事業報告(2024年9月1日から2025年8月31日まで)

会社の現況に関する事項

事業の経過及びその成果

当事業年度におけるわが国経済は、米国の通商政策による影響が自動車産業を中心にみられるものの、緩やかに回復しております。雇用情勢は改善の動きがみられ、個人消費は持ち直しの動きがみられます。企業収益は、米国の通商政策による影響が自動車産業を中心にみられる中で、改善に足踏みがみられます。

当家電小売業界における売上は、テレビや冷蔵庫が低調に推移いたしましたが、スマートフォン、パソコンやエアコン等が好調であったため、総じて堅調に推移いたしました。

このような状況の中、当社は、「家電を通じて 笑顔あふれる 明るく暖かいみらいをつくる くらし応援企業であること」のパーパスのもと、「お客様のくらしを『より快適に』『より便利に』『より楽しく』します。くらし応援コジマ」をビジョンに掲げ、「生産性向上戦略」及び「成長戦略」の2大戦略を推進しております。加えて、環境課題の解決や地域社会とのより良い関係構築及びガバナンスの強化を重視しながら、サステナビリティ経営に取り組み、企業価値の向上に努めております。

この経営戦略のもと、当社は販売員の接客品質向上に努め、他社との差別化を図っております。2024年11月には、「関東研修センター」(東京都板橋区)に続いて2拠点目となる「東北研修センター」を宮城県仙台市に開設し、販売員の教育機会の拡充に努めてまいりました。商品知識の習得だけでなく、礼節や清潔感に関しても教育を進めております。お客様のニーズを汲み取りご提案ができる販売員の育成に取り組み、引き続き「くらし応援企業」としてお客様の生活に寄り添ってまいります。また、販売員一人ひとりの生産性を高めるため、電子棚札の導入を101店舗に拡大し、店舗業務の効率化を進めております。加えて、売上や利益に対する販売員の貢献度を、より明確な評価指標で算定する新たな人事評価制度を導入することでモチベーションを高め、更に接客に注力できる体制を構築し、人時生産性の向上に取り組んでおります。従業員エンゲージメントの向上にも注力しております。「ウォーキングイベント」を始めとした社内向けイベントを定期的に開催し、従業員が主体的に健康づくりに取り組めるよう環境整備に取り組んでおります。そして、店頭においてスマートフォンやゲーム機等のリユース品の販売を当期より開始し、25店舗に導入しております。今後も引き続きリユース商品の拡充を行うことで、利便性の向上、サーキュラーエコノミーの推進に努めてまいります。

当社は、2025年4月に迎えた創業70周年を機にリブランディングの推進に努めております。新ブランドメッセージ「Big Sunny Smile 笑顔で、地域に陽だまりを。」を社内外へ発信し、ステークホルダーの皆様に対し、各種キャンペーンや感謝セール等の取り組みを実施しております。5月には、従業員持株会に加入している従業員に対し、当社への経営参画意識を高めることで中長期的な企業成長を促すことを目的として、特別奨励金70株の付与キャンペーンを実施いたしました。今後も引き続き、創業70周年記念事業を盛り上げるべく様々な施策を展開してまいります。

成長事業の収益拡大に向けた取り組みにつきましては、EC事業において、コジマネットでのお買い物の際に「コジマ×ビックカメラカード」、「コジマクレジット&ポイントカード」による無金利分割払いが可能となりました。また、2025年5月より、関東1都3県・大阪府の指定エリアにおける最短当日配送を、コジマネットで開始いたしました。決済方法の拡充、コンテンツのリッチ化や配送サービスの拡充により、家電製品を安心してお買い物いただけるようECサイトの利便性向上に努め、収益拡大に取り組んでおります。住設事業においては、成長領域であるリフォーム(屋根・外壁塗装、水回り)や再生可能エネルギー関連商品(太陽光発電、蓄電池)の販売専任者だけでなく、店舗管理者への教育にも注力することで、販売力の強化に努めております。さらに水回りリフォームの分野では、前年同期から新たに売場改装を8店舗で行い、2025年8月末時点において、28店舗に売場を導入しております。今後も引き続き、新たな事業の開発やビジネス機会の創出に努め、成長を加速させてまいります。

サステナビリティ経営の推進につきましては、当社は環境課題の解決及び地域社会とのより良い関係構築に向け、各種取り組みを行ってまいりました。環境面では、気候関連リスク及び機会の評価に用いる指標として、温室効果ガス排出量(Scope1、Scope2)を指標と定め、2030年までにScope1、Scope2合計の温室効果ガス排出量を2017年度比で55%削減することを目標としております。その具体的な取り組みとしまして、コーポレートPPA方式による太陽光発電パネルの導入店舗を更に拡大し、12店舗に導入しております。また、店舗駐車場へのEV用充電設備の導入につきましては42店舗に拡大し、EV普及促進への貢献に努めております。社会面では、未来を担う子どもたちの成長を応援することや地域の活性化を目的として、2025年7月に、栃木県子ども総合科学館の「ネーミングライツパートナー契約」を栃木県との間で締結いたしました。なお、同施設は10月3日に、「コジマ子どもサイエンスパーク」としてリニューアルオープンしております。また、8月には、従業員への還元やお取引先への配慮が重要であることを踏まえ、マルチステークホルダー方針を策定し、公表いたしました。引き続き、多様なステークホルダーとの価値協創に取り組んでまいります。 

店舗展開においては、2025年4月26日に「コジマ×ビックカメラ コーナン田無店」(東京都西東京市)を始め2店舗を開店した一方、6月8日に「コジマ アウトレット堺店」(大阪府堺市)を始め2店舗を閉店しました。また、7月19日には、「コジマ×ビックカメラ 駒生店」(栃木県宇都宮市)を改装し、「コジマ RE.OUTLET駒生店」としてリニューアルオープンいたしました。これにより、2025年8月末現在の店舗数は139店舗となっております。なお、10月8日には、「コジマ×ビックカメラ イオンモール仙台上杉店」(宮城県仙台市)をオープンしております。

また、当社は、2024年11月25日に「2025年8月期 ~ 2029年8月期 中期経営計画」を公表いたしました。「店舗ブランド力強化」、「人時生産性向上」、「成長事業における収益拡大」、「資本効率向上」の4つの重点戦略を推進し、経営目標の達成を目指してまいります。

当事業年度の売上高につきましては、上半期(9月~2月)では、携帯電話(スマートフォン)が、残価設定型契約による買い替え需要の高まりから好調に推移したことに加えて、各自治体が実施している助成制度の恩恵により、エアコンと住宅設備(太陽光発電パネル・蓄電池)が好調に推移したことから、前年同期に対し増収となりました。下半期(3月~8月)では、携帯電話と住宅設備が引き続き好調に推移したことに加えて、2025年10月のWindows10サポート終了に伴う買い替え需要の高まりから、パソコンが好調に推移しました。またエアコンは、6月の猛暑による反動で7月は一時的に低調であったものの、下半期全体としては堅調に推移しました。その結果、増収となりました。売上総利益につきましては、店舗における高付加価値商品の販売強化を行ったことにより、売上総利益額は前年同期を上回りました。なお、粗利率が比較的低い携帯電話等の売上構成比上昇により、売上総利益率は前年同期に対して下回りました。販売費及び一般管理費につきましては、主に将来の成長に向けた積極的な投資を行ったことから、増加となりました。具体的な内訳としまして、人的資本投資の推進による人件費の増加、業務効率化及びサービス拡充等に伴うシステム投資によるシステム維持費の増加、リブランディングの推進として、創業70周年記念事業に伴うCM費用や販促費用の増加が挙げられます。一方で、物流費、広告宣伝費及び販売促進費等の効率的な経費コントロールに努めたことにより、売上に対する販管費率が大きく減少し、各段階利益は増益となりました。

以上の結果、当事業年度の売上高は 2,827億90百万円(前年同期比 4.8%増)、営業利益は 73億25百万円(前年同期比 15.2%増)、経常利益は 77億32百万円(前年同期比 16.7%増)、税引前当期純利益は 65億95百万円(前年同期比 21.6%増)、当期純利益は 47億9百万円(前年同期比 17.7%増)と、増収増益となりました。

品目別売上高、同構成比

重要な親会社の状況

親会社との関係

当社の親会社は株式会社ビックカメラ(以下「親会社」という。)で同社は当社の普通株式39,000千株を保有し、その議決権比率は50.47%であります。

親会社との間の取引に関する事項
イ.
当該取引をするに当たり当社の利益を害さないように留意した事項

当社は親会社との間で「商品の発注及び代金の支払業務の委託」等の取引を実施しておりますが、当該取引をするに当たっては、少数株主の保護のため、当該取引の必要性及び取引条件が第三者との通常の取引と著しく相違しないこと等に留意し、合理的な判断に基づき、公正かつ適正に決定しております。

ロ.
当該取引が当社の利益を害さないかどうかについての取締役会の判断及びその理由

当社は、親会社からの独立性確保の観点も踏まえ、独立社外取締役からも当社経営に対する適切な意見を得ながら、取締役会において多面的な議論を経たうえで、当該取引の実施の可否を決定しております。

事業運営に関しては、取締役会を中心とした当社独自の意思決定に基づき業務執行をしており、上場企業としてのお互いの立場を尊重しつつ経営の独立性を確保しながら、適切に経営及び事業活動を行っております。

ハ.
取締役会の判断が社外取締役の意見と異なる場合の当該意見

該当事項はありません。

親会社との重要な財務及び事業方針等に関する契約等

当社は親会社との間で資本業務提携契約を締結し、商品仕入面での連携、物流・システム面での連携、店舗開発、店舗運営ノウハウ及び店舗マネジメント並びに販売促進の連携、什器・間接資材の共同購入、人材交流の多方面にわたり両社で共同して提携を推進することにより、収益性の改善及び競争力の強化に努めております。

当社の取締役会の諮問機関として、独立諮問委員会を設置しております。独立諮問委員会は独立社外取締役で構成されており、親会社または親会社グループ所属企業と当社少数株主との利益が相反する重要な取引・行為について、当該取引等を開始する前に審議・検討をしております。独立諮問委員会で審議した内容を取締役会に対して答申しております。

また、当社と親会社の間で利益相反の恐れがある取引及び重要な契約等を締結する際、当社役員である中澤裕二氏及び秋保徹氏は親会社の役職員を兼務しているため、本件意思決定の決議に参加しないこととして、利益相反を回避しております。

対処すべき課題

当社は、「家電を通じて 笑顔あふれる 明るく暖かいみらいをつくる くらし応援企業であること」のパーパスのもと、「お客様のくらしを『より快適に』『より便利に』『より楽しく』します。くらし応援コジマ」をビジョンに掲げ、地域の皆様からもっとも身近で愛され、必要とされるコジマを目指してまいります。

「2025年8月期~2029年8月期 中期経営計画」における4つの重点戦略の目標達成に向け、経営戦略として掲げている「生産性向上戦略」及び「成長戦略」を更に推進し、企業価値の向上に努めてまいります。「生産性向上戦略」におきましては、「営業利益の向上」、「人的資本経営の推進」及び「事業継続基盤の確立」に取り組み、「成長戦略」におきましては、「自社ブランド強化による店舗における家電販売力の向上」及び「成長事業の強化に向けた継続投資」に取り組んでまいります。

家電市場におきましては、物価上昇を背景に節約志向が高まる中、当社は、お客様の潜在ニーズをしっかりと汲み取りながらご提案することで、他社との差別化を図るとともに家電販売力の向上に努めてまいります。新たに立ち上げた「営業支援部」のもと、お客様視点を重視した顧客満足度の向上や従業員教育の更なる強化、業務効率化の推進によって、接客に集中できる環境づくりに取り組んでまいります。さらに当社は、2025年4月に創業70周年を迎え、記念セール等の各種販促施策を現在展開しておりますが、これを機により一層、リブランディングの推進に努め、店舗ブランド力を強化してまいります。また、社長がCWO(最高健康責任者)として、健康に関する課題の改善を目指す健康経営の推進や、活躍できる人財の育成等に取り組んでまいります。「従業員」一人ひとりがいきいきと働ける職場環境を整え、エンゲージメントの向上を目指してまいります。

そして、当社は3つの成長事業を掲げており、EC事業、法人事業、住設事業の収益拡大に、より一層注力してまいります。EC事業においては、自社サイトのコンテンツリッチ化を図ることで売上シェアを高めていくとともに、「メルカリ」の活用により実店舗とインターネット通販の連携を強化することで、収益拡大に取り組んでまいります。また、法人事業においては、既存顧客との関係強化に加えて、新たな法人事業所の立ち上げにより新規顧客を開拓し、更なる収益拡大につなげてまいります。そして、住設事業においては、再生可能エネルギーやリフォーム事業の人財育成を強化するとともに、売場改装による提案の充実やエアコン販売を起点としたお客様との関係構築、訪問ビジネスの開拓等を推進し、収益拡大を図ってまいります。

加えて、サステナビリティ経営の推進による環境課題の解決、地域社会とのより良い関係構築及びガバナンスの強化に努めるとともに、ESG情報の開示を充実させることで継続的な成長を図り、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

株主の皆様におかれましては、何卒倍旧のご支援とご鞭撻を賜りますよう重ねてお願い申しあげます。

計算書類