事業報告(2024年4月1日から2025年3月31日まで)

当社グループの事業活動の状況

当社グループ(注)は、グループの企業価値の向上を目指し、証券業を中核とした事業活動を行っております。当社グループの当期(2024年度)の事業の概況は以下のとおりであります。

(注)
本事業報告において、「当社グループ」とは、当社及びその関係会社から成る企業集団を指します。

連結業績の概況

(1)当社グループの損益の状況
(2)当社グループの資産・負債・純資産の状況

当社グループの事業活動の成果(各セグメントの実績)

ウェルスマネジメント部門

詳細はこちらを閉じる

【主な商品・サービス】

株式、債券、投資信託、ラップ口座サービス、保険、預金、ローン、相続関連サービスなど

大和証券株式会社では、グループ経営基本方針に掲げる「お客様の資産価値最大化」の実現に向けて、お客様を深く理解することで、お客様一人ひとりの状況や経済環境に応じた最善・最適で質の高いコンサルティングの提供を追求しています。当期は、引き続きお客様の資産状況やニーズなどのヒアリングを踏まえ、最適なポートフォリオ提案やソリューション提案を実践しました。この取組みにより、ラップ口座サービスは契約金額が過去最高となりました。また、多様なお客様のニーズに応えられるよう、オルタナティブ資産(注)を対象とした株式投資信託など、商品ラインアップの拡充に取り組みました。その結果、株式投資信託の純増額も過去最高となるなど、マーケット環境に左右されにくい収益基盤の構築が進展しました。

同社が株式会社ゆうちょ銀行に提供している「ゆうちょファンドラップ」については、同行行員に対するサポート体制強化に努めたことで、お客様基盤の順調な拡大につながりました。また、株式会社四国銀行との包括的業務提携では、目標を3年前倒しで達成するなど有価証券資産残高が大きく拡大しました。さらに、2025年3月には株式会社岩手銀行と包括的業務提携に関する最終契約を締結し、提携業務の開始に向け体制を整備しています。

株式会社大和ネクスト銀行は、2024年10月より投資用不動産ローンの取扱いを開始し、富裕層のお客様向けソリューションを拡充しました。

Fintertech株式会社は、暗号資産担保ローン事業や貸付型クラウドファンディング事業において新たに大和証券株式会社からの顧客紹介を開始するとともに、先端技術活用による次世代金融ビジネスの開発に取り組みました。

大和コネクト証券株式会社は、2024年12月に株式会社クレディセゾンと連携してポイント投資サービスを拡充し、2025年1月には、一般信用取引や株式会社大和ネクスト銀行への定期預金の取次を開始するなど、サービスラインアップの充実に取り組みました。

(注)
オルタナティブ資産:伝統的な投資対象である上場株式や債券に代わる新たな投資資産。

アセットマネジメント部門

詳細はこちらを閉じる

【主な商品・サービス】

証券アセットマネジメント:各種投資信託商品(組成・運用)、投資顧問、お客様・販売会社支援など
不動産アセットマネジメント:不動産投資信託(組成・運用)など
オルタナティブアセットマネジメント:ベンチャー投資、プライベート・エクイティ投資、金銭債権投資、エネルギー・インフラストラクチャー投資など

証券アセットマネジメントでは、大和アセットマネジメント株式会社において、運用力の向上やオルタナティブ商品の開発、新NISA対象商品のプロモーションにより運用資産残高の拡大に取り組みました。「iFree NEXT FANG+インデックス」をはじめとする新NISA対象商品の販売が好調で、公募株式投資信託全体で当期の資金増加額は1兆1,203億円となりました。また、株式会社かんぽ生命保険との資本業務提携を通じて投資顧問ビジネスの強化に取り組み、当期の投資一任契約における契約金額の増加額は1兆3,662億円となりました。その結果、同社の当期末における運用資産残高(注1)は33.3兆円となりました。Global X Japan 株式会社においては、成長テーマ型ETF(注2)やインカム型ETF(注3)など51銘柄を上場させ、同社の当期末の運用資産残高は4,554億円となりました。

不動産アセットマネジメントでは、大和リアル・エステート・アセット・マネジメント株式会社が運用する大和証券レジデンシャル・プライベート投資法人の物件取得や私募ファンドの運用受託などを通じて、当期末の運用資産残高は1兆4,245億円となりました。さらに、当社の持分法適用関連会社であるサムティホールディングス株式会社は非公開化し、キャピタルゲインに依存したビジネス構造からの転換と強固な収益基盤の構築を目指しています。

オルタナティブアセットマネジメントでは、大和PIパートナーズ株式会社において、既存案件の回収を進めました。また、大和PIキャピタル株式会社では、同社が運営するプライベート・エクイティファンドにおいて目標を上回る総額260億円の出資約束を得て、募集を完了しました。大和エナジー・インフラ株式会社は、国内においてデータセンター事業への投資を実行し、海外においては外部企業とのパートナーシップに基づき、米国の系統用蓄電池や太陽光・陸上風力発電所、豪州の太陽光発電所などへの投資を実行するとともに、既存案件の回収を進めました。

(注1)
投資信託及び投資一任・助言契約残高の合計(海外子会社の運用残高を含む概算値)。
(注2)
成長テーマ型ETF:先進的かつ成長性が見込めるテーマに着目し、構造的な変化から恩恵を受けることを目指すETF。
(注3)
インカム型ETF:配当利回りや配当の継続性などに着目し、高い分配金利回りを獲得することを目指すETF。

グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門

詳細はこちらを閉じる

【主な商品・サービス】

グローバル・マーケッツ:株式、債券・為替、デリバティブ
グローバル・インベストメント・バンキング:株式の引受け、債券の引受け、M&Aアドバイザリー、上場コンサルティングなど

グローバル・マーケッツでは、主に機関投資家や事業法人を対象とした株式、債券・為替及びそれらの金融派生商品のセールス及びトレーディング、並びに個人投資家向けの商品供給及び販売サポートを行っています。

当期は、日経平均株価が史上最高値を更新し、海外投資家の日本市場への注目が高まる中、海外拠点における日本株式のセールス、トレーダーの体制を強化しました。また、日本銀行が金融政策の正常化を進める中、国内債券市場において築き上げた強固な事業基盤を活用し、金利上昇に伴う収益機会の確保に取り組みました。

グローバル・インベストメント・バンキングでは、有価証券の引受業務及びM&Aアドバイザリー業務などを行っています。

引受業務では、株式会社ゆうちょ銀行の株式売出し、JX金属株式会社の新規上場において、グローバル・コーディネーター(注1)を務めたほか、NTTファイナンス株式会社による普通社債、KDDI株式会社によるサステナビリティボンド(注2)などで主幹事を務めました。グローバル・マーケッツの強みも活かし、多くの案件で主幹事を務めたことで、国内普通社債、地方債及びSDGs関連債(注3)それぞれのリーグテーブル(注4)で1位を獲得しました。

M&Aアドバイザリー業務では、株式会社トライアルホールディングスによる株式会社西友株式の取得、SCSK株式会社によるネットワンシステムズ株式会社への公開買付け、伊藤忠商事株式会社による株式会社デサントへの公開買付けなど、多くの案件に関与しました。

(注1)
グローバル・コーディネーター:株式の公募・売出しを国内外に対して実施するときに、全体の業務を統括する主幹事証券会社。
(注2)
サステナビリティボンド:企業や地方自治体などが、国内外のグリーンプロジェクト及びソーシャルプロジェクト双方に要する資金を調達するために発行する債券。
(注3)
SDGs関連債:サステナビリティボンドなどを含む、発行体のサステナビリティ戦略における文脈に即し、環境・社会課題解決を目的として発行される債券。
(注4)
リーグテーブル:債券を引受ける証券会社の主幹事引受額を年度通算したランキング。

当社グループの設備投資の状況

当社グループは、グループ経営基本方針として掲げる「お客様の資産価値最大化」を達成するために、生成AIやWeb3.0(注1)などを活用したデジタル・イノベーションの追究、事業の効率性・安全性を確保するためのインフラ整備、法令・制度への対応、リスク管理の高度化などを目的とする設備投資を行っています。

当期は、より深いお客様理解に基づいた最適なポートフォリオの分析・提案を行えるよう、総資産データベースの整備や営業員向けのコンサルティングツールの拡充に取り組みました。また、営業員のお客様と接する時間の抜本的拡大を目指して、お客様との面談時の会話内容を自動記録・要約するシステムを導入し、ダイワのオンライントレードにおいては多様な商品・銘柄の受付を可能にするオンライン販売プラットフォームを構築しました。さらに、先端技術への投資として、2024年10月に「AIオペレーターサービス」を開発・導入し、生成AIを活用した音声によりマーケット情報や一般的な事務手続きの問い合わせを会話形式で応対することで、お客様の利便性向上や新たな顧客体験の提供を実現しました。また、広域自然災害に備えて遠隔地にデータセンターを整備し、オペレーショナル・レジリエンス(注2)の確保に取り組みました。これらの取組みにより、総額約381億円のIT投資を行いました。

(注1)
Web3.0:ユーザーが自身のデータを自ら制御して価値取引を行えることを目指した分散型インターネットの概念で、次世代のWebの形式を指す。
(注2)
オペレーショナル・レジリエンス:業務の強靭性・復旧力。システム障害、サイバー攻撃、自然災害などが発生しても、重要な業務やサービスを最低限維持すべき水準において提供し続ける能力。

当社グループの資金調達の状況

当社は、以下のとおり総額で1,250億円の社債を発行しました。

過去5年間の連結業績及び連結財産の状況の推移

(注)
「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第85期の期首から適用しており、第85期以降に係る各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっております。

当社グループの対処すべき課題

2024年度は、地政学リスクや政治的変動が世界規模で強く意識される中、わが国においては、長期にわたるデフレからの脱却が進み、「金利のある世界」への歴史的な転換点を迎えた重要な一年となりました。新NISAの導入を契機に「貯蓄から投資へ」の流れが着実に広がり、企業では資本効率向上を目指したコーポレートアクションが一段と活発化しました。株式市場は年間では下落したものの、7月には日経平均株価が史上最高値の4万2,224円を記録しました。さらに、日本銀行が政策金利を17年ぶりの水準に引き上げるなど、日本経済の構造的な変革が一層鮮明になりました。

こうした中、当社は「お客様の資産価値最大化」を基本方針とする中期経営計画 ~“Passion for the Best” 2026~ を力強く始動しました。連結業績が拡大するとともに当社が重視するベース利益(注)も想定を上回るペースで増加しました。さらに、非連続な成長戦略として、株式会社あおぞら銀行や株式会社かんぽ生命保険をはじめとする外部企業との資本業務提携を実現し、事業基盤の拡充に向けた大きな一歩を踏み出しました。

2025年度を迎え、世界情勢には依然として不透明感が漂うものの、転換期を迎えたわが国において、当社グループが果たすべき役割と責務は一層重要性を増しています。2025年度は、中期経営計画の2年目として、より強固な収益基盤の確立を目指し、次に掲げる行動計画をスピード感をもって愚直に推進していきます。お客様の不変のニーズである「資産価値最大化」を最優先に掲げ、的確な環境分析と深いお客様理解に基づいた質の高いコンサルティングやソリューションを提供し、資産運用立国・投資大国の実現、さらには、金融・資本市場を通じた豊かな未来の創造に貢献してまいります。

(注)
ベース利益:ウェルスマネジメント部門、証券アセットマネジメント、不動産アセットマネジメントの経常利益合計。

各事業部門のアクションプラン

ウェルスマネジメント部門
1
お客様に対する深い理解に基づいた最適なコンサルティングの提供によるウェルスマネジメントビジネスのさらなる深化
2
富裕層や法人のお客様の高度なニーズに応えるオーダーメイドで付加価値の高い商品・サービス・ソリューションの拡充及び提供
3
デジタルマーケティングによるお客様に合わせたタイムリーかつ適切なサービス提供体制の深化
4
外部提携、ワークプレイス(職域)ビジネスによる顧客基盤の拡大
5
銀行ビジネスを活用した顧客基盤の拡大及び、富裕層のお客様向けソリューションの提供
アセットマネジメント部門
1
幅広い投資家層に訴求する運用商品・ブランドの確立、魅力的なオルタナティブ商品の展開を通じた更なる運用残高拡大
2
株式会社かんぽ生命保険との資産運用分野における協業を軸にした運用の高度化、国内外における投資顧問ビジネスの基盤構築
3
不動産アセットマネジメント事業における運用力・物件ソーシング力の強化、運用商品の拡大及びグループ内連携の推進
4
オルタナティブファンドの拡大に向けたパフォーマンスの追求と基盤の構築
グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門
1
幅広いお客様ニーズを捉えた多様なプロダクト・高度なソリューションの提供
2
ウェルスマネジメント部門をはじめとしたグループ連携の更なる強化によるビジネス基盤の拡大
3
未上場企業への更なるソリューションの提供及び国内外M&Aの強化
4
経営資源のリアロケーションを通じた収益性の向上
その他(大和総研グループ)
1
シンクタンクとしての時宜を得た良質な情報発信による、社会・経済の健全な発展と資産運用立国への貢献
2
AI・データサイエンスの活用によるお客様の企業価値最大化への貢献
3
ヘルステック事業を通じた人的資本経営への貢献

連結計算書類