事業報告(2024年4月1日から2025年3月31日まで)
企業集団の現況に関する事項
事業の経過及びその成果
当期の世界経済は緩やかな成長が継続しました。当社の主要市場である半導体関連市場や情報通信関連市場においては、生成AIがデータセンター需要を牽引したことによりAI関連市場は拡大しましたが、それ以外の自動車関連市場等は低調に推移しました。
当期の売上高は、前期とほぼ横ばいの2兆145億円となりました。
利益は、コアコンポーネントセグメント及び電子部品セグメントにおける生産設備の稼働率低下や人件費等の増加に加え、コアコンポーネントセグメントの半導体部品有機材料事業での有形固定資産の減損損失等約430億円を計上したことにより、大幅に減少しました。これにより、営業利益は前期に比べ656億円(70.6%)減少の273億円、税引前利益は同725億円(53.3%)減少の636億円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は海外子会社における繰延税金資産の取り崩し等による税金費用約180億円を計上したこともあり、同770億円(76.2%)減少の241億円となりました。
(事業報告に関する注記)
- 金額及び株式数は表示単位未満を四捨五入しています。比率は百万円単位で比較した比率で、表示単位未満を四捨五入しています。
- グラフはご参考として掲載しています。
- 売上高構成比の数値合計は、「その他の事業」及び「調整及び消去」(売上高構成比計△1.0%)の項目があるため100%になりません。
- 当期より、前期まで「その他の事業」に含めていたエネルギーソリューション事業及び「本社部門損益等」に含めていたエネルギー関連出資に伴う持分法損益等を「ソリューション」セグメントの「その他」として業績管理することとしました。これに伴い、前期及び当期の業績は、この管理区分にて表示しています。
連結業績ハイライト




事業セグメント別の状況
コアコンポーネント

売上高:半導体製造装置向けファインセラミック部品等の販売は増加したものの、汎用データセンター向けFCBGAの販売減少を主因に、ほぼ横ばいとなりました。
事業利益:半導体部品有機材料事業における減収及び有形固定資産の減損損失等約430億円の計上を主因として、大幅に減少しました。
主要な事業内容
半導体製造装置用部品等の各種ファインセラミック部品や車載カメラモジュール、電子部品やICを保護するセラミック・有機パッケージ等を産業機械や自動車関連、情報通信市場向けに展開しています。
電子部品

売上高:欧州自動車市場低迷により当社製品の需要が減少したものの、情報通信及び産業機器市場向けコンデンサや水晶部品等の販売増加及び円安効果により、ほぼ横ばいとなりました。
事業利益:KYOCERA AVX Components Corporation (以下「KAVX」)グループにおいて、前期に発生した構造改革費用の影響はなくなったものの、同社グループにおける新工場の稼働率低迷に伴う原価率の上昇及び人件費等の増加により、大幅に減少しました。
主要な事業内容
コンデンサや水晶部品、コネクタ、パワー半導体等の各種電子部品やデバイス等を情報通信や産業機械、自動車関連、民生市場向けに展開しています。
ソリューション

売上高:ドキュメントソリューション事業が円安効果により増収となったことから、他の事業の減収を吸収し、ほぼ横ばいとなりました。
事業利益:主にドキュメントソリューション事業の増収に加え、コミュニケーション事業の構造改革による収益性改善もあり、増加しました。
主要な事業内容
一般向けから各種産業向けの空圧・電動工具や、複合機及びプリンター、携帯電話端末、情報通信サービス、住宅用蓄電システムなどの多種多様な機器、システム、並びにソリューションサービスを展開しています。
設備投資の状況
当期は、半導体関連市場や情報通信関連市場向け製品の需要増加に対応するため、前期に引き続き、生産能力拡大のための設備投資を実施しました。なお、コアコンポーネントセグメントにおいて、前期に工場建屋を建設したことから、当期の設備投資額は、前期に比べ198億円(12.2%)減少の1,419億円となりました。

対処すべき課題
近年、AIや5G/6G等の新技術が急速に進展しており、これらの新技術はスマートフォンやサーバー等の情報通信分野だけでなく、自動車やファクトリー・オートメーション(FA)等の幅広い産業へ波及していくことが予想されます。このような見通しに伴い、当社が手掛けるファインセラミック部品や電子部品等においても中長期的な需要の拡大が期待されるとともに、客先からの技術要求の更なる高度化が想定されます。また、技術の進化と併せて、脱炭素等の環境対応や労働人口減少に対する生産現場のスマート化の進展等、様々な社会課題の解決に貢献する技術やサービスへのニーズが高まっています。
当社はこれらの市場動向を事業機会として捉え収益性の向上を図るべく、当社が強みを有する事業へ一層注力するとともに、強固な財務基盤を活用し、社会課題の解決に貢献する製品やソリューションの展開に努めてまいります。
当社が対処すべき課題は以下のとおりです。
① 経営改革による高収益企業への回帰
当社は、高収益企業への回帰に向けて道筋をつけることを喫緊の課題と認識しており、早期に税引前利益率を2桁へ改善させることに取り組んでいます。短期的な施策としては、2026年3月期を構造改革期と位置付け、より抜本的な施策の策定及び実施に向けて、代表取締役、経営改革担当役員及びコーポレート担当役員が中心となる経営改革プロジェクトを発足させました。また、当プロジェクトの客観性及び専門性を高めるため、アドバイザーとして社外取締役及び社外のコンサルティングファームが参画する体制としました。
当社は当プロジェクトのもと、事業ポートフォリオの再編を進め、より一層コア事業に経営資源を集中することで、高収益企業への変革を図ります。
部品事業(コアコンポーネント及び電子部品セグメント)においては、半導体部品有機材料事業及びKAVXの早急な黒字化に加え、事業ポートフォリオの再構築により2桁の税引前利益率への改善を図ります。当社が高いシェアを有するセラミック関連事業をコア事業と位置付け、経営リソースを集中的に投じるとともに、開発力の強化及び生産能力の拡張により、市場シェア及び収益拡大を図ります。
ソリューション事業においては、各事業の収益性の底上げを図るとともに、既存製品の販売を主流とする事業形態から、ユーザー/社会が抱える課題を解決するソリューションを提供することを重視した事業ポートフォリオへの再編を図ります。また、これまで培ってきた「モノづくり」の強化に加え、共通のビジネスモデル/プラットフォームの構築により、「モノ売り」だけでなく「モノ×コト売り」を推進し、事業の成長を目指します。
② 資本戦略の見直し
当社は、事業面での経営改革とともに、資本戦略面での改革も実施します。資本効率の向上に向けては政策保有株式の縮減を進めており、株式売却により得られる資金を注力分野へのM&Aや設備投資、研究開発活動等の成長投資に活用していく考えです。また、計画的な自己株式の取得により、資本構成の更なる適正化と株主還元の充実化を推進していきます。
③ サステナブル経営の推進
当社は持続的な企業運営に向けて、環境や社会課題への対応並びにコーポレート・ガバナンスの強化に取り組みます。
環境面では脱炭素社会の実現を目指し、自社製品やサービスの展開による再生可能エネルギーの普及に努めています。また、温室効果ガス排出量削減目標を設定し、SBT認定を取得するとともに、2051年3月期のカーボンニュートラル達成を目指しています。
社会面では、経営理念である「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」の実現を目指し、多様な人材の活躍や従業員エンゲージメント向上への積極的な取り組みを進めています。
ガバナンス面では、持続的な企業価値向上を目指し、取締役会や指名報酬委員会の多様性の追求や実効性の向上、役員報酬体系の見直し等について継続検討し、ガバナンス強化を図ります。