社長ご挨拶

株主の皆様には、日頃より格別のご高配を賜り、心より感謝申し上げます。

当期(2024年4月1日から2025年3月31日まで)は、緊迫状態が続く中東情勢に起因する船舶需給の逼迫や堅調な輸送需要により、定期船事業や自動車事業が好調であったことから、当期の連結経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益は、期初予想を大きく上回る4,908億円及び4,777億円となりました。この結果を踏まえ、資本効率向上と持続的成長の両立を意識しながら、機動的な株主還元を実施するとの方針に基づき、本年5月8日に1,500億円(上限)の自己株式の取得を決定しました。また、米国の関税問題の影響等で外部環境の不透明さが高まっておりますが、今後の更なる成長を見込み、連結配当性向を30%から40%へ引き上げ、年間配当の下限額を1株100円から200円に引き上げることといたしました。

当社グループは、社会課題に対処し未来に必要な価値を共創するために、今期も様々な取組みを推進してまいりました。脱炭素分野においては、世界初のアンモニア燃料タグボート「魁」の実証航海が完了し、実証航海を通じて最大約95%の温室効果ガス(GHG)排出削減を達成しました。さらに、2026年11月には世界初となる国産エンジンを搭載したアンモニア燃料アンモニア輸送船(AFMGC: Ammonia-Fueled Medium Gas Carrier)が竣工します。こうした当社グループの脱炭素戦略の取組みや共創事例とその進捗をまとめた「Progress Report 2024 as annex to NYK Group Decarbonization Story」を公表しました。また、循環型経済確立への取組みとして、2024年12月にロケットの洋上での回収プロジェクトがJAXAの宇宙戦略基金事業の一つとして採択され、本格的に研究開発を進めております。更に、日本における船舶リサイクルの事業化についても検証中です。

これらの取組みを支える「人材」についても、Diversity & Inclusion(ダイバーシティ・アンド・インクルージョン)を経営戦略の重要な柱として位置付け、昨年策定・公表した”D & I Promise”の下、35,000人のグループ全社員一人一人が個性と能力を最大限発揮し、誇りと自信をもって生き生きと働ける組織風土を醸成します。

当社は今年、創業から140年を迎えます。1885年の創業以来、海洋国家である日本の発展とともに歩んできました。創業当時からの「モノ運びを通じて、人々により豊かな生活をもたらす」という想いをこれまで脈々と受け継ぎ、今日のグループ企業理念 ”Bringing value to life.”に繋がっております。今年3年目を迎える中期経営計画 “Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -” で掲げた施策を力強く進めるとともに、グローバルで経済の不確実性が高まる中、その影響を注視し、事業環境の変化に機敏に対応してまいります。株主の皆様には、今後とも当社グループ事業へのご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

2025年5月

代表取締役社長・社長執行役員
(Group Chief Executive Officer)

曽我 貴也