事業報告(2024年4月1日から2025年3月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

1.当連結会計年度の事業の状況

事業の経過及び成果

はじめに、当社グループの元社員による金融商品取引法違反(インサイダー取引規制違反)の事案について、投資者及び上場会社をはじめ関係者の皆様に多大なご迷惑・ご心配をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます。当該事案について、2024年12月に金融庁より金融商品取引法第106条の27及び第151条の規定に基づく報告徴求命令を受領し、当該報告徴求命令に対する報告書を2025年1月に金融庁に提出いたしました。当社グループでは、独立社外取締役による調査検証委員会の調査報告書に記載された再発防止策の着実な履行を通じて、全役職員への法令遵守の徹底、内部管理体制の一層の強化を図り、投資者及び上場会社をはじめ関係者の皆様からの信頼回復に全力をあげて取り組んでまいります。

さて、当連結会計年度における日本の株式市場は、デフレ経済からの脱却の流れの継続や、堅調な日本企業の業績への期待などを受けて上昇し、2024年7月11日にはTOPIXが1989年以来34年ぶりの史上最高値となる2,929.17ポイントをつけました。夏場には一時的な急落局面はあったものの、その後は再び堅調に推移し、2025年3月末時点でのTOPIXは2,658.73ポイント(2024年3月末比-109.89ポイント)となりました。米国の政治・経済における不確実性や、中東・ウクライナ情勢等の地政学リスク、各国の中央銀行の金融政策の動向等、不安定な世界情勢の中でも、政府の「資産運用立国」の実現に向けた取組みなどを通じた「貯蓄から投資へ」の進展や、日本企業の変革の兆しと更なる進展への期待感、企業による自社株買い等が下支えとなりました。

このような状況において、当社を含むJPXグループ(本事業報告において、㈱日本取引所グループ及びその子会社からなる企業集団を指しております。)は、安定的市場運営という伝統的な取引所としての機能を強化しながら、同時に、その枠組みに過度にとらわれず新たな領域へも進んでいく意思を込めたExchange & beyondというスローガンの下、グローバルな市場間競争における日本の金融・資本市場全体の魅力向上に貢献するため、3つのFocus(Focus 1 企業のイノベーション・成長と資産形成の循環促進、Focus 2 マーケット・トランスフォーメーション(MX)の実現、Focus 3 社会と経済をつなぐサステナビリティの推進)に掲げる施策を着実に実施しました。

当社グループの当連結会計年度の連結業績は、営業収益は1,622億30百万円(前連結会計年度比6.1%増)、営業費用は750億71百万円(同4.9%増)、営業利益は901億22百万円(同3.1%増)となり、税引前利益は902億77百万円(同3.3%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は610億92百万円(同0.4%増)となりました。

事業区分別の概況

①取引関連収益

営業収益 64,515 百万円
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取引関連収益は、現物の売買代金並びに金融デリバティブ及びコモディティ・デリバティブの取引高等に応じた「取引料」、取引参加者の取引資格に応じた「基本料」、注文件数に応じた「アクセス料」、利用する売買システム施設の種類に応じた「売買システム施設利用料」等から構成されます。

当連結会計年度の現物市場における1日平均売買代金は5兆7,032億円(注)、金融デリバティブ市場の取引高合計は4億3,675万単位、コモディティ・デリバティブ市場の取引高合計は1,840万単位となりました。

この結果、当連結会計年度の取引関連収益は、基本料が9億65百万円(前連結会計年度比1.3%減)、現物取引料が431億17百万円(同10.1%増)、金融デリバティブ取引料が93億74百万円(同13.5%減)、コモディティ・デリバティブ取引料が13億94百万円(5.5%減)、その他アクセス料・売買システム施設利用料等が96億62百万円(同5.8%増)となり、合計645億15百万円(同4.8%増)となりました。

(注) プライム、スタンダード、グロース、TOKYO PRO Marketにおける普通株式及びETF・ETN/REIT等の立会内及び立会外の一日平均売買代金の合計を記載しております。

主な取組み内容
  • ● 現物売買システム「arrowhead4.0」の更改に合わせて取引時間の30分延伸を実現するとともに、クロージングオークションを導入
  • ● TONA3か月金利先物の建玉が10万単位を突破し過去最高を記録
  • ● 日経225マイクロ先物の累計取引高が1億単位を突破

②清算関連収益

営業収益 34,445 百万円
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清算関連収益は、㈱日本証券クリアリング機構が行う金融商品債務引受業に関する清算手数料等から構成されます。

当連結会計年度の清算関連収益は、344億45百万円(前連結会計年度比4.7%増)となりました。

主な取組み内容
  • ● 金利スワップ取引(IRS)清算業務及び国債店頭取引清算業務の当連結会計年度の清算金額が過去最高を更新
  • ● Asia Risk Awards 2024において「Clearing House of the Year」を受賞

③上場関連収益

営業収益 17,309 百万円
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上場関連収益は、上場会社等から時価総額に応じて受領する「年間上場料」、新規上場や上場後の新株券の追加上場などの際に受領する「新規・追加上場料」から構成されます。

当連結会計年度の上場関連収益は、新規・追加上場料及び年間上場料が増加したことなどから、173億9百万円(前連結会計年度比11.0%増)となりました。

主な取組み内容
  • ● IPOのサポートを推進し、76件のIPOを実現(TOKYO PRO Marketは除く)
  • ● 「資本コストや株価を意識した経営」に関する「投資者の目線とギャップのある事例」の公表など、投資者からのフィードバックを踏まえたポイント・事例の拡充
  • ● 「東証 アジア スタートアップ ハブ」を立ち上げ、アジアの有力企業をサポートして東証IPOを後押し

④情報関連収益

営業収益 31,899 百万円
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情報関連収益は、情報ベンダー等への相場情報の提供に係る収益である相場情報料、指数ビジネスに係る収益等から構成されます。

当連結会計年度の情報関連収益は、相場情報料が増加したことに加え、指数ビジネスに係る収益が増加したことなどから、318億99百万円(前連結会計年度比7.2%増)となりました。

主な取組み内容
  • ● TOPIXの段階的ウエイト低減の完了及び次期TOPIXに関するルールを公表
  • ● JPXグループ等の情報を網羅した「JPxData Portal(ベータ版)」の提供開始
  • ● JPX総研とSnowflakeが金融市場データのアクセス拡大に向け提携

⑤営業費用

営業費用 75,071 百万円
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当連結会計年度の営業費用は、人件費が237億40百万円、システム維持・運営費が204億92百万円、減価償却費及び償却費が183億61百万円となったこと等から750億71百万円(前連結会計年度比4.9%増)となりました。

2.直前3連結会計年度の財産及び損益の状況

  • ※1 会社計算規則第120条第1項の規定によりIFRSに準拠して連結計算書類を作成しております。
  • ※2 当社は、2024年10月1日付で普通株式1株につき2株の割合で株式分割を行っておりますが、基本的1株当たり当期利益及び1株当たり親会社所有者帰属持分については、2022年3月期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算出しております。

連結計算書類