第22期 事業報告(2024年4月1日から2025年3月31日まで)

当社の現況に関する事項

企業集団の事業の経過及び成果等

[企業集団の主要な事業内容]

当社グループは、金融持株会社である当社、子会社13社及び関連会社2社で構成され、北海道、北陸三県、東京・名古屋・大阪の三大都市圏に拠点を持つ広域地域金融グループを形成しております。当社グループでは、北陸銀行と北海道銀行の銀行業を中心に、金融商品取引業、コンサルティング業務、リース業務、クレジットカード業務、信用保証業務、ソフトウェア業務、サービサー業務、ベンチャーキャピタルなど、お客さまの様々なニーズに対応する総合金融サービスを提供しております。

[金融経済環境]

当期の日本の経済は、物価高騰の影響を受けつつも、雇用・所得環境の改善が進み、景気は緩やかな回復基調にありました。
金融面では、2024年7月と2025年1月の日本銀行金融政策決定会合での政策金利引き上げにより「金利のある世界」へ転換しましたが、アメリカの関税を含む政策動向や中東地域をめぐる情勢等、不安定な国際情勢も相まって、先行きは不透明であり、引き続き注視する必要があります。
このような情勢下、当社グループの主要営業地域である北陸三県においては、北陸新幹線延伸や公共工事の増加、能登半島地震の復旧・復興需要などから、景況感は緩やかに持ち直しております。また、同じく主要営業地域である北海道においては、次世代半導体等に関連した設備投資需要のほか、世界的な観光需要の高まりを受けて個人消費も堅調に推移しており、経済を下支えしております。

[企業集団の事業の経過及び成果]

当社グループでは、課題解決を通じて地域・お客さまとともに持続的成長を実現するため、2022年度からの3年間を計画期間とする第5次中期経営計画「Go forward with Our Region」に取り組んできました。
2024年度は、第5次中期経営計画の最終年度として、3つの長期戦略である「金融・非金融の融合による課題解決力の強化」「持続的な成長を支える経営基盤の構築」「多様な人財が活躍し活力ある企業風土の醸成」に基づく各種施策に取り組みました。
重点指標の実績と各種取り組み内容は以下のとおりです。

重点指標の実績
重点戦略の取り組み内容
総合的なコンサル対応力の向上

経営環境の変化に伴って多様化するお客さまのニーズに対応するため、コンサルティング業務の領域を拡大しております。
また、従来から取り組んでいるコンサルティングメニューについても高度化に取り組みながら、より多くのお客さまに提供できる体制の整備に努めております。

<法人向けコンサルティングの強化>

M&Aアドバイザリー、事業承継コンサルティング、経営コンサルティング部門では、昨年、北陸銀行と北海道銀行の知見や経験を結集した「ほくほくコンサルティング株式会社」を設立し多様化するお客さまのニーズに応えております。
また、いまや全ての企業での課題となっている人材不足に関して、従来のビジネスマッチング契約による伴走支援に加え、「人材エージェント業務」も強化しております。

<個人向けコンサルティングの強化>

個人のお客さまのニーズ、ライフステージに応じた最適なご提案の実践に取り組んでおります。
現役層の資産形成ニーズでは、職域でのセミナーを通じて地域のお客さまの金融リテラシー向上に努め、2024年1月から新制度となった新NISAを活用した資産形成の裾野拡大を図りました。
また、リタイアメント層の資産運用ニーズでは、グループ証券会社のほくほくTT証券と連携した幅広い資産運用ラインナップを提供するなど、お客さまニーズに基づくポートフォリオ構築を行っております。
高齢層の資産承継ニーズでは、信託、生命保険を活用したお客さまのお考えに適した提案を行い、課題解決に努めております。

環境分野への取り組み

環境先進金融グループとしての役割を発揮すべく、「自社の脱炭素化推進」「お取引先の脱炭素化支援強化」「地域の脱炭素化推進」「TCFD提言への対応強化」の4つのアクションを連動しながら、グループ一体となって脱炭素化の実現を目指しております。
各種サステナブルファイナンスの商品メニュー充実を行ったほか、SX・GXに資するサービスを他業態と連携しながら提供しております。
特に中堅・中小企業を対象としたサステナビリティ・リンク・ローンのフレームワークを策定した「ほくほくサステナブルファイナンスSLLFW型」は地域の企業におけるSX・GXを強力に支援するファイナンス商品として注力しております。

<長期目標の新設>

2024年7月、当社グループは、地域のサステナビリティ向上に向け、「2030年度まで当社グループにおけるGHG排出量(SCOPE1,2)の実質ゼロ化」に加え、「2050年度まで投融資ポートフォリオを含めたサプライチェーン全体のGHG排出量(SCOPE1,2,3)の実質ゼロ化」という目標を新設しました。

<ほくほくソーラーパーク北海道白糠の運転開始>

2025年2月、地域におけるカーボンニュートラルの実現及び地域社会・環境の持続的な発展に資することを目的に当社グループの北陸銀行、北海道銀行及び北海道電力株式会社、北陸電力ビズ・エナジーソリューション株式会社の4社で開発を進めてきた「ほくほくソーラーパーク北海道白糠」の運転を開始しました。

<地銀初となる「バーチャルPPA契約」の締結>

2025年3月、当社グループの北陸銀行と株式会社Sustechは、地方銀行として初めて再生可能エネルギーを活用したバーチャルPPA契約を締結しました。
本取り組みは、Sustechが開発・運営するFIP発電所で創出する再エネの環境価値のみを北陸銀行が取得する仕組みとなります。

DXの推進

当社グループでは2023年6月よりDX戦略の立案や各種施策の確実な遂行を目的としてDX推進部を新設し、グループ内の業務効率化だけでなく、お客さま・地域に当社グループの金融サービスの変化を体感いただけるような取り組みを進めております。

<銀行アプリ利用者数の増加>

2025年2月には、北陸銀行及び北海道銀行が提供する個人向けスマートフォンアプリの利用者数が100万人を突破しました。今後も最新の技術を活用した商品・サービスの開発に取り組み、お客さまに使い続けていただける身近なアプリを目指してまいります。

<生成AIの利活用を通じた業務効率化の推進>

また、生成AIの利活用を通じた業務効率化を推進しております。役職員向けの研修に加え、営業店役職員の日々の業務に役立つカスタムプロンプトのエンジニアリング、社内情宣を通じて、役職員の“日常生成AI使い”を促進しており、現在では、役職員の20%が毎日生成AIを活用し、自らの業務を効率化しております。
進歩の目覚ましいAI技術を積極的に業務に取り込むことは、デジタルトランスフォーメーションを推進する上で欠かせないものであり、今後もAIエージェントの開発・実装など、新しいチャレンジを推し進めてまいります。

ウェルビーイングのある働き方の実現

当社グループでは多様な人材一人ひとりのポテンシャルを最大限に引き出すことで生まれる活力をもとに、個人、組織そして地域がともに成長できるよう人的資本経営を進めております。
引き続き、エンゲージメント調査結果を踏まえた様々な人事施策を通じて役職員にとってウェルビーイングのある働き方の実現に向けて取り組んでまいります。

<健康経営の推進>

北陸銀行及び北海道銀行は、「健康経営優良法人2025大規模法人部門(ホワイト500)」の認定を8年連続で取得し、育児・介護等の両立支援も含めた従業員の健康増進につながる働きやすい環境づくりを進めております。

<自律的なキャリア形成支援>

本部業務を中心として興味のある部署への短期間業務経験研修(お試しインターンシップ)について、対象部署の拡大やグループ会社間での交流参加を進めることで、より自発的な挑戦を促す環境づくりを進めるとともに、1on1ミーティングやキャリアアドバイザーによるきめ細かなサポート体制の充実も図っております。

グループ総合力の強化

当社グループの強みである広域営業基盤を最大限に活用し、お客さまの課題解決に取り組みました。お客さまに合わせたソリューションを幅広い顧客基盤に提供し、企業価値の向上と地域経済の発展を実現するため、2024年10月に北海道銀行が北海道リースを持分法適用会社としております。
引き続き、証券、リース、カード、ソフトウェア開発等、関連子会社のリソースも活用することで、金融・非金融の枠組みを超えた総合サービスの提供を強化してまいります。

グループガバナンスの強化

ガバナンス態勢においては、社外取締役に女性1名を含む5名を選出し、その多様な経験・知見を当社グループの企業価値向上に繋げるべく、社外取締役との議論を充実させました。
中期経営計画の策定やパーパスの制定においてその意見を反映したほか、指名・報酬委員会において経営陣の選任や報酬についての意見交換を進めるなど、経営態勢の強化に向けて取り組んでおります。

これらの取り組みにより、当社グループの当期の連結業績につきましては、以下のとおりとなりました。

連結業績
預金等

預金・譲渡性預金の期末残高は、個人預金、法人預金が順調に増加したことにより、前期末比1,585億円増加の14兆318億円となりました。

貸出金

貸出金の期末残高は、中小企業向け貸出および個人ローンを中心に積極的に資金需要に応え、また公金貸出も増加したことから、前期末比9,243億円増加の10兆4,585億円となりました。

有価証券

有価証券の期末残高は、更なる金利上昇の可能性も踏まえ短期・中期国債を中心に積み上げ、前期末比5,307億円増加の2兆3,187億円となりました。

収益状況

連結経常収益は、前期比200億円増加し2,101億円となりました。その主な要因は、貸出金利息及び有価証券利息配当金の増加により資金運用収益が311億円増加したことです。
連結経常費用は、前期比82億円減少し1,585億円となりました。その主な要因は、預金利息等の資金調達費用が増加した一方で、国債等債券売却損の減少によりその他業務費用が224億円減少したことです。

以上の結果、連結経常利益は前期比283億円増加し516億円となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比160億円増加の390億円となりました。

なお、当期より中間配当を実施しております。1株当たりの期末配当につきましては、普通株式は27円50銭、第1回第5種優先株式は所定の7円50銭の配当実施を株主総会にお諮りするものであります。

(ご参考) 当社は、2025年3月に株主還元方針を変更しており、機動的な自己株式の取得を含めて普通株式総還元性向を2027年度までに40%を目途に引き上げることとしております。

主要な子会社の業績につきましては、以下のとおりとなりました。

北陸銀行(単体)の業績及び預貸金期末残高

本業の収益力を表すコア業務純益は、貸出金利息及び有価証券利息配当金の増加を主因に前期比80億円増加の340億円となりました。
経常利益は、与信費用の増加や株式等損益が減少する一方、国債等債券損益が大幅に改善したことから、前期比191億円増加の343億円、当期純利益は、前期比58億円増加の241億円となりました。

貸出金の期末残高は、事業性貸出や個人ローンが増加し、前期末比7,084億円増加の5兆9,017億円となりました。
預金・譲渡性預金の期末残高は、個人預金や法人預金が増加し、前期末比972億円増加の7兆9,616億円となりました。

北海道銀行(単体)の業績及び預貸金期末残高

本業の収益力を表すコア業務純益は、貸出金利息の増加を主因に前期比25億円増加の179億円となりました。
経常利益は、与信費用が増加した一方、国債等債券損益の改善により、前期比52億円増加の129億円、当期純利益は、前期比34億円増加の119億円となりました。

貸出金の期末残高は、事業性貸出や個人ローンが増加し、前期末比2,244億円増加の4兆5,757億円となりました。
預金・譲渡性預金の期末残高は、個人預金や法人預金の増加を主因として、前期末比568億円増加の6兆941億円となりました。

[企業集団の対処すべき課題]

当社グループを取り巻く経営環境は、好調な企業業績を背景とした民間企業の設備投資やインバウンドの回復などが経済をけん引した一方で、物価高が家計の消費マインドに対して逆風となるなど、回復基調を維持しつつもそのテンポは緩やかなものとなりました。また、日本銀行が2024年7月、2025年1月に政策金利を引き上げし、約17年ぶりの水準となるなど、金融環境は大きく変化しております。銀行の経営環境にとってプラスとなる側面がある一方、家計やお客さまへの影響も懸念されます。加えて、足元においては米国の関税政策が世界経済の不確実性を高めているほか、欧州における政治情勢等の不安も存在しており、国内経済は不透明性を増している状況にあります。
こうした経営環境のもと、2024年度は中期経営計画『Go forward with Our Region』の最終年度として6つの重点戦略を中心に取り組んでまいりました。そして、その中で顕在化した課題や地域のポテンシャルを踏まえ、「広域地域金融グループとしてのネットワークと、総合的な金融サービス機能を活用して地域とお客さまの繁栄に貢献する」というビジョンの達成に向け、2025年度からの3年間を計画期間とする第6次中期経営計画『NEXT STAGE』を策定しました。本計画期間は、「地域・お客さまの課題解決と企業価値向上を共に実現する期間」と位置づけており、営業エリアの地域のポテンシャルの高まりに対して、戦略のエンジンとして掲げる3つの分野(金融・非金融の融合による課題解決力の深化、持続的な成長を支える経営基盤の強化、多様な人材が活躍し活力あふれる企業文化の定着)において取り組みを進めてまいります。
株主の皆さまには、引き続きご理解とご支援を賜りますようお願い申しあげます。

1.第6次中期経営計画の位置づけ

2.重点戦略の課題と今後の取り組み

3.第6次中期経営計画のKPI/KGI

    (注)

  • 記載金額は単位未満を切り捨てて表示しております。
  • 2024年度の状況については、前記「(1)企業集団の事業の経過及び成果等」のとおりであります。なお、2022年度の連結包括利益はその他有価証券評価差額金が時価の上昇により増加したことを主因として2021年度に比べ15億円増加しており、2023年度の連結包括利益はその他有価証券評価差額金が時価の上昇により増加したことを主因に2022年度に比べ674億円増加しており、2024年度の連結包括利益はその他有価証券評価差額金が時価の低下により減少したことを主因に2023年度に比べ569億円減少しております。
  • 信託財産額は、「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律」に基づく信託業務に係る信託財産額を記載しております。なお、連結会社のうち、該当する信託業務を営む会社は北陸銀行1行であります。

連結計算書類