事業報告(2023年4月1日から2024年3月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過およびその成果

当連結会計年度の経済環境は、日本におきましては、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、社会・経済活動の正常化が進んだことに加え、雇用・所得環境の改善による個人消費の持ち直しなどにより、景気は緩やかな回復傾向が継続しましたが、原材料価格の高騰や円安等の影響により物価上昇が進むなど、先行き不透明な状況が続きました。海外におきましては、米国では、良好な雇用環境や個人消費を背景に景気は堅調に推移したものの、中国では、不動産市況低迷や消費意欲の減退が継続するなど、景気の減速感が強まりました。また、各国における金融引き締めの継続やインフレの高止まりに加え、ロシア・ウクライナ紛争の長期化や中東地域をめぐる情勢などを背景に、世界経済は不安定な状況のまま推移しました。

半導体業界につきましては、AI向け半導体の需要拡大に伴う市場環境の改善が一部に見られるものの、パソコン、サーバー市場の低迷継続や、買い替えサイクル長期化等によるスマートフォン需要の減少、米国による対中半導体輸出規制ならびに在庫調整の影響などにより、市況低迷が長期化する厳しい環境が続きました。

このような環境下において、当社グループにおきましては、パソコン、スマートフォン需要低迷や在庫調整の長期化等を背景とする半導体市況回復の遅れの影響を大きく受けました。こうした厳しい市場環境の下、収益確保をはかるべく受注獲得および生産性向上、コストダウン等に注力しました。また、これまで継続的に取り組んでまいりました成長市場向けの設備投資につきましては、市況環境をふまえ、計画の一部見直しを行いましたが、半導体市場の中長期的な拡大や当社製品の今後の需要増加を見据え、引き続き重点的に経営資源を投下しました。半導体の一層の高機能化・高速化や省電力化等のニーズに対応するフリップチップタイプパッケージについては、新たな生産拠点として千曲工場(長野県千曲市)の工場建屋が竣工するなど、引き続き生産体制強化に向けた取り組みを推進いたしました。また、さらなる大型化、高多層化、高密度微細配線等の実現に対応する当社開発の「i-THOP®」等の先端半導体向け次世代フリップチップタイプパッケージに関する千曲工場における新たな設備投資計画が、「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律」に基づく「供給確保計画」に認定され、助成金の交付が決定されました。半導体メモリーの高速化・大容量化に対応するプラスチックBGA基板については、生産能力増強をはかるべく、新井工場(新潟県妙高市)において新棟建設に着手しました。

それらの結果、フリップチップタイプパッケージは、パソコン・サーバー需要の回復の遅れ等により売上が大きく減少しました。また、半導体製造装置向けセラミック静電チャックは半導体輸出規制に加え、市況悪化の影響を受け売上が大きく減少し、リードフレームは在庫調整を背景に減収となるなど、総じて市況低迷の影響を受けました。これらにより、当連結会計年度の売上高は2,099億72百万円(前連結会計年度比26.7%減)となりました。利益面につきましては、売上高減少の影響を大きく受け、経常利益は272億57百万円(前連結会計年度比65.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は186億9百万円(同65.8%減)となりました。

なお、2023年12月12日付「JICC-04株式会社による当社株式に対する公開買付けの開始予定に係る賛同の意見表明及び応募推奨に関するお知らせ」で公表しましたとおり、JICC-04株式会社による当社の普通株式に対する公開買付けに関して、同日時点における当社の意見として、本公開買付けが開始された場合には、本公開買付けに賛同の意見を表明するとともに、当社の株主の皆様に対して、本公開買付けに応募することを推奨する旨を同日開催の取締役会において決議しております。

セグメント別の状況

セグメント別の状況は次のとおりであります。

売上高
前連結会計年度比 %減
経常利益 11,828 百万円
前連結会計年度比 75.0 %減
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売上高構成比率 %

売上高

(単位:

経常利益

(単位:

フリップチップタイプパッケージは、コロナ特需の反動などによるパソコン・サーバー需要回復の遅れや競争激化などにより、大幅な減収となりました。プラスチックBGA基板は先端メモリー向けが在庫調整の影響を受け、IC組立はスマートフォン市場の減速によりハイエンドスマートフォン向けの需要が減少するなど、それぞれ売上が減少しました。

これらの結果、当セグメントの売上高は1,277億52百万円(前連結会計年度比27.8%減)、経常利益は売上高減少の影響を大きく受け118億28百万円(同75.0%減)となりました。

売上高
前連結会計年度比 %減
経常利益 16,133 百万円
前連結会計年度比 48.3 %減
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売上高構成比率 %

売上高

(単位:

経常利益

(単位:

半導体製造装置向けセラミック静電チャックは、米国による対中半導体輸出規制やメモリー市況悪化などの影響を受け、大幅な減収となりました。リードフレームは、半導体市況低迷による在庫調整等を背景に受注が減少し、また、CPU向けヒートスプレッダーは、パソコン・サーバー需要減退等の影響を大きく受け、ガラス端子は光学機器向けが低調に推移し、それぞれ売上が減少しました。

これらの結果、当セグメントの売上高は738億78百万円(前連結会計年度比25.6%減)、経常利益は売上高減少の影響を大きく受け161億33百万円(同48.3%減)となりました。

(注)上記のセグメント別の売上高は外部顧客への売上高であり、経常利益はセグメント間取引調整前のものです。

対処すべき課題

今後の経済環境は、世界的な金融引き締めによる景気停滞懸念や中国経済の減速、また、地政学リスク等を背景としたエネルギー・物流価格の高止まりが見込まれるなど、世界経済の先行きは不透明な状況が継続するものと思われます。日本におきましては、賃上げ等に伴う雇用・所得環境の改善、インバウンド需要の一層の増加などが期待されるものの、エネルギーや資源価格の高騰および円安等に伴う物価上昇、金利変動等による個人消費や経済活動への影響が懸念される状況にあります。

半導体業界におきましては、AIを活用したサービスの急速な拡大等を背景に、メモリーをはじめとして半導体需要の回復が期待されるものの、パソコン、サーバーおよびスマートフォン市場の回復の遅れや半導体の在庫調整がさらに長期化する懸念が払拭できない状況が継続することも想定されます。一方、DX(Digital Transformation)の進展等による社会・経済のデジタル化や、持続可能な成長の実現を目指す脱炭素社会への移行と情報通信量の大幅な増加による電力消費の抑制を両立するGX(Green Transformation)の実現を支えるキーテクノロジーとして、半導体の重要性が高まるとともに、高度化・多様化する市場のニーズや需要動向の変化に対し、迅速かつ柔軟に対応し得る開発・生産体制を構築することを要するなど、世界規模での競争が一段と激化することが見込まれます。また、半導体のさらなる高機能化・多機能化のニーズへの対応をはかるうえで、半導体製造におけるパッケージングプロセスの重要性が高まっており、特に、当社が主な事業内容とする半導体パッケージは、半導体の一層の高機能化・高速化と省電力対応に欠くことのできない中核製品として半導体産業におけるニーズがさらに高まることが想定されます。

このような環境下にあって、当社グループといたしましては、営業体制の一層の強化に努め、市場環境の変化を的確に把握し、積極的な受注活動を展開することなどにより売上確保をはかるとともに、全社において生産性向上・効率化、徹底したコストダウン等の取り組みを強化してまいります。また、これまで高い成長が見込まれる市場向けに継続的・重点的に経営資源の投下をはかってまいりましたが、市場環境をふまえ、必要により時期・内容を適切に判断のうえ、引き続き当社製品の中長期的な市場拡大を見据えた設備投資を展開してまいります。半導体の一層の高機能化・高速化や省電力化等のニーズに対応するフリップチップタイプパッケージについて、昨年12月に竣工した千曲工場(長野県千曲市)における量産体制整備等をはかるとともに、半導体メモリーの高速化・大容量化に対応するプラスチックBGA基板については、生産能力増強を目的として新井工場(新潟県妙高市)において着工した新棟建設を着実に実行してまいります。加えて、中長期的に大きな成長が見込まれるHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)市場のニーズに対応する当社開発の「i-THOP®」をはじめとする先端半導体向け次世代フリップチップタイプパッケージの千曲工場における新たな設備投資計画を推進するとともに、情報通信量の大幅な増加に対応する次世代情報通信基盤の構築における基幹デバイスとして、消費電力の飛躍的な低減とデータ処理の超高速化を実現する「光電融合デバイス」の開発に注力するなど、これまで培ってまいりました最先端の半導体実装技術をもとに、市場ニーズを先取りした新商品・新技術の確立・量産化に取り組み、持続的な成長・発展を目指してまいります。

さらに、厳しい事業環境において、収益基盤の一層の強化をはかるべく、開発・設計から生産に至るすべての段階において品質を造り込み、優れた製品を安定的に供給することができる生産体制の確立に努めてまいります。

当社グループは、引き続き成長が見込まれる半導体市場にあって、常にお客様のニーズを起点とし、機能・性能、コスト、品質すべてにおいてお客様にとって価値の高い製品・サービスを提供することにより、「限りなき発展」を果たしてまいる所存であります。

なお、今後、当社株式については、JICキャピタル株式会社を中心に構成される公開買付者による公開買付けの実施が予定されています。

当社は、市況環境変化の激しい半導体産業にあって、当社製品・テクノロジーの中長期的な市場拡大の可能性を的確に捉え、機動的かつ柔軟な経営判断を行うことが重要との認識に基づき、成長市場向けの設備投資・技術開発を重点的に展開する当社の事業方針を基本的に支持し、政府系ファンドとして短期的な業績変動に動じず、中長期的な観点で企業価値の向上に資する取組みを推進していくことが可能なJICキャピタル株式会社を中心に構成される公開買付者による本公開買付けに賛同の意見を表明するとともに、当社の株主の皆様に本公開買付けへの応募を推奨することといたしました。今後、本公開買付けおよびその後に予定された手続により、当社株式を非公開化することを目的とする一連の取引を実行し、これまで以上の意思決定のスピードアップをはかり、当社事業推進において根幹となる人的資本の拡充などの施策を進めるとともに、次世代半導体ビジネスの推進や次世代製品における市場競争力の強化等に取り組み、中長期的かつ持続的な企業価値向上を目指してまいります。

連結計算書類