事業報告(2023年4月1日から2024年3月31日まで)

当社グループの現況に関する事項

事業の経過およびその成果

当期の経営成績

当期における世界経済は、持ち直しの動きが継続しましたが、世界的な金融引き締めや中国経済の先行きへの懸念は、景気下振れのリスクとなっています。また、ウクライナにおける戦争や世界的なインフレーション等の影響により、原材料価格の上昇およびサプライチェーンの制約が発生しました。わが国経済においても、景気は緩やかに持ち直している一方、為替の変動に加えて、世界経済と同様に原材料価格の上昇が発生しました。

このような環境の中、当社グループは、2023年5月に公表した経営戦略に沿って、「患者さんの安全と持続可能性」「成長のためのイノベーション」「生産性の向上」という3つの優先事項のもと、グローバル・メドテックカンパニーへの変革に向けて取り組みました。当期の売上高は、内視鏡事業、治療機器事業およびその他事業の全ての事業で増収となり、前期比542億87百万円増収の9,362億10百万円となりました。営業利益は、Veran Medical Technologies, Inc.(米国)の電磁ナビゲーションシステム等の製造・販売終了に関する損失や、総合的な品質変革プログラム「Elevate(注)4」に係る費用を計上したこと等により、前期比1,430億11百万円減益の435億98百万円となりました。 また、持続的な成長に向けた取り組みの一環として、ソニー株式会社およびソニー・オリンパスメディカルソリューションズ株式会社との間で、従来の協業範囲である外科用内視鏡およびその関連システムに加え、消化器呼吸器内視鏡分野においても協業することに合意しました。さらに、キヤノンメディカルシステムズ株式会社との超⾳波内視鏡システムにおける協業の合意等、他社との協業を積極的に実行しました。

為替影響

期中の平均為替レートは、1米ドル=144.62円(前期は135.47円)、1ユーロ=156.80円(前期は140.97円)、1人民元=20.14円(前期は19.75円)となり、売上高では前期比で514億4百万円の増収要因、営業利益では前期比で122億79百万円の増益要因、調整後営業利益では前期比で171億2百万円の増益要因となりました。

なお、為替の影響を除くと、連結売上高は前期比0.3%の増収、連結営業利益は前期比83.2%の減益となります。

(注)
  • この事業報告において、百万円単位の表示金額は、百万円未満を四捨五入しています。また、グラフや表における「△」は損失または減少等、負の値を示しています。
  • 当社は、国際会計基準(IFRS)を適用しています。
  • 前期より、科学事業を非継続事業に分類しています。これにより、売上高および営業利益は、非継続事業を除いた継続事業の金額を表示しています。
  • 「Elevate」は、当社グループが米国食品医薬品局(FDA)から指摘された課題に対する是正活動と、品質変革プロジェクトを一つに統合した総合的なプログラムです。詳細は、以下の「対処すべき課題」に記載しています。

事業別の状況

売上高
前期比 %増
詳細はこちらを閉じる
事業別売上高構成比 %

(単位:

主な事業内容

消化器内視鏡および外科内視鏡の製造・販売・修理、サービス契約

消化器内視鏡領域では、令和6年能登半島地震の影響による損失が発生したほか、反腐敗運動による⼊札活動の遅れ等の影響を受けた中国で減収となった一方、消化器内視鏡システム「EVIS X1」を発売した北米が好調に推移し、為替の円安効果もあり前期比プラス成長となりました。

外科内視鏡領域では、一部製品の出荷停止の影響を受けた北米および中国で減収となった一方、外科内視鏡システム「VISERA ELITEⅢ」を発売した欧州やアジア・オセアニアで増収となり、為替の円安効果もあって前期比プラス成長となりました。

医療サービス領域では、保守サービスを含む既存のサービス契約の安定的な売上や、新規契約の増加により、全地域でプラス成長となりました。

内視鏡事業の営業損益は、増収による売上利益の増加があったものの、総合的な品質変革プログラム「Elevate」に係る一時的な費用約147億円や、開発資産および仕掛中の研究開発の減損損失約106億円を計上したこと等の要因により、減益となりました。

為替の影響を除くと、売上高は前期比0.5%の増収、営業利益は前期比40.5%の減益となります。

売上高
前期比 %増
詳細はこちらを閉じる
事業別売上高構成比 %

(単位:

主な事業内容

消化器科関連処置具、泌尿器科・呼吸器科・その他の治療領域製品の製造・販売

消化器科処置具領域では、北米や欧州を中心にプラス成長となり、前期比増収となりました。膵管や胆管などの内視鏡診断および治療に使用する製品群ならびに病変の切除に使用される製品群等の売上が増加しました。

泌尿器科領域では、欧州やアジア・オセアニアを中心にプラス成長となり、為替の円安効果もあって前期比増収となりました。前立腺肥大症用の切除用電極等が売上の増加に貢献しました。

呼吸器科領域では、一部製品の供給不足や反腐敗運動による⼊札活動の遅れ等の影響を受けた中国で減収となった一方、北米や欧州を中心にプラス成長となり、為替の円安効果もあって前期比増収となりました。超音波気管支鏡ガイド下針生検で主に使われる処置具の売上が増加しました。

その他の治療領域では、Gyrus Medical Ltd.(英国)の売却に伴い売上が減少したもの、為替の円安効果もあり前期比増収となりました。

治療機器事業の営業損益は、増収による売上利益の増加があったものの、Veran Medical Technologies, Inc.(米国)の電磁ナビゲーションシステム等の製造・販売終了に関する損失約519億円、総合的な品質変革プログラム「Elevate」に係る一時的な費用約84億円、ならびにTaewoong Medical Co., Ltd.(韓国)の株式取得契約の締結および解除に関連する費用約20億円を計上したこと等の要因により、減益となりました。

為替の影響を除くと、売上高は前期並み、営業損益は前期比718億89百万円の減益となります。

売上高
前期比 %増
詳細はこちらを閉じる
事業別売上高構成比 %

(単位:

主な事業内容

生体材料・整形外科用器具の製造・販売、新規事業研究

その他事業の売上高は、中国等でプラス成長となり、増収となりました。

その他事業の営業損益は、整形外科事業に関する損失約86億円を計上したことにより、悪化しました。

対処すべき課題

当社グループは、すべてのステークホルダーから品質やイノベーションなどのあらゆる⾯で評価されるグローバル・メドテックカンパニーへと成⻑することを目指しています。

2024年1月には、グローバル・メドテックカンパニーとして変革するため従業員の行動規範である「Our Core Values 私たちのコアバリュー」を改定しました。これまでのコアバリューから継続された「誠実」「共感」に加え、「患者さん第一」「イノベーション」「実行実現」を新たに掲げることにより、医療事業に特化したビジネスモデルを推進しつつ、喫緊の課題に対処しながら医療業界の進化とともに発展していきます。

(1)経営戦略

当社グループは、2023年5月に新たな経営戦略「グローバル・メドテックカンパニーとしての成⻑」を公表しました。この経営戦略では、「患者さんの安全と持続可能性」「成⻑のためのイノベーション」「生産性の向上」という3つの優先事項のもと、グローバル・メドテックカンパニーとしての地位を強化し、当社グループの経営理念である「世界の人々の健康と安心、心の豊かさ」を実現することを目指します。

【基本的な指針】

また、⻑期的に持続可能な成⻑を実現し、お客さまと社会に対する価値を創造するための4つの価値の源泉(「事業拡大とグローバル展開」「戦略的M&A」「ケア・パスウェイの強化」「インテリジェント内視鏡医療エコシステム」)も設定しました。3つの基本的な指針と4つの価値の源泉は深く結びついており、相互に作用しながら、取り組みを加速させることが新経営戦略の狙いです。

【4つの戦略的な価値の源泉】

さらに、当社グループは、外部環境の急激な変化が続く状況においても、年率約5%の売上高成⻑および約20%の営業利益率の維持を目指します。EPSについては、生産性と効率性の改善によってコスト上昇を管理し、売上高の成⻑率を上回る約8%のCAGR(年平均成⻑率)を目標としています。

【2024年3月期~2026年3月期財務ガイダンス】

経営戦略の詳細については、当社ウェブサイトに掲載している経営戦略資料をご覧ください。

https://www.olympus.co.jp/company/philosophy/strategy.html
(2)総合的な品質変革プログラム「Elevate」

当社グループは、2023年3月期に、コンプレイント対応、医療機器報告(MDR)、是正予防処置、リスクアセスメントならびにプロセスおよび設計の検証に関連し、日本の施設に対して米国食品医薬品局(FDA)より3件の警告書を受領しました。当社グループの最優先課題は、本警告書に関する全ての課題を改善し、患者さんの安全と品質に最も重点を置いた業界最高⽔準のグローバル・メドテックカンパニーに変革することです。

「Elevate」は、当社グループがFDAから指摘された課題に対する是正活動と、品質変革プロジェクトを一つに統合した総合的なプログラムです。本プログラムでは、右記の4つの目標達成に重点を置いています。

【主な長期目標】

当社グループは、FDAから指摘された課題への対処を行うと同時に、オリンパスの潜在能力を最大限に引き出し、この根本的な変革の機会を逃すことなく、世界をリードするグローバル・メドテックカンパニーとして、さらなる飛躍と持続的な成⻑を目指します。

株主の皆さまにおかれましては、一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申しあげます。

剰余金の配当等の決定に関する方針

当社は、当社グループの持続的な成長を実現させるため、手元資金を成長ドライバーへの投資に優先的に配分していく方針であり、収益性の高い既存事業への投資や成長機会への戦略的な投資を実施していきます。配当については、安定的かつ段階的に増配する方針で、当社株式の取得については、投資機会と資金状況に応じて機動的に実施する方針です。

上記方針に基づき、当期の期末配当金につきましては、2024年5月10日開催の取締役会決議により、前期より2円増配の1株当たり18円としました。効力発生日および支払開始日は、2024年6月5日です。

連結計算書類