事業報告(2024年4月1日から2025年3月31日まで)
企業集団の現況
当連結会計年度の事業の状況
事業の経過及び成果
当連結会計年度におけるわが国経済は、価格転嫁や円安の影響で好調な企業による業績拡大と人手不足を背景とした雇用・所得環境の改善、企業の設備投資意欲の継続が主導することで、緩やかながらも回復基調を維持しております。また、世界経済につきましては、中国や欧州の一部において景気減速・足踏み状態にありますが、好調を維持してきた米国が牽引することで堅調に成長して来たものの、米国の現政権の関税や各種の貿易制限の影響により実体経済に対する懸念が増しております。
国内のコンタクトレンズ市場においては、近視人口増加に伴う装用人口の増加や高齢化を背景とした遠近両用タイプの需要拡大等によるスペシャリティレンズの伸長、円安・資源価格の高止まりといった様々なコスト上昇要因による価格転嫁が進むことと歩調を合わせて成長しております。また、就寝時に装用し日中裸眼で視力矯正効果が得られるオルソケラトロジーレンズにつきましても、コンタクトレンズ市場全体の成長を大幅に上回るスピードで成長が見られます。
このような状況の下、当社グループは、連結売上高500億円を達成し、世界のコンタクトレンズ市場でプレゼンスを発揮するための生産基盤を確保することを目指しております。当社グループは、中期経営計画(2024年4月~2027年3月)の初年度となる2025年3月期につきまして、「生産力の抜本的引き上げによる収益力の強化」「国内外のマーケットに対応するサービスの強化と提供」「市場のニーズに合わせたモノづくり」「内部基盤の強化・人材確保と育成」「SDGsの推進」「安定した株主還元」を企業目標達成にむけた成長戦略として取り組んでまいりました。
当社では、国内外向けの「Pureシリーズ」の乱視用と一部の遠近両用コンタクトレンズにおいて、当社の供給能力を超える需要が継続した結果、在庫が逼迫し、2024年3月期第2四半期から、当該製品の納期の遅延が発生しておりました。しかしながら、生産力の抜本的引き上げの一環として新設した2号棟別館の本格稼働により、生産数が増加したことから遠近両用コンタクトレンズは2025年2月10日より納期が正常化いたしました。加えて、2025年3月に鴻巣研究所における生産数が既往ピークを達成する等、在庫水準が順調に回復していることから、長期にわたり受注日14日後発送としておりました乱視用コンタクトレンズにつきましても、2025年5月10日受注分から段階的に納期を短縮し、2025年5月28日より通常納期での対応となります。
商品戦略としましては、主力商品である国産の「シード1dayPureシリーズ」の中でも、とりわけ乱視用、遠近両用コンタクトレンズといったスペシャリティレンズの販売に注力しております。市場のニーズが高まるシリコーンハイドロゲルレンズにつきましては、「シード1daySilfa」、「シード AirGrade 1day UV W-Moisture」の2商品を展開しております。さらに、2週間交換ソフトコンタクトレンズ市場においてシリコーンハイドロゲルレンズが標準化していることから、「シードAirGrade 2week UV W-Moisture」を上市し、同一シリコン素材で1日使い捨てレンズと2週間交換ソフトレンズの双方を市場に提案しております。サークルレンズ 「シード Eyecoffret 1day UV M」並びに、カラーコンタクトレンズ「ベルミー」においては、イメージキャラクターを集約し、SNS等を使った、メッセージ展開をしております。今後需要の拡大が見込まれる一方で、現状選択肢が非常に限られる遠近両用サークルコンタクトレンズに関しては、「シード Eye coffret 1day UV M Multistage」を2024年12月に新たに発売し、今後もサークル・カラーレンズにおいて、スペシャリティレンズの拡充を図っております。
また、オルソケラトロジーレンズ「ブレスオーコレクト®」につきましては、既存サービスの拡充を行うとともに、各種学会でのセミナー開催等のアカデミックコミュニケーションを通じて普及を拡大させ、シェア拡大を目指して販売を行っております。研究開発の分野では、大規模集積回路を含む、アンテナ、半導体チップ等の各種電子部品をコンタクトレンズへ実装する技術の標準化、及び多様なデバイスを汎用的に駆動できる大規模集積回路の開発に成功し、当該技術をプラットフォーム化して公表しております。今後は参加いただく企業、大学等研究機関と研究開発を行うことで、医療機器としてはもちろん、様々な分野における将来のスマートコンタクトレンズへの需要に対応してまいります。
また、個人のビジョンニーズに正確に適合するパーソナライゼーション、新シリコーンハイドロゲルレンズ、薬剤との融合コンタクトレンズの開発や治験も進行中です。海外市場では、「シード1dayPureシリーズ」を中心に、それぞれの市場特性に合わせて、サークル・カラーコンタクトレンズ、「シード1daySilfa」、オルソケラトロジーレンズ、RGPレンズ、ケア用品等、プロダクトミックスを多様化しております。特に、マレーシアやベトナムの海外市場においては、コンタクトレンズとは不可分の保湿性目薬と多様な洗浄剤を当社ブランドで展開する等、商品の多様化を進めております。また、2025年4月に当社の100%子会社である英国のCLPL社を通じて、英国のスコットランドを主たる事業地域としてカスタマイズされたオルソケラトロジーレンズやスクレラルレンズに強みを持つScotlens Holdings Limitedの株式を100%取得する等シードグループとしてプロダクトカバレッジの拡大と市場競争力の強化を図っております。
これらの事業活動の結果、当連結会計年度において、引き続き国内外のコンタクトレンズ需要は堅調に拡大を示しておりますが、設備増設に比例した生産の実現に時間を要したことと、現在では安定化したものの、既存生産設備において第2四半期に生じて第3四半期から第4四半期始めまで継続して影響が続いた機械トラブルにより「Pureシリーズ」を中心とした製品生産量の伸び悩みに起因して、予定通りの製品供給に至らず、売上高は33,231百万円(前期比2.6%増)に留まりました。
利益につきましては、生産数増加による売上高増加の寄与はあったものの、一時的な生産混乱と新規生産設備の立ち上がりに際しての生産効率の低下が生じました。これにより、生産数の計画未達及び、製造原価の高騰が原因で原価率が上昇したことに加え、輸入商品が円安の影響を受け輸入価格が当初の想定より上昇したことが、売上総利益へマイナスの影響を及ぼしました。販売費及び一般管理費においては、第1四半期に一過性の費用として、本社移転に伴う費用が発生しております。また、人員増加・処遇改善に纏わる人件費の増加や治験の進捗に伴う研究開発費の支払いが高水準であることから、営業利益1,562百万円(前期比23.8%減)、経常利益1,333百万円(前期比35.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,092百万円(前期比44.4%減)となりました。
2025年3月期は、2号棟別館竣工、新本社竣工と移転の一時経費発生、4号棟着工等極めて大きな設備投資が重なりました。それぞれの投資効果の顕在化には一定のタイムラグがあることに加え、各種の販売費及び一般管理費も物価高騰といった影響により増加しており、期間損益としては減益となっております。設備投資と研究開発投資は、時宜と継続性が競争力増強に不可欠であり、一定の期間の中では平均化するものも多く、2026年3月期につきましても、引き続き中期経営計画に基づいた当初計画通りの投資を継続してまいります。
セグメント別の概況
セグメントの経営成績は次のとおりであります。
コンタクトレンズ・ケア用品
国内のコンタクトレンズ販売につきましては、引き続き国産の「シード1dayPureシリーズ」を中心とし、2つの異なるベクトルを持つシリコーンハイドロゲルレンズや特に市場の伸長が最も見込まれる遠近両用コンタクトレンズ等の高付加価値商品の拡販に注力してまいりました。「シード1dayPureシリーズ」につきましては、需要は増大しているものの、2024年3月期第2四半期以降に継続しておりました国内外向け乱視用と一部の遠近両用における納期遅延と2025年3月期第2四半期に発生した生産混乱による販売機会の逸失のため、前期比4.0%増に留まりました。就寝時に装用し日中裸眼で視力矯正効果が得られるオルソケラトロジーレンズにつきましては、前期比21.4%増と大きく伸長いたしました。サークル・カラーコンタクトレンズにおいては、販売チャネルの多様化と競合商品増加の影響もありましたが、SNSを活用した販売促進やニーズに合わせた多機能商品の展開を進めたことで、前期比1.9%増となりました。ケア用品につきましては、オルソケラトロジーレンズ関連のケア用品が増加したため、前期比5.5%増となりました。海外へのコンタクトレンズ輸出につきましては、アジア・欧州共に販売の回復傾向が見られ前期比6.6%増となりましたが、未だ海外在庫水準の適正化の途上であり、各国からのバックオーダーの解消には至らず、販売機会を生かし切れませんでした。その結果、セグメント全体の売上高は33,104百万円(前期比2.6%増)、営業利益3,198百万円(前期比2.3%減)となりました。
その他
その他につきましては、眼内レンズの売上が増加した結果、売上高は126百万円(前期比9.4%増)、営業損失は8百万円(前期営業損失9百万円)となりました。