事業報告(2024年4月1日から2025年3月31日まで)

企業集団の現況

事業の経過および成果

当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善等を背景に、緩やかな回復基調で推移しました。一方、米国の政策動向による影響や物価上昇、為替相場の変動等、景気の先行きは極めて不透明な状況にあります。また、当社事業と関連性が強い国内証券市場において、当連結会計年度の日経平均株価は米国の景気減速懸念や急速な円高等から一時31,000円台まで下落したものの、国内の景気回復への期待等により概ね38,000円台(前期は33,000円台)を中心に推移しました。

このような状況のもと、株主・投資家との対話促進ニーズの高まりや、本年4月からのプライム上場会社における適時開示情報等の日英同時開示の義務化等を背景に、Webサービスや英文翻訳等のIR関連サービスの受注が拡大したほか、上場会社のファイナンス関連製品や投資信託関連における販売会社向けのWebサイト等の販促ツールの受注が拡大しました。当社主力製品である株主総会招集通知は、電子提供制度の導入により印刷ページ数が減少したものの、電子化の進展が想定よりも緩やかであったことに加え、個人株主数の増加に伴う印刷部数の増加や、電子化に対応するサービスの提供によりほぼ前期並みの売上となりました。これらの結果、当連結会計年度の連結売上収益は、前期比879百万円増(同2.9%増)の30,996百万円となりました。

売上原価は株主総会招集通知電子化の進展による印刷コスト減少の一方、非印刷製品を中心とした受注拡大による外注費の増加、制作体制強化のための人財投資により前期比740百万円増加しました。また、招集通知電子化に対応する初期コストは解消されたものの、前述のコスト増により売上原価率は前期比0.6ポイント増の63.9%となりました。これらの結果、売上総利益は前期比139百万円増(同1.3%増)の11,182百万円となりました。販売費及び一般管理費は、主に販売促進費の減少により前期比57百万円減(同0.7%減)の8,542百万円となり、販売費及び一般管理費率は前期比1.0ポイント減の27.6%となりました。一方、2025年4月21日付公表の「減損損失の計上および通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」のとおり、連結子会社ののれんにかかる減損損失2,503百万円をその他の費用に計上したことから、営業利益は前期比2,226百万円減(同91.4%減)の209百万円となりました。また、金融収益を75百万円、金融費用を14百万円、持分法適用関連会社の全株式譲渡に伴う持分法で会計処理されている投資の売却益1,411百万円を計上した結果、税引前利益は前期比847百万円減(同33.5%減)の1,682百万円となりました。これらの結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比1,329百万円減(同74.7%減)の451百万円となりました。当連結会計年度は大きく減益となりましたが、前述の減損損失の計上が主な要因であり、当社の各製品区分における事業活動は概ね堅調に推移いたしました。

製品区分別の概況

売上収益
前期比 %増
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構成比率 %

(単位:

取扱製品
  • 株主総会関連書類(招集通知等)
  • 決算関連書類(決算短信、有価証券報告書等)
  • IPO・ファイナンス関連書類(目論見書等)
  • 開示書類作成支援システム

2023年3月開催の株主総会から導入された招集通知の電子提供制度の進展に伴い、当社主力製品である株主総会招集通知の印刷ページ数が減少しました。しかしながら電子化の進展が想定よりも緩やかであったことに加え、個人株主数の増加による印刷部数の増加や、制度変更に対応した新サービスの受注促進によりマイナス影響を補い、期初の計画を上回る結果となっております。

また、堅調な株式市場を背景にファイナンス関連製品の受注が増加したことに加えて、根強い業務効率化ニーズにより開示書類作成アウトソーシングサービスが増収となりました。これらの結果、上場会社ディスクロージャー関連の売上収益は前期比348百万円増(同2.9%増)の12,446百万円となりました。

売上収益
前期比 %増
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構成比率 %

(単位:

取扱製品
  • 和英コミュニケーションツール
  • IRサイト構築・更新サービス
  • 英文翻訳
  • 株主総会等イベント運営支援

株主・投資家との対話促進ニーズや社会的要請の高まりを背景に、Webサービスや非財務情報関連ツール作成支援サービスの受注が拡大しました。また、本年4月からのプライム上場会社の日英同時開示の義務化を見据えた英文翻訳サービスが増収となりました。一方、株主通信は作成企業の減少に伴い減収したものの、増収要因がこれらを上回った結果、上場会社IR・イベント関連等の売上収益は前期比430百万円増(同4.2%増)の10,657百万円となりました。

売上収益
前期比 %増
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構成比率 %

(単位:

取扱製品
  • 目論見書、有価証券届出書、運用報告書
  • 投資信託開示書類作成支援システム
  • 販売用資料・Webコンテンツ制作

投資信託関連においては、新NISAの導入に伴う個人投資家の増加を背景に、販売会社向けのWebサイト等の販促ツールの受注が拡大しました。一方、不動産証券関連において前期に比べて資金調達が減少したこと等に伴い関連製品の受注が減少したものの、増収要因がこれを上回った結果、金融商品ディスクロージャー関連の売上収益は前期比96百万円増(同1.4%増)の6,851百万円となりました。

売上収益
前期比 %増
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構成比率 %

(単位:

取扱製品
  • 企業情報データベース
  • 経済統計データベース
  • ファイナンスデータベース

既存顧客との契約更改に際し一部単価ダウンがあったものの、主要顧客である大学を中心に単価アップや新規顧客の受注に努めた結果、データベース関連の売上収益は前期比4百万円増(同0.4%増)の1,042百万円となりました。

(注)IFRSに準拠して連結計算書類を作成しております。

対処すべき課題

当社グループは、事業環境が大きく変化する中、以下の課題に取り組むことにより、事業領域の拡張、競争力・収益力・顧客満足の向上に努めてまいります。

  • ① ディスクロージャー分野の電子化・ペーパーレス化、開示制度の変化に対応した既存ビジネスの強化と拡張
  • ② 企業イベント・人財採用支援・BPO領域等の新たなビジネス領域の拡大
  • ③ 積極的なDX投資によるシステムサービスの機能開発やAIを活用した商品開発
  • ④ 新領域の専門人財の確保育成とM&A・アライアンス推進による外部リソースの活用
  • ⑤ ESG・サステナビリティ戦略の推進
  • ⑥ 制作・製造プロセスの電子化対応と生産性向上・収益性改善

株主の皆様におかれましては、今後とも一層のご支援とご鞭撻を賜りますようお願い申しあげます。

剰余金の配当等の決定に関する方針

当社は、株主への利益還元を経営の重要課題と認識し、諸施策を実施しております。配当につきましては、安定配当をベースに業績および経営環境等を総合的に加味した配当の継続を基本方針とし、原則50%以上の連結配当性向を基準としております。

当社は会社法第459条の規定にもとづき、剰余金の配当を株主総会の決議によらず、取締役会の決議によっておこなうことができる旨を当社定款に定めております。当事業年度の期末配当につきましては、2025年5月16日の取締役会決議にもとづき、当社普通株式1株につき26円(普通配当18円、特別配当8円)とさせていただく予定です。なお、2024年10月31日の取締役会決議にもとづき、当社普通株式1株につき、26円(普通配当18円、特別配当8円)の中間配当を実施しておりますので、この結果、年間配当は52円となり、連結配当性向は294.1%となります。

また当社は、これまで株主への利益還元と資本効率の向上に資する自己株式取得を実施してきました。当連結会計年度においては、自己株式を取得しておりませんが、設備や人財投資、M&A等の成長投資とのバランスも勘案し、引き続き株主還元施策のひとつとして重視してまいります。なお、2025年3月末時点で発行済株式総数の8.0%、2,207千株の自己株式を保有しております。

連結計算書類