事業報告(2024年1月1日から2024年12月31日まで)

事業の経過及びその成果

当連結会計年度の主要な取組み

「駆け抜けろ、可能性。」

アシックスは、挑戦するすべての人の可能性を信じ背中を押すとともに、私たちも決して止まることなく、走り続ける存在でありたいと考えています。そして、自らの可能性を信じて走り続けることで、道が開かれていくと信じています。2025年、アシックスはこの言葉をスローガンとし、駆け抜けてまいります!

まず初めに、2024年について皆様と一緒に振り返りたいと思います。

昨年は、国際的なスポーツイベントが大いに盛り上がりました。多数のアスリートの活躍を通してアシックスブランドを世界的に発信する絶好の機会となり、多くの方にアシックスをより知って頂くきっかけとなりました。

業績の観点から2024年を振り返りますと、営業利益は1,001億円となり、初めて1,000億円を超えました。また、営業利益率は業界でもトップ水準の14.8%となりました。

カテゴリー別では、これまでアシックスの柱であったパフォーマンスランニングに次ぐ第2の柱として、スポーツスタイルやオニツカタイガーの躍進が顕著であった1年でした。

スポーツスタイルの売上高は984億円(前期比66.1%増)、カテゴリー利益率は27.3%(同7.0%増)となり、収益性を向上させながら成長を続けています。スポーツスタイルの商品は複数のファッションメディアにおいて取り上げられるなど、アシックスのスポーツスタイルブランドをグローバルで拡大することができました。

オニツカタイガーの売上高は954億円(同58.3%増)、カテゴリー利益率は34.0%(同8.5%増)で、カテゴリーの中で最も高い利益率となっております。オニツカタイガーは2024年に75周年を迎え、パリ シャンゼリゼ通りにおける「ホテル オニツカタイガー」の期間限定オープンや、ミラノファッションウィークへの参加、他ブランドとのコラボレーションにより、これまで以上にグローバル規模でブランド発信を行いました。

地域別では、アシックスジャパンの収益性が大きく改善し、営業利益率は23.5%(同12.7%増)となりました。インバウンド売上高が好調であることに加えて、これまで取り組んできた「選択と集中」の成果が表れております。その他主要地域においても売上高は同約20%増で拡大しており、営業利益率も向上、特に北米の営業利益率は8.3%(同7.0%増)となりました。成長著しいタイ、マレーシア、インドネシアでは売上高が前期比30%超、ベトナムでは前期比70%超増と大きな伸びを見せており、引き続き今後の成長が期待できる国です。

また、11月には中期経営計画2026の財務目標を上方修正し、2026年には、営業利益1,300億円以上(従来目標800億円以上)、営業利益率17%以上(同12%前後)、ROAは15%前後(同10%前後)を目指しております。

2024年11月の中期経営計画2026アップデートにおいては、更なるイノベーション強化に向けた取組みとして、ASICS Innovation Campus(仮称)の設置を発表しました。パフォーマンス×フットウェアの長期戦略に注力し、グローバルで、社内外のコラボレーションハブとしての活用を目指し、準備を進めてまいります。

アシックスの会員プログラムであるOneASICSの会員数は、2024年12月時点で約1,760万人となりました。12月にはアシックス公式アプリを日本で先行してリリースし、人気商品に関するお知らせや、直営店舗での会員バーコード表示によるポイント獲得など、利便性が大きく向上しています。今後は、OneASICSでの一貫したデータ連携により、パーソナライズされた情報やおすすめ商品の通知機能を強化し、アプリ会員限定イベントの開催などを通じて、更なるブランド体験価値向上を図ります。

また、2024年の資本政策においては、アシックスブランドをグローバルで広く認知頂き、そのポジションを確固たるものにしていく中、資本・財務面においてもステージを上げていく必要性を認識し、アシックスグループが保有する政策保有株式の全売却に取り組みました。また、並行してアシックスの株式を政策保有株式として保有頂いていた金融機関等の株主に対しても売却を打診し、7月に2,000億円規模の株式売出しを実施しました。

「アシックスはグローバル資本市場の中にいる」という認識を、経営陣の間で改めて明確に共有し、真正面から向き合う覚悟を決めました。株主構造を変革し、常に資本市場からのプレッシャーにさらされる経営を行っていくことを、自ら選択しました。これまで以上に透明性と緊張感を備えた経営が求められ、時には資本市場から厳しいご意見を頂くこともあるかもしれません。しかし、そのような期待や声を、アシックスが更に成長していくための原動力・推進力としていきたいと考えています。

こうした取組みが評価され、日本IR協議会の「IR優良企業賞」「“共感”IR賞」を2年連続ダブル受賞し、また、株式売出し案件を日経ヴェリタスの「ディール・オブ・ザ・イヤー2024(エクイティ部門)」にも選出頂きました。「MSCI Japan Standard指標」、「JPX日経400」、「JPXプライム150」といった株価指数にも相次いで採用されました。

2024年は他にも、デジタル経営がビジネスモデルの強化につながっている点等を評価頂き「DXグランプリ2024」を受賞しました。また、ESG投資指標「Dow Jones Sustainability Asia/Pacific Index」の対象銘柄にも10年連続で選出され、環境情報開示システムを運営する国際的な非営利団体CDPが実施する調査において「気候変動Aリスト(最高評価)」企業にも初めて認定されました。製品においては、シューズの各素材をリサイクルできるようにしたNIMBUS MIRAIについて「グッドデザイン・ベスト100」や日経優秀製品・サービス賞2024における最優秀賞を獲得するなど、幅広い分野において評価を頂いた1年となりました。

2025年の主要な取組み

年末年始の日本における駅伝大会等においてもアシックスのシューズ着用率は着実に上昇しており、これまでアスリートとともに取り組んできた商品開発・ブランド発信の成果が出てきたと感じています。2025年もアシックスらしい取組みを続け、既にランニングシェアNo.1を獲得している欧州、日本に加え、北米でもシェアNo.1を目指します。東京2025世界陸上においては、オフィシャルパートナーとしてアスリートへのサポートのみならず、アシックスブランドを広くご認識・ご理解頂けるような取組みを予定しています。

また、2024年5月に立ち上げた社長直轄のTプロジェクトの取組みとして、2025年1月にオーストラリアでASICS Tennis Summitを開催しました。ASICS Tennis Summitはアシックスブランドやテニスの事業戦略について発信するイベントであり、その中でテニスシューズの最新作「GEL-RESOLUTION X」を発表しました。アスリートとのトークセッションでは、アスリートからのフィードバックを含めた商品開発プロセスについても発信しました。今後もアスリートの声を反映させた商品開発を軸に、テニスカテゴリーを成長させてまいります。

2025年は、中期経営計画2026の2年目となります。Global Integrated Enterpriseへの変革を加速させ、更なる成長を目指してまいります。また、2025年4月には一般財団法人ASICS Foundationを設立いたします。

アシックスの事業活動及びASICS Foundationの社会貢献活動の両輪で、挑戦するすべての人の可能性を信じ背中を押すとともに、私たちも走り続けます。今後のアシックスの可能性に、是非ご期待ください。

連結決算ハイライト

①売上高

為替影響に加え、全てのカテゴリーで好調に推移したこともあり、6,785億円と前期比18.9%の増収となりました。

②売上総利益

上記増収の影響により、3,788億円と前期比27.6%の増益となりました。

③営業利益

全てのカテゴリー及び地域で、売上高並びに売上総利益率が好調に推移したことにより、1,001億円と前期比84.7%の増益となりました。

④親会社株主に帰属する当期純利益

上記増収増益の影響に加え、政策保有株式売却に伴う投資有価証券売却益の計上などにより、638億円と前期比80.9%の増益となりました。

カテゴリー別の概況

カテゴリー別の業績は、次の通りです。

パフォーマンスランニング

P.RUN

コアパフォーマンススポーツ

CPS

アパレル・エクィップメント

APEQ

スポーツスタイル

SPS

オニツカタイガー

OT

(注)
  • 主要地域別売上高に記載している日本の数値はアシックスジャパンの数値を記載しております。

報告セグメント別の概況

対処すべき課題

中期経営計画2026

中期経営計画2026の全体像と財務指標の上方修正に至った背景

2024年通期見通しが当初設定した2026年目標を超過するなど業界No.1の収益性実現に向け成長が加速していることから財務指標を中心に中期経営計画2026の上方修正を昨年11月に実施いたしました。

アシックスは見直し後の計画に基づき、「グローバル×デジタル」の推進、更なるブランド力、イノベーション強化を図り、持続的な成長を目指します。

全体像
重点戦略 グローバル成長

中期経営計画2026のカテゴリー成長戦略は、収益基盤であるパフォーマンスランニングフットウエア(P.RUN)の更なる成長に加え、次なる収益の柱として、他カテゴリーの成長を加速させます。2024年はスポーツスタイル(SPS)やオニツカタイガー(OT)が躍進し、収益拡大に貢献しました。地域成長戦略としては、中国や欧州などの既存の収益基盤である地域の持続的成長とインドや東南アジア各国を含む高成長地域の売上成長の加速と営業利益率向上の双方を目指します。

重点戦略 ブランド体験価値向上

VISION 2030で掲げる「誰もが一生涯、運動・スポーツに関わり、心と身体が健康で居続けられる世界の実現」に向けて、中期経営計画2026では、 OneASICSを全ての起点にブランド体験価値を高めていきます。

店舗やECのみならず、マラソン大会や各種イベント、その他サービスも含めたお客様とのタッチポイントの創出やランニングエコシステム展開地域の拡大を通じて、OneASICS会員を拡大します。2024年はOneASICS会員数が1,760万人になり、堅調に推移しています。

また、独自のロイヤリティプログラムの構築やリワードプログラムなどの差別化されたサービスの提供を通じて、会員プログラム全体の価値を向上させます。蓄積したデータを活用することで、パーソナライズされたマーケティングコミュニケーションの実現や、製品・サービスの更なる向上にも取り組みます。

重点戦略 オペレーショナルエクセレンスの追求

中期経営計画2026の期間では、オペレーションの改善も加速させます。例えば、データ活用による需要計画精度の向上や商品・生産・販売・在庫計画の連携強化と精度向上、及びグローバルシステム等を通じたサプライチェーン全体のオペレーションの高度化・効率化を図ります。当該戦略の実行を通して、全体最適を図り、平均在庫回転期間を2023年の173日から2026年には140日未満にしていきます。

経営基盤強化(一部抜粋) デジタルの推進

Global Integrated Enterpriseへの変革のためには、経営基盤強化は不可欠です。デジタル、サステナビリティの推進、人的資本投資の強化、適切なキャピタルアロケーションに配慮した財務戦略の実行、ガバナンス体制の強化等を進めていきます。

例えば、デジタルの分野では、グローバルで統一した基幹システムによるデータを活用したオペレーショナルエクセレンスの追求として、全部門・地域でデータを迅速かつ戦略的に活用する取組みを進めています。

また、生成AIや最新テクノロジーを積極的に活用するほか、グローバルで最適化されたセキュリティ・インフラサービスを整備していきます。

中期経営計画2026の詳細はこちら

https://corp.asics.com/jp/investor_relations/strategy/plan

財産および損益の状況の推移

連結計算書類