事業報告(2023年4月1日から2024年3月31日まで)
企業集団の現況
事業の経過および成果
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に対する行動制限が解除されたことにより、個人消費に持ち直しの動きがみられ、企業業績は総じて改善いたしました。一方、ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源価格の高騰、為替相場の円安進行、物価上昇に加え、中東情勢の悪化等、景気の先行きは依然不透明な状況が続いております。当社事業と関連性が高い国内証券市場においては、国内の景気回復への期待等を背景に、日経平均株価が一時41,000円台まで上昇し、バブル経済崩壊後の最高値を更新いたしました。当連結会計年度の日経平均株価は概ね33,000円台を中心に推移し、前期の当該株価水準(27,000円台中心)を上回る結果となりました。
このような状況のもと、2023年3月にイベント映像機材・運営支援会社である株式会社シネ・ホールディングスおよび株式会社シネ・フォーカスを連結子会社化したことが業績に大きく寄与いたしました。また、当社の主力製品である株主総会招集通知は、2023年3月開催の株主総会から電子提供制度が導入されたこと等により、印刷ページ数が減少したものの、個人株主数の増加による部数の増加、印刷用紙代等コスト上昇に応じた適正価格での受注推進、制度変更に対応した新サービスの受注促進等により増収となりました。一方、債券と金融派生商品を組み合わせた仕組み債の起債がなくなったことで、外国債券関連製品が大幅減収となりましたが、他製品による増収がこれを上回った結果、当連結会計年度の連結売上収益は、前期比12.4%増の30,117百万円となりました。なお、連結売上収益は初めて30,000百万円を突破し、過去最高を更新するとともに、2023年5月11日付で公表した連結業績予想を上回る結果となりました。
売上原価は、株式会社シネ・ホールディングスおよび株式会社シネ・フォーカスの連結子会社化に加え、株主総会招集通知の電子提供制度の導入による作業工程の変更や工数増加、新サービス開始に伴い労務費を中心に初期コストが発生したこと等により、1,962百万円増加いたしました。一方、売上原価率は、増収効果により前期比0.5ポイント減の63.3%となりました。この結果、売上総利益は前期比13.9%増の11,044百万円となりました。販売費及び一般管理費は、主に営業体制強化に伴う人件費増加等により前期比15.4%増の8,599百万円となりました。この結果、営業利益は前期比10.1%増の2,435百万円となりました。
また、金融収益を53百万円、金融費用を48百万円、持分法による投資利益を89百万円それぞれ計上し、税引前利益は前期比5.8%増の2,529百万円となりました。これらの結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比10.0%増の1,779百万円となり、利益面においても、連結業績予想を上回る結果となりました。
製品区分別の概況
(単位:)
取扱製品
- 株主総会関連書類(招集通知等)
- 決算関連書類(決算短信、有価証券報告書等)
- IPO・ファイナンス関連書類(目論見書等)
- 開示書類作成支援システム
主力製品である株主総会招集通知については、2023年3月開催の株主総会から電子提供制度が導入されるとともに、前期に当該制度対応のため多くの上場会社が定款変更を実施した反動減により、印刷ページ数が減少いたしました。一方、電子提供制度導入初年度においては、株主総会招集通知を従来通り印刷する(フルセットデリバリー)上場会社が7割を超えたことに加え、個人株主数の増加による部数の増加、印刷用紙代等コスト上昇に応じた適正価格での受注推進、制度変更に対応した新サービスの受注促進により、株主総会招集通知は増収となりました。また、働き方改革による業務効率化ニーズが根強く、開示書類作成アウトソーシングサービスの受注が増加いたしました。これらの結果、上場会社ディスクロージャー関連の売上収益は、前期比3.1%増の12,098百万円となりました。
(単位:)
取扱製品
- IR関連書類(株主通信等)
- IRサイト構築・更新サービス
- 英文翻訳
- 株主総会等イベント運営支援
2023年3月にイベント映像機材・運営支援会社である株式会社シネ・ホールディングスおよび株式会社シネ・フォーカスを連結子会社化したことで、株主総会支援を始めとしたイベント事業が業績に大きく寄与いたしました。また、株主との対話促進や、サステナビリティ情報開示や英語での情報開示の充実等を求めるプライム市場向けのコーポレートガバナンス・コードが2022年4月に適用されたことを背景に、Web・非財務情報関連ツール作成支援・英文翻訳サービスの受注が増加いたしました。これらの結果、上場会社IR・イベント関連等の売上収益は、前期比37.9%増の10,226百万円となりました。なお、当該製品区分の名称につきましては、イベント事業の売上収益構成比が増加したことから、当連結会計年度より「上場会社IR関連等」から「上場会社IR・イベント関連等」に変更しております。
(単位:)
取扱製品
- 目論見書、有価証券届出書、運用報告書
- 投資信託開示書類作成支援システム
- 販売用資料・Webコンテンツ制作
投資信託関連においては、前年度下期の大型の新規受注が寄与し、主力製品である目論見書が増収となりました。また不動産証券関連では、前期に比べて資金調達件数が増加したことに伴い、ファイナンス関連製品の受注が増加いたしました。一方、債券と金融派生商品を組み合わせた仕組み債がなくなったことで、外国債券関連製品が大幅減収となりましたが、他製品による増収がこれを上回った結果、金融商品ディスクロージャー関連の売上収益は、前期比1.9%増の6,755百万円となりました。
(単位:)
取扱製品
- 企業情報データベース
- 経済統計データベース
- ファイナンスデータベース
既存顧客との契約更改に際し、一部解約や単価ダウンがあったものの、大学や金融機関などの新規顧客の受注獲得に努めました。その結果、データベース関連の売上収益は、前期比0.6%増の1,038百万円となりました。
対処すべき課題
当社グループは、事業環境が大きく変化する中、以下の課題に取り組むことにより、事業領域の拡張、競争力・収益力・顧客満足の向上に努めてまいります。
- ① 株主総会プロセスの電子化・開示制度の変化に対応した中核ビジネスの強化と拡張
- ② 制作・製造プロセスの電子化対応と生産性向上・収益性改善
- ③ DX・働き方改革に対応したシステム・コンサルティング・BPOサービス強化
- ④ 非財務情報開示の充実に対応したコンサルティング・英文開示・Webサービスの拡大と体制強化
- ⑤ グループ事業の強化と新たなビジネス領域の拡大
- ⑥ ESG・サステナビリティ経営への取り組み
株主の皆様におかれましては、今後とも一層のご支援とご鞭撻を賜りますようお願い申しあげます。
剰余金の配当等の決定に関する方針
当社は、株主への利益還元を経営の重要課題と認識し、諸施策を実施しております。配当につきましては、安定配当をベースに業績および経営環境等を総合的に加味した配当の継続を基本方針とし、原則50%以上の連結配当性向を基準としております。
当社は会社法第459条の規定にもとづき、剰余金の配当を株主総会の決議によらず、取締役会の決議によっておこなうことができる旨を当社定款に定めております。当事業年度の期末配当につきましては、2024年5月17日の取締役会決議にもとづき、当社普通株式1株につき18円とさせていただく予定です。なお、2023年10月31日の取締役会決議にもとづき、当社普通株式1株につき、18円の中間配当を実施しておりますので、この結果、年間配当は36円となり、連結配当性向は51.6%となります。
また当社は、これまで株主への利益還元と資本効率の向上に資する自己株式取得を実施してきました。当連結会計年度においては、自己株式を取得しておりませんが、設備や人財投資、M&A等の成長投資とのバランスも勘案し、引き続き株主還元施策のひとつとして重視してまいります。なお、2024年3月末時点で発行済株式総数の8.0%、2,207千株の自己株式を保有しております。