事業報告(2024年4月1日から2025年3月31日まで)
SUBARUグループの現況に関する事項
事業の経過およびその成果
当期の世界経済は、地政学リスクの高まりや主要国でのインフレーションなどにより、先行き不透明な状況が継続しました。国内では、物価上昇が続くなかで緩やかな景気回復が見られました。また米国も底堅い雇用環境を背景に景気は堅調に推移しましたが、政権交代を受けて先行きの不透明感が増大しました。
このような経営環境のなか、当社は、自動車業界の100年に一度と言われる大変革期においても、「安心と愉しさ」という不変の提供価値を具現化するために、「柔軟性と拡張性」の考え方のもとで、「モノづくり」と「価値づくり」で世界最先端を狙う取り組みを強力に推進してきました。
当期の業績は、新型「フォレスター」およびストロングハイブリッドシステムを搭載した「クロストレック」が価格面で貢献したことならびに為替変動による増収効果などがあったものの、販売奨励金の増加および自動車売上台数の減少などにより、売上収益は4兆6,858億円と前期に比べ172億円(0.4%)の減収となりました。
利益面については、上記の理由に加え、研究開発費の増加および航空宇宙事業における引当金の計上などにより、営業利益は4,053億円と前期に比べ629億円(13.4%)の減益、税引前利益は4,485億円と前期に比べ841億円(15.8%)の減益、親会社の所有者に帰属する当期利益は3,381億円と前期に比べ470億円(12.2%)の減益となりました。




- 売上収益は、外部顧客への売上収益です。
- セグメント利益の調整額は、セグメント間取引消去です。
- その他セグメントには、不動産賃貸事業などが含まれています。
事業別の概況
当社の重点市場である米国の自動車全体需要は約1,620万台と前期を約3%上回りました。また、国内の自動車全体需要は約458万台と前期を約1%上回る結果となりました。
このような事業環境のなか、当期の国内の生産台数は、前期並みの60.2万台となりました。また、海外市場における販売状況および在庫台数などを踏まえた生産を行ったことにより、海外の生産台数は34.5万台と前期に比べ2.3万台(6.3%)の減少となりました。以上の結果、国内と海外の生産台数の合計は94.6万台と前期に比べ2.3万台(2.4%)の減少となりました。
国内は、「フォレスター」などの登録車を中心に堅調に推移し、売上台数は10.4万台と前期に比べ0.5万台(5.4%)の増加となりました。海外の卸売に相当する売上台数は、上記の販売状況などに呼応した生産を行ったことにより、83.2万台と前期に比べ4.5万台(5.2%)の減少となりました。以上の結果、国内と海外の売上台数の合計は93.6万台と前期に比べ4.0万台(4.1%)の減少となりました。なお、重点市場の米国におけるお客様への小売販売は、32か月連続で前年同月超えを達成し堅調さを維持しています。
新型「フォレスター」およびストロングハイブリッドシステムを搭載した「クロストレック」が価格面で貢献したことならびに為替変動などによる増収効果などがあったものの、販売奨励金の増加および自動車売上台数の減少などにより、売上収益は、4兆5,690億円と前期に比べ246億円(0.5%)の減収となりました。またセグメント利益は、4,204億円と前期に比べ411億円(8.9%)の減益となりました。




防衛事業における生産の増加およびヘリコプター事業における納入機数の増加などにより、売上収益は1,116億円と前期に比べ73億円(7.0%)の増収となりました。また、セグメント損失は、工事損失引当金を計上したことおよび民間機事業において納入機数が減少したことなどにより、196億円と前期に比べ223億円の減益となりました。

売上収益は51億円と前期に比べ2億円(3.1%)の増収となりました。セグメント利益は37億円と前期に比べ1億円(1.5%)の増益となりました。
対処すべき課題
<ありたい姿、提供価値、経営理念>

当社グループは、『“お客様第一”を基軸に「存在感と魅力ある企業」を目指す』という経営理念のもと、ありたい姿である「笑顔をつくる会社」の実現に向け、提供価値である「安心と愉しさ」を進化させていきます。そして、SUBARUを自動車事業と航空宇宙事業における魅力あるグローバルブランドに成長させるとともに、すべてのステークホルダーの皆様に事業活動へ共感いただくことを通じてSUBARUグループの持続的な成長と愉しく持続可能な社会の実現を目指しています。
そして、自動車業界の100年に一度の大変革期を勝ち残っていくために、「モノづくり革新」「価値づくり」を強力に推進し、「安心と愉しさ」を今後も追求し続けます。さらに、近年の非連続かつ従来以上にスピード感のある変化に対しては「柔軟性と拡張性」の観点を念頭に置き、よりタイムリーに対応していきます。
<経営環境の変化の下での収益確保に向けた取り組み>
自動車メーカーとしては決して規模の大きくない当社グループが、厳しい競争環境のなかで稼ぐ力を維持し持続的に成長していくためには、お客様にSUBARUならではの価値を認めていただくことが何より大事であり、また徹底した差別化戦略・付加価値戦略が不可欠です。これまで、当社グループの強みを発揮できる分野や市場にターゲットを絞り、限られた経営資源を投入する「選択と集中」を推し進めることで「付加価値」を高めて、競争力を強化してきました。
市場については米国を最重要市場と設定し、商品は日常からアクティブライフまで使い勝手が良く、米国市場を中心にお客様との親和性が高いSUV領域に、開発においては当社技術の強みを活かすことができる「安心と愉しさ」を追求する領域に経営資源を集中してきました。また、当社グループにとって大事なパートナーである販売店と共に、より良い社会の実現に向けて各地域に寄り添った支援活動「Love Promise」を米国において継続的に進めています。これらビジネスモデルや取り組みに対し、販売店・お客様・地域コミュニティからの共感をいただいており、共にSUBARUブランドを磨き、成長を遂げてきました。その結果、2008年からコロナ禍前の2019年にかけて12年連続で小売販売が前年実績を超え、販売台数は約3.7倍と急成長しました。コロナ禍後も米国市場での堅調さは維持し、2025年3月には米国で販売する自動車ブランドの中で唯一、32か月連続で前年同月超えを記録しました。
当期の当社グループの全世界の売上台数93.6万台のうち、米国における売上台数は66.2万台を占めました。米国売上台数のうち50%強は米国現地生産車となりますが、日本で生産され輸入する車両も半数程度あります。日本から輸入する完成車のほか、米国現地生産車においては一部の国から輸入する部品などが米国の関税政策の影響を受けます。
しかしながら、当社グループがこれまで育んできたSUBARUブランドの強さおよびお客様との関係の深さに鑑みると、今後も米国市場を最重要市場と位置付けることが、当社グループにとって最善の選択であると考えています。今後、米国市場で最量販車種である「フォレスター」の生産地を米国に移管することを予定し、米国市場で需要が伸びているストロングハイブリッド車両も生産いたします。また、売上台数の増加・売上構成の改善・販売奨励金の抑制・原価低減・費用圧縮などあらゆる収益機会の創出を行うことにより、収益の確保に努めます。
<大変革期の勝ち残りに向けて>
①「柔軟性と拡張性」の考え方のもと「モノづくり革新」と「価値づくり」を推進
当社は、BEV※1はカーボンニュートラルの実現に向けた有力な選択肢ではあるものの、その移行スピードは不透明であり、ICE※2系商品の需要も一定程度継続すると考えています。先行きの見えない変化に柔軟に対応していくためには、従来の考え方・手法を革新的に変えていく必要があり、2023年8月2日に発表した「新経営体制における方針」の中で、BEVを切り口に大変革に突き進むことを発信しました。
一方で、最終的にどのパワーユニットの商品を選択するかを決めるのはお客様です。そのための選択肢として、BEVだけではなく、ICE系商品も幅広く用意することこそが「柔軟性」であり、それを実現するために「モノづくり」と「価値づくり」で世界最先端を狙うという考え方は、方針発表当初から何ら変わるものではありません。その1つの手段として、更地にゼロから生産の構えを構築し、開発の手法・プロセスもゼロからスタートできるBEVに一旦舵を切り、「モノづくり革新」と「価値づくり」を実現し、その成果をICE系商品にも展開します。このようにして市場の変化に対応できる「柔軟性」を身に着けていきます。
※1:Battery Electric Vehicle(電気自動車)
※2:Internal Combustion Engine(内燃機関)

(商品ラインアップ)
BEVの市場投入については、2026年末までにSUVを4車種、2028年末までにはさらに4車種と合計8車種のラインアップを予定しています。2026年末までに投入を予定する4車種のうち、2022年に市場に投入した「ソルテラ」はトヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ」という。)と共に両社の強みを持ち寄りつくりあげ、その改良モデルを2025年4月に公開しました。また同時にBEVラインナップの第2弾となる新型「トレイルシーカー」を公開しました。新型「トレイルシーカー」は2026年以降に米国市場への導入を予定しており、当社の矢島工場で生産し、トヨタへの供給も予定しています。

また2024年度は、トヨタハイブリッドシステムをベースとし水平対向エンジンと機械式AWDを組み合わせたSUBARUらしい独自のストロングハイブリッドシステムである次世代e-BOXERを開発・公表いたしました。搭載する国内向け「クロストレック」、国内および米国向けの新型「フォレスター」を発表し、すでに多くの受注をいただいています。今後も市場の動向を見据えながら展開拡大を計画します。

さらに、SUBARUのフラッグシップクロスオーバーSUVとして歴史を積み重ねてきた「アウトバック」をフルモデルチェンジいたします。パワーユニットは、改良された水平対向2.5L直噴NAエンジンと2.4L直噴ターボエンジンを採用し、2026年以降に米国市場への導入を予定しています。このように、市場のニーズに合わせたBEV/HEV※3/ICEそれぞれのラインアップを充実させ、電動化移行期における商品の柔軟性を確保していきます。
※3:Hybrid Electric Vehicle(ハイブリッド自動車)
(生産体制の再編計画)
電動車の生産に向け、当社は2022年5月より生産体制の再編計画を段階的にアップデートしてきました。国内では2024年秋に北本工場において、ストロングハイブリッドシステムの基幹ユニットとなるトランスアクスルの生産を当初予定通りに開始しました。また、新型「トレイルシーカー」およびトヨタへ供給予定の新型BEVならびにガソリンエンジン車の混流生産を矢島工場にて計画しており、2025年度はその準備が本格化いたします。矢島工場にある2本のラインのうち、1本のラインを約半年にわたり生産を止めて工事を行うため、一定数の生産台数の減少を想定していますが、その影響を最小限に抑えられるように進めてまいります。
大泉新工場は現在、環境規制およびお客様の受容などの動向を踏まえながら、「段階的」な立ち上げ準備をしています。またバッテリーの生産工場は、パナソニック エナジー株式会社とともに大泉新工場の近接地への建設を予定しています。群馬県太田市を中心に近距離圏内に工場が位置するメリットを活かし、お取引先様および部品物流まで含めたサプライチェーンのさらなる「高効率化」を図ります。

段階的な立ち上げおよびロケーションメリットの活用などにより、「合理的な生産」の実現を目指すというこれまでの方針に変わりはありませんが、昨今の経営環境を踏まえ、投資の実行のタイミングはこれまで以上に精緻かつ柔軟に判断いたします。
(モノづくり革新)
モノづくり革新を通じて、小回りの利く「SUBARUの規模だからこそできる」製造・開発・お取引先様領域まで含めたサプライチェーンが一体となった“ひとつのSUBARU化”を進めることで、高密度なモノづくりを推進するという考え方を軸に、「開発手番半減」「部品点数半減」「生産工程半減」を実現し、世界最先端のモノづくりを成し遂げます。
開発を含むこれまでの「モノづくり」は、お客様ニーズの多様化やクルマの複雑化などにより対応領域が多岐にわたり、個々の領域の専門化およびお取引先様も含めた分業が一気に進みました。結果として、前工程の手離れを待つリレー式のモノづくりを定着させてきました。この形は、時代の変化に適応しながら成長する過程において発生した制約に対し、でき得る範囲で効率的かつ効果的に対応してきた結果であると評価しています。
一方で、従来とは大きく車両構造の異なるBEVという「新しい商品」を企画・開発し、更地にゼロから建設する「新しい工場」で生産を始めるということは、「モノづくり」のアプローチやプロセスを大きく変えるチャンスであると捉えており、これらを起点に合理的で高密度なモノづくりを推進し、徹底的に極めていきます。お取引先様と共に集い、開発・生産など様々な検討を行う「大部屋活動」では、「ひとつのSUBARU化」を推し進め、モノの流れである「サプライチェーン」と開発の流れである「エンジニアリングチェーン」を一体化した「アジャイル」なモノづくりの検討を進めています。高密度な工場ロケーションやサプライチェーン網、それらを基盤とした物流システム確立などの「高効率なパッケージ」と合わせて「開発手番半減」「部品点数半減」「生産工程半減」を実現します。
「新しい工場」では「生産ラインのモジュール化」および「柔軟なサブラインの構築」、そして当社が長年突き詰めてきた「変種変量短生産」の考えに基づく「高効率」な混流生産手法をさらに進化させていきます。更地にゼロから建設する「自由度」を十分に活かしながら、敷地および建屋空間の最大活用も視野に入れて効率化を図っていきます。同時に、ラインで流れるBEVを始めとした「新しい商品」に関しても開発初期段階での「車両構造」および「仕様」のシンプル化による部品点数の大幅な削減を進め、「生産工程半減」へつなげます。これらの取り組みに加え、ストロングハイブリッドシステムの基幹ユニットとなるトランスアクスルを製造する埼玉県の北本工場を含めた各工場のロケーションメリットを最大活用し物流効率を極限まで高めることにより、リードタイムの大幅な短縮につなげていき、従来以上にお客様のニーズにお応えする商品をより早くお届けすることを目指します。

(価値づくり)
米国では販売子会社であるスバル オブ アメリカ インク(SOA)と全米の販売店が一体となった「Love Promise」という活動が実を結んでいます。SUBARUの商品を核として、販売店・お客様・地域社会の人と人そしてSUBARUを強固につなげるこの取り組みこそが、SUBARUの「社会と未来への価値貢献」であり、これを守りさらに取り組みの輪を拡げていくという想いは、この先の大変革期や電動化時代においても決して変わるものではありません。そしてSUBARUは、フォーブス誌の「社会へ良い影響をもたらす企業ランキング」において、米国内3,000を超えるブランドの中で、2023年と2024年は2年連続で2位に、2025年には3位に選ばれました。これは、商品だけでなく、SUBARUの理念や取り組みに対する総合的な評価ですが、その根幹は「安心と愉しさ」という不変の提供価値を具現化するために追求し続けてきた「テクノロジー」にあると考えています。

例えば、運転支援システム「アイサイト」は、30年以上にわたる開発の過程で「安心」という「価値」を磨いてきました。今後も究極の安全を目指し、お客様にあらゆる運転環境下においても絶対的な安心を感じていただくために、SUBARUの強み領域におけるテクノロジーの進化を加速させていきます。商品や機能を核とし、お客様には「安心」「挑戦」「いつでも新しい」というような「SUBARUと共に過ごすことでの色褪せない情緒的な価値」を感じていただけると考えています。
電動化が進むことにより、「今まで以上にお客様の人生に寄り添うSUBARU」を目指していきます。
テクノロジーの進化に向けた取り組みのポイントは、2つあります。1つ目のポイントは「協業の深化」です。特にBEVでは新たな領域の「価値づくり」が必要であり、従来のお取引先様との関係を越えて、いかに協業のカタチをより深化させるかが大切です。2つ目のポイントは、「知能化」です。SUBARUらしい「安心と愉しさ」の強化はもちろん、BEVならではの「シームレスでストレスフリー」といった新たな価値を加え、そしてそれらをICE系商品にも展開していきます。
◆ 協業の深化
2024年1月に稼働を開始した群馬県太田市の開発拠点「イノベーション・ハブ」では当社従業員とお取引先様が垣根なく集い、開発・生産など様々な検討を行う「大部屋活動」を推し進めています。
軽量・コンパクトな次世代電動車両用e-Axleは株式会社アイシンと共同で開発しています。単なる共同開発の枠に留まらず、調達・生産の領域まで踏み込むことにより両社の強みを活かした競争力のあるe-Axleを実現するために、共に歩みを進めています。

互いに100年を超える歴史を持つパナソニック エナジー株式会社とは、「次の100年をつくり上げるために、互いの技術と知見を持ち寄り、世界最先端の性能とコストを実現する」という大義のもとで、バッテリー供給に関する協業を進めています。新設するバッテリー工場のロケーションメリットやコスト視点も踏まえた両社の様々な知見の活用など、競争力を高める取り組みを進めています。
世界的な半導体メーカーであるAMDとは、「2030年死亡交通事故ゼロ」の実現に向けて、アイサイトとAI推論の融合に関わる協業を行っています。その協業により実現する最適化されたSoC※4は、「ADAS※5」のみならず「車両運動」領域などを制御する「統合ECU」の重要な構成要素を担います。
これらの「協業の深化」により、世界最先端の「安心と愉しさ」の実現を目指していきます。
- ※4:System on a Chip
- ※5:Advanced Driver-Assistance Systems(先進運転支援システム)
◆ 知能化
「統合ECU」はSUBARUの強みである安全や走りの領域に絞り込んだ「内製開発」により、コスト競争力を保ちつつ、車両の「頭脳」として、SUBARUらしい高度な「知能化」を実現します。「統合ECU」を活用した制御ノウハウやBEVをつくりあげる過程で得た知見を蓄積するとともに、当社が得意とする内製化のスピードをさらに高め、ICE系商品への活用および実装も踏まえて検討を深めます。

当社グループは、この100年に一度と言われる大変革期の中、「モノづくり革新」と「価値づくり」を推し進めます。開発・生産の工程はもちろん、事業活動全体の効率化・生産性を突き詰め、商品競争力を磨き、SUBARUらしいアフォーダブルな商品として提供することで「お客様に感じていただける価値の最大化」に取り組みます。2030年以降に向けてそれらを実現することにより、「業界高位の収益力」を維持し、勝ち残っていきます。
②脱炭素社会に向けた取り組み
当社は脱炭素社会に貢献するため、商品(スコープ3)および工場・オフィスなど(スコープ1および2)に関する長期目標(長期ビジョン)を2050年とし、それを補完する中期目標(マイルストーン)を設定しています。これらの目標は非連続かつ急速に変化する事業環境に応じて随時見直されており、2023年には、工場・オフィスなどの中期目標を「2035年度に2016年度比60%削減」に引き上げました。当社のバリューチェーン全体のCO2排出量は販売した商品の使用によるものが大部分を占めるため、前述の通り自動車の電動化に向けた取り組みを着実に進めていくことが重要です。また、当社グループが直接排出するCO2(スコープ1および2)の削減に当社自らが率先して取り組むことは、バリューチェーン全体での削減活動をより充実させていくものと考え、再生可能エネルギーの利用や高効率な設備への更新などに取り組んでいきます。
なお、商品および工場・オフィスに「素材部品」「輸送」「廃棄」を加えたバリューチェーン全体の脱炭素社会に向けた取り組みは、各領域でのCO2削減を目的とした会議体にて管理され、最終的には環境委員会にて全体統括されています。
<人財づくり>
当社が目指す世界最先端の「モノづくり」「価値づくり」は「真の競争力をもった人・組織」により実現されると認識しており、その強化に取り組んでいます。当社では「真の競争力をもった人・組織」とは、「人財それぞれの異なる能力が最大発揮されている」「本質業務に注力し成果創出までのスピードが速い」「全体最適の意識を持ち、組織の壁を容易に越えながら動ける」「挑戦・応援できる風土がある」状態と捉えており、その実現に向けた各種施策を実施しています。
「個の成長」に向けた人財育成では、自律的なキャリアプランの形成を職場や上司がサポートする仕組みをベースに、さらにチャレンジを加速する施策として「公募型ジョブローテーション」や従業員が学びの機会を自ら探し出し会社から全面支援を受けることができる制度などを導入し、推進しています。ほかにも全従業員が自身のレベルや目的に応じて選択できる多様な研修プログラムを整備し、個々に応じたキャリア開発が実現できうる仕組みづくりを進めています。「個の成長」を後押しする仕組みの整備や様々な施策の継続により、自律的な人財の育成が着実に実を結びつつあります。
「組織の成長」に向けて、直接部門では全員参加の現場主権による現場力強化活動を、間接部門ではDX推進による業務の効率化・機械化の推進を基軸として生産性向上を図り、成長につなげていきます。IT・AI活用の領域においては技術部門で構築済の「ソフトウェア人財育成プロジェクト」に加え、すべてのSUBARU社員を対象とした「ITアカデミー」を設立しました。
また、さらなる成長を目指す観点では、「つながりの強化」を最重要項目に位置付け注力していきます。経営として目指す姿と従業員一人ひとりの取り組みのつながりの深化、部署間の連携や協働の強化、全社のチャレンジを支援・応援できる仕組みづくり、従業員同士の接点増加などを通じて、個々のチャレンジをより大きな成果につなげるとともに、挑戦に向かう人財創出スピードを向上させていきます。一例として全役職者約4,000名を対象に「組織の壁を越え、組織の力を強化する」手法を学ぶ大規模研修を進めております。
自律した人財一人ひとりが持つ熱意や個性を最大限に活かし、「ひとつのSUBARU」として持続的に最大限の成果を創出できるよう、「真の競争力をもった人・組織」の実現に向けた取り組みを強力に推し進めてまいります。
<資本コストや株価を意識した経営>
当社は持続的な成長に向けて「資本コストや株価を意識した経営の実現」が不可欠だと考えています。当社の直近の資本コスト(WACC ※CAPMベース)は7%半ばですが、ROEは12.8%と資本コストを上回る数値で推移しております。自動車業界の大変革期においても、世界最先端の「モノづくり」「価値づくり」を着実に実行し、競争力のあるSUBARUらしい商品を市場へ投入することで2030年を見据えた長期的目標として、「業界高位の収益力」「ROE10%以上」を追求していきます。
当期は、足許のキャッシュの状況および株価の水準などを踏まえ、より一層、株主の皆様に報いる趣旨から安定的・累進的な配当を目指し、DOE(親会社所有者帰属持分配当率)の考え方を取り入れた株主還元方針に変更いたしました。一方、PERについては、現状6倍前後とプライム市場平均PERに対し低位で推移し、また、PBRは1倍を下回っています。米国における関税政策など自動車産業の不確実性を背景に期待が醸成されづらい状況であることが要因と捉えており、今後より一層のIR活動の強化に取り組み、「モノづくり革新」「価値づくり」の着実な実行の進捗開示などを通して、当社への期待値向上へつなげていきます。
(ご参考)SUBARUグループのサステナビリティ
当社グループは、ありたい姿「笑顔をつくる会社」の実現に向け、サステナビリティ重点6領域の考え方を取り入れ、SUBARUグローバルサステナビリティ方針に基づいた取り組みを推進してきました。従業員一人ひとりが成長の原動力となり、提供価値である「安心と愉しさ」をさらに進化させ、お客様をはじめとしたステークホルダーの皆様との関係を深めることで、SUBARUグループの持続的な成長と愉しく持続可能な社会の実現の両立を図っていきます。
<CSRから「サステナビリティ重点6領域」への発展>
自動車産業が100年に1度と言われる大変革期をむかえるなか、当社グループは2023年8月に「新経営体制における方針」を公表し、「モノづくり革新」と「価値づくり」で世界最先端を目指すべく取り組みを進めています。時代ごとに求められる価値をお客様やステークホルダーの皆様にお届けし、当社グループの持続的な成長につなげていくため、また、昨今のサステナビリティを取り巻く環境の変化などを踏まえ、2023年以降、SUBARUグループのサステナビリティについての議論を重ねてきました。そして、SUBARUの価値や強みを一層活かした形で持続可能な社会の実現とSUBARUグループの持続的な成長を両立していきたいという思いのもと、従来のCSR重点6領域を「サステナビリティ重点6領域」として発展させています。なお、「重点領域」については、社会環境やサステナビリティに関する考え方の変化の趨勢を捉え、以下の2つの領域を見直し、さらに深化させていきます。
「人を中心とした自動車文化」を「人を中心としたモビリティ文化」へ
従来は主に自動車事業に焦点を当てたものでしたが、今後は航空宇宙事業も含めたSUBARUグループの商品やサービスの多様性を持つと同時に、SUBARUのDNAを継承しつつ時代の変化に対応した新たな価値をお客様や社会に提供し、他社とは異なる存在感と魅力ある企業を目指していきます。
「ダイバーシティ」を「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)」へ
当社グループでは、働くすべての従業員の多様な価値観を尊重し、働きやすい職場環境の整備をするなどダイバーシティの取り組みを推進してきました。今後は、これに加え、すべての従業員が公平な機会を得られるエクイティの環境を提供し、多様な個が一丸となって能力を最大限発揮していくことで、イノベーションを創出し、SUBARU独自の持続的な価値を創造していきます。
なお、重点6領域の「ありたい姿」は、より長期視点に立ちSUBARUが目指す不変的な方向性を示すために時間軸を設けないこととし、「重点テーマ」はSUBARUグループの強みを活かして重点的に取り組む項目を設定することで、それぞれの定義を明確化し「サステナビリティ重点6領域」の各取り組みにおけるマネジメントを一層強化していきます。
今後は、従来のCSR視点に加え、より長期視点で事業活動そのものを通じた社会価値・経済価値の創出を目指していきます。
◆ サステナビリティ重点6領域
