事業報告(2024年3月1日から2025年2月28日まで)
1.企業集団の事業の概要
営業収益は10兆1,348億円と過去最高となりました。節約志向が高まる中、自社ブランド製品の拡販を強化したことなどが奏功したものです。
一方、営業利益は2,377億円に留まり、物価の上昇などが消費に影響し、荒利率の改善が十分に進みませんでした。
親会社株主に帰属する当期純利益は前期比35.6%減の287億円となりましたが、これは主に総合金融事業におけるカード不正利用被害による一過性の損失や、中国で出店計画などを見直す中での減損損失を計上したためで、今後は全力で改善に取り組んでまいります。
●営業収益 構成比

●営業利益(百万円)

【グループ戦略】
当社は、国内外において持続的な成長を遂げてまいりました。しかし国内市場では地方における人口減少やインフレの進行等により、スーパーマーケットやドラッグストアでは合従連衡が相次ぎ、業界構造に変化が見られます。
こうした環境の変化に対応するため、より競争力のあるプライベートブランド商品の開発や、効率的な物流ネットワークの構築にとどまらず、デジタル・システム・人事・人材・電力をはじめ資材や備品調達などの様々な分野で当社はスケールメリットを最大限に活かしてまいります。
また、決済やポイント事業においては、顧客にとって魅力的な共通インフラの確立を進め、利便性の向上を図ります。さらに、新規事業へのR&D(研究・開発)投資を強化し、グループ全体の資本や資源の最適配分を実現するため、より戦略的な持株会社としての進化を目指します。今後も変化する市場環境に柔軟に対応し、持続的な成長を実現することで、株主の皆さまの期待に応えてまいります。
【事業構造改革】
こうした環境認識のもと、各事業会社は、より一層地域に密着することにより独立性を保ちながら、各地域で圧倒的な競争力を確立することを目指します。
事業会社を支えるイオングループのプラットフォームやインフラを担う機能会社は、より一層スケールメリットを発揮できるようにその機能に磨きをかけてまいります。その一環として、今回イオンモール株式会社とイオンディライト株式会社を完全子会社化し、効率を高めていくことといたしました。

(1)各事業の成果
GMS(総合スーパー)事業

イオンリテール㈱では新規顧客の獲得と荒利総額の最大化に向け、既存店の活性化を通じ食品やH&BCで最新売場を導入したほか、衣料・住居余暇で製造小売の本格稼働による商品・売場改革を進めました。インフレの影響等による節約志向の高まりを受け、価格戦略を強化することで売上拡大に寄与すると共に、店舗DXを活用した生産性向上と販管費コントロールを進め営業利益の改善を図りました。
SM(スーパーマーケット)事業

主力の生鮮やデリカ部門の値入率が低下し、売上自体も苦戦しましたが、スケールメリットを活かした価格政策の強化や、オペレーション改革による総労働時間のコントロールを強め、前期を上回る生産性向上につながりました。
首都圏に約1,200店舗を持つまいばすけっとは、近さと相対的な低価格が支持され、売上・利益ともに想定を上回って成長しました。クイックコマースなど新たなサービス導入により、新たな顧客を取り込み、シェア拡大を図ります。
DS(ディスカウントストア)事業

物価高の影響を受け節約ニーズが高まる中、食料品を中心に低価格訴求や大容量商品・ケース販売などまとめ買いで「安さ」訴求の展開強化に努めました。
また、イオンビッグ㈱ではイオントップバリュ㈱と商品の協業開発に取り組み、DS専用プライベートブランドを多数開発し、販売することで低価格政策を推進しました。
ヘルス&ウエルネス事業

ウエルシアホールディングス㈱では、新規出店や調剤併設店舗の強化に加え、地域を支える移動販売車の拡充を通じて売上拡大を図りました。くわえて、プライベートブランドの商品開発・拡販、食品やセルフ化粧品の強化により、ワンストップニーズに対応した売上拡大を進めました。また、㈱ツルハホールディングスとウエルシアホールディングス㈱とのドラッグストア連合に向けた最終合意を締結し、健康ニーズに対応するグローバル企業への成長を図ります。
総合金融事業

決済をグループにおける顧客接点として捉えなおし、強化を図るためにイオンフィナンシャルサービス㈱に決済事業の集約化を行いました。また、国内のカード有効会員数およびカードショッピング取扱高、ならびに住宅ローン取扱高はいずれも堅調に推移しました。今後内部管理体制の強化やコンプライアンス体制の強化を図り、新しいビジネスモデルの構築に向けて改革を進めます。
ディベロッパー事業

国内では、専門店売上の回復に加え、訪日客増加によるインバウンド消費などを取り込んだことなどにより、既存モールの客数回復につながり、前期実績を上回る営業収益・利益となりました。くわえて、地域ごとに異なるニーズに柔軟に対応し、物販のみならず、コミュニティづくりや社会資本、エンターテイメント、イベントなどショッピングモールを通じた体験価値の強化を図り、更なる収益拡大につなげます。
サービス・専門店事業

サービス事業では、イオンディライト㈱が増収増益と事業牽引をしております。また、㈱イオンファンタジーでは、国内が既存店および新業態や戦略的小型店などの新店が好調に推移する一方、成長鈍化がみられる中国では、競争力の高いプレイグラウンド業態への転換を推進しました。
専門店事業各社では、不採算店の戦略的閉店を始めとする収益モデル改革を最優先で取り組むとともに、新たな業態やサービスの開発を推進しています。
国際事業

アセアン地域では、ベトナム、マレーシアがけん引し、営業収益・利益ともに前期を上回る実績となりました。GMS、ディベロッパー、総合金融を中心に、共通顧客基盤を活用して、グループとしてのシェア向上を目指します。
中国事業は、エリア毎の成長に濃淡が見え出しています。香港では、構造改革による再成長を進める一方、湖南省に初出店した店舗が好調に推移するなど、エリアごとの成長に応じた投資の選択と集中を進めます。
■連結営業成績および財産の状況の推移

■事業の種類別セグメントの状況

(2)環境・社会への取り組み
イオンは、「持続可能な社会の実現」と「グループの成長」の両立を目指す「イオン サステナビリティ基本方針」のもと、事業活動を通じて様々な環境・社会課題の解決に取り組んでいます。

【資源循環の促進】
資源循環の促進を目指し、容器包装資材の削減や、環境配慮型の素材への転換を進めています。
2023年10月より、総合スーパーの「イオン」「イオンスタイル」では衣料、日用品・暮らしの品売場における有料レジ袋の配布を、これまでのプラスチック製から、環境配慮型の紙製へ切り替えいたしました。また、取り組み拡大を継続中のボトル to ボトルプロジェクトをはじめ、貴重な資源であるペットボトルの更なる有効活用の具現化や新たな実証なども、引き続き推進してまいります。
今後もお客さまとともに、資源の無駄使いや使い捨てを見直し、循環型社会の実現を目指してまいります。
【次世代育成・支援】
イオンは、地域の皆さまとともに、すべての子どもたちが心身ともに健やかに成長できる未来をつくりたいと考え、経済的に困難な状況に置かれた子育て世帯のくらしの支援を目的に、「イオン こども食堂応援団」を2020年12月に立ち上げました。2024年度は店舗での募金活動やチャリティーバザーの売上金など約3,342万円を認定し、NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえに贈呈いたしました。今後も、子どもの食支援に加え、地域の交流拠点としての役割も果たすこども食堂の活動を通じて、人と人とが支え合う、共助の絆で結ばれる活気と喜びにあふれるコミュニティづくりに取り組んでまいります。
【脱炭素社会の実現】
イオンは、「イオン 脱炭素ビジョン」のもと、店舗、商品・物流、お客さまとともに、3つの視点でCO2削減に取り組んでいます。2030年までに50%を再生可能エネルギーに切り替えるという中間目標を2023年12月に達成し、2040年までにグループ全体のCO2排出のゼロ化に向けて継続的に取り組んでいます。さらなる省エネの推進や、店舗の屋上、駐車場の屋根に設置した太陽光パネルからの再エネ調達(オンサイトPPA)に加え、店舗敷地外の太陽光パネルで発電した再エネを活用するオフサイトPPAの取り組みを拡大しています。また、お客さまのご家庭の太陽光パネルで発電された余剰再エネを、ポイント交換し店舗エネルギーに活用する取り組みや、地域ごとに適切な再エネ調達を進める「エネルギーの地産地消」も進めています。

イオンの基本理念を具現化する公益財団法人
事業活動を通じた取り組みに加えて、「公益財団法人イオンワンパーセントクラブ」「公益財団法人イオン環境財団」「公益財団法人岡田文化財団」と連携し、環境・社会貢献活動を推進しています。


1989年に創設を宣言し1990年に設立されました。「お客さまからいただいた利益を社会のために役立てる」という想いのもと、イオングループの主要企業が税引前利益の1%相当額を拠出し、「子どもたちの健全な育成」「諸外国との友好親善」「地域の発展への貢献」「災害復興支援」を柱に活動しています。



日本で初めて地球環境に特化した民間企業の財団法人として、1990年に設立されました。以来、世界各地の多様なステークホルダーの皆さまとともに「植樹」「環境活動助成」「環境教育・共同研究」「顕彰」の事業を中心に活動を推進しています。現在は、持続可能な地域社会の実現を目的に、新たな里山づくりにも取り組んでいます。

1979年三重県における芸術・文化活動の育成・援助、文化財の保全・修理等を目的として設立しました。2005年には美術館事業を開始し、収蔵作品の多彩なコレクション群、魅力あふれる企画展を両輪に展覧会を開催しています。
その他「助成事業」「主催事業」「奨学金事業」を行っており、新たに2023年3月からは、地域の新しい名所づくり「さくらプロジェクト」をスタートし、2026年3月までに5千本のさくらの苗木を植えることを計画しています。

(美術館)パラミタミュージアム
場 所:三重県三重郡菰野町
入館料金:オーナーズカードのご提示で
50%割引(中学生以下無料)
2.企業集団の対処すべき課題
「中期経営計画(2021~2025年度)」(以下、中計)の始動から約4年が経過し、最終年度となりました。中計立案時の想定を超える物価上昇やエネルギーコストの高騰、気候変動などの環境変化が生じ、常態化しつつあるなか、中計で掲げる「デジタルシフトの加速と進化」「サプライチェーン発想での独自価値の創造」「新たな時代に対応したヘルス&ウエルネスの進化」「イオン生活圏の創造」「アジアシフトの更なる加速」の5つの変革と「グリーン戦略」の重要性はさらに高まっています。イオンは商品やサービスを通じて、地域のお客さまの暮らしを支える社会的な役割を果たすべく、これまでの中計の実績を振り返り、解決すべき課題を明確にし、持続的な成長のための事業基盤の確立に取り組んでいます。
<中期経営計画におけるグループ共通戦略>
①デジタルシフトの加速と進化
デジタル事業の拡大と店舗デジタル化による生産性向上を柱にデジタルシフトを推進しています。新たなデジタル事業として2023年に開業したネットスーパーGreen Beansは、イオンにとって新たなエリアである首都圏でサービス提供エリアを拡大し、着実に顧客基盤を広げています。店舗デジタル化では、セルフレジや電子棚札の導入を加速する他、グループトータルアプリiAEONには2024年6月に電子レシート機能を搭載するなど、生産性に加えて買物体験価値の向上にも取り組んでいます。

②サプライチェーン発想での独自価値の創造
プライベートブランドを中心に「価格」と「価値」の両面で商品改革に取り組んでいます。価格の面では、お客さまの生活防衛意識の高まりを受け、「トップバリュベストプライス」を拡大するとともに、さまざまな企業努力を通じて合理的コスト削減が実現できたタイミングで、値下げなどを実施しています。価値の面では、シェフ・クオリティをコンセプトとした次世代型総菜プロセスセンター「Craft Delica Funabashi」を2024年6月より稼働し、独自価値の創造を図っています。

③新たな時代に対応したヘルス&ウエルネスの進化
健康サービスの提供に地域や所得、情報の格差が生じるなか、イオンは誰にでもヘルス&ウエルネスのサービスが行き届く社会の実現を目指しています。ウエルシアホールディングス㈱と㈱ツルハホールディングスとの経営統合を通じ、日本全国をカバーするドラッグストア連合を構築し、将来的にはアジアNo.1を目指してまいります。

④イオン生活圏の創造
地域に根ざした事業活動の積み重ねが地域の課題を解消し、イオンの成長や地域の豊かさに結び付く姿を「イオン生活圏」として、その構築を推進しています。その実現のため、エリア再編により固まりつつある各地域基盤を起点に、商品・サービスのみならず、「場」や「情報」「交流」の提供に取り組んでいます。

⑤アジアシフトの更なる加速
グローバル企業や日本の小売企業が有望なアジア市場に積極的に進出するなか、イオンは他社に先駆けてビジネスを展開し、経験を積み重ねてきた強みを活かし、積極的な出店やプライベートブランドをはじめとする独自商品でシェア拡大に努めています。また、金融事業ではマレーシアやベトナムで新規ビジネスを開始するなど、グループトータルで成長戦略を推進してまいります。

⑥グリーン戦略
気候変動や生物多様性の損失など、環境課題が深刻化するなか、イオンは環境負荷低減と収益拡大を同時に実現するグリーン戦略を推進しています。全国の店舗網を活用して回収する、使用済みペットボトルの再生事業など、お客さまがイオンをご利用いただくことが自然と環境に配慮した行動につながる取り組みを加速させてまいります。

数字でみるイオン
イオンは、強い競争力を有する小売、金融、ディベロッパー、サービス等、グループ各事業・企業が有機的に結びつき、高いシナジーを創出する総合グループとして、革新に挑戦し続けています。


日本・中国・アセアンを中心に店舗を展開しています。

3.配当金について
当社の株主還元政策は、中長期的な成長による企業価値向上と利益還元のバランスの最適化を図ることを重点施策と位置付け、連結業績を勘案した配当政策を行ってまいります。
1株当たり年間配当金につきましては、前年以上を維持しつつ、連結配当性向30%を目標として定め、更なる利益成長ならびに株主還元に努めていきます。
また、当社は株主の皆さまの利益還元の機会を充実させる目的で、剰余金の配当を年2回実施することとし、会社法第459条の規定に基づき取締役会の決議によって剰余金の期末配当を行うことができる旨を定めています。
【当期の剰余金の配当について】
当社は、1974年9月に株式を上場し、当期で上場50周年を迎えることができました。これもひとえに株主さまをはじめ各ステークホルダーの皆さまのご支援、ご厚情の賜物と心から感謝申し上げます。
つきましては、株主の皆さまの日頃のご支援にお応えするため、当期の剰余金の年間配当においては、1株当たり4円(中間2円、期末2円)の記念配当を実施させていただくことといたしました。これにより、当期の剰余金の期末配当は2025年4月11日開催の取締役会決議により、1株当たり20円(普通配当18円+記念配当2円)とさせていただき、中間配当20円(普通配当18円+記念配当2円)と合わせた当期の年間配当金は1株当たり4円増配の40円となります。なお、期末配当金の支払開始日(効力発生日)は2025年5月1日(木)とさせていただきました。
年間配当金の推移(1株当たり)
