事業報告(2025年4月1日から2026年3月31日まで)
当社グループの事業活動の状況
当社グループ(注)は、グループの企業価値の向上を目指し、証券業を中核とした事業活動を行っております。当社グループの当期(2025年度)の事業の概況は以下のとおりであります。
- (注)
- 本事業報告において、「当社グループ」とは、当社及びその関係会社から成る企業集団を指します。
連結業績の概況
(1)当社グループの損益の状況
(2)当社グループの資産・負債・純資産の状況
当社グループの事業活動の成果(各セグメントの実績)
ウェルスマネジメント部門
【主な商品・サービス】
株式、債券、投資信託、ラップ口座サービス、保険、預金、ローン、相続関連サービスなど
大和証券株式会社では、グループ経営基本方針に掲げる「お客様の資産価値最大化」の実現に向けて、お客様を深く理解することで、お客様一人ひとりの状況や経済環境に応じた最善・最適で質の高いコンサルティングの提供を追求しています。当期は、引き続きお客様の資産状況や課題を把握することにより、最適なポートフォリオ提案やソリューション提案を実践しました。この取組みにより、資産導入額は2007年以来の高水準、ラップ口座サービスの契約金額および株式投資信託の純増額は過去最高を記録するなど、顧客基盤の拡充およびマーケット環境に左右されにくい収益基盤の構築が進展しました。また、高度化するお客様のニーズに応えるべく、特定投資家向け銘柄制度(J-Ships)の取扱協会員として指定を受けるなど、商品・サービス・ソリューションの拡充を進めています。
また同社が株式会社ゆうちょ銀行に提供している「ゆうちょファンドラップ」に加え、株式会社あおぞら銀行を含む4行において「みらい彩りラップ」の取扱いを開始するなど外部提携の拡大にむけた取組みを強化しました。その結果、提携先経由でのファンドラップの契約残高は倍増しています。さらに、2026年4月より、株式会社岩手銀行との協業を開始し、顧客基盤の拡大を着実に進めています。
株式会社大和ネクスト銀行は、金利のある世界が定着する中、魅力ある預金金利を提供するとともに、証券口座との連携をはじめとするグループ連携を通じてお客様のニーズを的確に捉えた結果、安定的な資金流入が進み、預金残高は開業以来初めて5兆円を突破しました。また、金利上昇局面を着実に捉えた運用により運用利鞘が拡大したことから、経常利益についても過去最高を更新するなど、収益基盤の一層の強化を図りました。
Fintertech株式会社は、2025年10月より大和証券株式会社の全国の本支店からの暗号資産担保ローンの紹介を開始するなど、グループ連携を通じた資産活用サービスの拡充と、デジタル技術を活用した先進的な金融ビジネスの展開に取り組みました。
大和コネクト証券株式会社は、スマートフォン専業証券の強みを活かし、株式会社カブ&ピースと共同でオンライン完結型の上場株式入庫スキームを構築するなど証券機能のプラットフォーム提供や、外部連携サービス拡充を推進しました。
アセットマネジメント部門
【主な商品・サービス】
証券アセットマネジメント:各種投資信託商品(組成・運用)、投資顧問、お客様・販売会社支援など
不動産アセットマネジメント:不動産投資信託(組成・運用)など
オルタナティブアセットマネジメント:ベンチャー投資、プライベート・エクイティ投資、金銭債権投資、エネルギー・インフラストラクチャー投資など
証券アセットマネジメントでは、大和アセットマネジメント株式会社において、運用力の強化・高度化やオルタナティブ商品の展開を通じた更なる運用資産残高の拡大に取り組みました。「iFree NEXT FANG+インデックス」などの販売が好調で、公募株式投資信託全体で当期の資金増加額は1兆1,909億円となりました。その結果、同社の当期末における運用資産残高(注1)は44.2兆円となりました。また、投資顧問ビジネス強化の一環として、三井物産オルタナティブインベストメンツ株式会社(現 大和かんぽオルタナティブインベストメンツ株式会社)を子会社化し、オルタナティブ資産運用分野へ本格参入しました。Global X Japan 株式会社においては、成長テーマ型ETF(注2)やインカム型ETF(注3)など64銘柄が上場しており、同社の当期末の運用資産残高は8,488億円となりました。
不動産アセットマネジメントでは、大和リアル・エステート・アセット・マネジメント株式会社が運用する私募REITの物件取得や私募ファンドの運用受託などを通じて、当期末の運用資産残高は1兆7,978億円となりました。さらに、当社の持分法適用関連会社であるサムティホールディングス株式会社においては、私募ファンドを着実に組成し、キャピタルゲインに依存したビジネス構造からの転換と強固な収益基盤の構築を図っています。
オルタナティブアセットマネジメントでは、大和企業投資株式会社は、未上場バイオベンチャーに投資する「大和日台バイオベンチャー3号投資事業有限責任組合」及びSSIアセットマネジメントと共同運用する「DAIWA-SSIAM Vietnam Growth Fund IV (USD) L.P.」を設立しました。大和PIパートナーズ株式会社において、既存案件の回収を進めました。また、大和PIキャピタル株式会社では、同社が運営するプライベート・エクイティファンドにおいて飲食ビジネスを中心に投資を実行しました。大和エナジー・インフラ株式会社は、国内外の再生可能エネルギー事業やインフラ事業に対する投資を実行するとともに、既存案件の回収を進めました。
- (注1)
- 投資信託及び投資一任・助言契約残高の合計(海外子会社の運用残高を含む概算値)。
- (注2)
- 成長テーマ型ETF:先進的かつ成長性が見込めるテーマに着目し、構造的な変化から恩恵を受けることを目指すETF。
- (注3)
- インカム型ETF:配当利回りや配当の継続性などに着目し、高い分配金利回りを獲得することを目指すETF。
グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門
【主な商品・サービス】
グローバル・マーケッツ:株式、債券・為替、デリバティブ
グローバル・インベストメント・バンキング:株式の引受け、債券の引受け、M&Aアドバイザリー、上場コンサルティングなど
グローバル・マーケッツでは、主に機関投資家や事業法人を対象とした株式、債券・為替及びそれらの金融派生商品のセールス及びトレーディング、並びに個人投資家向けの商品供給及び販売サポートを行っています。
当期は、日経平均株価が史上最高値を更新し、投資家の日本株への関心が高まる好機を捉えたことが、海外機関投資家を含むお客様との取引拡大に奏功しました。また、金利上昇や円安が継続する中で、現物取引のみならずデリバティブを含めた多角的なソリューションを提供し、多様化する投資家ニーズへの対応を強化することで、お客様との取引活性化を実現しました。
グローバル・インベストメント・バンキングでは、有価証券の引受業務及びM&Aアドバイザリー業務などを行っています。
引受業務では、株式会社コーエーテクモホールディングス、信越化学工業株式会社の株式売出しや株式会社JVCケンウッドによる転換社債型新株予約権付社債及びKDDI株式会社による普通社債などで主幹事を務めたほか、伊藤忠商事株式会社による本邦初となるオレンジボンド(注1)の引受における主幹事及びStructuring Agent(注2)を務めました。グローバル・マーケッツの強みも活かし、多くの案件で主幹事を務めたことで、前年に続き、国内普通社債、地方債及びSDGs関連債(注3)それぞれのリーグテーブル(注4)で1位を獲得しました。
M&Aアドバイザリー業務では、NTT株式会社による株式会社NTTデータの完全子会社化、パラマウントベッドホールディングス株式会社の非上場化、株式会社パロマ・リームホールディングスによるフランスのGroupe Atlanticの株式過半数取得など、多くの案件に関与しました。
- (注1)
- オレンジボンド:女性活躍推進等、ジェンダー平等に資するプロジェクトに対する資金調達を目的とした債券。
- (注2)
- Structuring Agent:フレームワークの策定や第三者評価の取得に関する助言を通じて、オレンジボンドなどの発行支援を行う者。
- (注3)
- SDGs関連債:サステナビリティボンドなどを含む、発行体のサステナビリティ戦略における文脈に即し、環境・社会課題解決を目的として発行される債券。
- (注4)
- リーグテーブル:債券を引受ける証券会社の主幹事引受額を年度通算したランキング。
当社グループの設備投資の状況
当社グループは、ビジネスモデルの変革、デジタル・イノベーションの推進を骨子としたデジタル戦略(注1)に沿って、生成AIをはじめとする先端技術を活用したデジタル・イノベーションの推進、顧客体験の高度化、および事業の効率性・安全性を支えるITインフラの整備を目的とした戦略的な設備投資を継続しています。
当期においては、生成AIおよびクラウドの活用によるDXの加速を目的に、日本マイクロソフト株式会社と複数年にわたる戦略的枠組みに関する契約を締結しました。Microsoft 365 Copilot等のAIエージェントの活用を通じて、社員一人ひとりの生産性向上や業務プロセスの高度化を進め、持続的な競争力の強化に取り組んでいます。また、Sakana AI株式会社とのパートナーシップのもと、お客様のプロファイルや市場環境を踏まえ、金融資産に加え非金融資産も含めた包括的なポートフォリオ提案に特化したプラットフォームの共同開発を進めています。さらに、生成AIと音声認識を活用した顧客応対内容の自動記録により、提案力の向上、顧客接点の拡充、およびコミュニケーションの透明性確保を実現しました。
大和証券株式会社は、2025年4月に、資産管理や投資に役立つスマートフォンアプリ「D-Port」の提供を開始しました。同アプリは、不正アクセス対策として有効なパスキー認証を採用しており、パスワード不要で安心・安全なログインに対応しています。また、AIオペレーターを活用した問い合わせ対応体制を拡充し、安全性と利便性の両立を推進しています。さらに、広域自然災害に備えて遠隔地にデータセンターを整備するなど、オペレーショナル・レジリエンス(注2)の確保に取り組みました。
これらの取組みにより、当期におけるIT投資額は、総額約437億円となりました。
また、大和証券株式会社は、新たな営業所として、木更津営業所を開設しました。
- (注1)
- デジタル戦略及び主な取り組み状況の詳細は、以下のQRコードよりご参照ください。
- (注2)
- オペレーショナル・レジリエンス:業務の強靭性・復旧力。システム障害、サイバー攻撃、自然災害などが発生しても、重要な業務やサービスを最低限維持すべき水準で継続的に提供する能力。
当社グループの資金調達の状況
当社は、以下のとおり総額で1,040億円の社債を発行しました。
過去5年間の連結業績及び連結財産の状況の推移
当社グループの対処すべき課題
2025年度は、米国新政権の通商政策が本格化し、世界経済が構造的な変化に直面した年となった一方、日本においては、高市新政権の発足と衆議院解散・総選挙を経て、新たな政治体制へと移行しました。金融市場では、政策金利が約30年ぶりの水準まで引き上げられ、「金利のある世界」が定着しました。また、企業のガバナンス改革の進展や新政権の政策運営への期待を背景に海外投資家からの資金流入が続き、2月には日経平均株価が取引時間中に一時59,332円に達し、過去最高値を更新しました。一方、3月末にかけては中東情勢における軍事的緊張の高まりなどを受け、世界経済の不確実性が高まり、金融市場は大きな変動を余儀なくされました。
こうした環境のもと、当社は「お客様の資産価値最大化」を経営の揺るぎない軸に据え、お客様一人ひとりへの深い理解に基づく質の高いコンサルティングと、最適なソリューションの提供を強力に推進してきました。その結果、当社が重視するベース利益(注)が想定を上回るペースで増加し、連結業績の安定性は着実に向上しました。
中期経営計画の最終年度となる2026年度は、依然として地政学リスクの高まりや原油価格の変動などに直面しているものの、新たな成長軌道を描き始めたわが国において、「貯蓄から投資」の流れを確かなものにするという当社の使命は、一層重要性を増しています。目先の環境変化にぶれることなく、総資産コンサルティングの高度化を推し進めるとともに、成長投資を着実に進展させることで、外部環境に左右されにくいより強固な収益構造の構築に愚直に取り組んでいきます。今年度は次頁に掲げる行動計画を着実に実行することで、資産運用立国の実現、わが国の成長型経済への移行に貢献していきます。
- (注)
- ベース利益:ウェルスマネジメント部門、証券アセットマネジメント、不動産アセットマネジメントの経常利益合計。
各事業部門のアクションプラン
ウェルスマネジメント部門
- 1
- お客様に対する深い理解に基づいた最適なコンサルティングの提供によるウェルスマネジメントビジネスのさらなる深化
- 2
- 富裕層や法人のお客様の高度なニーズに応えるオーダーメイドで付加価値の高い商品・サービス・ソリューションの拡充及び提供
- 3
- デジタルマーケティングによるお客様に合わせたタイムリーかつ適切なサービス提供体制の深化
- 4
- 外部提携、ワークプレイス(職域)ビジネスによる顧客基盤の拡大
- 5
- 銀行ビジネスを活用した顧客基盤の拡大及び、富裕層のお客様向けソリューションの提供
アセットマネジメント部門
- 1
- 幅広い投資家層に訴求する運用商品・ブランドの確立、魅力的なオルタナティブ商品の展開を通じた更なる運用残高拡大
- 2
- 外部提携も活用した運用力の強化・高度化、ゴールベースアプローチ型資産運用をはじめとしたサービス提供力の高度化
- 3
- 不動産アセットマネジメントにおける運用力・物件ソーシング力強化、運用商品拡大及びグループ内連携による運用残高拡大
- 4
- オルタナティブファンドの拡大に向けたパフォーマンスの追求と基盤の構築
グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門
- 1
- 幅広いお客様ニーズを捉えた多様なプロダクト・高度なソリューションの提供
- 2
- ウェルスマネジメント部門をはじめとしたグループ連携の更なる強化によるビジネス基盤の拡大
- 3
- 未上場企業への更なるソリューションの提供及び国内外M&Aの強化
- 4
- 経営資源のリアロケーションを通じた収益性の向上
その他(大和総研グループ)
- 1
- シンクタンクとしての時宜を得た良質な情報発信による、社会・経済の健全な発展と資産運用立国への貢献
- 2
- AI・データサイエンスの活用によるお客様の企業価値最大化への貢献
- 3
- ヘルステック事業を通じた人的資本経営への貢献