事業報告(2024年3月1日から2025年2月28日まで)

企業集団の現況に関する事項

当事業年度の事業の状況

① 事業の経過及びその成果

a.連結経営成績に関する説明
当連結会計年度の経営成績は、営業収益が4,497億5千3百万円(対前期比106.3%)、営業利益が521億4千6百万円(同112.4%)、経常利益が425億9千5百万円(同114.9%)で増収増益となりました。減損損失71億7千9百万円や、聖蹟桜ヶ丘オーパ(東京都)および心斎橋オーパ(大阪府)の管理・運営業務終了決定等に伴う店舗閉鎖損失引当金繰入額51億4千8百万円等、特別損失を142億1千万円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は142億6千万円(同69.9%)となりました。
セグメント別では、国内事業(日本)は営業収益が3,459億2千1百万円(対前期比103.7%)、営業利益が427億9千1百万円(同119.5%)と高い利益成長により連結業績を牽引しました。既存モールにおける積極的な活性化に加えて、集客施策や大型セールス企画の実施、またインバウンド消費拡大等の効果により国内モールの収益力には鮮明な回復が見られ、今後も継続的なキャッシュ・フローを生み出すための事業基盤構築が進みました。海外事業ではベトナムとインドネシアが増収増益を確保しましたが、中国とカンボジアの減益をカバーしきれず、営業収益は1,046億2千3百万円(同116.2%)、営業利益は93億2千9百万円(同88.3%)となりました。

連結経営成績

セグメント別経営成績

各国における営業概況は次に記載のとおりです。なお、海外現地法人の決算期は12月末のため、当連結会計年度の業績は2024年1月~12月累計期間の業績となります。

日本

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イオンモール豊川(愛知県)

既存モールでは、3月29日にイオンレイクタウンのLake Town OUTLET(埼玉県)、4月19日にイオンモール太田(群馬県)を増床リニューアルする等、当連結会計年度に11モールのリニューアルを実施しました。集客強化の取り組みとしては、ゴールデンウィーク、ブラックフライデー、年末年始に多数のイベントを開催した他、日本各地で連日猛暑が続く夏場にかけては、当社モールをクールシェアスポットとして利用することで地域の皆さまに涼しさと楽しさを感じていただけるよう、夏祭りやミニ花火ショー、ウォーターパークの設置等、モール館内でご家族揃って楽しめるイベントを多数実施しました。また、円安進行を背景に拡大傾向にあるインバウンド消費に対しては、観光地や空港至近のモールを中心に需要の取り込みを図り、免税売上は前期比約2倍に伸長しました。これらの結果、当連結会計年度の既存モール専門店売上は前期比105.4%(対象92モール)と伸長しました。

海外(中国)

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イオンモール長沙星沙(湖南省長沙市)

不動産市況の長期低迷や若年層を中心とする厳しい雇用環境を背景に、お客さまの消費マインドは低下基調で推移しました。当社モールでは、飲食やアミューズメント等の時間消費型の業種は堅調に推移し、既存モール来店客数は前期比108.2%と伸長しましたが、衣料品や服飾品等の物販業種への買い回りが低下しました。日常における低価格志向は継続が見込まれますが、ハレ型消費は底堅いことから、お客さまの消費意欲を喚起する集客イベントや営業施策を強化し、買い回りを促進することで売上拡大を図りました。これらの結果、当連結会計年度の既存モール専門店売上は前期比101.7%(対象21モール)と伸長しました。

海外(ベトナム)

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イオンモール フエ(フエ市)

南部エリアでは工場労働者の労働環境改善が遅れたことによる消費への影響が残ったことに加え、7月のベトナム共産党書記長逝去に伴う消費活動の自粛や、9月の北部エリアへの大型台風上陸による当社一部モールでの臨時休業の影響等もありましたが、ベトナム国内の消費は総じて堅調に推移しました。当社モールでは、地域行政や団体と連携したイベント実施や専門店で利用可能なクーポン発行等の取り組みに加えて、記念日や季節行事に合わせたセールス企画や集客イベントを計画的に実施し、売上拡大を図りました。これらの結果、当連結会計年度の既存モール専門店売上は前期比107.4%(対象6モール)と伸長しました。

海外(カンボジア)

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イオンモール ミエンチェイ(プノンペン都)

3号店イオンモール ミエンチェイ(プノンペン都)では、これまで遅延していた周辺道路工事が進展したことに加え、SNSを活用した広告活動や館内休憩スペース等のリノベーションを進める等、集客強化策を推し進めました。昨年11月の1号店イオンモール プノンペン(プノンペン都)の増床リニューアル効果もあり、既存モール来店客数は前期比105.2%と伸長しましたが、カンボジア国内への海外投資の減少による影響から外国人消費が戻らず、本格的な売上回復には至りませんでした。これらの結果、当連結会計年度の既存モール専門店売上は前期比101.4%(対象3モール)と伸長しました。

海外(インドネシア)

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イオンモール デルタマス(ブカシ県)

3月の新店開業時には既存モールと連動したオープン協賛セール等の販促企画を実施し、また8月には独立記念日に合わせたプロモーションを展開する等、各モールでのセールス企画や地域イベントの継続的な実施により集客強化を図りました。また、4号店イオンモール タンジュンバラット(南ジャカルタ市)を中心に既存モールの空床改善が進んだことで、賃料収入が増加し利益改善に寄与しました。これらの結果、当連結会計年度の既存モール来店客数は前期比107.4%(対象4モール)と伸長しました。

国内外におけるリージョナルシフトの推進

グローバルな目標を、出店する各国、各地域というローカルな特性に翻訳し、その地域に関わる、多様な立場の人たち、ステークホルダーと対話しながら新しい価値を生み出していく行動こそが、「持続可能な地域の創造」につながると考えています。

私たちは、地域課題にフォーカスし、共感できる人たちとともに、新しい価値を創造するために行動し、地域のため共感を醸成し、ひととのつながりを深め、広げる企業をめざしてまいります。

地域課題にフォーカスし、共感できる人たちとともに、新しい価値を創造する

ヘルス&ウエルネスプラットフォームの創造

当社は施設の「めざす姿」を「体の健康、精神の健康、環境の健康、社会的健康を基盤に、豊かな人生をデザインしていく、それが自己実現につながる施設」とし、当社がLife Design developerとして、事業活動を通じ、Well-beingな暮らしづくりを継続してサポートするプラットフォームづくりができるよう取り組んでいきます。

“体の健康(ヘルス)”を超えて、一人ひとりのライフスタイルデザインをサポート

海外成長マーケットにおける事業機会の発掘と事業化

ベトナム 戦略

成長性の高いエリアにおける物件の探索・確保を進め、新規出店を加速していきます。
最重点出店エリアであるベトナムでは、ホーチミン市を中心とした南部、ハノイ市を中心とした北部の両エリアに加えて、中部エリアの周辺都市においてもドミナント出店を推進していきます。

新規物件確保の推進

ベトナムでは各地方政府と「ショッピングモール開発に関する投資および事業推進についての包括覚書」を締結しており、出店パイプラインの確保が着実に進んでいます。2024年9月には中部エリア初出店となる「イオンモール フエ」をオープンしました。モールの位置するフエ市は人口約124万人で、経済発展が期待されているエリアであり、今後も人口増加が見込まれます。
2025年以降には3モールのオープンが決定しており、今後、さらなるベトナム事業の基盤確立をめざし、地方都市への展開を推進していくことで、著しい経済成長を遂げるベトナムの持続的な発展とまちづくりに貢献していきます。

2024年9月オープン

中部エリア 1号店

イオンモール フエ
(フエ市)

イオンモール ダナン タンケー
(ダナン市)

イオンモール タインホア
(タインホア省)
2026年下期オープン予定

イオンモール ハロン
(クアンニン省)
2026年下期オープン予定

中国 戦略

中国では、成長性の高い内陸部の湖北省・湖南省を重点出店エリアと位置づけ、新規出店を推進していきます。
不動産市況の低迷等による中国経済の減速に伴い、当社モールでもエリア間で成長性に差が生じてきています。競争環境は激化し、商業施設の淘汰も顕在化しており、こうした事業環境において、エリア毎の動向をしっかり見極め、中国事業全体の戦略の再設計を検討していきます。

成長性の高い内陸部への出店

中国では2008年に北京で1号店を開業して以降、北京・天津、湖北省、江蘇省、広東省の4エリアで出店を進め、24モールまで事業を拡大してきました(2025年2月時点)。湖北省の武漢市では、競合他社に先駆けた出店によりエリアブランディングが確立できており、お客さまからの高い支持も得られています。成長性の高い内陸部を重点出店エリアと位置づけ、2023年11月に湖北省4号店となるイオンモール武漢江夏をオープンしました。また、2024年9月には湖南省1号店となるイオンモール長沙星沙をオープンしました。2025年には湖南省2号店となるイオンモール長沙湘江新区(湖南省長沙市)の出店も計画しています。湖南省は中国華中エリアに位置し、その省都である長沙市は直近10年間の人口増加が300万人を超える等、近年高い経済成長を維持しています。今後も成長性の高い内陸部を中心に出店を継続していきます。

イオンモール武漢江夏(湖北省)
2023年11月オープン

湖南省1号店
イオンモール長沙星沙(湖南省)
2024年9月オープン

湖南省2号店
イオンモール長沙湘江新区(湖南省)
2025年オープン予定

国内におけるビジネスモデル改革の推進

成長性の高い国内においては、外部環境では人口減少、少子高齢化に伴う人手不足が顕在化し、また内部環境ではアパレル業種を中心とする専門店売上の低迷、建築コスト高騰による投資効率の低下等が大きな課題となっています。このように日々大きく変化する事業環境を機会とし、変わりゆく地域の課題やお客さまの価値観、潜在的なニーズに対応すべく、既存のビジネスモデル改革を推進していくことで、国内事業における集客力強化および収益性向上を図っていきます。

既存アセットの有効活用による収益性改善

既存のアセットを有効活用するため、十分に活用できていなかった敷地を新たな価値に転換すべく、モール内の敷地や駐車場の実態的な稼働率を踏まえ、事業用地を新たに創出します。2024年3月にはイオンレイクタウンLakeTown OUTLETに2階建ての増床棟を新設し、インターナショナルブランドやライフスタイル提案型ブランドを導入するリニューアルを実施しました。増床リニューアルと合わせて、Kaze棟と接続するブリッジを新設したことにより施設全体の回遊性の向上につながりました。2024年4月にはイオンモール太田に2階建ての増床棟を新設する増床リニューアルを行いました。フードコート内に自然を感じることのできるエリア「ピクニックコート」を配置するなど、世代を超え、人と文化がつながる地域の交流拠点へと進化しました。国内の商業施設で淘汰が進む中、圧倒的地域ナンバーワンのポジションをさらに強固なものとし、マーケットシェアを拡大することで、地域のお客さまから選ばれ続ける施設をめざしていきます。

イオンレイクタウンLakeTown OUTLET(埼玉県)
2024年3月 増床リニューアルオープン

イオンモール太田(群馬県)
2024年4月 増床リニューアルオープン

抜本的な事業構造改革の実行

外部環境およびお客さまの価値観が加速度的に変化する中、既存事業における深化を進めてきましたが、一部の当社施設においてはこの変化への対応が十分ではなく、集客力および収益性の低迷によりキャッシュ・フロー創出力が低下しています。活性化投資を含めた商圏内の競争力アップと運営効率の改善を進めるほか、不動産・財務的なアプローチからの抜本的な構造改革を視野に入れた取り組みを進めています。聖蹟桜ヶ丘オーパの管理運営を2025年8月、心斎橋オーパの営業を2026年1月に終了することを決定いたしました。

既存モールのリニューアルによる収益力の強化

2024年度は多数の既存モールでリニューアルを実施しました。専門店の入れ替えによりモールの鮮度を上げることに加え、共用部での快適な空間や環境を整えることで、来店動機の創出や滞留時間の増加を図っています。当社では地域の天然木材を使用したお子さま向けの遊び場「モクイクひろば」の導入や、屋外のテラスや公園など快適に過ごせる空間の整備を進めています。無料で利用できる遊び場や快適な空間は来店動機につながり、また館内に長く滞留してもらうことで、専門店の売上アップにもつながります。集客という視点では、モールのファンとして定期的な来館を習慣にしてもらうことが重要であり、共用部における快適な空間や環境の提供は、継続的な集客増加には欠かせないものと考えています。増床やリニューアルを戦略的に仕掛け、様々な機能を拡充することで、出店企業や地域のお客さまから選ばれ続ける施設をめざしていきます。

② 設備投資等の状況

当連結会計年度における設備投資総額は、900億9百万円(長期前払費用を含む)であります。
その内訳は、モール事業における「日本」275億5千万円、「中国」298億2千2百万円、「ベトナム」279億4千7百万円、「カンボジア」16億2千7百万円、「インドネシア」30億6千1百万円等であります。「日本」においては、既存モールであるイオンモール太田、イオンレイクタウンのLake Town OUTLETの増床リニューアル等による投資を実施しました。「中国」においては、新規モールであるイオンモール長沙星沙、イオンモール杭州銭塘の開設、翌連結会計年度に開業予定のイオンモール長沙湘江新区の設備代金等の投資を実施しました。「ベトナム」においては、イオンモール フエの開設、「インドネシア」においては、イオンモール デルタマスの開設を行ったこと等による投資を実施しました。

③ 資金調達の状況

当連結会計年度におきましては、長期借入金として既存取引銀行等より335億6千9百万円、社債の発行により500億円の調達をいたしました。

財産及び損益の状況の推移

① 企業集団の営業成績及び財産の状況の推移
② 当社の営業成績及び財産の状況の推移

重要な親会社及び子会社の状況

① 親会社との関係

当社の親会社はイオン株式会社であり、同社及び同社の子会社で当社の議決権を58.83%(直接保有58.24%)保有しております。
当社は同社に対し資金の寄託運用を行っております。取引条件につきましては、一般的に金融機関と行われている取引条件を基準とし、取締役会で定めた社内規程に則り、親会社から独立して当該取引の実施の可否を決定していることから、当社の利益を害するものではないと判断しております。

② 重要な子会社の状況

主要な事業内容(2025年2月28日現在)

当社グループは、イオン株式会社を親会社とする当社および連結子会社60社(株式会社OPA、他国内6社、AEON MALL (CHINA) BUSINESS MANAGEMENT CO.,LTD.、他中国41社、カンボジア3社、ベトナム2社、インドネシア3社、シンガポール1社、ミャンマー2社)、持分法適用会社1社で構成され、当社はモール事業を行っています。連結子会社のうち、株式会社OPA他2社は都市型ショッピングセンター事業、57社はモール事業等を行っています。

当社は、イオングループのディベロッパー事業を担う中核企業として、一般テナントのほか、GMS事業を営むイオンリテール株式会社およびイオングループ各社に対して当社モールの店舗を賃貸しています。

対処すべき課題

社会変化による影響が当社事業にとってすべてリスクになるのではなく、それぞれの地域に焦点を合わせて考えれば、多くの機会も発掘できると考えています。全国一律で事業を捉えるのではなく、地域ごとに抱えている顕在化した課題や、今後発生する潜在的な課題を想定し、その課題への対応をビジネスに変えられるように取り組んでいきます。

マテリアリティに基づく主な行動指針や目標、具体的な取り組み状況等については次の通りです。

イオンモールの重要課題(マテリアリティ)

SDGsと日本および海外における社会課題を考慮したマテリアリティ分析を実施、ステークホルダーおよび自社にとっての重要度を評価し、ESG視点での重要課題として「環境」「暮らし」「地域」「ひと」「経営基盤」の5分野10項目からなるマテリアリティを定めています。
マテリアリティに掲げた10項目の重要課題に対し、2050年にありたい社会の姿として掲げたKGI(最終目標)に合わせて、2030年までに達成すべき具体的なアクションKPI(中間目標)を設定しました。全社で課題を共有し一体となって解決に取り組むことで、社会的・経済的な価値を創出するとともに持続可能な社会の実現に向けて貢献してまいります。

(脱炭素社会の実現)

「イオン脱炭素ビジョン」に基づく脱炭素への取り組みとして、2040年までに国内での当社事業から排出するCO等を総量でゼロにすることをめざします。

太陽光発電設備およびEV充電器の設置等の省エネルギー活動を継続的に推進してきましたが、今後はこれらの削減策に加え、各地域での再生可能エネルギー(以下、再エネという。)直接契約の推進等により、2025年度までに国内約160モールで使用する電力を再エネに転換することを目標としています。その上で、現在各地域での再エネ直接契約による実質COフリー電力調達から、順次地産地消の再エネ(PPA(注)手法含む)へ切り替え、2040年度には当社直営モールにおいて100%地産地消の再エネでの運営へ引き上げていきます。

脱炭素社会の実現に向けては、海外を含めて取り組みを推進し、全ての事業活動で排出するCO等を総量でゼロにすることをめざし、取り組みを加速いたします。

(注)「Power Purchase Agreement(電力販売契約モデル)」の略称で、PPA事業者が電力需要家の敷地や屋根等を借り太陽光発電システムを設置し、発電した電力を需要家に販売する事業モデル。

当社ウェブサイト「イオンモールのサステナビリティ」についてもご参照ください。
https://www.aeonmall.com/sustainability/

(サーキュラーモールの実現)

廃棄物や資源の問題に対しては、サーキュラーエコノミー(注)の考え方をモールの運営に取り入れています。資源循環を行える仕組みを構築することで、廃棄物を「削減する」という考えから「ゼロにする」という前提で、地域における循環型経済圏の構築に取り組んでいきます。循環型社会の実現に向けては、お客さま、地域社会、パートナー企業さま等のステークホルダーとともに、脱プラスチック、食品リサイクル、衣料品回収等の取り組みを通じて、「サーキュラーモール」の実現をめざしています。

(注)従来の3R(リデュース・リユース・リサイクル)の取り組みに加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動であり、資源・製品の価値の最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止等をめざすもの。

(生物多様性の保全)

事業活動全体における生態系への影響を把握し、お客さまや行政、NGOなどステークホルダーの皆さまと連携しながら、その影響の低減と保全活動を積極的に推進します。また、イオン ふるさとの森づくりに加えて、資源循環の取り組みやグリーン購入の促進を通じて生物多様性の保全を行い、自然資源の持続可能性と事業の成長の両立をめざします。

自社事業が自然へ及ぼす影響を分析し、自然に関するリスクと機会に対応するため、自然関連財務情報開示タスクフォース(以下、「TNFD」という。)(注1)フォーラムに参画し、TNFDの提言するLEAPアプローチ(注2)を用いて分析を行いました。また、TNFDに沿った情報開示にむけて、2023年9月に公表されたTNFD最終提言に則り、分析結果と自社の取り組みを整理しています。

(注)

  • 1.企業が事業を通じて自然に及ぼす影響、リスク、機会、生物多様性への配慮を可視化し、自社の報告書やWebサイトで開示するための枠組み。
  • 2.TNFDにより開発された、自然との接点、自然との依存関係、インパクト、リスク、機会など、自然関連課題の評価のための統合的なアプローチ。
(人的資本経営)

当社がめざす「真の統合型ESG経営」の実現に向け、持続的成長を可能にする最も重要な資源は「人的資本」です。人材の成長が、当社の企業価値を持続的に高めることにつながると認識し、経営戦略と連動した人的資本経営で、人材戦略を推進していきます。

(ダイバーシティ経営の推進)

人権を尊重し、性別や国籍に関わりなく、一人ひとりが持てる能力を最大限に発揮できるダイバーシティ経営の推進に取り組み、更なる多様性の確保をめざします。

女性活躍を支援する取り組みを行っており、事業所内保育園「イオンゆめみらい保育園」の整備、男性従業員の育休取得率4年連続100%の達成、また女性の上位職へのチャレンジ意欲を醸成する研修等の教育機会を増やしています。このような取り組みにより、女性活躍の推進に積極的に取り組む企業として「プラチナえるぼし」に認定されました。また、「ジェンダー平等・LGBTQ+フレンドリー会社へ」を目標に、同性パートナー婚について家族としての福利厚生制度を適用、ジェンダー平等に関する理解促進の研修を行う等、人権や個性を尊重し、誰もが働きやすい職場づくりを行っています。

(健康経営の推進)

従業員のWell-beingが企業活動のベースであり、従業員が健康であることにより、地域のお客さまに健康と心の豊かさをもたらすサービスを提供できるとの考えのもと、健康経営を推進しています。健康経営優良法人認定制度において、2025年3月には「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」に6年連続で認定されました。

(人材育成)

人材・組織ビジョンをもとに、「相手よし、地域よし、未来よし」の視点で、様々なパートナーと共感し、その想いをつなぐ地域共創に取り組む人材育成をめざしています。

「教育は最大の福祉」の考えのもと、一人ひとりが持てる能力を最大限発揮できるよう能力開発の機会を提供しています。例えば、教育研修では、新入社員研修をはじめとする年次別や階層別研修以外にも、希望するポジションへの配属をめざして学ぶ公募型の研修を重視しています。自分のキャリアを自律的に捉え、自己のありたい姿を実現するために、成長に向かってチャレンジする風土の醸成に取り組んでいます。

当社の成長戦略を牽引する海外事業においては、今後、多くの人材が必要と考えています。「グローバル人材コース」や「海外トレーニー制度」などの育成プログラム、各ユニットから海外への異動を含め、計画的な人材育成を行っています。グローバルな視点の啓発やスキル・語学の習得など、一貫した育成コースを設定し、グローバル人材の育成と適切な配置を図っています。

(責任あるビジネスの推進)

イオンの基本理念および人権基本方針に基づき、人権を尊重し、性別や国籍等に関わりなく企業の発展に参画できる組織、またすべての従業員の能力が最大限に発揮できる職場の実現をめざしています。人権リスクへの対応は、人材育成や従業員の能力発揮のための重要な基盤ととらえ、取り組みを推進しています。

人権についてはサステナビリティの重要課題として「人権の尊重」を位置付けており、代表取締役社長が最高位の責任をもって活動を推進しています。推進体制としては経営会議の下部機構として代表取締役社長を委員長とし、社内取締役をメンバーとするESG推進委員会を2カ月に1回開催し、人権にかかわる重要な方針や施策、取り組み目標などについて審議し、迅速に課題対応・解決にあたることのできる体制を構築しています。ESG推進委員会・分科会における審議は、取締役会に報告されます。またリスクについてはリスク管理委員会が、代表取締役社長へリスク管理に関する報告、方針の提案を行い、リスクの対応主管部門が当該リスクの対策を講じています。

イオン人権基本方針では人権デュー・ディリジェンスの実施を明記しており、イオンの指針にしたがって当社でも2020年から取り組みを開始しました。国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」においても示されている通り、人権保障の担い手としての役割を担うべく、当社でも持続可能なバリューチェーンを構築するための取り組みを継続していきます。

連結計算書類