事業報告(2024年4月1日から2025年3月31日まで)
当社グループの現況に関する事項
財産および損益の状況の推移

(ご参考)連結財務ハイライト






当連結会計年度の事業の経過および成果
当連結会計年度の世界経済は、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場の停滞の継続、アメリカの政策動向による影響など、先行きの不透明な状況が続きました。我が国経済においては、緩やかな回復が見られましたが、消費者物価の上昇など、不安定な状況が続きました。
当連結会計年度の海外トラック市場においては、欧米の販売台数は堅調に推移した一方、アジアは市況の厳しいタイを中心に減少し、全体での販売台数は前連結会計年度比で微増にとどまりました。国内トラック市場では、堅調な需要を背景に販売台数は増加基調で推移しました。
当連結会計年度における国内と海外を合わせた当社の総販売台数は、前連結会計年度に比べ142,172台(21.3%)減少し、524,637台となりました。国内車両販売台数につきましては、フルモデルチェンジした商品の販売拡大により、前連結会計年度に比べ14,535台(23.1%)増加の77,467台となりました。海外車両販売台数につきましては、CV(商用車(トラックおよびバス))は、バックオーダーが正常化した北米・欧州を中心に26,085台(10.7%)減少し218,220台、LCV(ピックアップトラックおよび派生車)は、タイ向け・輸出向けともに厳しい市況に加えて、タイ国内では販売サイドの在庫調整を実施したため、130,622台(36.3%)減少し228,950台となりました。また、産業用エンジンの売上高は、前連結会計年度に比べ94億円(8.2%)減少の1,051億円となり、その他の売上高は、保有事業等の伸長により前連結会計年度に比べ99億円(1.3%)増加の7,519億円となりました。
これらの結果、売上高につきましては、前連結会計年度に比べ1,786億円(5.3%)減少の3兆2,081億円となりました。内訳は、国内が1兆2,414億円(前連結会計年度比11.9%増)、海外が1兆9,667億円(前連結会計年度比13.7%減)です。
損益につきましては、価格対応および円安影響によるプラス影響はあるものの、海外市場の台数減および資材費等の上昇によるマイナス影響が上回った結果、営業利益は2,291億円(前連結会計年度比21.8%減)となりました。また、経常利益は2,482億円(前連結会計年度比20.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,344億円(前連結会計年度比23.8%減)となりました。
商品別の販売台数・売上高の内訳は、次のとおりです。


(資金調達)
当連結会計年度において、2030年代に向けた成長投資を積極的に実行すべく、金融機関より長期借入金として800億円および総額1,500億円のコミットメントライン契約の更改、ならびに第33回無担保社債による200億円の資金調達を行いました。
また、その他の資金調達として、国内の販売金融機能を担う、いすゞリーシングサービス株式会社が調達した長期借入金1,130億円ならびに第1回無担保社債100億円などがあります。
(設備投資)
当連結会計年度の設備投資につきましては、総額1,429億円の投資を行いました。設備投資の継続中の主なものといたしましては、中小型トラックのモデルチェンジ、生産設備の更新および近代化、ならびにEV開発研究設備に関する投資があります。
その他、当社グループの国内販売会社における建物の老朽化対応や土地の購入に関する設備投資などを実施しました。
(研究開発)
当連結会計年度における研究開発活動の主なものといたしましては、自動運転技術、コネクテッド技術およびカーボンニュートラル技術の開発があります。
その他、CVのラインアップの拡充や環境性能の向上、先進安全機能の追加などを実施しました。また、LCVでは発進加速性と動力性能、燃費性能の向上を実現しました。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は1,370億円です。


対処すべき課題
今後の世界経済は、アメリカの通商政策の影響によるリスクが存在し、金融市場の変動も懸念されています。そのため、経済環境の不確実性が高まり、経済の持ち直しが緩やかになる可能性があります。このような事業環境においても、商用車業界は、カーボンニュートラル(以下、CN)社会への貢献や物流を取り巻く社会課題の解決に向け、取り組みを引き続きリードしていくことが求められています。当社グループは、2024年4月に発表した中期経営計画「ISUZU Transformation - Growth to 2030」(以下、IX)に基づき、「安心×斬新」でお客様・社会の課題を解決する商用モビリティソリューションカンパニーへと進化するべく、主に以下の取り組みを推し進めています。
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①『運ぶ』を創造する新事業への挑戦
当社の強みである「安心」を生かし「自動運転ソリューション」「コネクテッドサービス」「CNソリューション」の新技術領域を起点として、「安心×斬新」でお客様と社会の課題を解決する新事業に挑戦します。 -
②『運ぶ』を支える既存事業の強化
当社グループの事業基盤をさらに強化することで、2030年にトラック・ピックアップトラック計85万台以上を世界のお客様に提供することを目指します。提供拡大にあたっては「商品の拡充」および「さらなるお客様ニーズへの対応力強化」の方針のもと、いすゞ・UDトラックスの商品を国内外で相互補完をするほか、販売・サービスチャネルの相互連携、ものづくり体制の強化、オンライン販売チャネルによるお客様の購入検討支援を推進します。 -
③ ISUZU ID を基軸とした経営基盤の確立
ISUZU ID のVISION・MISSIONを起点に、人的資本経営への進化を実現します。グローバル基準の人財マネジメント基盤を整備し「安心×斬新」を実現する人財に投資することにより、さらなる事業成長へつなげていきます。また、新事業展開に向けた技術・サービスの開発と、既存事業運営の効率化の取り組みを通して、事業戦略の推進に必要なDXケイパビリティの充実を図ります。
IXの発表以降、様々な事業環境の変化がありましたが、IXの中で掲げた「経営方針」および「2030年に目指す姿」は変わりません。上記の取り組みを通じて、IX前半3か年の最終年度(2027年3月期)に、売上高4兆円、営業利益率9%を目指します。そして、IX最終年度(2031年3月期)には、売上高6兆円、営業利益率10%以上を達成すべく、活動してまいります。なお、IXを達成するための経営基盤を確固たるものにするため、迅速かつ適切な意思決定を実現するガバナンス体制およびリスクマネジメントをはじめとした内部統制の強化にも引き続き注力してまいります。
株主の皆様におかれましては、今後とも変わらぬご支援、ご鞭撻を賜りますようお願い申しあげます。
(ご参考)中期経営計画「ISUZU Transformation -Growth to 2030」の進捗



IXの進捗については、2025年3月期 通期決算説明会資料・映像内で説明しています。
(ご参考)サステナビリティの取り組み
当社は、2024年4月に策定した中期経営計画「ISUZU Transformation - Growth to 2030」(以下、IX)において、経営理念体系「ISUZU ID」を実現するために2030年に目指す姿と道筋を具体化しました。カーボンニュートラルや物流DXなどお客様と社会の課題を解決する商用モビリティソリューションカンパニーとして、社会的価値と経済的価値をともに創出することで企業価値を向上していきます。IXでは、ISUZU IDを実現するための7つのエリアを4つのMISSIONと紐付けて掲げました。当社グループは、MISSIONに掲げた4つのNo.1を実現するため、気候変動を含む地球環境問題や全ての基盤となる人権尊重に積極的に取り組んでいきます。
BEV(注)フルフラット路線バス「エルガEV」の量産スタート
エルガEVは、国内初・車内フロアのフルフラット化を実現した大型路線EVバスです。CO2を排出しない走行、フルフラットなフロアによる安全性の改善に加え、遠隔で車両状態をモニターできる「プレイズム」の採用により、事業者様におけるBEV運用の高度化に貢献しています。
なお、エルガEVは「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」において、バス事業者3社が運行するシャトルバスとして採用されています。

- (注) BEV:
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バッテリー式電気自動車(Battery Electric Vehicle)。
電池に蓄えられた電気エネルギーを利用して走行する自動車
東京大学とともに「トランスポートイノベーション研究センター」を始動
当社は物流・交通分野の研究を推進するため、東京大学基金に10億円の寄付を行いました。この寄付により、東京大学は大学院工学系研究科内に「トランスポートイノベーション研究センター」を設立しました。同センターは恒久的な研究組織として2025年2月1日より本格的に始動しています。社会基盤学や人工知能など多岐にわたる学問領域で研究を進展させ、当社からも技術者を派遣することで持続可能な物流・交通分野の革新をともに目指します。また、学術の発展と高度な人材育成にも取り組み、『運ぶ』のイノベーションを産学共同で加速していきます。

統合報告書・サステナビリティレポートのご案内
当社グループの中長期的な事業戦略とその戦略を支える事業基盤、事業を通じた社会課題の解決への取り組みをまとめた「統合報告書」と、ステークホルダーの皆様と当社グループがともに重要と考えるESG課題に対する活動をまとめた「サステナビリティレポート」を発行しています。