事業報告(2023年4月1日から2024年3月31日まで)
企業集団の現況に関する事項
事業の経過及びその成果
当連結会計年度におけるわが国経済は、約40年ぶりに物価が上昇し、マクロ経済環境の大きな変化が生じました。一方、円安を背景に企業業績は好調を持続した結果、春闘における平均賃上げ率は約30年ぶりの高い伸び率を記録し、更に2023年5月の新型コロナウイルス感染症の5類移行とインバウンドの本格回復などもあり、経済社会活動の正常化が進みました。これを受けて日銀は2024年3月、2024年春闘での大幅賃上げを確認後、マイナス金利を柱とする大規模金融緩和の解除を決定、17年ぶりに政策金利を引き上げることとなり、景気の好循環に向けた第一歩を踏み出しました。また、2024年3月には日経平均が史上最高値をつけ、株式市場も活況を呈するなど、四半世紀以上続いたデフレからの脱却がようやく現実味を帯びてきました。
不動産業界におきましては、住宅価格の上昇、世帯数・生産年齢人口の減少に伴い、当連結会計年度も新築住宅着工棟数は漸減となりました。新築分譲マンションは戸建以上に建築費高騰の影響を受けて販売価格は上昇又は高止まりが続いており、立地や価格帯による売れ行きの差が鮮明になりました。したがって新築分譲事業の業績の維持、向上には販売戸数だけでなく、戸当り利益の確保が重要になりますので、事業者の販売戦略や体力によって明暗が分かれるようになったと言えます。また、金利に関しましては、住宅ローンの固定金利は上昇しましたが、変動金利への影響は軽微であり、住宅取得意欲を削ぐまでには至らず、底堅さを保っていると見ています。賃貸住宅の建築や取得に関しましては、投資家による需要は根強く、着工棟数は各社とも概ね堅調に推移しました。
当社におきましても、当連結会計年度は、概ね業界全体の動きと合致したものとなりましたが、新築分譲事業においては販売戸数の減少を戸当り利益の増加でカバーできました。また、需要が旺盛な土地有効活用事業は前連結会計年度を大きく上回る売上高、利益を確保でき、賃貸及び管理事業は予定どおり安定的に成長したことにより、期初予想を上回る業績を上げることができました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より売上高に係る表示方法の変更を行っており、経営成績については当該表示方法の変更を反映した組替後の前連結会計年度の数値を用いて比較しております。
分譲住宅セグメント
分譲住宅セグメントにおいては、当連結会計年度の戸建自由設計住宅等の引渡戸数が537戸(前期は623戸)と前連結会計年度に比べて大幅に減少しましたが、分譲マンションの引渡戸数が239戸(前期は214戸)と前連結会計年度に比べて増加した結果、当セグメントの売上高(セグメント間の内部売上高を含む。)は35,461百万円(前期比2.8%減)となりました。一方で、利益率が大きく改善したことに加えて、広告宣伝費を中心に販売費及び一般管理費も減少したことにより、セグメント利益は1,856百万円(前期比50.1%増)となりました。
住宅流通セグメント
住宅流通セグメントにおいては、当連結会計年度の中古住宅の引渡戸数は1,016戸(前期は1,077戸)となり、前連結会計年度に比べ減少しました。新築住宅に比ベて割安な中古住宅に対する需要は根強く、販売は総じて好調に推移しており、当セグメントの売上高(セグメント間の内部売上高を含む。)は24,881百万円(前期比2.9%減)と前期並みとなりましたが、利益率が下降したことにより、セグメント利益は909百万円(前期比33.6%減)となりました。
土地有効活用セグメント
土地有効活用セグメントにおいては、当連結会計年度の個人投資家向け一棟売賃貸アパートの引渡棟数が137棟(前期は125棟)と増加となったこと及び一棟当たりの販売価格の上昇により売上高は大きく増加し、賃貸住宅等建築請負及びサービス付き高齢者向け住宅の引渡件数が59件(前期は29件)と大幅に増加したこと並びに新規受注が好調で建築請負工事が順調に進行したことにより売上高は増加しました。その結果、当セグメントの売上高(セグメント間の内部売上高を含む。)は31,907百万円(前期比20.1%増)となり、セグメント利益は2,952百万円(前期比33.2%増)となりました。
賃貸及び管理セグメント
賃貸及び管理セグメントにおいては、主として土地有効活用事業にリンクした賃貸物件の引渡しに伴い管理物件の取扱い件数が増加したこと並びに前連結会計年度に自社保有のサービス付き高齢者向け住宅が増加したことにより、当セグメントの売上高(セグメント間の内部売上高を含む。)は28,027百万円(前期比7.9%増)となり、セグメント利益は3,400百万円(前期比9.3%増)となりました。
建設関連セグメント
建設関連セグメントにおいては、当連結会計年度における建設工事が工程どおりに順調に進捗し、受注契約高が増加したことにより、当セグメントの売上高(セグメント間の内部売上高を含む。)は2,305百万円(前期比0.3%増)となったものの、利益率が下降したことにより、セグメント損失は19百万円(前期はセグメント損失14百万円)となりました。
また、報告セグメントに含まれないその他セグメントにおいては、保険代理店事業に係る収益を計上しており、当連結会計年度における当セグメントの売上高(セグメント間の内部売上高を含む。)は174百万円(前期比10.7%減)となり、セグメント利益129百万円(前期比14.2%減)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高120,388百万円(前期比5.0%増)を計上し、営業利益7,264百万円(前期比15.6%増)、経常利益6,643百万円(前期比15.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益4,559百万円(前期比19.4%増)となり、各段階利益は過去最高益となりました。
対処すべき課題
当社グループを取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染症に対する制限緩和により、経済活動は緩やかに持ち直し、インバウンド需要や雇用・所得環境などの国内経済活動の正常化が進みました。この状況を受けて、日銀は2024年3月に大規模金融緩和の解除を決定しました。しかしながら、ウクライナ・中東情勢を契機とした資源・原材料価格の上昇や円安による物価上昇等、国内外の経済動向は先行き不透明な状況が続いております。
不動産業界におきましても、政府の住宅取得支援策の継続や住宅ローン金利の低位安定などにより、住宅需要は底堅く推移している一方で、建築コストの高止まりによる販売価格への影響や、日銀の金融政策の転換による金利引き上げが懸念材料となり、厳しい経営環境が続くと予想されます。
当社グループは、2022年5月に、2022年度(2023年3月期)を初年度とし2024年度(2025年3月期)を最終年度とする3ヶ年の中期経営計画を策定しており、2年目となる当連結会計年度における実績と計画は以下のとおりとなっております。
今後につきましても株主重視の経営という観点から、企業価値の向上と継続的・安定的な成長を図り、財務体質の強化及び安定した収益の確保に努めてまいります。
当社グループは「社員のため、社員の家族のため、顧客・取引先のため、株主のため、地域社会のため、ひいては国家のために当社を経営する」という経営理念のもと、創業以来、事業活動を通じて社会貢献活動に取り組んでまいりました。昨今、国連で採択された「SDGs」(持続可能な開発目標)など、社会課題に対する企業が果たす役割の重要性が増しております。
ESG(環境・社会・企業統治)及びSDGsと地域密着型経営である当社の事業活動との関連を意識し、社会貢献・持続可能な社会の実現に取り組んでおります。
当社は、2023年3月8日付で経済産業省が日本健康会議と共同で認定を行う「健康経営優良法人2023 大規模法人部門(ホワイト500)」に7年連続7回目の認定を受け、2024年3月には、厚生労働省「がん対策推進優良企業」表彰において、当社が優良企業として2023年に引き続き2回目の表彰を受けました。経営トップが先頭に立ち、全ての社員が健康への意識を高め、心身の健康を維持できるよう、枠にとらわれない様々な環境を整えていることを評価いただいたものと認識しております。2024年1月には、スポーツ庁が社員の健康増進のためにスポーツの実施に向けた積極的な取り組みを実施している企業を認定する「スポーツエールカンパニー2024」にも5年連続で選ばれております。また、当社で働く社員が柔軟な働き方ができる環境で、仕事上もプライベート上も充実した人生を送ることが大切であると考え、遠隔地の身障者支援など社員と社員の家族のためのテレワーク活用、住宅現場・管理マンション・お客様宅等へ外出する社員のためのモバイルワーク推進、BCP(事業継続計画)対策のためのテレワーク活用等多岐にわたり、社員や業務のニーズに応えてテレワークを実践的に導入してまいりました。結果、2018年には「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」に選定され、2020年、2022年には、2度にわたり「テレワーク推進賞 優秀賞」も受賞しております。
DX(デジタルトランスフォーメーション)については、経済状況や社会情勢の変化が急速に進む現代社会において、より変化に強いシステム基盤の構築を目指し、次世代システム構築プロジェクトを推進しているほか、電子契約サービスの導入、住宅仕様確定クラウドサービスの導入など、営業効率化、顧客利便性向上に向けた取り組みも進んでおります。豊富な情報の全社的な活用や、業務効率・生産性向上等により、長期的な企業価値の向上を目指してまいります。
気候変動リスクへの対応については、脱炭素化社会の実現に向けて「OSAKAゼロカーボン・スマートシティ・ファウンデーション」の活動に参加しております。中でも、当社グループでの脱炭素の取り組みとして、和歌山県の「企業の森」による森林保全・管理活動に係る協定を締結し、和歌山県日高郡日高川町の森林を「フジ住宅の森」と名付けて当社グループ社員・家族のボランティアによる植林並びに育林活動を行っており、二酸化炭素の削減に貢献しております。
今後も引き続き、社会貢献及び持続可能な社会の実現に取り組むことにより、社会とともに持続的に成長し、信頼される企業グループを目指してまいります。株主の皆様におかれましては、今後ともなお一層のご支援、ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申しあげます。