株主の皆さまへ
ご挨拶
株主の皆さまには、平素より格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
このたびの令和6年能登半島地震で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
イオンは、発災直後より店舗の避難所としての開放や早期の営業再開、支援物資の供給、全国店舗における支援募金などを実施いたしました。また、地域の安全・安心の確保に向けたグループ従業員の迅速な行動に対して、多くの方より感謝のお声をいただきました。こうした取り組みは、「イオンの基本理念」の実践そのものであり、引き続き、被災地域の一日も早い復旧・復興に貢献してまいります。
当社を取り巻く環境は、不安定な国際情勢による世界的なインフレの進行や、各国での異常気象、社会的な格差の拡大など、多くの社会課題に直面しています。2023年度は、日本国内において経済の正常化に伴う消費活動の活発化、日経平均株価が最高値を更新するなど、好景気の側面が目立ちましたが、その一方で、急激な物価上昇による実質賃金のマイナスが継続しております。当社としてはむしろ消費者の節約志向が高まり、消費の二極化がより進んでいるものと捉えております。
こういった不確実性の高い環境下においては、企業の根幹である基本理念に基づく経営がより重要であり、環境の変化を捉えた事業活動を通じて、地域社会、さらには社会全体の課題解決に貢献していける企業が支持され、健全かつ高い成長率を保っていけるものと考えております。本年度、当社グループは4年目を迎える中期経営計画のもと、「デジタル」「商品」「健康」「地域」「アジア」の5つの変革と「環境・グリーン」を着実に進めております。イオンの成長が地域の豊かさに繋がり、多くのステークホルダーの皆さまから応援され、期待される企業を目指し、成長戦略の実効性を高めてまいります。
当社は、1974年に東京・大阪・名古屋の3つの証券取引所に同時上場してから、今年で50周年を迎えました。上場した当時、関西・中部圏に約100店舗の展開でしたが、小売業の近代化への貢献とナショナルチェーンによる生活の向上を目指し、新規出店・事業多角化といった成長戦略を加速させました。株主の皆さまのご支援のもと、現在では、日本・中国・アセアンを中心に約1万7千店舗、営業収益9兆円を超えるグループ企業へと成長しました。次の50年に向けて、経営のパートナーである株主の皆さまとともに、時代を先取りした経営の革新に挑戦し、更なる企業価値向上に取り組んでまいる所存です。
株主の皆さまにおかれましては、今後とも変わらぬご支援とご理解を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
2024年4月
取締役 代表執行役社長
イオンの基本理念
お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する。 イオンは、小売業が平和産業であり、人間産業であり、地域産業であると信じ、その使命を果たす企業集団として永続するために、お客さまを原点に絶えず革新し続けてゆきます。
平和は、戦争や災害からの復興にしても、平穏な生活の維持・増進にしても、能動的で意識的な関与なしにはもたらされません。こうした思いの原点には、岡田卓也名誉会長相談役の実体験があります。戦後、チラシを手にして店頭に並ばれたお客さまが「戦争が本当に終わったんだな」と涙された姿を見て、小売業の存在こそが平和の象徴であると実感したと言います。そこから、小売業が成り立つためには平和が大前提であり、小売業は平和の維持に貢献していかねばならないと決意したのです。
平和とは、戦争や暴力がないというだけに止まりません。心の安寧に加えて、戦争や災害さらにはさまざまな不幸から立ち上がり、乗り越える力をも含むものです。21世紀になっても戦争は止まず、大震災や異常気象などの自然災害が頻発しています。今こそ平和の価値があらためて問い直されています。平和はそのままで与えられるものではありません。平和は、わたしたちが能動的で意識的に関与することによってはじめて保たれるのです。
イオンは平和に反することは決して行いません。また、そうした行為や活動には与しません。イオンが目指すのは積極的な平和への貢献です。
人間に関しては、一人ひとりを信じ、尊重することで、その人の能力や思いが花開き、さらに人とつながることによって、より幸福な状態が生じます。
岡田名誉会長は、小売業を「人間くさい産業」と呼びました。それは「人の道」を重んじること、すなわち人間を尊重することです。個性、尊厳、自律性の尊重は言うまでもありません。それに加えて、人間が持つ可能性を信じ、仕事や学びを通じて成長し、よりよく人間的になることを後押しすることでもあります。人間はひとりで成長することは困難です。「人とのつながり」のなかで、他者とともによりよく人間的になっていくのです。それは幸福の実現であるとともに、人の間にある規範を求めるものでもあります。小売業は人々の幸福と規範の産業なのです。
地域もまた、地域ごとの多様性と自立性に敬意を払い、その特有のニーズに応え、手入れをし続けることによってはじめて豊かなコミュニティが実現します。
小売業はもともと地域に根ざした産業であり、地域とともに繁栄するものです。地域やそこにおけるコミュニティの豊かさを守っていくためには、不断に手入れを怠らないことが必要です。それは、小売業の重要な使命のひとつなのです。これからはますます、地域やコミュニティの重要性が増していきます。イオンは、地域に特有の産品を発展させ、地域の人々の豊かな暮らしを促進し、地域やコミュニティの繁栄に能動的に貢献してゆきます。
イオンが目指しているのは、こうした平和への積極的な関与・人間の幸福と規範の下支え・地域の繁栄への貢献です。それが「お客さまを原点に」、すなわちお客さまを第一にするということの重要な基盤なのです。
お客さまを第一にするということは、自分第一ではない、つまり自分たちの都合で考え、動くのではないということです。その反対に、常にお客さまを第一に考え、誠実に行動すること、これがイオンの基本です。これを自分を映す鏡とし、すべてのイオンピープルのあらゆる判断と行動の基準とします。ややもすれば自社や自分にとって有利なこと、都合が良いことに流されがちになりますが、そうした傾向を断固否定し、乗り越えてゆくことが求められています。
そのためには、イオンは革新し続ける企業集団でなければなりません。
企業にとって、成長し存続し続けることは最重要の課題です。しかし、革新し続けることなくしては、企業は衰退し滅亡してしまいます。たとえ現状を続けることが安定的で楽なことであっても、それに安住せず、常に自らを変えていかなければなりません。そして、革新し続けるためには、お客さまの変化やさまざまな社会の変化について、常に先を見る先見性や洞察力が必要です。イオンピープルの一人ひとりは、お客さまの生活や社会が求めるものの進化と変化を先取りしてゆく所存です。
家業から企業へ、そして産業へとイオンは変貌してきました。もともとダイナミックな企業文化を備えているのです。何よりも恐れているのは、ますます激しくなっていく変化の中で、求められる革新や企業家精神を失い、大企業に特有の停滞に陥っていくことです。変化することのない、現状のままが続くような静的な均衡は続きません。より新しい革新に取って代わられないためには、イオンが最大かつ最先端の革新者であり続けるしかありません。それは創業の精神を保持することで常に刷新し続け、時代を先取りした組織であるという覚悟なのです。
イオンは、以上のことの浸透と実践を通じて、平和、人間、地域の維持と発展に貢献しうると信じて、行動してゆきます。
イオングループ未来ビジョン
一人ひとりの笑顔が咲く
未来のくらしを創造する
【3つの姿勢】
-
想いをもとに、自発的に行動する
お客さま基点にそれぞれが想いを持ち、発信し、行動します。自発的な行動で生み出す対話と協働のうねりを、革新の力にしていきます。 -
学び続け、新たな価値を創造する
学び続けることで、行動の可能性を広げます。実践から知恵を拓き、自らの専門性を磨くことで、新たな価値を創造していきます。 -
つながりを築き、育み、共創する
企業、グループ、組織の壁を越え、多様なつながりを築き、育みます。つながりによって、互いの学びと価値創造のサイクルを加速させ、未来のくらしを共創していきます。
【1つの誓い】
「真摯、誠実であり続ける」
真摯さ、誠実さがあるからこそ、行動が信用され、想いに共感が生まれます。お客さまや仲間からの共感が、共創の起点となります。私たちは、これからも真摯、誠実であり続けることを誓います。
イオンでは、基本理念が企業価値の根幹であり、これを不変のものとするために株主の皆さまにご承認いただき2006年より定款に定めております。基本理念の浸透と実践を通じて、より良い社会づくりに貢献してまいります。