事業報告(2023年9月1日から2024年8月31日まで)

会社の現況に関する事項

事業の経過及びその成果

当事業年度におけるわが国経済は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復しております。企業収益は、総じてみれば改善し、雇用情勢は改善の動きがみられ、個人消費は一部に足踏みが残るものの、このところ持ち直しの動きがみられます。

当家電小売業界における売上は、パソコン、ゲーム等が低調に推移いたしましたが、スマートフォン、理美容等が好調、調理家電等が堅調であったため、総じて堅調に推移いたしました。

このような状況の中、当社は、「家電を通じて 笑顔あふれる 明るく暖かいみらいをつくる くらし応援企業であること」のパーパスのもと、「お客様のくらしを『より快適に』『より便利に』『より楽しく』します。くらし応援コジマ」をビジョンに掲げ、「生産性の向上」及び「持続的な成長」の2大戦略を推進するとともに、短期的な視点での「収益性」、中期的な視点での「成長性」、超長期的な視点での「社会性」の3つの観点に基づいて事業に取り組み、企業価値の向上に努めております。

「収益性」としましては、店舗における販売員の「接客力・専門性の強化」に取り組み、今期新たに開設した「上板橋研修センター」において、基礎的な商品知識から実際の接客までを一貫して学ぶことができる研修プログラムを導入し、販売員一人ひとりの接客レベル向上に努めております。さらには、販売員向けにエアコン設置工事研修を実施し、エアコン販売の知識向上を図ることで、より省エネ性能に優れた高付加価値商品をご提案できるよう育成に努めております。あわせて、接客対応の時間をより長く確保するため、電子棚札の導入店舗を拡大し「業務効率の改善」にも努めております。商品の機能説明だけではなく、お客様の生活シーンに寄り添った付加価値の高い商品をご提案できる接客を強化することで、他社との差別化を図り、収益の増加と生産性の向上に努めております。また、「集客力の強化」に取り組み、お客様から大変ご好評をいただいているミニ四駆大会や、地域の企業・自治体と連携したイベントを積極的に開催するなど、ご来店のお客様に楽しんでいただける機会の創出に取り組んでおります。

「成長性」としましては、「EC事業」において、自社サイトである「コジマネット」の機能強化を図り、商品紹介コンテンツのリッチ化や「コジマ×ビックカメラカード」で無金利分割60回までのお支払方法を導入いたしました。また、2024年7月より、株式会社ベネフィット・ワンが提供する福利厚生サービスと連携し、「コジマネット」への送客を図るなど、収益の向上に取り組んでおります。「住設事業」においては、引き続き、住設部門の売場を充実させた店舗リニューアルを進めることで、スマートハウスのご提案を強化し、太陽光発電や蓄電池等の再生可能エネルギー関連商品の拡販に努めております。加えて、外壁屋根の塗装や修繕リフォームの認知度向上にも取り組み、売上の拡大を図っております。

「社会性」としましては、当社は、企業活動を通じて社会課題を解決し、企業価値を高め成長することを目的とした「サステナビリティ経営」を推進しております。「環境に配慮した取り組み」としまして、GHG(温室効果ガス)排出量の削減へ向け、コーポレートPPA方式による店舗屋上・屋根等への太陽光発電設備の導入を引き続き進めており、現時点で10店舗への設置を完了しております。また、ご来店いただくお客様の利便性向上を図るとともに電気自動車(EV)の普及促進に貢献するため、EV用充電設備を20店舗の駐車場に計38台設置し、さらには、当社のサービスである「くらし応援便」の車両として、EVを11店舗に導入し順次拡大を進めております。その他、発泡スチロールの減容機を導入し、発泡スチロールごみをリサイクル可能な資源に変えることにより、資源循環に貢献しております。「人的資本経営の取り組み」としましては、当社の将来にわたる成長に最も大切な「従業員」のため、「従業員エンゲージメント」の向上に努め、活躍できる人財の育成や健康経営の推進等に取り組んでおります。人財の育成につきましては、従業員のスキル向上と継続的な成長をサポートするため、各種研修の実施やeラーニングを活用した学習機会の充実、資格取得の支援等に取り組んでおります。また、「タレントマネジメントシステム」の活用を拡大し、従業員一人ひとりの適性や経験に基づいた人財配置やスムーズなキャリア形成を進めております。ダイバーシティの推進につきましては、多様な人財がそれぞれの能力や個性を発揮し、いきいきと働き続けることができる職場環境の整備を進め、女性従業員のキャリアアップや男性従業員の育児休業取得支援、シニア人財の活躍支援等を推進しております。2024年8月には、従業員の仕事と不妊治療の両立支援への取り組みが評価され、厚生労働大臣より「プラチナくるみんプラス」の認定を取得しました。健康経営の推進につきましては、「ウェルネス推進室」のもと、従業員の健康を増進するために「ウォーキングイベント」を開催するなど、従業員が主体的に心身の健康づくりに取り組める環境を提供しております。2024年3月には、当社の健康経営に関する取り組みが評価され、「健康経営優良法人2024 (大規模法人部門)」認定企業の上位 500 法人に与えられる「ホワイト500」の認定を取得しております。

また、ステークホルダーの皆様に当社への理解をより深めていただくため、「統合報告書2023」の発行や、コーポレートサイトの「企業IR情報・サステナビリティページ」(https://www.kojima.net/corporation/)のリニューアルも実施しております。 

店舗展開におきましては、2023年11月23日に「コジマ×ビックカメラ 新さっぽろデュオ店」(北海道札幌市)をはじめ2店舗を開店した一方、2024年6月30日に「コジマ×ビックカメラ ファボーレ富山店」(富山県富山市)をはじめ4店舗を閉店したことから、2024年8月末現在の店舗数は139店舗となりました。

なお、7月10日には、インバウンド需要をターゲットにしたポップアップストア「コジマ×ビックカメラ 沖縄アウトレットあしびなー店」(沖縄県豊見城市)を期間限定で開店しております。

当事業年度の上半期(9月~2月)におきましては、巣ごもり需要等の反動減影響により、テレビやパソコンなどが低調に推移したことに加えて、EC事業を中心に利益重視の体制強化を実施してきた影響によって、売上高が減少しましたが、売上総利益率は大幅に改善いたしました。その結果、営業利益及び経常利益は、前年同期をわずかに下回る水準で着地いたしました。下半期(3月~8月)におきましては、携帯電話やエアコンの好調、テレビの需要回復に伴い、売上高は増収に転じました。さらにEC事業の収益改善に加えて、店舗における高付加価値商品の販売強化により、売上総利益率は、引き続き前年同期に対して大幅に改善いたしました。また、販売費及び一般管理費につきましては、将来の成長に向けた積極的な人的資本投資やシステム投資等の費用が増加した一方で、デジタル広告・スマートフォンアプリの活用による広告宣伝費の削減や、節電対策による水道光熱費の削減など、経費コントロールに継続して取り組んできたことから、各段階利益は増益となりました。

以上の結果、当事業年度の売上高は 2,698億68百万円(前年同期比 0.7%増)、営業利益は 63億59百万円(前年同期比 32.0%増)、経常利益は 66億27百万円(前年同期比 28.8%増)、税引前当期純利益は 54億25百万円(前年同期比 10.8%増)、当期純利益は 40億1百万円(前年同期比 39.5%増)と、増収増益となりました。

品目別売上高、同構成比

重要な親会社の状況

親会社との関係

当社の親会社は株式会社ビックカメラ(以下「親会社」という。)で同社は当社の普通株式39,000千株を保有し、その議決権比率は50.67%であります。

親会社との間の取引に関する事項
イ.
当該取引をするに当たり当社の利益を害さないように留意した事項

当社は親会社との間で「商品の発注及び代金の支払業務の委託」等の取引を実施しておりますが、当該取引をするに当たっては、少数株主の保護のため、当該取引の必要性及び取引条件が第三者との通常の取引と著しく相違しないこと等に留意し、合理的な判断に基づき、公正かつ適正に決定しております。

ロ.
当該取引が当社の利益を害さないかどうかについての取締役会の判断及びその理由

当社は、親会社からの独立性確保の観点も踏まえ、独立社外取締役からも当社経営に対する適切な意見を得ながら、取締役会において多面的な議論を経たうえで、当該取引の実施の可否を決定しております。

事業運営に関しては、取締役会を中心とした当社独自の意思決定に基づき業務執行をしており、上場企業としてのお互いの立場を尊重しつつ経営の独立性を確保しながら、適切に経営及び事業活動を行っております。

ハ.
取締役会の判断が社外取締役の意見と異なる場合の当該意見

該当事項はありません。

親会社との重要な財務及び事業方針等に関する契約等

当社は親会社との間で資本業務提携契約を締結し、商品仕入面での連携、物流・システム面での連携、店舗開発、店舗運営ノウハウ及び店舗マネジメント並びに販売促進の連携、什器・間接資材の共同購入、人材交流の多方面にわたり両社で共同して提携を推進することにより、収益性の改善及び競争力の強化に努めております。

当社の取締役会の諮問機関として、独立諮問委員会を設置しております。独立諮問委員会は独立社外取締役で構成されており、親会社または親会社グループ所属企業と当社少数株主との利益が相反する重要な取引・行為について、当該取引等を開始する前に審議・検討をしております。独立諮問委員会で審議した内容を取締役会に対して答申しております。

また、当社と親会社の間で利益相反の恐れがある取引及び重要な契約等を締結する際、当社役員である中澤裕二氏及び秋保徹氏は親会社の役職員を兼務しているため、本件意思決定の決議に参加しないこととして、利益相反を回避しております。

対処すべき課題

当社は、「家電を通じて 笑顔あふれる 明るく暖かいみらいをつくる くらし応援企業であること」のパーパスのもと、「お客様のくらしを『より快適に』『より便利に』『より楽しく』します。くらし応援コジマ」をビジョンに掲げ、地域の皆様からもっとも身近で愛され、必要とされるコジマを目指してまいります。

引き続き、経営戦略として掲げている「生産性向上戦略」及び「成長戦略」を更に推進し、各重点施策に取り組んでまいります。「生産性向上戦略」におきましては、「営業利益の向上」、「人的資本経営の推進」及び「事業継続基盤の確立」に取り組み、「成長戦略」におきましては、「自社ブランド強化による店舗における家電販売力の向上」及び「成長事業の強化」に取り組んでまいります。

家電市場におきましては、今後も厳しい競争環境が続くと想定されることから、他社との差別化を図るべく、「コジマ」の店舗ブランド力強化に努め、家電販売力の向上に取り組んでまいります。販売員の接客品質の底上げを図り、成約率を高めるため、研修センターの拡大による教育機会の充実や資格取得支援等を推進し、より一層販売員の育成に努めてまいります。店舗業務の効率化や新たな人事評価制度の導入等を実施することで、接客に注力できる環境を整え、人時生産性の向上にも取り組んでまいります。また、社長がCWO(最高健康責任者)として、健康に関する課題の改善を目指す健康経営の推進や、活躍できる人財の育成等に取り組んでまいります。「従業員」一人ひとりがいきいきと働ける職場環境を整え、エンゲージメントの向上を目指してまいります。さらに、2025年には創業70周年を迎えることから、記念セール等の各種販促施策を展開し、収益向上に努めてまいります。

成長事業の収益拡大に注力し、EC事業においては、継続して自社サイトのコンテンツリッチ化や利便性向上を実施することに加えて、ECプラットフォームを活用した新たな分野のサービスの導入等を実施することで、収益向上に取り組んでまいります。法人事業においては、法人WEB受注の活用による効率的な営業を推進するとともに、法人事業所と店舗法人のエリア再構築による収益改善を図ってまいります。住設事業においては、再生可能エネルギーやリフォーム事業の専任者増員や人財育成による売上拡大、「くらし応援便」と連携したお客様宅への訪問営業強化による収益拡大を図ってまいります。

加えて、当社の継続的な成長や持続可能な社会の実現を目指すべく、サステナビリティ経営を推進してまいります。環境への配慮や人的資本、ガバナンスを意識した対応等を重視しながら企業活動に取り組むとともに、ESG情報の開示を充実させ、企業価値の向上に努めてまいります。

株主の皆様におかれましては、何卒倍旧のご支援とご鞭撻を賜りますよう重ねてお願い申しあげます。

計算書類