事業報告(2025年4月1日から2026年3月31日まで)
企業集団の現況に関する事項
事業の経過及びその成果
当連結会計年度の日本株式市場は、米国の通商・金融政策や中東情勢など外部要因の影響を受けつつも、米国の利下げ観測、円安基調、国内企業の好業績、関税緩和への期待、日銀及び米国連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策の安定などを背景にリスク選好が強まり、全体として上昇基調を維持しました。夏場以降は、米中・日米間の通商交渉の進展や、生成AI分野を中心としたハイテク株の上昇が相場を押し上げ、日経平均株価は秋口にかけて史上最高値を更新するなど堅調な推移となりました。さらに、自民党総裁選で高市氏が選出され、積極財政や成長投資を掲げた政策方針が市場に好感されると、日経平均株価は史上初の5万円台を突破する強い上昇となりました。一方、AI関連銘柄を中心に過熱感が意識され利益確定売りが優勢となったほか、米国連邦公開市場委員会(FOMC)や日銀会合の前には、金融政策を巡る不透明感から調整局面となる場面もありました。年明けの日本株式市場は日経平均株価が大幅高でスタートしました。2月の衆議院選挙では自民党が戦後最多となる316議席を獲得し、高市政権の政治基盤強化と財政拡張策への期待から日本株式市場はさらに上昇しました。その後、日銀の早期利上げ観測が後退したことも追い風となり、日経平均株価は連日で過去最高値を更新し、2月末まで強い上昇基調が続きました。3月に入ると、イスラエル・米国によるイランへの攻撃開始を受け、中東情勢の混迷や原油価格の急騰が懸念され、日本株式市場は大幅な調整局面となりました。しかし日経平均株価は51,000円台を維持し、前期末比43.4%高の51,063.72円で当年度の取引を終えました。
このような市場環境のもと、当社グループの当連結会計年度末運用資産残高は、2兆2,428億円(注1)と前期末に比して19.8%増加いたしました。また、事業の持続的かつ安定的な基盤となる収益力を示す指標である基礎収益(注2)は、経常的経費の増加はあるものの、それを上回る残高報酬の増加により、前期比7.1%増の71億99百万円(前期は67億22百万円)となり、前期に引き続き過去最高値を更新いたしました。
日本株式を投資対象とする運用戦略につきましては、日経平均株価が史上最高値を更新するなど市場環境は総じて良好であったこと等から当連結会計年度末における運用資産残高が1兆5,190億円に増加いたしました。運用面では、評価機関からは大型株式、中小型株式、超小型株式といった異なる時価総額セグメントにおいて評価を受けることができました。これらの評価は、当社の一貫した投資哲学及び運用プロセスの有効性が、長期的な視点において検証・支持されたものと考えております。また、日本株式ロング・ショート投資戦略を中心として、好調なパフォーマンスを背景に成功報酬は前期に比べ2.8倍の23億61百万円を計上することができ、収益面でも着実な成果を上げることができました。マーケティング面では、グローバルに日本株式への注目度が高まる中、当社は欧州及びアジアを中心に海外投資家向けのマーケティング活動を積極的に展開してまいりました。その結果、当連結会計年度中には、欧州の機関投資家から約500億円規模の資金流入を実現いたしましたが、一方で、足元では投資家による利益確定の動きもあり、キャッシュ・フローの積み上がりは限定的にとどまっております。しかしながら、東京証券取引所の各種要請や政府の各種政策の推進による構造的な変化は引き続き進展しており、日本株式に対する中長期的な投資魅力は高位安定していくものと考えております。海外投資家の多様なニーズに応えながら資金を運用していくことは、当社の強みの一つであり、今後もさらなる飛躍を目指してまいります。
アジア株式を投資対象とする運用戦略につきましては、良好なファンド・パフォーマンスが継続した結果、当連結会計年度末における運用資産残高は2,395億円と前期から大きく増加いたしました。足元では、米国及びアジアの機関投資家を中心に、特に韓国株式への関心が高まっております。翌期早々には新たな韓国株式のファンドを立ち上げ、マーケティングを積極化し運用資産残高のさらなる拡大に取り組んでまいります。加えて、成長するインド株式市場を中心に株式会社みずほフィナンシャルグループ、アセットマネジメントOne株式会社との協業を進めることとなりました。互いの知見・両社グループの強みを共有し、当社は運用力の一層の強化を図るとともに、投資家ニーズや市場動向を踏まえた新たなファンドの組成にも取り組むことで、アジア株式分野における運用実績のさらなる積み上げと商品ラインアップの拡充を進めてまいります。日本株式の運用で培ってきた投資力及び調査力を活用し、本戦略を持続的かつ着実に成長させることで、「アジア株式といえばスパークス」との評価を得られるよう、引き続き、ブランド価値の向上と認知の拡大にも努めてまいります。
再生可能エネルギー発電所を主な投資対象とする実物資産投資戦略では、蓄電所への投資を着実に進めており、当連結会計年度末における実物資産投資戦略の運用資産残高は3,261億円となっております。当社グループは、太陽光発電所への投資を中心に進めてまいりましたが、新たな投資分野として蓄電所事業への取り組みを進めており、2025年3月に札幌市において蓄電所事業へ参画したことに続き、当連結会計年度においては国内4地域において同事業への参画を開始いたしました。加えて、北海道札幌市と北海道地域特化型官民連携グリーントランスフォーメーションファンドを設立し運用を開始いたしました。このファンドの投資対象には、再生可能エネルギー関連インフラに加えて次世代半導体やデータセンターなどが含まれており、投資対象の多様化を図っております。その他、北海道苫小牧においては、グリーン水素の製造・貯蔵・輸送・利用までを視野に入れたサプライチェーン構築に関する、環境省からの委託による実証事業を当連結会計年度も進めてまいりました。当該実証事業は2026年3月末で終了いたしましたが、引き続き事業継続を検討しております。今後も、再生可能エネルギーファンドのパイオニアとしての知見を活かし、実物資産投資戦略の安定的な拡充に努めてまいります。
プライベート・エクイティ投資戦略は、次世代の企業の成長に資する投資を長期的な視点から実践し、投資会社として未来を創造する新たな領域を開拓するため設立した未来創生ファンドを中心に、当連結会計年度末における運用資産残高は1,580億円となっております。当連結会計年度は、未来創生3号ファンドの着実な投資の実行と未来創生1号ファンドの投資先のイグジットを着実に進めてまいりました。未来創生1号ファンドに関しては、この投資の成果が具体的に投資家の皆様へのリターンとして実現し、前期に続き成功報酬を計上しており、日本株式や実物資産の投資戦略に加え、成功報酬の発生源泉となる投資戦略が多層化しております。今後も、革新的な技術やビジネスモデルで世界をリードする企業を発掘・育成することで未来社会に貢献することを引き続き目指してまいります。加えて、日本モノづくり未来ファンドは、澤藤電機株式会社へのTOB(株式公開買付)を実行しており、2024年1月に実施したIJTT社、2025年4月に実施したシンニッタン社に続くものとなります。これで日本モノづくり未来ファンドはフルインベストメントとなり、2026年4月3日に2号ファンドを設立いたしました。引き続き、日本で優れた人財・技術・サービスを有する国内のモノづくり企業に投資し、幅広いネットワークを活用して各社を支援し、適切な経営戦略を展開することで、日本のモノづくりの持続的な発展に貢献することを目指してまいります。
その他、当社グループは、実物資産投資戦略を推進してきた経験から、北海道が有する再生可能エネルギー、AI・データセンター、観光といった複数の領域おける高い潜在力に着目しております。このような背景から、国内外の富裕層をターゲットとした高級ヴィラの開発に着手し、当連結会計年度は建設を順調に進めてまいりました。完成は当初予定通り翌期になりますが、これを足掛かりに、投資機会が存在していると考える北海道の潜在的な価値を最大限に引き出す様々な投資商品を開発し、世界中から多くの投資を呼び込むことで、運用資産残高の拡大と新たな投資領域の拡大を目指してまいります。
上記の結果、当連結会計年度における残高報酬(注3)は前期比3.8%増の164億67百万円となりました。成功報酬(注4)は、前期比57.4%増の29億86百万円となり、営業収益は前期比9.0%増の195億78百万円となりました。
営業費用及び一般管理費は、前期比3.0%増の105億52百万円となりました。これは、主に人件費の増加及び本社オフィスの増床等に伴う減価償却費の増加によるものです。
これらの結果、営業利益は前期比17.0%増の90億25百万円、経常利益は前期比14.5%増の89億9百万円となりました。また、投資有価証券売却益を計上したこと等により、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比21.6%増の63億84百万円となりました。
- (注1)
- 当連結会計年度末(2026年3月末)運用資産残高は速報値であります。
- (注2)
- 基礎収益とは、経常的に発生する残高報酬(手数料控除後)の金額から経常的経費を差し引いた金額であり、当社グループの最も重要な経営指標のひとつであります。
- (注3)
- 残高報酬には、日本再生可能エネルギー投資戦略に関連する発電所等の管理報酬を含んでおります。
- (注4)
- 成功報酬には、株式運用実績から発生する報酬の他に、日本再生可能エネルギー投資戦略に関連する発電所スキームの組成の対価等として受ける一時的な報酬(アクイジションフィー)及びプライベート・エクイティ投資戦略に関連する出資履行金額を分配累計額が超過する場合に受ける報酬等を含んでおります。
対処すべき課題
当社グループのパーパスである「(投資を通じて)世界を豊かに、健やかに、そして幸せにする」を実現するため、当社グループの厚い人財力、投資力によって運用パフォーマンスの質を維持・向上させ、持続可能な企業価値向上を実現すべく、主として以下の課題に取り組んでまいります。
課題の第一として、運用資産残高(AUM)3兆円の達成後を見据え、成長実現のための4本柱(「日本株式」「OneAsia」「実物資産」「プライベート・エクイティ」)をバランスよく強化・拡大していくことで高い収益性を維持し、短期的な市場変動の影響を受けにくい安定性、成長性に優れた事業ポートフォリオの構築を目指します。
→当社グループマテリアリティ「広範な責任投資の実践」に関連(注1)
当連結会計年度末のグループAUMは、2兆2,428億円(注2)と、これまでの過去最高AUMであった2兆241億円(2006年8月末)を上回り、大幅な増加となりました。これは主として、良好な株式市場環境を背景に、日本株式戦略およびOneAsia戦略を中心としてAUMが増加したことによるものでありますが、こうした市場環境の影響により、当社グループのAUM構成において、日本株式戦略およびOneAsia戦略の比率が相対的に高まり、実物資産戦略およびプライベート・エクイティ戦略の比率は一時的に低下しております。今後も、当社独自の多様な戦略をそれぞれに拡大しつつAUM構成の分散化を進めることで、市場環境の変動に左右されにくい強固な事業ポートフォリオの構築を目指してまいります。
また、更なる収益性の向上も重要な課題の一つであります。プライベート・エクイティ戦略においては、来期に設定予定の未来創生4号ファンドやモノづくり未来2号ファンドの残高報酬料率が相対的に高い水準にあることから、グループ全体の残高報酬料率の上昇が期待されます。これに加え、成功報酬については、既に日本株式戦略や実物資産戦略において計上し得る基盤を有しておりますが、プライベート・エクイティ戦略においても、一部ファンドで投資期間が終了し、今後成功報酬を計上できる状況になっております。今後も運用力を高めることで、中長期的、継続的な成功報酬の計上によっても、収益性の一層の向上を図ってまいります。
更に、既存投資戦略以外の新たな投資戦略の創出、収益モデルの多様化、中長期的な人財育成等のため、新規事業投資を拡充することで、中長期的な競争力と企業価値の向上を図ってまいります。
課題の第二として、次世代を担う人材を育成、登用し、マネジメント層の世代交代を引き続き進めてまいります。
→当社グループマテリアリティ「独立系の強みを生かしたガバナンス」に関連(注1)
持続可能な事業拡大と企業価値向上を実現するべく、効率的・効果的かつ健全で透明性の高いガバナンスの中核となる次世代を担う人材を選抜、育成し、より強固な経営体制を確立してまいります。本第37回株主総会においても社内取締役を増員しておりますが、中でも次世代のCEO選任は、当社グループにとって引き続き非常に大きな経営課題であることから、取締役会は十分な時間と資源をかけて、この課題に引き続き取り組んでまいります。
具体的には、次世代を担うマネジメントに必要な素養・資質としては、単に高い専門性や豊富な経験を備えるだけではなく、人格・人間力にも優れていること、当社グループの行動規範(バリュー)である「ARTSの精神(注3)」を体現できていることが極めて重要と考えております。これらの要件を充たした人材に対して、直接CEOから学ぶ機会を作り、衆目が認める結果を残した者の中から、また将来の当社グループの成長を牽引できる資質や能力を備えている者の中から、次世代のCEOを登用してまいります。
同時に、創業時から創業者が大切にしている価値観である、当社グループのパーパス、ビジョン、ミッション、バリューといった企業理念(注4)を、次世代の組織にもしっかりと浸透、引き継いでいくための諸施策を、引き続き講じてまいります。
課題の第三として、当社の競争力の源泉を強化し、中長期的な企業価値向上に資する人的資本の活用を高度化するために必要な諸施策を実行してまいります。
→当社グループマテリアリティ「持続可能で高い収益性とそれらを支える人財」に関連(注1)
日本企業の企業価値に占める無形資産の割合は、一般的に欧米企業に比べて格段に低いとされています。裏を返せば、無形資産の価値を高めることで、企業価値を飛躍的に高める余地が残っているともいえます。無形資産の中で、最も典型的な資産は人的資本であり、特に当社グループのように、有形資産をほとんど有しない企業にとっては、人的資本の重要性は非常に高いと考えます。よって、当社グループらしさをさらに追求しつつ、外部環境の変化にも適応することで、従来にも増して「人的資本」の活用を高度化させてまいります。
具体的には、当社グループのパーパス、ビジョン(=思想)に共感して集う優秀な人財が、様々な多様性を互いに尊重し、最高のプロフェッショナルとなるべく能力・技術(=技)の向上に主体的に取り組むだけでなく、思想・技を実現するために必要と考える行動規範(=所作)を大切にすることで優れた人格形成にも取り組み、全員が一丸となって「もっと良い投資」を実現するための組織に必要な諸施策を実行してまいります。
また、当社グループの競争力の源泉である「①イノベーション力」×「②コミュニケーション力」、すなわち「個々の高い専門性を掛け合わせて組織で戦う」チーム力・組織力を強化してまいります。
具体的には、①アカウンタブルで再現性の高い投資力やユニークな投資アイデア創出力を強化し、②社内に望ましい行動様式を明確化・浸透させるとともに、全社一丸となって投資アイデアを具体的に商品化(パッケージング化)する力を強化し、③そのための基盤となる働きやすい環境を整えます。
さらに、これら諸施策によって強化されたチーム力・組織力を「イノベーション」創出に活かし、魅力的な投資を社内外に積極的にコミュニケーションしていくことで当社グループの競争力を強化し、企業価値向上を図ってまいります。
- (注1)
- 当社グループのマテリアリティ(重要課題)については、下記ウェブサイトをご参照ください。
https://www.sparx.jp/sustainability/materiality.html
- (注2)
- 当年度末(2026年3月末)運用資産残高は速報値です。
- (注3)
- ARTSの精神
当社グループの行動規範であり、Arigato、Responsiveness、Thoroughness、Sympathyのそれぞれ頭文字をとったものです。- A:共に働く仲間、関係するすべての人に敬愛と感謝の気持ちを持って行動します。
- R:変化への最大の対応として俊敏さを大切にし、常にスピーディな対応を徹底します。
- T:緻密で丁寧な活動が、革新的な知見を生み出すことを信じ、常に極め続けます。
- S:調和と貢献の姿勢でお客様と仲間に接します。謙虚さ、誠実さが、お互いの成長につながると信じ、品格をもって行動します。また、柔軟に多様性を受け入れる広い心を持ち、自由な議論の場を創出します。
- (注4)
- 当社グループの企業理念については、下記ウェブサイトをご参照ください。
https://www.sparx.jp/philosophy/