事業報告(2024年4月1日から2025年3月31日まで)
企業集団の現況
事業の経過及び成果
① 経済環境
当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境の改善や堅調な企業業績を背景に緩やかな回復基調で推移するとともに、日本銀行による政策金利の引き上げなどの金融政策正常化が進みました。一方、米国の通商政策による影響が国内景気を下押しするリスクもあり、先行きに対する不確実性は高まっております。
② 企業集団の状況
こうした環境の下、当社グループは、ひとの成長と対話を通じた社会課題の解決と経済価値の同時実現による持続的成長を目指す、5か年(2022年度~2026年度)の中期経営計画「Fuyo Shared Value 2026」に取り組んでおります。中期経営計画の3年目となる2024年度も外部環境が大きく変化していく中で力強く持続的に成長する企業グループを目指して、計画に掲げたビジネス戦略・マネジメント戦略を着実に遂行しました。
2024年度における中期経営計画の遂行状況は次のとおりであります。
【ビジネス戦略】
中期経営計画「Fuyo Shared Value 2026」のビジネス戦略を着実に推進するため、社会の変化に応じた経営資源の機動的な配分を行い、3つの成長ドライバーに区分した7つの事業領域を中心にビジネス領域の拡大に取り組みました。
<3つの成長ドライバーと7つの事業領域>
1.ライジングトランスフォーメーション<社会的な地殻変動を捉えた戦略的成長>
●モビリティ物流
国内外における電気自動車(EV)の普及促進に向けたアライアンス先との連携を進め、サービスメニューの拡充を図りました。
また、物流領域における機能強化を目的に、2025年3月に物流機器の販売・レンタルを手掛ける株式会社ワコーパレットを連結子会社化しております。
●サーキュラーエコノミー
「資源循環の実現」と「収益機会の拡大」の同時実現を図るべく、リユース・リセール機能の集約と強化を目的とした施設「Fuyoリユースセンター」を開設しました。
2.アクセラレーティングトランスフォーメーション<市場トレンドを捉えた加速度的成長>
●エネルギー環境
再生可能エネルギー事業では、2024年4月に営業を開始した英国現地法人との連携を通じた欧州での取組拡大に加え、米国においてもアライアンス先との連携が進み、グローバルベースで実績を積み重ねております。 また、電力需給調整事業などの多角的な電力サービス事業を展開する株式会社グローバルエンジニアリングを持分法適用関連会社化するとともに、同社との連携による系統用蓄電池事業への参画を進めました。
●BPO/ICT
BPO領域においてアライアンス先との連携を通じた顧客基盤の更なる拡大に努めるとともに、お客様のサステナビリティ経営を支援する、新たなサービスの提供を開始しました。また、ICT領域においては高い需要が見込まれるデータセンター関連事業の取組拡大に向けて、米国のデータセンターを対象とする開発型ポートフォリオへの出資を実行するなど、新たな事業領域の創出を進めました。
●ヘルスケア
地域金融機関等との連携を進め、九州エリアを対象とする「地域特化型ヘルスケアファンド」を立ち上げるとともに、アライアンス先との関係強化を図り、診療・介護報酬債権早期支払サービス「FPSメディカル」の取扱いが拡大しました。2025年1月には医療・介護・福祉業界に特化した専門性の高い経営ソリューションサービスを提供する株式会社CBホールディングスを連結子会社化し、非ファイナンス領域における機能強化を進めました。
3.グロウイングパフォーマンス<中核分野の安定的成長>
●不動産
事業ポートフォリオ全体のバランスを意識し、リスクとリターンを踏まえたアセットコントロールを進めるとともに、英国においてアライアンス先と連携した環境配慮型不動産の開発に取り組むなど、海外におけるビジネスも着実に広がりつつあります。
●航空機
リースニーズの高まりを捉え、保有機体数は着実に増加しております。 また、ターキッシュ・エアラインズと契約を締結したサステナビリティ・リンク・ローン(※)付きオペレーティング・リースの取扱いを開始し、航空業界における脱炭素化の実現に貢献しております。
※ サステナビリティ・ローン
借入人の包括的なサステナビリティの取組成果と金利等の借入条件を連動させるローン
<事業を通じた社会価値の創出>
事業を通じた持続可能な社会の構築と企業としての継続的な成長の両立を実現するため、当社グループはCSV(Creating Shared Value)の考え方を経営の根幹に位置付け、サステナビリティに関する取組を強化しております。
中期経営計画においては、事業を通じて社会課題の解決に貢献するCSVの考え方に基づき、成長ドライバーに区分した7つの事業領域を、持続可能な地球環境の実現への貢献を目指す「環境」と、豊かな社会と健やかな人の実現への貢献を目指す「社会とひと」の分野にそれぞれ紐づけ、様々な取組を進めております。
「環境」分野では、国内外におけるカーボンクレジット創出プロジェクトへの参画や、リユース・リセール機能の集約と強化を目的とした施設「Fuyoリユースセンター」の開設などを通じて、気候変動問題の解決や循環型社会の実現に向けた取組を強化しました。「社会とひと」の分野では、スポーツを活用したまちづくりの推進を通じたCSVの実践などを進めております。このような取組を推進していくことで、社会課題の解決と経済価値の同時実現による持続的な成長を目指してまいります。
【マネジメント戦略】
ビジネス戦略を支える経営基盤を強化するため、マネジメント戦略では以下の取組を進めました。
- ・ より「学び」に専心できる環境として2023年度に開設した研修専用施設「Fuyo Shared Value Creation Center」の活用などを通じて、高付加価値人材の継続的な創出に向けた人的投資を積極的に進めております。なお、人的資本への積極的な投資を通じて、非財務目標の「人材育成関連費用(単体)300%(2021年度比)」を前倒しで達成しております。
- ・ DXを軸とする業務改革を強力に推進し、業務プロセスの“高度化”や“見える化”を通じた生産性の向上に取り組みました。
- ・ 財務健全性及び資本効率向上の両立に資する資金調達手段としてのハイブリッド社債(劣後特約付き)を、国内初となる「役員報酬の連動」を債券特性とするサステナビリティ・リンク・ボンド(※)として発行しました。
※ サステナビリティ・リンク・ボンド
発行体の包括的なサステナビリティの取組成果と金利等の債券条件を連動させる債券
以上のことから、当社グループの連結業績につきましては、次のとおりとなりました。
当連結会計年度の契約実行高は前年度比5.8%増加の1兆8,439億8千1百万円となり、当連結会計年度末の営業資産残高(割賦未実現利益控除後)は前連結会計年度末比1,946億9千4百万円(6.8%)増加して3兆721億4千3百万円となりました。
損益面では、売上高は前年度比4.3%減少の6,783億9千5百万円、営業利益は前年度比7.9%増加の647億6千万円、経常利益は前年度比1.0%増加の690億3千6百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年度比4.1%減少の452億7千7百万円となりました。



※親会社株主に帰属する当期純利益
セグメントの業績
当連結会計年度におけるセグメントの業績は次のとおりであります。
[リース及び割賦]
リース及び割賦の契約実行高は前年度比16.7%減少して5,280億5千8百万円となり、営業資産残高は前連結会計年度末比4.6%増加して1兆9,296億7千3百万円となりました。リース及び割賦の売上高は前年度比5.8%減少して5,836億7千7百万円となり、セグメント利益は前年度比4.0%増加して437億4千4百万円となりました。
[ファイナンス]
ファイナンスの契約実行高は前年度比19.9%増加して1兆3,146億5千6百万円となり、営業資産残高は前連結会計年度末比11.6%増加して1兆1,096億2千8百万円となりました。ファイナンスの売上高は前年度比19.4%増加して390億3百万円となり、セグメント利益は前年度比34.1%増加して250億9千万円となりました。
[その他]
その他の契約実行高は前年度比89.7%減少して12億6千7百万円となり、営業資産残高は前連結会計年度末比15.3%減少して328億4千1百万円となりました。その他の売上高は前年度比0.6%減少して557億1千4百万円となり、セグメント利益は前年度比1.2%減少して114億2千9百万円となりました。
企業集団の対処すべき課題
① 中期的な経営方針
今後の経済見通しにつきましては、継続的な物価上昇が見込まれるものの、賃金の上昇などを背景に雇用・所得環境が改善する下で緩やかな回復が続くことが期待されております。一方、日本銀行による政策金利の引き上げや為替の変動による影響には留意する必要があります。また、米国の保護主義的な通商政策などにより世界経済が減速する可能性もあり、先行きに不透明感を抱えながら推移すると予測しております。
このような状況の下、当社グループは、事業活動を通じて社会と企業の共有価値を創造するCSVの実践により、社会課題の解決と企業価値の向上を同時に実現することで、外部環境が大きく変化していく中で力強く持続的に成長する企業グループを目指してまいります。
② 価値創造ストーリー
当社グループは、ミッションとして「事業の領域拡大と更なる進化による新たな価値創造に果敢に挑戦し、豊かな社会の実現と持続的な成長に貢献する。」を掲げています。その実現に向けて、「社会課題の解決」・お客様との「相互信頼と共創」・「社員の挑戦と成長」をキーワードにした3つのビジョン(実現したい姿)を定め、役職員がコーポレートスローガン「前例のない場所へ。」に集約されるバリュー(行動指針)を共有し実践することで、CSV、すなわち社会価値と企業価値の持続的な向上に取り組んでまいります。

持続的な価値創造を支える基盤の強化に向けては、当社グループ最大の財産である社員の「挑戦と成長」を後押しすべく、積極的な人材投資を行ってまいります。
事業領域の多様化・高度化に対応した高付加価値を創出する人材の育成に向けて、高い専門性の構築を目指す社員の成長をサポートするとともに、研修専用施設「Fuyo Shared Value Creation Center」のグループベースでの継続的な活用などを通じた戦略的な人材育成を進めてまいります。
また、ビジネス部門のグローバル化を見据えた人材育成にも戦略的に取り組み、組織体制の整備・強化を進めるとともに、コーポレート部門とビジネス部門の連携を通じたより実践的な取組も進めてまいります。
中期経営計画「Fuyo Shared Value 2026」においても、当社ビジネスの礎となる社員の「挑戦と成長」により、事業を通じたお客様との「相互信頼と共創」、並びにその先の「社会課題の解決」を実現していくことで価値創造の好循環を生み出し、経済価値と社会価値の同時実現による持続的な成長を実現してまいります。
③ 中期的な事業戦略
持続的な成長に向けた中期経営計画の事業戦略につきましては、環境変化やこれまでの進捗状況・実績を踏まえ、計画最終年度の経営目標達成に向けた見直しを実施しました。
引き続き、事業環境や社会の変化を捉えた経営資源の機動的な配分を進め、事業の領域拡大と更なる進化による新たな価値創造に果敢に挑戦してまいります。
経営資源を集中的に投下する事業領域における具体的な取組・戦略は以下のとおりです。
●モビリティ/ロジスティクス
物流領域における事業基盤の拡充に伴い、「モビリティ物流」を「モビリティ/ロジスティクス」として再整理し、従来以上に専門性を高め、より機動的な事業展開を進めてまいります。
具体的には、アライアンス先と連携したEV関連ビジネスの拡充を通じて、国内外においてEVワンストップサービスの機能拡充を図ります。また、新たにグループに加わった株式会社ワコーパレットや日本パレットレンタル株式会社との連携を深め、物流領域における様々な課題の解決への貢献を目指します。
●エネルギー環境
欧米を中心に再生可能エネルギー事業の更なる拡大を図るとともに、株式会社グローバルエンジニアリングやアライアンス先との協働による蓄電池関連事業の取組を進めていきます。
また、洋上風力建設に用いる大型作業船の共同保有などの新たなビジネスへの取組を通じて、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
●BPO/ICT
特色あるAIスタートアップ企業との連携による新規ビジネスの事業化を推進するとともに、国内外におけるデータセンター領域への投資を加速し、サービスメニューの拡充・高度化を推進するとともに、豊かなデジタル社会の実現に向けた取組を進めてまいります。
●ヘルスケア
新たに連結子会社となった株式会社CBホールディングスを非ファイナンス領域における中核企業と位置付け、同社が有する幅広いコンサルティング機能と当社グループのファイナンスやBPO機能などを融合させることで、医療・介護事業者が抱える様々な経営課題の解決に貢献し、健康と福祉における安心を創出してまいります。
また、既存の事業領域にとどまらない新たな価値創造領域の探索にも注力してまいります。
【新たな価値創造領域の具体的な事例】
- ・脱炭素実現への貢献を目指すカーボンクレジットの創出
- ・地域活性化に資するまちづくりへの参画 など
④ 目標とする経営指標
中期経営計画「Fuyo Shared Value 2026」では、計画最終年度である2026年度の財務目標及び非財務目標を以下のとおり設定しております。
経営目標
財務目標

非財務目標(抜粋)

経営目標の達成に向けて最大限努力してまいります。
株主の皆様におかれましては、より一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
【ご参考】
1. コーポレートガバナンスへの取組
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(1) 基本的な考え方
当社グループは、株主、顧客、従業員、地域社会など様々なステークホルダーとの関係を重視し、当社グループの「ミッション/ビジョン/バリュー」のもと、2022年度~2026年度の中期経営計画「Fuyo Shared Value 2026」に掲げる経営目標を実現するために、誠実かつ公正な企業活動を遂行することがコーポレートガバナンスの基本であり、最も重要な課題であると考えております。
当社は、コーポレートガバナンスの枠組及び運営方針等を定めた「コーポレートガバナンス・ガイドライン」を取締役会の決議により制定し、これに則った企業活動を行っております。 -
(2) コーポレートガバナンス体制
当社は、監査役会設置会社の形態を採用しております。監査役は内部監査部門及び内部統制部門と密接に連携して監査を行っており、独立社外監査役を2名設置しております。
また、当社は、外部的視点から業務執行に対する監督及び助言を得るべく独立社外取締役を4名設置しており、当社の取締役会の構成は業務執行取締役以外の取締役5名と業務執行取締役4名となっております。さらに、取締役会議長は業務執行取締役以外の取締役から選定することとし、現在は取締役会長が議長を務めております。
加えて、当社は、取締役会の任意の諮問機関として、独立社外取締役全員と業務執行取締役以外の社内取締役1名により構成する「指名・報酬等諮問委員会」を設置しております。同委員会では、取締役・監査役の候補者選定・解任、取締役の報酬、取締役社長(社長執行役員)の後継者計画、「コーポレートガバナンス・ガイドライン」の改正、取締役会全体の実効性に関する分析・評価等について審議し取締役会に対し答申しており、恣意性を排除するとともに透明性の高い経営体制としております。こうした体制とすることにより、当社は、取締役会の監督機能の一層の向上を図っております。
さらに当社は、経営の監督機能と業務執行との分離により、意思決定のスピードアップと経営効率を高めるため、執行役員制度を導入しております。当社のコーポレートガバナンス体制の全体像は下図のとおりとなります。
コーポレートガバナンス体制図

※上記体制図は、第2号議案及び第3号議案ご承認後の体制を記載しております。
2025年3月31日時点における監査役会の構成は、独立社外監査役2名を含む監査役3名となっております。
2. 持続可能な価値創造を支える体制
当社グループはCSV(※)の考え方を経営の軸と位置付け、事業を通じてSDGsに代表される社会課題を解決することで、持続可能な社会の構築と企業としての持続的な成長の両立を目指しております。
「持続的な価値創造を支える体制にかかる基本方針」で基本的な考え方を定めるとともに、グループ横断的にCSVを推進するため2020年に「CSV推進委員会」を設立し、非財務面の指標・目標の策定、その推進にかかるモニタリング等を行っております。
※CSV(Creating Shared Value):共有価値の創造。事業活動を通じ、社会価値と企業価値を同時に追求、両立させることを目指す経営の考え方。

3. 人材投資に関する考え方
当社グループは、「人」すなわち社員が当社グループの持続的な価値創造を支える基盤であり、最大の財産であると考え、積極的な人材投資を行っております。
[人材投資の3つの柱]
- ・事業領域の多様化、高度化に対応する「戦略的人材育成」
- ・多様な個性や才能、能力が最大限発揮できる「ダイバーシティ&インクルージョン」
- ・健康で生き生きと働ける職場環境の整備、「健康経営、ワークライフバランス」
このうち、戦略的人材育成では、語学やDXなど全ての事業領域において付加価値の創出を底上げするスキルの教育や、自己啓発プログラムの拡充に加え、2024年3月にグループの研修施設「Fuyo Shared Value Creation Center」を開設し、より学びに専心できる環境を整えております。
ダイバーシティ&インクルージョンでは、男性育休や年次有給休暇の取得推進、多様なキャリア・ロールモデルに触れる機会、面談による個別支援等により、性別に捉われず誰もがライフと仕事の調和を図り能力を発揮できる環境づくりに取り組んでいます。また健康経営では、女性の健康課題等への理解を深めるオンラインセミナーや、女性医師や産業保健師による定期的な個別相談も開催しております。
4. 気候変動問題と再生可能エネルギーへの対応
-
(1) 気候変動問題に対する当社グループの認識
当社グループは、気候変動がもたらすリスクと機会への対応が重要と認識し、2019年に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同し、2022年よりこれらリスクと機会が業績や財務面に与える影響の分析及び情報開示を実施しております。当社グループの脱炭素化へ取り組むとともに、ビジネスソリューションの提供を通じてお客様・社会の脱炭素化を推進していくこととし、「脱炭素社会実現への貢献」を重要な取組課題(マテリアリティ)の一つに掲げております。 -
(2) 温室効果ガス排出削減に向けた取組
当社グループは2018年に国内総合リース会社として初めて「RE100」に参加しました。2021年にカーボンニュートラル宣言を公表し、当社グループが排出するCO2(スコープ1及び2)を2030年までに実質ゼロにすることを目標に掲げ、オフィススペース消費電力の再生可能エネルギー化等を進めております。
さらに、お客様や社会の温室効果ガス排出削減に向けて、再生可能エネルギー発電事業への取組を拡大するとともに、お客様の脱炭素に資する製品・物件等を対象にした芙蓉ゼロカーボンシティサポートグラムを継続して推進する等、脱炭素推進に向けた資金投下額を5年間累計で3,000億円、CO2の排出量削減貢献を2026年において年間50万t-CO2/年を中期経営計画の非財務目標に設定して取り組んでおります。
