くのお客様にお届けするために研究・開発した製品として、全館空気清浄換気システム「e-kikubari™」を発売し、住環境の快適さを追求したソリューションを強化することで、生活関連分野の収益改善を継続してまいります。

以上のような3つの事業軸への取組みに加えて、持続可能な社会への貢献に「直列」に繋がる「新オートメーション事業」、「環境・エネルギー事業」の成長領域の目標達成のため、出資を含む他社協業を実施します。具体的には2022年度は、環境省が設立準備を進めてきた官民ファンド「株式会社脱炭素化支援機構※9」に出資し、脱炭素に資する新たな事業機会や、脱炭素に取り組む事業者とのパートナーシップ等の創出を目指します。また、株式会社クリーンエナジーコネクト(CEC)との資本業務提携では、アズビルがエネマネ事業者※10として長年得意としてきた省エネルギーソリューションに、CECのグリーン電力ソリューションを組み合わせてワンストップで提供できるようになることで、GXの推進を通じ脱炭素社会の実現に貢献してまいります。

※5
カーボンニュートラル:温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること。
※6
ESP(Energy service provider):エネルギー関連設備の導入、運転管理・保守メンテナンスなどのサービスまで一括で提供するビジネス。従来の省エネソリューションに再生可能エネルギーの調達サポートや運用段階での最適なマネジメントを加え、お客様の目標達成に向けてのニーズに応える事業をカスタマイズで立案し、包括的なエネルギーソリューションとして価値を提供していくサービス。
※7
デポ:デポジション(Deposition)の略語で「堆積」の意味。ここでは半導体製造の成膜工程で薄膜を生成する際にセンサ表面に付着する生成物を指す。
※8
OCR(Optical Character Recognition):光学文字認識。手書きや印刷された文字をイメージスキャナやデジタルカメラによって読み取り、コンピュータが利用できるデジタルの文字コードに変換する技術。
※9
株式会社脱炭素化支援機構:国の財政投融資(産業投資)と当社を含む民間82社からの出資を資本金としてファンド事業を行う株式会社。2050年カーボンニュートラルの実現に向け、脱炭素に資する多様な事業への呼び水となる投融資(リスクマネー供給)を行い、脱炭素に必要な資金の流れを太く速くし、経済社会の発展や地方創生、知見の集積や人材育成など新たな価値の創造に貢献。
※10
エネマネ事業者:一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)に登録されたエネルギー管理支援サービス事業者。EMS(Energy Management System)の導入や補助金申請サポート等を行う。
2[海外事業]

海外市場におきましては、事業成長と収益拡大を支えるための更なる事業基盤強化策の一つとして、各国や各地域の市場環境に対応し、付加価値の高い特長ある新製品・ソリューションの提案を継続的に強化し、グローバルでの事業拡大を目指します。東南アジア地域においては、シンガポールを拠点とする「東南アジア戦略企画推進室」により、同地域での横断的な事業推進・戦略企画・経営管理を加速させております。それに加えて2022年度からは日本-米州-アジアの3つの地域を繋ぎ、技術開発連携のグローバル体制づくりのステップとして、同室内に開発組織を設立することにいたしました。

BA事業では、海外市場でのシェア拡大に向け、次世代ビルディングオートメーションシステムを軸に、国内事業モデルでの強み(省エネルギーのアプリケーション、エンジニアリング・サービス力)を展開し、各国の事業環境・事業基盤に応じた施策を実施するとともに、ライフサイクル型ビジネスモデルの段階的な強化に努めております。このような活動は、スマートビルディングソリューションの分野において高く評価され、その結果、「2022年東南アジア スマートビルディングソリューション カンパニー オブ ザ イヤー アワード」をFrost & Sullivan (フロスト・アンド・サリバン)※11から受賞し、同社からの表彰は3年連続となりました。また、海外向け統合型ビルディングマネジメントシステム(IBMS)※12の導入に向けた新たなデジタルツイン製品の開発をシンガポール経済開発庁の支援を受けてシンガポールで開始いたしました。

▲Frost & Sullivanアワード

AA事業では、海外での工場向けオートメーション市場の拡大が引き続き見込まれるなか、戦略地域の営業体制強化や営業活動の質の改善を継続することで、顧客のカバレッジ拡大を通じた事業成長を継続しております。加えて、価格転嫁を含む収益力強化施策も継続し、高い利益率を引き続き確保しております。海外においても脱炭素社会に向けた対応等の新しいオートメーションが求められるなか、先進的なオートメーションの展開を通じた更なる海外での事業成長を進めてまいります。

LA事業では、ライフサイエンスエンジニアリング領域で事業展開する欧州のアズビルテルスター有限会社において、欧州における急速なインフレ進行による費用増加への影響が懸念されるなか、適切なコスト管理、販売価格適正化等に継続して取り組んでまいります。

以上に加えて、azbilグループの海外子会社における経営管理面におきましても、リモートでの管理体制の強化に加えて、現地法人の評価体制を拡充するなど、引き続きグループ・ガバナンスを強化し、各社の堅確な体制構築を進めてまいります。

※11
Frost & Sullivan (フロスト・アンド・サリバン):国際的な成長戦略コンサルティング・リサーチ会社。
※12
IBMS(Intelligent Building Management System):大規模複合施設の各種設備管理システムを一括管理し、効率的で高品質な設備管理やエネルギー管理、テナント情報の管理等を実現するシステム。
3[生産・開発]

azbilグループの事業拡大に向けて、グループ生産体制を再編し、商品力強化に向けて開発リソースの集約・強化を進めてまいりました。国内では、生産機能の湘南工場への一拠点化を完了し、藤沢テクノセンターにおける技術開発機能との連携を強化したグループ内のマザー工場として機能整備を推進中です。また、藤沢テクノセンターにつきましてはクラウドやAIを活用した先進的なシステムソリューションやMEMS技術を活用した高機能・高性能デバイスの開発力を一層強化するための中核研究開発拠点として、センター内に新棟を建設、2022年9月に竣工し、技術開発環境の整備が進みました。海外では、タイに当社グループ最大規模の調節弁整備機能を持ち、さらに異常予兆検知や調節弁の診断サービス等、IoT・AI技術を活用した次世代インテリジェントサービス提供を目的にSolution and Technology Centerが稼働中です。また、グローバルでの需要拡大に対応した生産能力拡大、生産工程の高度化と更なる自動化の推進を目的に、中国大連生産子会社の新工場棟竣工に続き、タイ生産子会社にも2024年春の竣工を目指し新工場棟の建設を計画するなど、日本、タイ、中国を3極とした生産体制を強化しました。また、海外事業の更なる拡大を目指し、工業市場向け調節弁の技術開発及びグローバルスタンダードに対応した製品特性試験のため、アズビル京都株式会社に流量試験設備を新設しました。

▲アズビルプロダクションタイランド新工場棟
(2024年春竣工予定)

なお、2023年度もグローバルサプライチェーンの混乱、エネルギー価格の高騰やインフレ等は一定の範囲で継続すると想定しております。今後も生産のオペレーションを改善しながらBCPに備え在庫している部品の一部使用、市場流通品の確保、代替部品への切り替えや設計変更等の対応を行い、サプライチェーン各社と連携して、生産の継続及び製品の納期への影響軽減のための取組みを継続してまいります。

4[経営管理]

創業時の精神である「人間の苦役からの解放」の考え方を、人間の幸福のために社会に貢献する価値観として受け継ぎ、グループ理念である「人を中心としたオートメーション」の実践を通じて、あらゆるステークホルダーと信頼関係を構築することにより継続的な企業価値の向上を図り、人々の「安心、快適、達成感」を実現するととともに、地球環境に貢献し、持続可能な社会に「直列」に貢献することをサステナビリティ方針としております。

2022年8月には、脱炭素やコロナ禍等、顧客ニーズ、社会が大きく変化するなか、事業環境の変化(機会とリスク)を勘案、ステークホルダーの皆様のご意見を伺い、azbilグループが「長期にわたり取り組む重点課題」を特定しました。今後は、特定した重点課題の更なる評価・優先度検証とそれぞれの目指す姿に向けて、当社グループのサステナビリティ推進体制を通じて、目標設定も含めた取組みを強化してまいります。あわせて重要なリスクの選定プロセスを大きく見直し、そのリスクの責任者を明確にすることで、効率的かつ実効的にリスク低減を実行してまいります。

経営管理面では、国際財務報告基準(IFRS)の任意適用も視野に入れた会計水準の向上と、それに伴う内部統制の強化を進めてまいります。また、経営の公正性、中立性及び透明性を高めるべく、コーポレートガバナンス・コードへの対応を継続しながら、全てのステークホルダーの皆様との間で建設的な対話を進めるための体制整備を積極的に進めております。

なお、azbilグループとして、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点からも積極的な活動・取組みを進めております。E(環境)に関しては、TCFDの国際的な枠組みに賛同表明し、ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標について有価証券報告書等で開示するほか、自らの事業活動に伴う温室効果ガス排出量(スコープ1+2)に加えてサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(スコープ3)削減目標を設定し、その実現に取り組んでおります。また、地球環境に配慮した商品・サービスの創出・提供に向け、2030年度の目標として「全ての新製品をazbilグループ独自のサステナブルな設計※13とする」という環境・エネルギーにおけるSDGs目標の新たな指標を決定いたしました。

S(社会)については、「人権」、「労働」、「環境」、「腐敗防止」に係わる「国連グローバル・コンパクト」に署名し、中期経営計画において人的資本・知的財産への戦略的検討を行っております。また、社員が健康で活き活きと仕事に取り組んでいけるようにするための総合的な取組みを「健幸経営」と定義し、様々な制度・施策の整備・展開を実施してまいりました。その取組みの一つでもある育児と仕事の両立支援制度の拡充について、この度、厚生労働大臣に評価頂き「子育てサポート企業」として「プラチナくるみん認定」※14を受けました。

G(ガバナンス)については2022年に「指名委員会等設置会社」へ移行し、コーポレート・ガバナンスの更なる改革を進め、監督機能と執行機能の明確な分離を図ることで意思決定の迅速性を高め、経営監督機能の更なる強化を進めております。

これらの取組みの結果、環境省が主催する第4回ESGファイナンス・アワード・ジャパン※15環境サステナブル企業部門において、開示充実度が一定基準を満たしている企業として「環境サステナブル企業」に選定されました。また国際環境非営利団体であるCDP※16により、「気候変動」に対する取組みとその情報開示に関して世界的に優秀な企業として評価され、Aリスト(最高評価)に2年連続で選定されました。

2023年度においても、持続可能な社会の実現に「直列」に繋がり、企業価値の向上を目指してESGにおける各課題を整理し、今後更なる改善への取組みを継続してまいります。

▲ESGファイナンス・アワード・ジャパン
※13
地球規模の環境課題(脱炭素化、資源循環、生物多様性保全)解決に貢献する製品の創出・提供を目指した設計。
※14
プラチナくるみん認定:次世代育成支援対策推進法に基づき、行動計画を策定し、計画に定めた目標を達成した企業として「くるみん認定」を受けた企業のうち、より高い水準の取組みを行った企業が受けることができる特例認定。
※15
ESGファイナンス・アワード・ジャパン:ESG金融又は環境・社会事業に積極的に取り組み、インパクトを与えた機関投資家、金融機関、仲介業者、企業等について、その先進的取組みなどを広く社会で共有し、ESG金融の普及・拡大に繋げることを目的として環境大臣が表彰するもの。環境サステナブル企業部門では、重要な環境課題に関する「リスク・事業機会・戦略」「KPI」「ガバナンス」の開示充実度が一定の基準を満たしている企業を「環境サステナブル企業」として評価・選定する。
※16
CDP:企業や自治体を対象とした世界的な環境情報開示システムを運営する国際環境非営利団体。2000年に英国に設立され、130兆米ドルを超える資産を保有する680以上の投資家と協働し、資本市場と企業の調達活動を介して、企業に環境情報開示、温室効果ガス排出削減、水資源保護、森林保護を働きかけている。

(ご参考)当社のコーポレート・ガバナンスの取組みについて

azbilグループは、自らの中長期的な発展を確実なものとし、株主の皆様をはじめとする全てのステークホルダーの皆様からの信頼に応え、企業価値の持続的向上を進めるため、基盤となるコーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題と認識し、取締役会の監督・監査機能の強化、経営の透明性・健全性の強化、執行の責任体制明確化等に取り組んでおります。

<企業統治の体制>

当社は、2022年6月23日開催の第100期定時株主総会において定款変更議案が承認されたことに伴い、監査役会設置会社から指名委員会等設置会社へ移行いたしました。この移行に伴い、過半数の独立社外取締役によって構成され、かつ独立社外取締役が委員長を務める指名委員会、監査委員会、報酬委員会の3つの委員会を設置しました。加えて、取締役会から法的に明確な責任を負う執行役に大幅に業務執行権限を委譲することで、監督機能と執行機能の明確な分離を進め、機動的かつ効率的な意思決定に基づく執行体制を確保すると同時に、より客観的な経営の監督機能を高めてまいります。

また、取締役への情報提供や執行役との意見交換を行う場として取締役執行役連絡会を設け、加えて社外取締役間での意見交換会を定期的に実施するなど、指名委員会等設置会社としての取締役会によるモニタリングの実効性を確保するとともに、業務執行を担う執行役員制度を継続し、意思決定の質とスピードの向上実現を目指しております。

取締役会は原則月1回開催し、法令に定める事項のほか、経営の最高意思決定機関として経営の重要事項を議論・検討し、大きな方向性を示すとともに、ステークホルダーの意見を反映させるため適切な執行の監督を行います。業務執行におきましては、代表執行役社長の決定を補佐する経営執行レベルの諮問機関として、執行役及び役付執行役員で構成される経営会議を設置しており、常勤監査委員がモニタリングの実効性確保のため出席しております。経営会議を原則月2回開催することで、迅速な意思決定と執行の徹底により事業推進力の強化を図っております。

2023年3月31日現在で、当社事業及び経営や監査に経験を積んだ取締役4名(曽禰寛純、山本清博、横田隆幸、勝田久哉)と、独立性があり、幅広い経験や優れた専門性・知見を有し、国際性やジェンダー等の多様性に富む独立社外取締役を8名(伊藤 武、藤宗和香、永濱光弘、アン カー ツェー ハン、佐久間稔、佐藤文俊、𠮷川惠章、三浦智康)の合計12名の取締役を選任しており、取締役会における独立社外取締役の割合は過半数に達しております。これらの独立社外取締役は、取締役会にて意思決定を行う際、適切な監督・助言を通じ当社の企業価値の向上に寄与しているほか、取締役執行役連絡会等を通じて執行役等とも定期的に意見交換を行っております。また、当社は中期経営計画の実現等、経営戦略に照らして、取締役に期待するスキル等を定めており、現在の取締役会における独立性・多様性・期待するスキルを確認しております。

社外取締役の選任にあたっては、当社は独自の独立性判断基準を定めております。当社の社外取締役はこの独立性判断基準を満たしており、一般株主と利益相反の生ずるおそれがなく、いずれも充分な独立性を有していることから、東京証券取引所に対し、独立役員として届け出ております。

また、当社は、会社法第430条の3第1項に規定する役員等賠償責任保険契約を保険会社との間で締結しており、その被保険者の範囲は当社の取締役、執行役及び執行役員並びに子会社の取締役、監査役及び執行役員です。被保険者が職務の執行に関し責任を負うこと又は当該責任の追及に係る請求を受けることによって生じることのある損害を当該保険契約により保険会社が填補することとしております。ただし、被保険者の職務の適正性が損なわれないようにするための措置として、被保険者の故意、違法な私的利益供与、犯罪行為等に起因する損害については、填補の対象外としております。なお、被保険者は保険料を負担しておりません。

さらに、当社と社外取締役は、会社法第427条第1項の規定に基づき、同法第423条第1項の損害賠償責任を限定する契約を締結しております。当該契約に基づく損害賠償責任の限度額は、法令が定める最低責任限度額としております。なお、当該責任限定が認められるのは、当該社外取締役が責任の原因となった職務の遂行において善意であって、かつ重大な過失がないときに限られます。

<取締役会の活動状況>

2022年度は取締役会を合計12回開催し、12名の取締役はいずれの取締役会にも出席いたしました。取締役会で議論された主な事項は次のとおりです。

取締役会の実効性に関しては、自己評価・意見を収集したうえで、取締役会において現状の評価と課題の共有を行い、更なる実効性の向上を図っております。2022年度の評価にあたっては、各取締役にあてた質問票の作成・実施とその集約・分析において客観性を担保し、今後の取締役会の実効性をさらに高めることを目的に、第三者機関を活用いたしました。

<指名委員会・監査委員会・報酬委員会の活動状況>

当社は、指名委員会等設置会社として指名委員会、監査委員会、報酬委員会の3つの委員会を設置しております。各委員会の活動状況は以下のとおりです。

(指名委員会)

指名委員会は、2023年3月31日現在、伊藤 武(独立社外取締役)が委員長を、アン カー ツェー ハン(独立社外取締役)、𠮷川惠章(独立社外取締役)及び山本清博(取締役代表執行役社長)が委員を務め、独立社外取締役が過半数となる構成となっております。2022年度は指名委員会を9回開催し、3名の指名委員(伊藤武、アン カー ツェー ハン、𠮷川惠章)はいずれの委員会にも出席、1名の指名委員(山本清博)は8回出席いたしました。指名委員会における具体的な検討事項は次のとおりです。

(監査委員会)

監査委員会は、2023年3月31日現在、佐藤文俊(独立社外取締役)が委員長を、佐久間稔(独立社外取締役)及び勝田久哉(非業務執行社内取締役)が委員を務め、独立社外取締役が過半数となる構成となっております。2名の独立社外取締役及び1名の当社事業に精通した非業務執行の社内取締役が、内部監査部門と一体で監査計画を立て、多角的な監査活動を行い、また社内監査委員が常勤体制を敷き、監査委員会監査の実効性を高めております。監査委員長の佐藤文俊は、他事業会社にて長年経理財務管掌役員として財務諸表等の作成の責任者等に従事した経験があり、財務及び会計に関する相当程度の知見を有するものであります。また、監査委員会の職務を補助する専任の組織として監査委員会事務局を設置し、3名が監査委員会の職務遂行を補助しております。

監査委員会は原則月1回開催し、必要に応じて随時開催しております。2022年度は監査委員会を11回開催し、3名の監査委員はいずれの委員会にも出席いたしました。監査委員会における具体的な検討事項は次のとおりです。

監査委員の間で職務分担を定め、取締役会や取締役執行役連絡会への出席、執行役・執行役員・子会社社長との意見交換、部門・拠点・子会社の業務調査、内部監査部門との監査計画及び監査結果の共有、内部監査部門が実施した一部の業務監査への陪席、国内子会社監査役との意思疎通・情報交換、会計監査人からの監査実施状況及び監査結果、監査上の主要な検討事項(KAM)の項目・内容等の検討状況等の説明聴取等を実施いたしました。

また、社外監査委員含め全員を選定監査委員に任命し、社外監査委員も執行役・執行役員との意見交換会をはじめ多くの監査業務を実施しました。さらに、社内の課題や他社の不正事例等について、監査委員間で議論いたしました。

前会計年度に引き続き、監査活動は新型コロナウイルス感染症の影響を一定程度受けましたが、往査とウェブ会議システムによるリモート調査を使い分け、また、海外子会社についても現地往査を再開いたしました。

(報酬委員会)

報酬委員会は、2023年3月31日現在、永濱光弘(独立社外取締役)が委員長を、藤宗和香(独立社外取締役)、三浦智康(独立社外取締役)及び横田隆幸(取締役代表執行役専務)が委員を務め、独立社外取締役が過半数となる構成となっております。2022年度は報酬委員会を7回開催し、4名の報酬委員はいずれの委員会にも出席いたしました。報酬委員会における具体的な検討事項は次のとおりです。

当社では、グループ一体となったコンプライアンス体制の整備について、信頼される企業グループを目指し、法令遵守を含む、役員及び社員の行動指針として、「azbilグループ行動基準」を制定し、反社会的勢力との一切の関係の遮断をはじめとする企業の公共性、社会的責任の遂行や公正な取引の遵守、人間尊重の社会行動、会社財産の管理・運用及び環境保護の遂行を通して企業倫理の確立による健全な事業活動に取り組んでおります。この理念を実践するために「企業行動指針」を制定し、またSDGs(Sustainable Development Goals-持続可能な開発目標)に向けたazbilグループのSDGs目標(基本目標とターゲット)を定めております。SDGsを新たな道標とし、理念、行動指針、行動基準、経営戦略までを持続可能な社会に対して「直列」に繋げ、社会課題の解決と持続可能な成長の両立の実現を目指してまいります。また、業務運営を適正かつ効率的に遂行するために、会社業務の意思決定及び業務実施に関する各種社内規程の制定等により、職務権限の明確化と適切な牽制が機能する体制を整備しております。内部統制機能としては、グループ監査部が、本社部門、各カンパニー及びグループ各社の経営諸活動の全般にわたる管理・運営の制度及び業務遂行・事業リスク・コンプライアンス・内部統制システム等の内部監査を定期的に実施しており、監視と業務改善に向けて具体的な助言・提案を行っております。また、金融商品取引法における内部統制への対応を強化するとともに、当社グループ全体のコンプライアンス活動を推進するため、当社担当役員を総責任者に、各社のコンプライアンス担当役員をメンバーとしてCSR活動を推進するための会議体を設置し、グループ全体の活動計画の策定、進捗管理を行うとともに、子会社に対する指導を行っております。さらに、内部通報制度による不祥事の早期発見の体制も整えております。また、業務執行全般にわたり適宜、顧問弁護士、公認会計士等、社外の専門家の助言及び支援を受けております。

連結計算書類