事業報告(2024年1月1日から2024年12月31日まで)

事業の経過および成果

世界経済は、エネルギー価格の高止まり、各国経済の減速見通し、不安定な為替相場等の影響により、依然として不透明な状況が続いております。脱炭素化の世界的な流れは、米国の政権交代による政策変化などで一部の国や市場で停滞が懸念されるものの、中長期的には各国政府の方針に基づき、企業の設備投資の拡大が引き続き期待されております。今後、自動車の電動化が加速し、電源の高効率化、小型化、軽量化が求められると予想され、当社グループは、バッテリー、デバイス、エネルギー市場において中長期的に堅調な設備投資環境が続くと見込んでおります。

当連結会計年度におきましては、受注高が前連結会計年度を上回りました。重点市場別では、デバイス市場では受注高が増加いたしましたが、エネルギー市場では需要が力強さを欠き、横ばいで推移いたしました。一方、バッテリー市場では、中国を中心に電気自動車(EV)の成長が短期的に鈍化し需要が落ち込み、前連結会計年度を下回りました。

顧客の所在地別では、アジア地域の受注高は、中国のバッテリーやエネルギー市場の需要が大きく落ち込みましたが、韓国や東南アジアでの堅調な需要により前連結会計年度を上回りました。

当社グループは、「ビジョン2030」の実現と中期経営計画の達成に向けた成長戦略として、「HIOKIの不可欠性を付加した商品開発」、「マーケット軸でのビジネス開発」、「GHGプロトコルにおけるカーボンニュートラル達成」を掲げ、取り組みを進めております。2024年10月1日付で、主要組織を部から本部に格上げし、業務執行取締役の指揮のもと、グループ一体でビジョン2030と次期中期経営計画の達成に向けた業務推進体制を強化いたしました。同日付で、R&D本部、生産本部、グローバル営業本部、総務本部を代表取締役社長直下に設置いたしました。また、総務本部には財務経理部を設置し、財務戦略、資本収益性を強化する体制を構築いたしました。

開発面では、2024年8月から順次新設した横浜と大阪のテクニカルセンターで設備導入を進め、測定環境の構築に努めてまいりました。顧客や協業先と協力して新たな測定課題を発見し、独自性のある商品開発を目指してまいります。

生産面では、生産能力を強化するため、本社工場から約2kmの場所に位置する上田第二工場が2024年7月8日に稼働を開始いたしました。この工場では、自動試験装置の開発、生産、販売・サービスを展開しております。同時に、本社工場や坂城工場を含む全社の生産体制を最適化し、生産性の向上に努めてまいりました。

販売面では、各国で進む脱炭素化に対応するため、タイとアラブ首長国連邦に設立した販売子会社において、顧客開拓と市場深耕に取り組んでおります。また、グローバル営業本部のもとで、グループ全体で顧客管理や販売・プロモーション管理を行えるよう、販売システムや業務プロセスの見直しを進めております。

利益面では、原材料費や人件費の増加を考慮し、国内外の製品価格を随時見直してまいりましたが、販売量の減少により売上高が伸びず、営業利益と経常利益は前連結会計年度を下回りました。また、保有目的が純投資目的以外の投資株式を一部売却し、特別利益として投資有価証券売却益54百万円を計上いたしました。

以上により、当連結会計年度の業績は、売上高392億70百万円(前連結会計年度比0.3%増)、営業利益75億25百万円(同5.4%減)、経常利益79億90百万円(同3.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益61億87百万円(同2.2%減)となりました。

製品区分別の状況

なお、製品区分別の状況は次のとおりであります。

売上高
前期比 %増
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売上高比率 %

(単位:

世界的に半導体業界はAI向け用途は活況である一方、それ以外の分野は業況が低迷する等明暗が分かれておりますが、その中でも成長が期待されているチップレットなど先端半導体技術の変化に対応するため、当連結会計年度は新型のベアボード検査装置を市場に投入いたしました。当該新製品に対して順調に引き合いをいただいており、今後の受注増が見込まれております。また、2023年12月期に受注した長納期の製品が順調に出荷されました。

この結果、売上高は35億5百万円(前連結会計年度比21.6%増)になりました。

売上高
前期比 %増
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売上高比率 %

(単位:

AIの発展が加速する中、データセンターを筆頭に世界の様々な分野においてエネルギーを有効利用するため、熱エネルギーと電力を同時に管理する需要は高まり続けております。これまで温度測定用データロガーの高耐圧多チャネル化や電流測定対応を進めてまいりましたが、当連結会計年度はここに新製品として高性能な電力測定モジュールを投入いたしました。また、発売済みデータロガーを様々なお客様の多様なシステムに対応させるため、クラウドへのデータ保存や時刻同期等のソフトウエアの機能アップも継続的に実施することで商品力を向上させました。

この結果、売上高は58億46百万円(同7.7%増)になりました。

売上高
前期比 %減
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売上高比率 %

(単位:

水素エネルギー向けの製品に対する引き合いは引き続き活発に続いております。バッテリー性能向上に向けた顧客の設備投資は現在も積極的に行われており、この貢献のため測定性能を大幅に向上させた最高性能のバッテリーテスタ2機種と、次世代のバッテリーの本命である全固体電池の開発向け測定器を市場に投入いたしました。また、エネルギー効率アップに向けた研究開発用に、解析性能を大幅に向上させる新たなバージョンの主力電力測定器も提供を開始いたしました。研究開発向けの投資は続いており、電子部品向けの量産設備には投資回復の傾向もみられましたが、中国のバッテリー市場や自然エネルギー、EV向けの需要が落ち込みました。

この結果、売上高は194億23百万円(同9.1%減)になりました。

売上高
前期比 %増
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売上高比率 %

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大規模な設備投資が続くデータセンターなど最新のIT設備は、電気設備の信頼性向上が欠かせません。また、世界各国で順調に増設が続く太陽光発電システムは、高電圧化が進んでおります。こうした電気設備の変化に対応するため、当社としては初めてとなる4電極法の測定を可能とするなど新機能を多数搭載した接地抵抗計と、2000Vまでの太陽光発電システムに対応できる高電圧絶縁抵抗計の2機種を、この分野としては高価格帯の製品として市場に投入いたしました。

この結果、売上高は83億66百万円(同9.2%増)になりました。

業績の推移

対処すべき課題

世界経済は、エネルギー価格の高止まり、各国経済の減速見通し、不安定な為替相場等の影響により、依然として不透明な状況が続いております。脱炭素化の世界的な流れは、米国の政権交代による政策変化などで一部の国や市場で停滞が懸念されるものの、中長期的には各国政府の方針に基づき、企業の設備投資の拡大が引き続き期待されております。今後、自動車の電動化が加速し、電源の高効率化、小型化、軽量化が求められると予想され、当社グループは、バッテリー、デバイス、エネルギー市場において中長期的に堅調な設備投資環境が続くと見込んでおります。

現在、世界におけるEVシフトは一部で停滞が懸念されておりますが、長期的には成長が見込まれ、充電インフラ市場の拡大も期待されております。EVの普及にともない、急速充電の開発とインフラ整備が急務となっており、また、カーボンニュートラル社会の推進により、電源開発や機器の省力化、航空機の電動化が加速すると見込まれております。

ウクライナ情勢により再生可能エネルギーへの注目が高まり、日本でも2023年6月に6年ぶりに水素基本戦略が改定されました。太陽光発電が注目され、水素とともにエネルギー源としての比重が高まると期待されております。これにより、エネルギーを保存するための蓄電池市場の成長が見込まれております。

当社グループは、この市場変化を大きなビジネスチャンスと捉え、新たな顧客価値を創造し、独自のセンシング技術をより高めるとともに、培ってまいりました計測技術を組み合わせ、高付加価値製品を提供してまいります。海外販売子会社を通じてHIOKIブランドを浸透させ、売上高を伸長させるとともに、世界中のお客様に安心して当社製品をお使いいただくためのグローバルアフターサービス体制の構築に引き続き取り組んでまいります。また、「海外売上高比率70%以上」を目標に、特定の地域に依存しない売上高構成を目指してまいります。従来から生産能力の強化に努めてまいりましたが、生産の増大に対処しつつ、棚卸資産を適正な水準に保ち、生産体制の最適化と生産性の向上を図ってまいります。さらに、サステナビリティ基本方針に基づき、グループ一体となってサステナビリティ活動を推進すると同時に、情報セキュリティの向上やデジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みも進めてまいります。

現在、インフレーションにより売上原価や販売費及び一般管理費が上昇しておりますが、次期も製品価格の見直しを機動的に行い、収益性の改善を図ってまいります。

こうした取り組みのもと、2030年までの長期経営方針「ビジョン2030」の施策を通じ社会に貢献すると同時に、継続的に成長発展できる体制を構築してまいります。

株主各位におかれましては、なにとぞ倍旧のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

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