事業報告(2025年1月1日から2025年12月31日まで)
事業の経過および成果
① 経済情勢および業界の概況
世界経済は、当連結会計年度においても地政学的リスクの高止まりや米国の政策不確実性の高まり、一部通貨の値動きが不安定になるなどの影響で、不透明な状況が続きました。一方で、主要国による利下げを含む広範な金融緩和が景気の底割れを防ぎ、地域によっては回復の兆しが見え始めております。脱炭素化の世界的な潮流は、企業の設備投資を牽引し、2025年のクリーンエネルギー関連投資は過去最高水準に達すると見込まれております。また、自動車の電動化がさらに進展し、EVの普及が進んでおります。この変化に伴い、電源技術には高効率化が求められ、小型・軽量化が進む一方、コスト削減や信頼性確保が次の焦点となっております。
② 売上高および損益の概況
当連結会計年度におきましては、売上高が前連結会計年度を上回り、着実な成長を遂げることができました。一方で、一部市場においては需要が当初の予測を下回り、2025年7月8日に公表した下方修正後の連結業績予想に対して若干の未達となりました。
市場別では、バッテリー市場は、EVやESS(蓄電システム)向けの堅調な需要の推移を受けて、売上高が前連結会計年度に対し増加いたしました。また、モビリティ市場およびコンポーネント市場は、EVタイプの多様化や農業用・建設用車両の電動化の進展、半導体セクターの需要増により、売上高は前連結会計年度を上回りました。一方で、エネルギー市場は、売上高が電力会社向け需要の好調を背景に中国、東南アジアで増加したものの、韓国の落ち込みが影響し、全体では前連結会計年度並みの水準にとどまりました。
顧客の所在地別では、中国の売上高が前連結会計年度比で大幅に増加し、インド、国内も増加いたしました。一方、韓国は年央の政情不安の影響を受けて大きく低迷し、9月以降に売上高が回復したものの、年間では前連結会計年度を下回りました。アメリカ、ヨーロッパも前連結会計年度の水準を下回る結果となりました。
利益面では、創業90周年記念事業に関連した一過性の費用やDX推進(ERP、CRM導入)に伴う計画的な投資の影響により販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益、経常利益ともに前連結会計年度を下回りました。
以上により、当連結会計年度における業績は、売上高405億31百万円(前連結会計年度比3.2%増)、営業利益67億91百万円(同9.8%減)、経常利益71億6百万円(同11.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益54億57百万円(同11.8%減)となりました。
③ 連結貸借対照表(B/S)に関するガイドラインの現状
連結貸借対照表上に占める「現金及び預金」の比率は36.0%となり、連結貸借対照表(B/S)に関するガイドライン(以下、「ガイドライン」という。)で定める目標範囲の年間平均25%~30%を上回っております。また、退職給付に係る調整累計額の増加に伴い純資産が拡大し、連結の自己資本比率は85.4%となり、ガイドラインの当面の目標範囲である70%前後を大きく上回っております。
④ ビジョン2030の実現に向けた成長戦略の推進
当社グループは、「ビジョン2030」の実現と中期経営計画の達成に向けて、「HIOKIの不可欠性を付加した商品開発」、「マーケット軸でのビジネス開発」、「GHGプロトコルにおけるカーボンニュートラル達成」を成長戦略の柱とし、取り組みを進めております。
2024年10月に主要組織を「本部」に格上げし、業務執行取締役の指揮のもと、グループ一体での業務推進体制を強化いたしました。当期はその活動を本格化させ、さらに効率的な業務運営を目指しました。また、R&D本部や生産本部などの各本部が一体となり、財務戦略や資本収益性の強化を進めております。
開発面では、新設した横浜、名古屋および大阪のテクニカルセンターにおいて顧客の測定環境を構築し、顧客や協業先と連携して新たな測定課題を発見するとともに、独自性のある商品開発を目指しております。さらに、11月には水電解セルスタックのインピーダンス計測システム「ALDAS-E」を一般財団法人電力中央研究所から受注し、水素社会の実現に向けた技術提供を通じ、持続可能な社会への貢献を進めております。
生産面では、本社工場や坂城工場、上田第二工場を含む全社の生産体制を最適化し、生産性向上に努め、リードタイムの改善を継続してまいりました。また、環境配慮型設計の一環として、製品の緩衝材をバイオマスポリエチレンに段階的に変更しております。さらに、グローバルアフターセールス事業の収益性強化やサプライチェーン戦略の高度化を実現するため、国際物流の体制強化を含む組織再編を実施いたしました。
販売面では、3月にベトナム子会社を設立し、アジア地域での販売網の強化に取り組んでまいりました。グローバル営業本部を中心に、顧客管理や販売・プロモーション管理の一元化を図り、効率的な営業活動を展開しております。
ESG活動では、創業90周年を迎えた節目である当連結会計年度において、スコープ1・スコープ2(マーケット基準)の投資対応型カーボンニュートラルを達成したことを宣言するとともに、サーキュラーエコノミー元年として資源循環への取り組みを強化いたしました。また、グループポリシーを策定し、持続可能な社会への貢献と企業価値向上を目指す体制の整備を進めてまいりました。これらの取り組みにより、当社グループは引き続きグローバル市場での競争力を強化し、長期的な成長を目指してまいります。
製品区分別の状況
なお、製品区分別の状況は次のとおりであります。
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トランプ関税による世界の自動車貿易の混乱を受け、自動車市場向けを主力とするジグ型の実装基板検査装置が大きく低迷した一方、AI向け半導体業界の活況が続いており、前連結会計年度に投入したベアボード検査装置は順調に受注高を伸ばしました。当連結会計年度は、この半導体基板市場に向け、最先端の高密度ICパッケージの検査を可能とする新型のベアボード検査装置を投入し、受注を開始いたしました。
この結果、売上高は35億18百万円(前連結会計年度比0.4%増)となりました。
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データロガーは、バッテリー市場や自動車市場を中心に順調に売上高を伸ばしました。また、より高速な信号を記録するメモリハイコーダの分野は目立った変化はないものの、国内を中心にインフラ設備の保全などで安定した需要が継続いたしました。世界的な配電網整備の重要性を背景に、海外市場での需要拡大を目指し、主力機種において基本性能を大きく向上させるモデルチェンジを実施いたしました。
この結果、売上高は61億70百万円(同5.5%増)となりました。
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AIデータセンターを起因とするGPUなどの技術革新により、デバイスの信頼性を高めるための検査やエネルギーのバックアップなどの分野で新しい市場が生まれ、関連分野からの受注が活発になっております。また、バッテリーの発火事故による社会的問題を背景に、より信頼性の高い検査への需要が増加し、当社製品がそのニーズに応えることで市場から高い評価を獲得いたしました。電子部品向けの量産設備は減少傾向が続きましたが、前連結会計年度で落ち込んだEVのR&D市場には回復傾向がみられます。当連結会計年度は、その中でも成長が期待されるエネルギー分野、デバイス分野、バッテリー分野それぞれに、業界最高性能や業界初の機能を搭載した複数の新製品を投入いたしました。
この結果、売上高は201億87百万円(同3.9%増)となりました。
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データセンターを中心とした最新のIT設備への旺盛な投資を受け、価格競争の影響を受けにくく、高い信頼性が求められる現場測定器の市場は、堅調に成長を続けております。韓国における年央の政情不安により、大幅な受注高の減少がありましたが、それも9月以降には解消され、グループ全体で見ると受注高は増加しております。また、一部のアナログ製品をデジタルへ転換し、製品の生産性と信頼性を向上させる取り組みを進めております。
この結果、売上高は83億80百万円(同0.2%増)となりました。
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業績の推移
対処すべき課題
世界経済は、2025年に続き地政学的リスクや米国の政策不確実性の高まり、一部通貨の値動きが不安定になるなどの影響を受けつつも、地域によっては緩やかな回復の兆しが見え始めております。しかしながら、主要国における金融政策の慎重姿勢やインフレーションの高止まり、欧州などでの成長鈍化懸念は依然として残り、世界経済は引き続き不透明な状況が続くと予想されます。脱炭素化の取り組みは、米国では政策の一部見直しにより短期的な動きの鈍化がみられるものの、欧州、アジアでは関連法制が施行段階にあり、潮流そのものは継続すると考えられます。短期的に資源供給の制約や地域差が一部市場に影響を及ぼしておりますが、中長期的には政府方針と企業戦略が牽引し、設備投資の拡大が期待されております。
自動車の電動化はさらに加速しており、電源技術では高効率化や高密度化、小型・軽量化が引き続き重要な課題です。これに伴い、バッテリー技術やパワー半導体の開発、充電インフラ整備が進展し、長期的に堅調な投資環境が維持される見込みです。世界的なEVシフトが継続し、急速充電技術やインフラ市場も拡大しております。さらに、航空機の電動化や省エネルギー技術の高度化も加速しており、こうした動きはカーボンニュートラル社会の実現に向けた重要な一歩となると考えられます。ウクライナ情勢は再生可能エネルギーへの関心を高める要因となり、2026年もその影響は続く見通しです。日本では、水素基本戦略の改定を背景に太陽光や水素エネルギーの導入が進み、これらを支える蓄電池市場も成長が期待されております。再生可能エネルギーの普及は、世界的なエネルギー転換において重要な役割を果たすことが期待されます。そして、データセンター建設ラッシュにより、電力品質監視や効率改善を目的とした電気計測の需要拡大が見込まれます。
当社グループは、これらの市場変化を大きなビジネスチャンスと捉え、独自のセンシング技術をさらに強化するとともに、長年培った計測技術を組み合わせた高付加価値製品の提供に注力してまいります。海外販売子会社を通じてHIOKIブランドの認知をさらに拡大し、売上高の伸長を目指すとともに、グローバルアフターサービス体制の充実を図り、世界中のお客様に安心して製品をご利用いただける環境を整備してまいります。また、「海外売上高比率70%以上」の目標を維持しつつ、特定の地域に依存しないバランスの取れた売上高構成を目指してまいります。加えて、生産能力の強化と棚卸資産の適正化を進め、効率的な生産体制の構築と生産性の向上を図ってまいります。
さらに、サステナビリティ基本方針に基づき、グループ全体でのサステナビリティ活動を推進すると同時に、情報セキュリティ強化やDXに向けた取り組みをさらに進化させ、持続可能な社会の実現と事業基盤の強化を目指してまいります。
現在、インフレーションの影響により売上原価が増加しており、また、DX推進に伴う計画的な投資などにより販売費及び一般管理費も増加しておりますが、次期も製品価格の見直しを機動的に行い、収益性の改善を図ってまいります。
株主各位におかれましては、なにとぞ倍旧のご支援を賜りますようお願い申し上げます。
事業の方向性