事業報告(2023年4月1日から2024年3月31日まで)

当社グループの現況に関する事項

当社グループの事業の経過及びその成果

[ 企業環境 ]

当連結会計年度における経済環境の概観は以下のとおりであります。

世界経済は、多くの国でインフレが依然中銀目標を上回るペースで推移するなか、欧米を中心とした金融引締め姿勢が継続し、景気の減速感が強まりました。先進国では、米国が底堅く推移した一方、欧州は景気減速が一段と進行しました。日本は新型コロナ対策緩和を背景に内需やインバウンド需要が回復し、設備投資も堅調に推移しました。新興国では、中国は景気回復が進むも不動産市場の低迷等を理由として力強さに欠けており、アジア諸国を中心に景気が減速しました。

一次産品価格は、世界経済の減速に伴う需要後退が重しとなり、総じて昨年度と比べて安値圏で推移しました。原油価格は昨年度から下落しましたが、産油国の減産や中東情勢緊迫により年明け以降は上昇に転じました。中国が世界最大の輸入国である銅や鉄鉱石の価格は、同国の景気回復ペース鈍化が重しとなりましたが、供給懸念もあり概ね昨年度並みで推移しました。

欧米の債券市場では中央銀行による金融引締めにより金利が上昇しました。円相場は円安・ドル高が進行しました。株式市場は日欧米を中心に昨年度と比べて高値圏での推移が続きました。

[ 連結業績 ]
[連結キャッシュ・フロー]
[連結財政状態]
(*1)
営業利益は、投資家の便宜を考慮し、日本の会計慣行に従った自主的な表示であり、国際会計基準(以下「IFRS」という。)で求められている表示ではありません。
営業利益は、連結包括利益計算書における売上総利益、販売費及び一般管理費及び貸倒引当金繰入額の合計額として表示しております。
(*2)
ネット有利子負債は、社債及び借入金(流動・非流動)の合計額から現金及び現金同等物、定期預金を差し引いて算出しております。
(*3)
当社は、永久劣後特約付ローン1,500億円を有しておりましたが、2023年8月16日に任意弁済しております。
本ローンはIFRS上、資本性金融商品に分類されていたため、本弁済により資本が1,500億円減少しております。

財産及び損益の状況の推移

(注)
  • 当社の連結計算書類は、会社計算規則第120条第1項の規定により、IFRSに準拠して作成しております。
  • 「1株当たり親会社の株主に帰属する当期利益」は、期中の平均発行済普通株式総数(自己株式数控除後)及び「親会社の所有者に帰属する当期利益」から当社普通株主に帰属しない金額を控除した当期利益に基づき、算出しております。
  • 金額は、百万円未満を四捨五入しております。
  • 第98期よりIAS第12号「法人所得税」を早期適用しております。これに伴い第97期について遡及適用後の数値を表示しております。
(注)
  • 「1株当たり当期純利益」は、期中の平均発行済普通株式総数(自己株式数控除後)及び「当期純利益」に基づき、算出しております。
  • 金額は、百万円未満を四捨五入しております。
  • 「 収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第98期より適用しており、第98期以降については、当該会計基準等を適用した後の数値を表示しております。

当社グループの主要な事業内容

[ 当社グループの主要な事業内容及びオペレーティング・セグメント情報 ]

当社グループは、国内外のネットワークを通じて、ライフスタイル、情報ソリューション、食料、アグリ事業、フォレストプロダクツ、化学品、金属、エネルギー、電力、インフラプロジェクト、航空・船舶、金融・リース・不動産、建機・産機・モビリティ、次世代事業開発、次世代コーポレートディベロップメント、その他の広範な分野において、輸出入(外国間取引を含む)及び国内取引の他、各種サービス業務、内外事業投資や資源開発等の事業活動を多角的に展開しております。

(注)
  • 第100期より、「情報・物流」を「情報ソリューション」に名称変更するとともに、「ライフスタイル」の一部を「金融・リース・不動産」及び「次世代事業開発」に、「情報・物流」の一部を「次世代事業開発」に、「エネルギー」の一部を「電力」に、「次世代事業開発」の一部を「化学品」に、「その他」の一部を「情報ソリューション」に、それぞれ編入しております。これらの変更に伴い、第99期のオペレーティング・セグメント情報を組み替えて表示しております。なお、第100期より新設された「新エネルギー開発推進部」(「エネルギー」「電力」「インフラプロジェクト」の一部を編入)の損益等については、「エネルギー」「電力」「インフラプロジェクト」にそれぞれ配賦しており、これに伴い、第99期のオペレーティング・セグメント情報を組み替えて表示しております。
  • 「営業利益(損失)」は、投資家の便宜を考慮し、日本の会計慣行に従った自主的な表示であり、IFRSで求められている表示ではありません。「営業利益(損失)」は、連結包括利益計算書における「売上総利益」、「販売費及び一般管理費」及び「貸倒引当金繰入額」の合計額として表示しております。
  • セグメント間取引は、通常の市場価格により行われております。
  • 「その他」には、特定のオペレーティング・セグメントに配賦されない本部経費等の損益、セグメント間の内部取引消去、全社目的のために保有され特定のオペレーティング・セグメントに配賦されない資金調達に関連した現金及び現金同等物等の資産が含まれております。
  • 金額は、百万円未満を四捨五入しております。

当社グループのオペレーティング・セグメント別事業の状況

生活産業グループ
ライフスタイル

収益 186,250 百万円
親会社の所有者に帰属する当期利益 9,911 百万円
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ライフスタイル事業では、丸紅ファッションリンク株式会社にてラグジュアリーレディースウェアブランド「バイ・マレーネ・ビルガー」の日本における独占輸入販売権を獲得し、同ブランド商品の拡販に注力しています。環境配慮型事業では、繊維及びタイヤのリサイクル事業の構築に向けた取り組みを推進しています。カーメンテナンス事業では、メキシコのラジアルジャンタス社を子会社化し、同国での事業拡大を加速させた他、タイ・インドネシアでも順調に小売店舗網を拡大し、全世界で約340店舗を展開しています。コンベヤベルトディストリビューション事業では、カナダのオルタナティブ社を買収するなど、北米地域における拠点拡充を推進しています。

バイ・マレーネ・ビルガー2024年春夏コレクション

生活産業グループ
情報ソリューション

収益 376,854 百万円
親会社の所有者に帰属する当期利益 7,768 百万円
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デジタル技術の進展によるIT市場の急速な構造変化に迅速かつ戦略的に対応すべく、2023年4月に丸紅I-DIGIO(アイデジオ)ホールディングス株式会社を設立し、傘下に丸紅情報システムズ株式会社、丸紅ネットワークソリューションズ株式会社、丸紅ITソリューションズ株式会社、株式会社イーツのIT関連4社を集約して「丸紅I-DIGIOグループ」として新たに始動いたしました。強みとする事業分野を機能別に確立・推進してきた各社のノウハウ・リソースの融合や先進技術・成長領域への投資を通じて、今後益々多様化する顧客のニーズに対し、幅広い対応力を持つソリューションプロバイダーとして、ワンストップで応えてまいります。

丸紅I-DIGIOホールディングス株式会社(東京都)

生活産業グループ
食料第一

収益 894,613 百万円
親会社の所有者に帰属する当期利益 16,982 百万円
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多様化する食のニーズに応えるべく、スペシャリティ商品のマーケティングと生産製造機能の強化に注力しています。菓子分野では「ヨーグレット」「ハイレモン」等のブランドを展開するアトリオン製菓株式会社を通じ、多様化するマーケットニーズに応え、更なる成長を図ります。飲料分野では、インスタントコーヒー製造販売会社であるイグアスベトナム社が本格稼働し、伸長するアセアン市場で更なる事業拡大を目指します。また、コーヒーの産地支援や陸上養殖サーモンをはじめとした「持続可能な開発目標(SDGs)」達成に貢献するビジネスを推進し、環境配慮型食料事業を拡大していきます。

イグアスベトナム社の工場

生活産業グループ
食料第二

収益 1,134,612 百万円
親会社の所有者に帰属する当期利益 17,997 百万円
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食の中心となる穀物、搾油原料、動物性タンパク質、及び家畜の肥育に必要な飼料の安定供給を通じて、持続可能な農業・飼料製造販売業・畜産業への貢献とトータルソリューション提供に取り組んでいます。穀物分野では、最大の生産拠点である北米・南米に保有する穀物集荷・輸出設備から、日本国内の輸入ターミナルや飼料工場へ繋がるサプライチェーンの収益基盤強化を推進します。また、米国においては、オーガニック穀物・雑豆等の消費者向け販売事業へ本格参入しました。畜産分野では、高品質なプレミアム牛肉処理加工販売を行うクリークストーン社を中心として、食に不可欠な動物性タンパク質の安定供給と事業基盤の拡大に努めていきます。

クリークストーン社で加工した牛肉(米国)

生活産業グループ
アグリ事業

収益 1,453,775 百万円
親会社の所有者に帰属する当期利益 41,503 百万円
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農業資材リテール事業では、ITを駆使した精密農業による顧客向けソリューション能力の更なる向上と、ヘレナ社をはじめとしたグループ会社にて蓄積してきたノウハウの活用を通じ、米国・ブラジル・欧州・アジアにおける農業の発展に貢献すべく更なる事業拡大を目指しています。また、肥料ホールセール事業では、マクロソース社が、北米を中心に南米、アフリカその他の地域に亘り事業を展開しており、当社グループの肥料供給能力の強化を行ってまいります。作物の収量を向上させることに加え、環境負荷に配慮した農業資材を取り扱う等、事業による環境負荷の低減にも貢献していきます。

トウモロコシの生育状況を確認する様子(米国)

素材産業グループ
フォレストプロダクツ

収益 242,969 百万円
親会社の所有者に帰属する当期損失 △14,180 百万円
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インドネシアや豪州において長年に亘り植林事業を手掛けており、その知見を活かして国内外で、素材価値と環境価値のバランスに配慮した新たな植林事業にも着手しています。また、木質資源の活用の一環として、バイオマス燃料用ペレットの供給ソース開発やバイオリファイナリー等の新素材分野への展開も進めています。パッケージ分野では、国内外で段ボール原紙製造販売メーカーを経営し、製造・流通が一体となった事業展開を進めています。衛生紙分野では、ブラジルにてサンテル社を通じ衛生紙の製造販売事業を行っており、消費者の安心・快適な生活の実現に寄与していきます。

環境植林事業(秋田県)

素材産業グループ
化学品

収益 541,303 百万円
親会社の所有者に帰属する当期利益 7,019 百万円
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業界トップクラスのシェアを持つ石油化学品トレードでの需給調整機能の高度化、蓄電池・ディスプレイ・太陽光発電機器に代表されるエレクトロニクス等のスペシャリティ分野におけるソリューション提供型ビジネスの深化を国内外で推し進めています。食品機能材・飼料添加剤等のライフサイエンス分野では、2023年12月に欧州の大手香辛料・調味料メーカーのユーロマ社を100%子会社化するなどビジネスを拡大しました。これらに加え、環境に配慮した素材、バイオ燃料を使用した化学品運搬船の運航をはじめとしたサステナブルな社会に向けた新しい顧客ニーズへの対応等、これまでの化学品の枠を超えた新しい商品や仕組み作りにも取り組んでいます。

ユーロマ社の商品の原材料(オランダ)

素材産業グループ
金属

収益 529,710 百万円
親会社の所有者に帰属する当期利益 163,479 百万円
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銅鉱山、鉄鉱山、原料炭炭鉱の中核鉱山事業において、生産の最適化や先進技術の導入、再生可能エネルギー利用や水資源保全等鉱山のグリーン化による持続可能な操業を行っています。2023年12月にはチリ・センチネラ銅鉱山の拡張プロジェクトの投資意思決定を行いました。また、JX金属株式会社からのロスペランブレス銅鉱山権益の追加取得及びパンパシフィック・カッパー株式会社の株式取得に合意しました。既存事業の拡張、新規鉱区の開発、サプライチェーン強化による収益力向上に取り組むとともに、CCS(*)事業や廃電池リサイクル事業、低炭素アルミニウム事業等環境に配慮した資源・素材の責任ある供給を通じ、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
(*)Carbon Capture and Storageの略称、二酸化炭素回収・貯留

ロスペランブレス銅鉱山(チリ)

エナジー・インフラソリューショングループ
新エネルギー開発推進部(*)

収益
親会社の所有者に帰属する当期利益
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新エネルギー関連事業の取組みを強化すべく、2024年3月期より新エネルギー開発推進部を新設し、脱炭素社会実現に向けた取組みを進めています。豪州では、南豪州におけるグリーン水素製造実証の取組みに加え、クイーンズランド州において再生可能エネルギー由来のグリーン水素を製造・液化し、日本や同州のアンモニア合成施設へ供給するプロジェクトの基本設計作業を開始しました。カナダでも、エネルギーインフラ事業者のペンビナ社と低炭素アンモニアサプライチェーン構築に係る事業化調査を開始しております。引き続き水素・アンモニア、SAF・合成燃料(e-メタン等)をはじめとする複数の新エネルギー事業を推進してまいります。
(*)「新エネルギー開発推進部」は独立したオペレーティング・セグメントではなく、その損益等については、オペレーティング・セグメントの「エネルギー」「電力」「インフラプロジェクト」にそれぞれ配賦しております。

クイーンズランド CQ-H2 プロジェクト(豪州)

エナジー・インフラソリューショングループ
エネルギー

収益 808,150 百万円
親会社の所有者に帰属する当期利益 39,233 百万円
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相対的に低炭素でエネルギー転換期においてその重要性を増す天然ガス・LNG事業分野における安定操業や資産価値向上に資する取組みを着実に進めています。また、当社が強みを持つ石油、天然ガス・LNG、ウラン等のトレーディング&マーケティング分野においても、着実に収益拡大に向けた取組みを推進しています。エネルギーや原料の安定供給への貢献と、2023年6月に実施済みの廃食油・グリーンメタノールを原料としたバイオ燃料の外航船への供給をはじめとする、バイオ燃料取引の拡充や環境価値取引の強化などの脱炭素化への取組みを両立しながら、事業基盤を強化・発展させてまいります。

バイオ燃料の外航船への給油の様子(神奈川県)

エナジー・インフラソリューショングループ
電力

収益 298,868 百万円
親会社の所有者に帰属する当期利益 47,326 百万円
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発電事業分野では、岐阜県安八郡神戸町での域内国産材バイオマス発電事業など国内外で複数の再生可能エネルギーを利用した発電所が商業運転を開始しました。電力サービス事業分野では、日英米豪での再エネ小売取引の拡大、サウジアラビア王国における屋根置き型太陽光発電システムを活用した長期売電契約の締結、国内における使用済み太陽光パネルのリユース・リサイクル関連サービスの開始等、新たなグリーン事業の創出に寄与する取組みを推進しています。また、英国政府ビジネス・通商省との洋上風力発電・水素等のクリーンエネルギー事業の協力に関する覚書の締結等、脱炭素社会実現に向けた取組みを強化しています。

ごうどバイオマス発電所(岐阜県)

エナジー・インフラソリューショングループ
インフラプロジェクト

収益 31,590 百万円
親会社の所有者に帰属する当期利益 16,937 百万円
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水分野では、AI・機械学習を用いた劣化予測診断により、自治体向けに水道管路の更新最適化サービスを提供しています。社会インフラ分野では、等々力緑地の運営・維持管理ビジネスに参画し、等々力緑地の魅力向上に取り組んでいます。交通インフラ分野では、国内の交通事業者や自治体と協働し、公共交通機関における顔認証技術を用いた運賃決済システムの実証実験を行っています。循環経済ビジネス分野では、米国・英国でのバイオメタン生産及び販売事業に加え、ごみを原料とした分散型の発電事業に着手しました。インフラファンド分野では、海外インフラ資産を対象とする1号ファンドの投資が完了するとともに2号ファンドを組成し、投資家の募集と資産積上げを進めています。

建設中のバイオメタン生産プラント(英国)

社会産業・金融グループ
航空・船舶

収益 128,568 百万円
親会社の所有者に帰属する当期利益 26,384 百万円
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航空分野では、航空機用消耗部品の販売事業者である米国企業の株式取得や、マレーシアにおける航空機の整備・解体事業を行う合弁事業を実施しました。また、衛星軌道投入・軌道上サービスを提供する企業や、AIを用いた空港グランドハンドリング業務の可視化を行う企業に出資参画するなど、既存事業の強化・拡充を行いました。船舶分野では、運航事業のサービスやデジタル解析の機会拡大を図り、ノルウェーの大手海運会社であるクラブネスドライバルク社へ出資しました。また、船舶用周辺認知システム、風力推進装置の開発企業との業務提携、公益財団法人日本財団が推進する無人運航船プロジェクトへの参画等、新規ビジネスの創出も推進しています。

衛星軌道投入機 ION(イメージ)

社会産業・金融グループ
金融・リース・不動産

収益 57,437 百万円
親会社の所有者に帰属する当期利益 43,877 百万円
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航空機リース事業では、航空旅客需要の回復に伴い、みずほリース株式会社と共同でエアキャッスル社に対する総額5億米ドルの増資引受契約を締結しました。
国内中堅企業を投資対象としたアイ・シグマ事業支援ファンドでは2社の売却を実現し、アジア地域の企業投資を目的として、株式会社アドバンテッジパートナーズとともにAP Asia Fund IIを設立しました。不動産分野では、戦略的協業先のDMCIグループとフィリピン・マニラ近郊で住宅開発・分譲事業に参入しました。保険事業では、お金の相談サービス「マネーキャリア」を運営する株式会社ウィズリープに出資参画し、デジタルを活用した個人向け金融コンサルティング事業を開始しました。

航空機リース事業 エアキャッスル社(米国)

社会産業・金融グループ
建機・産機・モビリティ

収益 553,560 百万円
親会社の所有者に帰属する当期利益 27,147 百万円
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百年に一度の大変革期にある建機・産機・モビリティ領域では、DX・IoTによるバリューチェーン全体での収益化を推進しております。建機や自動車分野では、これまで販売・アフターサービス事業が中心でしたが、建機のICT化、車両の電動化・コネクテッド化の潮流を捉え、新車導入からメンテナンス、運行管理、中古車取扱いまでを一貫して行う体制を構築してまいります。また、モビリティ分野では、オンデマンド交通及びラストマイル配送の実証と並行し、自動運転社会を見据えた取組みを推進中です。
産機分野では、産業機械・工作機械の販売と部品ディストリビューション事業を拡大中で、製造業向けソリューション事業も推進してまいります。

電子部品卸売を行うDTDS Technology Pte Ltd社
(シンガポール)

CDIO
次世代 事業開発

収益 22,278 百万円
親会社の所有者に帰属する当期利益 340 百万円
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2030年に向けた成長領域において、過去の成功事業からの当社の勝ち筋より次世代事業開発の要諦を定め、事業開発を行っています。次世代産業基盤、DX・ITサービス、医薬品・医療サービス、ウェルネス・ビューティー、コンシューマーブランド等の領域で事業開発・投資を積極的に実施しています。世の中の健康志向や生活習慣の変化によるニーズ拡大を背景に、中東医薬品事業を拡充し、タイ・日本でのコスメ事業に参画しています。次世代産業基盤では、エストニア・ドイツにおける次世代蓄電池事業にも参画しています。時代の変化を敏感に捉えるべく新たな成長領域・テーマの発掘・探索も積極的に推進しています。

スケルトン社の次世代蓄電池
「スーパーバッテリー」(エストニア)

CDIO
次世代コーポレートディベロップメント

収益 192 百万円
親会社の所有者に帰属する当期損失 △3,056 百万円
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コーポレートディベロップメント事業では、成長ポテンシャルの高い消費者向けビジネスへの投資を推進しています。東南アジアでは、コーヒーチェーンのフランチャイズ事業であるティムホートンズ案件にて、シンガポールにおける店舗展開を開始したことに加え、ベトナム最大手の食品原料・機能性食品素材サプライヤーであるエーアイジー社、及びインドネシアの医療用消費財メーカーのワンジェクト社へ出資しました。また、米国の投資拠点も本格稼働し、東南アジア・米国から事業機会獲得に取り組んでいます。スタートアップ事業では、コーポレートベンチャーキャピタルを通じて、世界の革新的なビジネスモデルの取り込みを推進しています。

ワンジェクト社の安全機能付き注射器
(インドネシア)

当社グループが対処すべき課題

[ 経済展望 ]

来期の経済環境の展望は以下のとおりであります。
世界全体では、これまでの金融引締め効果や、財政支援の縮小が重しとなる一方で、主要国での期中の利下げ開始や新興国経済の堅調な拡大に下支えされ、過去平均より弱いものの昨年度並みの成長を見込みます。米国では高金利環境が消費・投資活動の重しとなっていますが、期中の利下げ開始により景気は再加速するとみられます。一方で、中国では不動産市場の低迷が続くなかで成長率は昨年度から鈍化するとみられ、欧州もインフレ沈静化に伴い個人消費が持ち直しますが、製造業を中心に生産活動の弱さが続くとみられます。加えて、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢の緊迫等の地政学リスクにより、国際的な貿易・投資活動の停滞やサプライチェーンの混乱等が生じる懸念も強まっています。このように世界経済が勢いを欠くなかで、一次産品については、需要は弱いものの、供給サイドの抑制もあり底堅く推移すると見込まれます。
金融環境については、主要国において期中の利下げ開始が見込まれますが、年度を通じて比較的引き締まった金融環境が維持されるとみられます。
こうした環境下、世界経済は昨年度並みの成長率が続くとみられます。

[ ロシア関連ビジネスへの取組み方針 ]

当社グループは、日本政府が国際社会と協調するロシアに対する制裁方針を遵守致します。ロシア関連新規取引については制裁方針の対象とならないケースも含めて凍結とし、既存取引についても可能な限り解約を交渉する方針としております。
今後も、個別案件への対応を含めて情報を収集し状況を精査しつつ、人々の安全確保を第一に考えながら、政府をはじめとする関係各所とも協議の上、適切な対応を検討してまいります。

[ 中期経営戦略について ]

当社は、前中期経営戦略「GC2021」において定めた2030年に向けた丸紅グループが目指す長期的な方向性を継続し、社会・顧客の課題と向き合い、新たな価値を創出すべく、中期経営戦略「GC2024」を策定し、2022年度よりスタートしております。

中期経営戦略「GC2024」基本方針

  • ○既存事業の強化と新たなビジネスモデル創出を重層的に追求し、着実な収益の柱を育成・確立
  • ○「グリーン事業(*1)の強化」、「全事業のグリーン化推進」によりグリーンのトップランナーへ
    「グリーン事業の強化」
    • ・強固な事業基盤、高い競争力を有する既存グリーン事業の強化・拡大
    • ・既存の事業基盤・ネットワークの活用、全社横断的な取組みの推進による新たなグリーン事業の創出
      • (*1) 脱炭素・循環経済等、地球環境に対しポジティブな影響を与えるサステナブルな事業、及びそれらの事業が必要としかつ代替困難な原材料等を供給する周辺領域
    「全事業のグリーン化推進」
    • ・環境負荷の低減、循環経済への移行を全事業領域において追求
    • ・顧客・パートナーとの協働による持続可能なサプライチェーンの構築
    • ・脱炭素社会への移行に欠かせない取組み(天然ガス・LNG等)

中期経営戦略「GC2024」の定量目標

中期経営戦略「GC2024」における定量目標及び2024年度見通しは以下のとおりです。

中期経営戦略「GC2024」の進捗と利益成長イメージ

  • <既存事業のオーガニック成長>
  • ・2018年度から2023年度にかけての実態純利益(*2)の推移は以下のとおり
    (*2)純利益から一過性要因を控除した概数       (*3)年平均成長率
  • ・各事業の競争優位性の強化・拡大と、改善余地の大きい事業の収益性をターンアラウンドにより改善することで更なる利益成長を目指す
  • <成長投資>
  • ・中期経営戦略「GC2024」の成長投資(新規投資・CAPEX等)はこれまで順調に進捗しており、3ヵ年累計の計画1兆円に対し約1.3兆円となる見通し
  • ・案件パイプラインは豊富。財務規律・投資規律を重視しながら、ROE15%の維持・向上に向けて成長投資、資産入れ替えを行い、利益の底上げを図る
  • <更なる利益成長に向けて>
  • ・既存事業領域の強化により、中期経営戦略「GC2024」において年間4,000~4,500億円の収益基盤を確立
  • ・中期経営戦略期間を経るごとに利益規模を順調に拡大し、中期経営戦略「GC2018」開始以降のCAGRは14%の実績
  • ・既存事業のオーガニック成長と成長投資を通じた戦略追求により次の利益ステージを目指す
  • <資本配分>
  • ・収益力の向上により、中期経営戦略「GC2024」の当初計画と比べ基礎営業キャッシュ・フローが大幅増。また投資の回収もGavilon穀物事業の売却を実現したことにより2倍以上に増加
  • ・これらにより経営資源の追加配分余地を創出。継続的に財務基盤を充実・強化すると同時に、成長投資(新規投資・CAPEX等)と株主還元を強化していく
  • ・当面のネットDEレシオは0.6~0.7倍程度を想定
  • <グリーン戦略>
  • ・営業本部別グリーン戦略を現場主導で実践
  • ・進捗状況は自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)提言に基づき開示予定(2024年度中)
  • ・GHG排出量の開示を拡充(Scope3全カテゴリー/2024年度中)
    当社グループのサステナビリティの全体像については、次頁の「当社グループのサステナビリティ」をご参照ください。
[ 当社グループのサステナビリティ ]

当社グループのサステナビリティのこれまでの歩み

当社グループのサステナビリティとは、環境や社会の要請を先取りしてプロアクティブにソリューションを提供し、経営理念を実践することです。

当社グループは、サステナビリティを実践するための最も重要な要素として、人財、経営基盤、ガバナンスの3つを「基盤マテリアリティ」に特定しています。また、基盤マテリアリティを活用して取り組むべき課題「環境・社会マテリアリティ」として、気候変動、森林経営、人権、サプライチェーンの4つを特定しています。こうした課題にグループ全体で取り組むことによって、環境・社会価値を創出し、それが当社グループの持続的成長ならびに企業価値の向上に繋がるものと認識しています。

グリーン戦略

前述の通り、現在推進中の中期経営戦略「GC2024」において、グリーン戦略を基本方針の一つとして掲げています。

当社グループは、ネイチャーポジティブに貢献し、国際社会の目標である「自然と共生する社会」をステークホルダーの皆様と共に実現することを通じて、グリーンのトップランナーを目指します。自然との共生に向けた取組みには、脱炭素化、循環経済への移行が不可欠です。気候変動対策、資源の有効利用、土地利用効率化、環境汚染の抑制・防止等を通じて環境負荷を回避・軽減すること及び事業を通じた森林保全・土壌改良等により自然生態系の回復・再生に貢献します。

グリーン戦略の推進にあたり、各営業本部で策定した本部別グリーン戦略の進捗状況をサステナビリティ推進委員会においてレビューし、定期的に経営会議及び取締役会に報告しています。自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)提言を参考に、当社グループの事業活動と自然の相互作用を総合的に評価するプロセスを通じて、自然関連リスクと機会を当社グループの戦略に組み込む取組みを進めています。

※ 国際社会の目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」
2022年12月に生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された2030年に向けたミッション「ネイチャーポジティブ」において、「自然を回復軌道に乗せるために生物多様性の損失を止め、反転させるための緊急の行動をとる」ものとされています。当社グループが目指す「グリーン」は、2030年に向けた国際目標「ネイチャーポジティブ」及び2050年ビジョン「自然と共生する社会」に合致しています。

気候変動長期ビジョン

自然との共生に向けた取組みの中でも、脱炭素化に向けた動きは国境を越えた喫緊の課題の一つです。当社グループは、2021年3月に『気候変動長期ビジョン』を公表しました。2050年までにグループの温室効果ガス排出ネットゼロを達成するとともに、事業を通じて社会の低炭素化・脱炭素化に貢献していきます。

※このほか、当社グループのサステナビリティに向けた取組みの詳細は、当社「サステナビリティサイト」をご覧ください。

https://marubeni.disclosure.site/ja/

[ 当社グループの事業推進における個別のリスクについて ]

当社グループが事業を推進するにあたり、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があると考える個別のリスクは次の通りです。

<長期性資産に係るリスクについて>

当社グループの保有する長期性資産の中には、不動産・機械装置等の事業用資産に加えて、資源権益への投資や、企業買収時に認識するのれんを含む無形資産、当社がマジョリティを持たずに持分法で会計処理される投資(以下、持分法投資)等が含まれております。

当社グループは、これらの長期性資産について、IFRSに準拠し、資産が減損している可能性を示す兆候が存在する場合には当該資産の回収可能価額の見積りを行い、回収可能価額が帳簿価額を下回っている場合は、当該資産の帳簿価額をその回収可能価額まで減額し、減損損失として認識しております。なお、耐用年数を確定できない無形資産及びのれんについては、減損の兆候があるか否かを問わず、最低限年1回定期的に資産の帳簿価額が回収可能価額を超過しているか否かを確認しております。

しかしながら、経済及び業界環境の変化や、事業計画の見直し、保有方針の転換等の理由により、現時点の想定に比べて資産価値が著しく下落した場合には、減損損失や、投下資金の回収不能、撤退時の追加損失等が発生し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

銅事業・鉄鉱石事業・原料炭事業

当社グループが参画する銅事業・鉄鉱石事業・原料炭事業において、銅価格、鉄鉱石価格や、原料炭価格等の商品価格は、世界及び各地域での需給の不均衡、景気変動、為替変動、地政学的情勢や、感染症の拡大の影響等、当社グループが管理できない要因により変動する可能性があります。

当社グループの参画する銅事業の長期性資産の金額は約3,900億円であり、主な内容は持分法投資(チリのミネラロスペランブレス銅鉱山、ミネラセンチネラ銅鉱山、ミネラアントコヤ銅鉱山)であります。鉄鉱石事業の長期性資産の金額は約1,900億円であり、主な内容は持分法投資(豪州のロイヒル鉄鉱山)であります。また、原料炭事業の長期性資産の金額は約1,100億円であり、主な内容は持分法投資・有形固定資産(豪州のジェリンバイースト炭鉱、レイクバーモント炭鉱、ヘイルクリーク炭鉱)であります。

なお、これらの持分法投資・有形固定資産は、第三者から提供されたデータや、市況状況、ファンダメンタル等を考慮の上で、当社グループとして策定した価格見通しを使用した事業計画に基づいて評価しておりますが、商品価格や生産量の変動、生産・輸送設備の維持に伴う資本的支出及び営業的支出の高騰、事業環境の変化及び電力・水等のインフラに起因するオペレーション上の問題等が生じた場合には、事業計画が修正される可能性があります。

エアキャッスル社への投資

当社グループの持分法適用会社であるエアキャッスル社は、全世界のエアラインに対し航空機のリースを行っております。このため、航空旅客需要の悪化、燃油価格の高騰、為替変動、金利上昇等によりエアラインの支払能力が著しく悪化又は倒産した場合、またリース料率の低下や保有する航空機の資産価値が著しく下落した場合に、同社の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

航空旅客需要を悪化させる要因としては、戦争やテロ行為、感染症の拡大や自然災害、航空機事故等が想定されます。また、リース先エアラインは世界各国に分散していることから、各国及び国際間の法規制の変更や、経済制裁等の地政学上のリスクの影響を受ける可能性があります。同社への投資にあたっては、中長期的な航空旅客需要の伸びに牽引されて同社が成長を続ける前提での事業計画に基づいて評価をしておりますが、上記のリスク要因による影響が顕在化し、それに伴うリース先支払能力の著しい悪化や、機体価値の下落等による収益率の悪化により、当社想定よりも成長が鈍化する場合には、事業計画を修正する可能性があります。

なお、同社向けの投資金額は約1,862億円であります。

<重要な訴訟(Sugar訴訟)について>

当社グループの国内及び海外における営業活動が、訴訟、紛争又はその他の法的手続きの対象になることがあります。対象となった場合、訴訟等には不確実性が伴い、その結果を現時点で予測することは不可能です。訴訟等が将来の当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社はインドネシアの企業グループであるSugar Groupに属する企業(以下、Sugar Group)を相手にした訴訟(以下、旧訴訟)について、2011年にインドネシア最高裁判所(以下、最高裁)において当社の勝訴が確定したにもかかわらず、Sugar Groupから、旧訴訟と請求内容が同一である別途訴訟(以下、グヌンスギ訴訟及び南ジャカルタ訴訟)を提起され、グヌンスギ訴訟及び南ジャカルタ訴訟につき2017年に最高裁で当社の敗訴が一旦確定しておりますが、当社はインドネシア最高裁に対して司法審査(再審理)を申し立てました。このうち、南ジャカルタ訴訟については、当社は最高裁再審理決定の決定書を、2020年12月30日に受領しております。当該決定書には、2020年8月24日付で当社の司法審査(再審理)請求を認容し、当社が2017年5月17日に受領した当社敗訴の南ジャカルタ訴訟最高裁判決を取り消した上で、原告であるSugar Groupの請求を全て棄却する旨が記載されております。他方、グヌンスギ訴訟については、当社は、2018年10月8日付で当社の司法審査(再審理)申立を不受理とする旨の最高裁再審理決定の決定書を、2020年2月3日に受領しております。当社は、2020年5月18日、最高裁に対して2回目の司法審査(再審理)を申し立てましたが、申立書類の提出先であるグヌンスギ地方裁判所(以下、グヌンスギ地裁)は2020年5月20日付で、最高裁再審理決定と旧訴訟最高裁判決間の矛盾の不存在を理由に当社の申立を受理せず申立書類を最高裁に回付しないことを決定しました。インドネシア最高裁判所法等関連法令上、かかる判断は司法審査(再審理)の実施機関である最高裁の職責に属する事項であるとされており、グヌンスギ地裁の決定が不当であることは明らかであること、また、上述の通り当社が勝訴した南ジャカルタ訴訟司法審査(再審理)の結果を踏まえて、当社は最高裁に対して、改めてグヌンスギ訴訟に関する2回目の司法審査(再審理)を2021年5月31日付で申し立て、グヌンスギ地裁に受理されました。しかしながら、2022年7月28日付で当社の2回目の司法審査(再審理)申立を不受理とする旨の最高裁再審理決定の決定書を、当社は2024年1月30日に受領しました。当社は1回目のグヌンスギ訴訟の司法審査(再審理)の不受理決定と、当社が勝訴した南ジャカルタ訴訟の司法審査(再審理)の決定との間に矛盾があることを理由に、2回目の司法審査(再審理)を申し立てておりましたが、前者については不受理という手続的判断であり、実体審理のうえで判断がなされた後者とは矛盾があるとは評価できないと判断され、司法審査(再審理)の要件を満たさないため不受理とされております。

また、当社はSugar Groupの不法行為による当社の信用毀損等を原因としてSugar Groupに対し損害賠償請求訴訟を提起しておりますが、これに対し、Sugar Groupは当該訴訟(以下、本訴)の手続きの中で、当社に対して当該訴訟の提起が不法行為であるとして損害賠償請求訴訟(以下、反訴)を提起しておりました。先般、第一審及び第二審にて本訴請求及び反訴請求いずれも棄却されたことを受け、当社は、2021年11月19日付で本訴につき最高裁に上告していたところ、本訴及び反訴について当社の本訴請求につき一部認容するとともに、Sugar Group被告企業の反訴請求を全て棄却する内容の最高裁判決を2022年11月8日付で受領しました。Sugar Groupは当該最高裁判決を不服とし、当該最高裁判決の取消及び反訴と同様の請求内容の司法審査(再審理)の申立を2023年3月24日に行い、当社は当該再審理申立書面を2023年12月11日付で受領しました。

当社に不利な裁定を最高裁が下したグヌンスギ訴訟等Sugar Groupとの一連の訴訟の今後の趨勢や裁判手続次第では、敗訴判決に基づく損害賠償額・金利・訴訟費用の合計金額の全部又は一部について当社が負担を強いられ損失を被る等、当社の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります(注)。

(注) 南ジャカルタ訴訟においては被告に丸紅欧州会社も含まれております。

資金調達の状況

当社グループは、当社及び国内金融子会社である丸紅フィナンシャルサービス株式会社を中心に資金調達を行っております。当社においては、金融機関からの長期・短期の借入、短期社債(電子CP)の発行に加え、総額380億円の円建無担保社債を発行しました。

また、財務基盤の強化に資する調達として、永久劣後特約付ローン1,500億円、ハイブリッド社債(劣後特約付)750億円、ハイブリッドローン(コミット型劣後特約付)250億円を有しておりましたが、このうち、永久劣後特約付ローン1,500億円を2023年8月16日に任意弁済しました。さらに、海外金融子会社・現地法人・その他の連結子会社等においても、金融機関からの借入による資金調達を行っております。連結ネット有利子負債は、前期末比4,193億円増加し、1兆9,024億円となりました。

設備投資等の状況

2023年度における重要な設備投資はありません。

重要な子会社の状況その他の重要な企業結合等の状況

[重要な子会社及び関連会社の状況]

(注)
  • (子)は連結子会社、(関)は持分法適用関連会社です。
  • 持分比率には、当社連結子会社及び持分法適用関連会社経由で保有する持分比率を含めて合計を記載しております。
  • ※の「新エネルギー開発推進部」(「エネルギー」「電力」「インフラプロジェクト」の一部を編入)は独立したオペレーティング・セグメントではなく、その損益等については、オペレーティング・セグメントの「エネルギー」「電力」「インフラプロジェクト」にそれぞれ配賦しております。
  • Olympus Holding B.V.は、世界各国において飼料添加剤ディストリビューション事業を展開する Orffa International Holding B.V.の持株会社であります。
  • Marubeni Aviation Asset Investment LLCは、当社グループが従来保有していたMarubeni Aviation Parts Trading LLCが、2023年12月に商号変更したものです。
  • 丸紅アビエーション株式会社は、米国において航空機オペレーティングリース事業を展開するAircastle Limitedの持株会社であります。
  • 丸紅リートアドバイザーズ株式会社は、当社グループが従来保有していたジャパン・リート・アドバイザーズ株式会社が、2023年12月に商号変更したものです。
  • MAI Holding LLCは、米国において自動車販売金融事業を展開するWestlake Services, LLC及びNowcom, LLCへの投資を行うNowlake Technology, LLCの持株会社であります。
  • Marubeni SuMiT Rail Transport Inc.は、北米において鉄道貨車リース事業等を営むMidwest Railcar Corporationの持株会社であります。
  • 丸紅グローバルファーマ株式会社は、中東における医薬品・医療機器販売事業を展開するLunatus Marketing & Consulting FZCO等の持株会社であります。
  • 2024年5月、株式会社丸紅フットウェアは丸紅コンシューマーブランズ株式会社に商号変更しております。

会社役員に関する事項

取締役及び監査役の氏名等

(2023年3月31日現在)

(注)
  • ※印の各氏は、代表取締役であります。
  • ◇印の各氏は、2023年6月23日開催の第99回定時株主総会において、新たに選任され就任しました。
  • 高橋恭平、翁百合、木寺昌人、石塚茂樹、安藤久佳及び波多野睦子の各氏は、社外取締役であります。
  • 米田壯、菊池洋一及び西山茂の各氏は、社外監査役であります。
  • 高橋恭平、翁百合、木寺昌人、石塚茂樹、安藤久佳、波多野睦子、米田壯、菊池洋一及び西山茂の各氏は、金融商品取引所が定める独立役員の要件及び本冊子21頁に記載の「当社の社外役員の独立性に関する基準・方針」を充足するため、当社は各氏を独立役員に指定し、当社が上場している金融商品取引所である株式会社東京証券取引所に届け出ております。
  • 監査役西山茂氏は、公認会計士及び早稲田大学大学院経営管理研究科教授として、財務・会計に関する相当程度の知見を有するものであります。
  • 八丁地隆氏は、2023年6月23日開催の第99回定時株主総会終結の時をもって取締役を退任し、南晃氏は2023年6月23日開催の第99回定時株主総会終結の時をもって監査役を退任しました。
  • 「CFO」は、広報部、経理部、営業経理部、財務部及びサステナビリティ推進部の担当役員であります。
  • 当社は、取締役國分文也氏及び各社外取締役並びに各監査役との間で、会社法第423条第1項に定める損害賠償責任について、その職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、会社法第425条第1項各号に定める額の合計額を限度とする契約を締結しております。
  • 当社は、取締役である國分文也、柿木真澄、寺川彰、古谷孝之、高橋恭平、翁百合、木寺昌人、石塚茂樹、安藤久佳及び波多野睦子の各氏、並びに監査役である安藤孝夫、木田俊昭、米田壯、菊池洋一及び西山茂の各氏との間で、会社法第430条の2第1項の規定に基づき、同項第1号の費用及び同項第2号の損失を法令の定める範囲内において当社が補償する旨の契約を締結しております。なお、各取締役及び各監査役が、自己若しくは第三者の不正な利益を図るまたは当社に損害を与える目的で職務を執行したことが判明した場合には補償を受けた費用の返還請求ができることなど、役員の職務の執行の適正性が損なわれないようにするための措置を講じております。
  • 当社は、保険会社との間で、当社の取締役、監査役及び執行役員(以下、役員等)を被保険者とする会社法第430条の3第1項に規定する役員等賠償責任保険(D&O保険)契約を締結しております。当該保険契約では、被保険者が役員等の地位に基づき行った行為(不作為を含む)に起因して保険期間中に被保険者に対して損害賠償請求がなされたことにより、被保険者が被る損害賠償金や訴訟費用等が填補されることとなり、被保険者の全ての保険料を当社が全額負担することとしております。ただし、被保険者による贈収賄等の犯罪行為や意図的な違法行為、権限逸脱行為等に起因する損害については填補されない等の免責事由があります。
  • 当事業年度中に以下の通り取締役及び監査役の重要な兼職の状況の異動がありました。
13. 2024年4月1日現在の執行役員の「氏名、地位及び担当」は次の通りです。
執行役員

(2024年4月1日現在)

(注)
  • ※印の者は、代表取締役であります。
  • 「生活産業グループ」は、ライフスタイル本部、フォレストプロダクツ本部及び情報ソリューション本部を、「食料・アグリグループ」は、食料第一本部、食料第二本部及びアグリ事業本部を、「素材産業グループ」は、化学品本部及び金属本部を、「エナジー・インフラソリューショングループ」はエネルギー本部、電力本部、インフラプロジェクト本部及び新エネルギー開発推進部を、「社会産業・金融グループ」は、航空・船舶本部、金融・リース・不動産本部及び建機・産機・モビリティ本部を、それぞれ総称しております。
  • 「CAO」は、人事部、総務部、広報部、情報企画部、リスクマネジメント部、法務部及びコンプライアンス統括部の、「CSO」は、経営企画部、グローバル総括部及びサステナビリティ推進部の、「CFO」は、経理部、営業経理部、財務部及びIR・SR部の、「CDIO」は、デジタル・イノベーション部、次世代事業開発本部及び次世代コーポレートディベロップメント本部の、担当役員であります。

取締役及び監査役の報酬等

(1) 取締役及び監査役の報酬等の決定方針等

①取締役の報酬等

1. 報酬方針

    当社の取締役の報酬は、以下の考え方に基づき決定します。
  •  ①社是「正・新・和」の精神に則り、社会・顧客の皆様の課題に向き合い、ステークホルダーの皆様と共に新しい価値を創出することを促し、これに報いる報酬制度であること
  •  ②業績・株主価値との連動性を重視し、中長期的な企業価値向上を促す報酬制度であること
  •  ③企業価値の源泉である優秀な人財を獲得・保持し、報奨する報酬制度であること
  •  ④職責と成果に基づき、客観性の高いプロセスで決定される公平かつ公正な報酬制度であること

2. 報酬水準と構成比率

取締役の報酬水準は、優秀な人財の獲得・保持が可能となる競争力ある報酬水準となるように、外部専門機関の客観的な報酬調査データ等と比較検討を行い、適切な報酬水準を設定します。

報酬等の構成比率については、中長期的な企業価値向上を重視した報酬構成とし、代表取締役社長については連結純利益4,000億円かつ基礎営業キャッシュ・フロー5,000億円の時に月例報酬/短期インセンティブ報酬/中長期インセンティブ報酬の構成比率が概ね1:1:1となるように設定します。なお、他の社内取締役については、代表取締役社長の報酬構成比率に準じて役位毎の役割・責任を勘案し報酬構成比率を設定します。

3. 報酬体系

報酬等の種類別の支給対象者は、期待役割に応じて決定します。詳細は下記表のとおりです。

  • (注1)取締役会長の報酬等は、当社の経営で培った事業知見を監督に活かすことで実質的に中長期の企業価値向上に貢献する立場にあることから、月例報酬である基本報酬と中長期インセンティブ報酬により構成します。
  • (注2)社外取締役の報酬等は、独立性をもって経営を監督する立場にあることから、月例報酬である基本報酬(各種委員会の委員長・委員等の職責に応じた報酬を含む)のみで構成します。
  • (注3)組織業績評価に基づく個人評価給の支給対象者は執行役員営業本部長であり、現在業務執行取締役の支給対象者はおりません。
  • (注4)短期インセンティブ報酬は、各事業年度終了後に一括支給いたします。

4. マルス・クローバック

短期インセンティブ報酬及び中長期インセンティブ報酬について、財務諸表の重大な修正による決算の事後修正、役員による重大な内部規程の違反又は非違行為が発生した場合等には、取締役会決議により当該報酬等を減額又は不支給(マルス)とすること、及び支給済の報酬の返還(クローバック)を求める仕組の対象としております。

5. 取締役の個人別の報酬等の内容についての決定方法

取締役の報酬等の決定方針(個人別の支給額算出方法を含む。以下「決定方針」という)については、社外役員が委員長を務め、メンバーの過半数が社外役員で構成されるガバナンス・報酬委員会にて、報酬水準の妥当性を含めて審議の上、取締役会に答申し、取締役会にて決定されます。

取締役の個人別の支給額の決定については、ガバナンス・報酬委員会が決定方針との整合性を確認した上で答申を行い、株主総会で決議された報酬限度額の範囲内で、取締役会で決議されます。ただし、短期インセンティブの個人評価給について、個人定性評価部分に係る支給額の決定は、業務執行のトップが最も適していると判断されたことから、代表取締役社長の柿木真澄氏に委任しております。当該プロセスの客観性・公平性・透明性を高めるため、当該支給額については、ガバナンス・報酬委員会が、取締役会の委任する範囲内で評価が実施されていることを確認の上、取締役会へ報告することとしております。

当事業年度における取締役の個人別の報酬等の内容については、ガバナンス・報酬委員会にて決定方針との整合性を審議の上、取締役会に答申しているため、取締役会もその答申を尊重し、決定方針に沿うものであると判断しております。

(補足事項)
なお、取締役を兼務しない執行役員の報酬につきましても、取締役と同じ報酬体系・報酬の決定プロセスとなっております。

②監査役の報酬等

監査役の報酬につきましては、監査役の協議により決定します。業務執行から独立した立場である監査役の報酬は、固定額の報酬のみで構成され、業績連動報酬はありません。なお、譲渡制限付株式及びTSR連動型譲渡制限付株式の付与対象としておりません。

(注)
  • 金額は、百万円未満を四捨五入しております。
  • 上記員数は、当事業年度の末日までに退任した取締役5名(うち、社外取締役1名)、及び社内監査役1名を含めて記載しています。当事業年度末現在の人員数は取締役10名(うち、社外取締役6名)、監査役5名(うち、社外監査役3名)です。
  • 「業績連動賞与等」には、「個人評価給」を含みます。業績連動賞与は、ガバナンス・報酬委員会にて審議の上、取締役会で決議された算出方法に基づき、2023年度の連結純利益4,714億円及び基礎営業キャッシュ・フロー5,480億円に応じて算出された金額を記載しています。
  • 非金銭報酬等として取締役(社外取締役を除く)に対して「譲渡制限付株式」を交付しております。金額欄には当事業年度において会計上の費用として計上された金額を記載しています。なお、当事業年度においては2023年6月23日開催の取締役会決議により、取締役(社外取締役を除く)4名に対し、譲渡制限期間を設けたうえで、当社の普通株式57,080株を交付しております。
  • 非金銭報酬等として取締役(社外取締役を除く)に対して「TSR連動型譲渡制限付株式」を交付します。金額欄には2026年度に交付する株式の見込数に応じた金銭報酬債権の支給見込額を算定した当事業年度において会計上の費用として計上された額を記載しています。なお、本報酬制度は2023年度に導入したものであり、最初の評価期間の終了は2026年7月となるため、業績指標に関する当期の実績はありません。
  • 「【旧制度】時価総額条件型譲渡制限付株式」は2021年度及び2022年度の報酬として付与された非金銭報酬等であり、付与から3年間の評価期間における時価総額条件成長率に応じて最終割当株式数が確定する株式報酬です。金額欄には2024年度及び2025年度に交付する株式の見込数に応じた金銭報酬債権の支給見込額を算定した当事業年度において会計上の費用として計上された額を記載しています。本報酬制度は2021年度に導入したものであり、最初の評価期間の終了は2024年7月となるため、業績指標に関する当期の実績はありません。なお、本報酬制度は2021年度に導入したのち、2023年度に「TSR連動型譲渡制限付株式」を導入したことに伴い、既に付与済みのものを除き、廃止しております。
  • 「【旧制度】時価総額条件付株式報酬型ストックオプション」は2020年度の報酬として付与された非金銭報酬等であり、付与から3年間の評価期間における時価総額条件成長率に応じて行使可能数が確定する新株予約権です。金額欄には、3年間の評価期間を終えて当事業年度に行使可能数が確定した新株予約権に応じて、当事業年度において会計上の費用として計上された額を記載しています。当事業年度に評価期間が終了した時価総額条件付株式報酬型ストックオプションに係る新株予約権の行使可能数の算定に用いた当社時価総額条件成長率の実績は412%です。なお、本報酬制度は2019年度に導入したのち、2021年度に時価総額条件型譲渡制限付株式を導入したことに伴い、既に付与済みのものを除き、廃止しております。
  • 当事業年度に係る取締役の報酬等の額(「譲渡制限付株式」及び「TSR連動型譲渡制限付株式」を付与するために支給する金銭報酬債権の額、並びに発行又は処分される当社普通株式の総数を含む)は、以下の通り決議されています。

なお、2021年6月24日開催の第97回定時株主総会において導入した「【旧制度】時価総額条件型譲渡制限付株式」に関して、2022年度までに権利付与を行ったものについては、当該総会で決議された報酬等の額である年額120百万円以内(発行又は処分される当社普通株式の上限は各評価期間300,000株以内)を維持し、当該報酬等の額は、上記TSR連動型譲渡制限付株式の付与のための報酬等の額に含むものとしております。

9. 当事業年度に係る監査役の報酬等の額は、以下の通り決議されています。

社外役員に関する事項

(1) 重要な兼職先と当社との関係

(2) 主な活動状況

(注) 取締役会への出席状況については、書面決議を除いております。

会社の体制及び方針

剰余金の配当等の決定に関する方針

当社は、株主に対して長期にわたり安定した配当を行いつつ、中長期的な利益成長の実現によって増配を目指すことを基本方針としております。

この方針に基づき、中期経営戦略「GC2024」期間(2023年3月期~2025年3月期)においては、中長期的な利益成長に合わせて増配していく累進配当を実施しております。自己株式取得は資本効率の改善及び1株当たりの指標改善等を目的として機動的に実施、実施の金額・タイミングは総還元性向30%~35%程度を目安に経営環境等を踏まえて判断します。

なお、毎事業年度における剰余金の配当の回数につきましては、中間配当と期末配当の年2回とし、これらの配当の決定につきましては、会社法第459条第1項に基づき、剰余金の配当を取締役会の決議によっても行うことができる旨を定款に定めておりますので、いずれも取締役会で決議することとしております。

連結計算書類