第21期 事業報告(2023年4月1日から2024年3月31日まで)
当社の現況に関する事項
企業集団の事業の経過及び成果等
[企業集団の主要な事業内容]
当社グループは、金融持株会社である当社、子会社12社及び関連会社1社で構成され、北海道、北陸三県、東京・名古屋・大阪の三大都市圏に拠点を持つ広域地域金融グループを形成しております。当社グループでは、北陸銀行と北海道銀行を中心に、金融商品取引業、リース、クレジットカード、ベンチャーキャピタル、ソフトウェア開発・販売、サービサー業務等、お客さまの様々なニーズに対応する総合金融サービスを提供しております。
また、2024年には新たにコンサルティング子会社を設立し、多様化するお客さまのコンサルティングニーズにお応えできる体制を整えてまいります。
[金融経済環境]
当期のわが国の経済は、コロナ禍からの回復に伴い社会経済活動が正常化に向かっており、30年ぶりとなる高水準の賃上げや企業の高い投資意欲等、企業活動にも前向きな動きが見られます。当面は、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、緩やかな回復を続けるとみられております。
また、資源高や円安の影響による物価の上昇に伴い個人消費は弱含んでおりますが、今後の賃上げの促進等で徐々に持ち直すことが期待されております。
金融面では、2024年3月の日本銀行金融政策決定会合においてマイナス金利政策の解除とイールドカーブ・コントロールの撤廃が決定されましたが、現時点の国内経済や物価見通しを前提とすると、当面緩和的な金融環境が継続されると推測されます。また、欧米においては、高インフレの抑制を目的とした引き締めにより景気は緩やかに減速する見通しであることから、欧米との金利差は縮小していくと観測されております。
当社グループの主要営業地域である北陸三県においては、令和6年能登半島地震の影響は残るものの、復旧・復興需要や北陸新幹線の敦賀延伸効果もみられる等、景況感は緩やかに持ち直しつつあります。また、北海道においては、個人消費、観光は着実に改善傾向が続いており、今後は電子デバイス関連産業や環境関連産業を中心とした新たな設備投資も期待されております。
[企業集団の事業の経過及び成果]
当社グループは、2022年度からの3年間を計画期間とする第5次中期経営計画『Go forward with Our Region』のもとで、課題解決を通じて地域・お客さまとともに持続的成長を実現するため、各種施策に取り組んでおります。重点指標の実績と各種取り組み内容は以下の通りです。

● 総合的なコンサル対応力の向上
様々な経営環境変化の影響を受けたお客さまに向けて伴走型の支援に努め、お客さまの事業発展に資する資金供給に取り組みました。また、お客さまの事業課題やニーズの多様化に伴い、当社グループのコンサルティング業務の領域を拡大させております。
「コンサルティング子会社の設立」
当社グループ傘下の北陸銀行及び北海道銀行の知見、経験を結集してお客さまのニーズや課題に対応することを目的にほくほくコンサルティング株式会社を設立することといたしました。
北陸銀行及び北海道銀行が行うコンサルティング業務のうち、M&Aアドバイザリー、事業承継コンサルティング、経営コンサルティングを当初の業務とする予定です。ワンチームになることでシナジー効果を発揮しながら、質の高いサービスを提供・拡張することによりお客さまの様々な課題解決に貢献してまいります。
● 環境分野への取り組み
環境先進金融グループとして「自社の脱炭素化推進」「お取引先の脱炭素化支援強化」「地域の脱炭素化推進」「TCFD提言への対応強化」の4つのアクションを連動させながら、脱炭素化の実現を目指しております。
当社グループの取り組みでは、SX人材育成に向けた制度を拡充しております。SX推進部の業務を短期間に経験できる「お試しインターンシップ」の導入や、サステナビリティ分野の知識、経験、実践力のある行員育成を目的とした「サステナビリティトレーニー」を実施いたしました。お取引先への支援では、各種サステナブルファイナンスの商品メニュー充実を行ったほか、脱炭素化に資するサービスを他業態と連携しながら提供しております。また地域との連携では、自治体や各種団体との積極的な対話を重ね、地域全体の持続可能な環境・社会の実現に向けて取り組んでおります。TCFD提言への対応強化では、SCSK株式会社の支援のもと温室効果ガス排出量算定プラットフォームを活用し、お取引先の温室効果ガス排出量の算定支援の検証を開始しました。
● DXの推進
当社グループでは2020年より北陸銀行、北海道銀行及び北銀ソフトウエアの社員がメンバーとなり、グループ全体のデジタル化・DX化を検討するプロジェクトチームを立ち上げ、お客さまの利便性向上に資する施策の検討やグループ内の事務削減への取り組みを進めました。この取り組みを発展させ2023年6月には、DX戦略の立案や各種施策の確実な遂行を目的としてDX推進部を新設しております。グループ内の業務効率化だけでなく、お客さま・地域に当社グループの金融サービスの変化を体感いただけるよう、取り組みを進めてまいります。
DXを通じて、前向きで楽しくワクワクできる「シゴト」へシフトしていくとともに、デジタル(=データ)を活用した精度の高いマーケティングによるお客さま満足度の向上を伴う収益力の強化、バンキング機能の外部提供や新技術領域による地域課題の解決を目指してまいります。
● ウェルビーイングのある働き方の実現
2023年6月、当社グループ全体の人事戦略や人材育成方針等の立案、専門人材を含むキャリア採用の強化を目的として人事戦略部を新設し、グループ横断的な取り組みを図っております。
役職員のモチベーションの向上や多様な働き方の実現に向けて、2023年7月に人事制度を改正し、職員個々人の価値観やキャリア志向の多様化と、それに伴うニーズの変化に対応した見直しを行いました。2024年4月には、北陸銀行及び北海道銀行において、副業制度を導入し地域貢献や教育・文化活動、保有する資格やスキルの活用に繋がる分野に挑戦できる機会を設けました。また、2024年7月には、2年連続となる賃上げの実施を予定しており、様々な施策を通じて役職員にとってウェルビーイングのある働き方の実現に向けて取り組んでまいります。
● グループ総合力の強化
当社グループの強みである広域営業基盤を最大限に活用し、お客さまの課題解決に取り組みました。ビジネスマッチングでは、地域を超えてお客さま同士を繋げることで、各地域のポテンシャルを引き出すことに貢献してまいりました。証券、リース、カード、ソフトウェア開発等、関連子会社のリソースも活用することで、金融サービスとしての付加価値を引き続き高めてまいります。
「ほくほく札幌ビル竣工」
2024年2月、北陸銀行札幌支店の跡地に統合20周年を迎える当社グループの新たなシンボルタワーとして「ほくほく札幌ビル」を竣工いたしました。2階では北陸銀行札幌支店が営業し、上階では北海道銀行の本部機能及びグループ会社を移設する等、当社グループの融合と相互連携を象徴する施設となっております。また環境配慮型の持続的なオフィスであることに加え、地下2階は地下街、地下3階は札幌市営地下鉄と接続しており、札幌市中心市街地の活性化に貢献することを目指しております。
● グループガバナンスの強化
ガバナンス態勢においては、社外取締役として女性1名を含む5名を選任し、その多様な経験・知見を当社グループの企業価値向上に繋げるべく、役職員と社外取締役との議論の場を充実させました。加えて、指名・報酬委員会において社外委員を1名増員し、取締役・経営陣幹部の人事・報酬に関する事項への監督を強化しました。また、2024年4月には多様化するリスクに対応するため、グループALM・リスク管理委員会を新設しました。より踏み込んだグループベースのリスク管理体制を構築すると同時に、北陸銀行及び北海道銀行における業務効率の改善に努めてまいります。
預金等
預金・譲渡性預金の期末残高は、個人預金、法人預金の増加を主因として、前期末比3,596億円増加の13兆8,733億円となりました。


貸出金
貸出金の期末残高は、事業性貸出、個人ローンの増加により、前期末比7億円増加の9兆5,342億円となりました。


有価証券
有価証券の期末残高は、国債及び外国証券の減少により、前期末比662億円減少の1兆7,880億円となりました。


収益状況
連結経常収益は、前期比22億円増加し1,901億円となりました。その主な要因は、株式等売却益の増加及び貸倒引当金戻入益の計上によりその他経常収益が48億円増加したことです。
連結経常費用は、前期比53億円増加し1,668億円となりました。その主な要因は、債権放棄損の減少等によりその他経常費用が103億円減少した一方、海外金利の上昇を主因として資金調達費用が40億円増加したことや、国債等債券売却損の増加によりその他業務費用が70億円増加したこと及び営業経費が40億円増加したことです。
以上の結果、連結経常利益は前期比31億円減少し232億円となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、連結経常利益が31億円減少しましたが、退職給付信託解約益の計上により特別利益が36億円増加したこと及び税金費用が16億円減少したことから、前期比16億円増加の230億円となりました。

なお、当期の1株当たり期末配当につきましては、普通株式は前期比3円増配の40円、第1回第5種優先株式は所定の7円50銭の配当実施を株主総会にお諮りするものであります。

(ご参考)
当社は、中期経営計画において、親会社株主に帰属する当期純利益に対する総還元性向(優先株式の配当・自己株式取得を含む)50%を目標としております。
主要な子会社の業績につきましては、以下のとおりとなりました。
北陸銀行(単体)の業績及び預貸金期末残高
本業の収益力を表すコア業務純益は、人的資本やシステム、ほくほく札幌ビル等の戦略投資により経費が増加したものの貸出金利息および有価証券利息配当金の増加により、前期比1億円増加の259億円となりました。
経常利益は、国債等債券損益が減少しましたが与信費用も減少したことから、前期比5億円増加の151億円、当期純利益は過年度の有税引当金の無税化に伴う法人税等の減少もあり、前期比39億円増加の182億円となりました。




貸出金の期末残高は、個人ローンの増加により、前期末比69億円増加の5兆1,932億円となりました。
預金・譲渡性預金の期末残高は、個人預金や法人預金の増加を主因に、前期末比1,839億円増加の7兆8,643億円となりました。



北海道銀行(単体)の業績及び預貸金期末残高
本業の収益力を表すコア業務純益は、貸出金利息と役務取引等利益が増加した一方、有価証券利息配当金の減少及びほくほく札幌ビル新築・移転費用等による経費の増加により前期比39億円減少の153億円となりました。
経常利益は、株式等損益が増加した一方、国債等債券損益の減少により、前期比47億円減少の77億円、当期純利益は退職給付信託の解約益を計上したことにより、前期同水準の85億円となりました。




貸出金の期末残高は、事業性貸出、個人ローンが増加したものの公金貸出の減少により、前期末比74億円減少の4兆3,512億円となりました。
預金・譲渡性預金の期末残高は、個人預金や法人預金の増加を主因に、前期末比1,769億円増加の6兆373億円となりました。



[企業集団の対処すべき課題]
当社グループを取り巻く経営環境は、海外経済の回復ペース鈍化の影響を受けつつも、2024年3月には日経平均株価が34年ぶりに史上最高値を更新する等、回復傾向にあります。しかしながら、賃金上昇が物価上昇に追い付いていない現状や、潜在成長率の低さ等、経済の新たなステージへの移行に向けた課題も顕在化しております。日本銀行のマイナス金利政策の解除がもたらす「金利ある世界」の到来により、銀行の経営環境にプラスの側面がある一方、お客さまへの影響も懸念されます。
こうした経営環境のもと、グループ長期ビジョン「課題解決を通じて地域・お客さまとともに持続的成長を実現する」の達成に向け、中期経営計画『Go forward with Our Region』を掲げ、役職員一丸となって取り組んでおります。2024年度が最終年度となる計画期間中は、6つの重点施策に邁進し、コンサルティングを通じた金融サービスの質・量の向上、デジタルトランスフォーメーションの加速、カーボンニュートラルや、半導体・洋上風力等次世代産業の支援を含めたサステナビリティトランスフォーメーションへの取り組みを進めてまいります。
また、それを支える人材の確保・育成と、グループ各社の力が最大限発揮されるような持株会社を軸とした組織体制の整備に取り組んでまいります。
当社グループは、地域金融機関にとって「地域に根差した活動こそ原点である」との考えに基づき、地域社会やお客さまの課題解決を起点として、地域の発展と当社グループの成長を両立する姿を目指してまいります。
株主の皆さまには、引き続きご理解とご支援を賜りますようお願い申しあげます。
「令和6年能登半島地震について」
令和6年能登半島地震において被災されたお客さまに対しては、資金繰り等に関する相談窓口の設置や通帳等の紛失に際しての便宜扱いをはじめ、万全な支援体制といたしました。
北陸銀行では1月4日から珠洲支店でATMを稼働できたものの、輪島、珠洲両支店の窓口業務については職員の被災やアクセスの困難さもあり、本部から交代で支援部隊を送り込むことで、発災1週間程度で何とか営業を再開できました。生活インフラや地場産業をはじめ影響は甚大であり復興には長い期間を要すものと推測されますが、引き続きお客さまに寄り添い親身になって支援していきたいと考えております。
現在、能登半島地震の復興応援企画として「ほくりくONEチームプロジェクト“のとのWA”」への取り組みを実施しております。多様な金融サービスのほか、ほくほくフィナンシャルグループとして役職員からの寄付金の拠出やボランティア活動のための休暇制度の新設、「能登半島地震復興支援ファンド」への出資やその復興相談センターへの人材の派遣等、多方面から支援を行ってまいります。
- 記載金額は単位未満を切り捨てて表示しております。
- 2023年度の状況については、前記「(1)企業集団の事業の経過及び成果等」のとおりであります。なお、2021年度の連結包括利益はその他有価証券評価差額金が時価の下落により減少したことを主因に2020年度に比べ564億円減少しており、2022年度の連結包括利益はその他有価証券評価差額金が時価の上昇により増加したことを主因として2021年度に比べ15億円増加しており、2023年度の連結包括利益はその他有価証券評価差額金が時価の上昇により増加したことを主因に2022年度に比べ674億円増加しております。
- 信託財産額は、「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」に基づく信託業務に係る信託財産額を記載しております。なお、連結会社のうち、該当する信託業務を営む会社は北陸銀行1行であります。
(注)