事業報告(2024年4月1日から2025年3月31日まで)

当社グループの現況に関する事項

(1) 当社グループの事業の経過及びその成果

① 当期の業績

当期の世界経済は全体として緩やかな成長が続きましたが、国・地域別では状況が異なりました。米国経済は堅調な個人消費に支えられ景気拡大が続きましたが、トランプ新政権の関税政策などの影響のため、不確実性が高まりました。中国経済は不動産市場の停滞や雇用環境の悪化が内需を抑制したため、輸出と景気刺激策に依存しましたが、成長率は低下しました。欧州経済はドイツの製造業の停滞などが影響し、緩やかな成長に留まりました。日本経済は個人消費が力強さを欠いたものの景気は回復傾向を見せました。

このような事業環境のもと、ライナー&ロジスティクス事業及び自動車事業等における増益により、当期の連結業績は、売上高2兆5,887億円(前期比8.4%増)、営業利益2,108億円(前期比20.7%増)、経常利益4,908億円(前期比87.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益4,777億円(前期比109.0%増)と前期と比べて増収増益となりました。

② 各事業別の概況

●ライナー&ロジスティクス事業
定期船事業

コンテナ船部門では、Ocean Network Express Pte. Ltd. (ONE) について、業界全体で新造船の竣工が続き船腹供給は増加したものの、堅調な荷況、前期から続く紅海情勢の影響によるトンマイル増加及び港湾混雑等により船腹需給が引き締まった状態が続き、短期運賃は前期比で大幅に上昇しました。第2・第3四半期には、堅調な消費に加え、北米東岸の港湾労使交渉への懸念等から荷動きが増加しました。また、高品質な輸送サービス提供のため、大型コンテナ船の新造発注等による継続した投資を実施しました。

国内ターミナルでは、取扱量が前期と比べて増加しました。また海外ターミナルでは、順次ONEへのターミナル移管を進めました。

これらの結果、定期船事業全体では前期と比べて、減収増益となりました。

航空運送事業

航空運送事業では、主として香港・中国発欧米向けの旺盛なEコマース需要や半導体製造装置、自動車関連貨物の需要に支えられ貨物取扱量は前期と比べて増加すると共に、需給の引き締まりにより運賃単価も高い水準で推移しました。費用面では、燃料単価が前期から下落し、収支押し上げ要因となりました。

これらの結果、航空運送事業全体では前期と比べて増収増益となりました。

なお、2023年7月に、ANAホールディングス株式会社(ANAHD)との間で、当社連結子会社である日本貨物航空株式会社の全株式をANAHDに対して譲渡することに関する最終合意書を締結しました。その後、競争法上の手続等、譲渡に向けた対応を進めています。

物流事業

航空貨物取扱事業では、Eコマース関連を中心としたアジア発の活発な荷動きに加え、スポット貨物の需要もあり、前期と比べて取扱量は増加した一方、仕入れ価格の上昇により、利益水準は前期並みとなりました。

海上貨物取扱事業では、アジア域内航路を中心とした堅調な荷動きに加え、欧米における関税引き上げ懸念による出荷の前倒し需要が発生したことにより、前期と比べて取扱量は増加した一方、仕入れ価格の上昇により、利益水準は前期並みとなりました。

ロジスティクス事業は、北米や東南アジアにおける荷動きが堅調だったものの、欧州と東アジアにおける荷動きの減速に加え、新規投資等による一時費用の発生により、やや低調に推移しました。

これらの結果、物流事業全体では前期と比べて、増収減益となりました。

●自動車事業

自動車事業では、引き続き堅調な完成車生産と販売により海上輸送需要は旺盛だった一方、港湾混雑や中東情勢の影響等により船腹供給は逼迫しました。こうした環境の中で、顧客の輸送要請に柔軟に対応しながら、最適な配船計画と本船運航により船舶の稼働率を高めました。また、環境対応船の導入に取り組みながら、環境負荷の低いバイオ燃料等の積極的な利用も進め、温室効果ガス(GHG)削減に努めました。自動車物流では、欧州、メキシコ、インド及び東南アジア等のターミナル事業を中心に旺盛な需要を取り込むことで業績は堅調に推移しました。また、欧州等での事業拡大や新規ビジネス獲得へ向けた投資を進め、収益性向上の施策に取り組みました。

これらの結果、自動車事業全体では前期と比べて増収増益となりました。

●ドライバルク事業

ドライバルク事業では、ケープサイズの市況は、好調な鉄鉱石とボーキサイトの荷動きに支えられ9月まで好調に推移しましたが、12月から季節的調整局面が始まって以降は軟調に推移しました。パナマックスサイズ以下の市況は、ブラジル出しの大豆の出荷ピークと中国やインドの夏場に向けた石炭在庫の積み上げの活発化が重なったことで船腹需給が引き締まり、ケープサイズの市況と同じように年末に向かって軟調に推移しました。通年では、ドライバルクの市況は前期並みとなりました。

これらの結果、ドライバルク事業全体では前期と比べて増収となり、利益水準は前期と同程度となりました。

●エネルギー事業

エネルギー事業では、VLCC(大型原油タンカー)は、冬の需要期での市況軟化、中国での需要減退、米国からアジア地域への長距離輸送の減少及び入渠船増加による稼働率低下を受け、前期と比べて減益となりました。石油製品タンカーは、中国の景気減速もあり、コロナ禍後のリバウンド需要が一服し、トレードが減少したことで市況は前期の水準を下回りました。VLGC(大型LPGタンカー)は、米国からアジア地域への長距離輸送が増加したものの、新造船の竣工、パナマ運河の渇水の影響が緩和したことに伴い、船腹供給が増加したため、市況は前期と比べて大幅に下回りました。LNG船は、安定的な収益を生む長期契約に支えられて順調に推移しました。海洋事業は、FPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)、ドリルシップ、シャトルタンカーが順調に稼働しました。

これらの結果、エネルギー事業全体では前期と比べて増収となり、利益水準は前期と同程度となりました。

●その他事業
不動産業

ほぼ前期と変わらない実績となりました。

その他の事業

その他の事業は、船用品・船用資材販売事業が好調を維持したものの、燃料油販売事業は前期を上回る水準には至りませんでした。客船事業では、飛鳥Ⅱによる世界一周クルーズを、コロナ禍等を経て6年ぶりに催行しました。その後、11月初旬から約1か月のドックに入った後、国内・海外クルーズを順調に実施し、前期と比べ乗船率が上昇しました。

これらの結果、その他の事業の業績は、前期と比べて減収増益となりました。

※各事業別の詳細につきましては、「事業別業績」(40ページ)をご参照ください。

③ 安全と環境技術への取組み

船舶の安全運航と環境保護、乗組員の健康は、当社グループのサステナビリティ経営の根幹を成すものです。

独自の安全規格であるNAV9000、自社開発した安全管理システムNiBiKi、運航船の異常検知を目的とした陸上監視センター(RDC)等を適切かつ継続的に運用することにより、引き続き環境保護にも貢献する安全・確実な海上輸送を実現します。

当社は安全運航を担う大きな柱の一つとして、現場の人材(船員)育成を掲げており、長年培ってきた船員教育のノウハウを活かした当社独自の教育プログラムのもと、高度な運航技術を要するLNG船やVLCC、次世代燃料船にも対応出来る幹部職員等、幅広く優秀な船員の育成と確保に努めています。

当社グループでは、㈱MTI、㈱日本海洋科学を始めとするグループ会社や社外パートナーと共に、顧客や取引先も含めたサステナビリティ経営に資する取組みや、最先端の研究を日々行っています。社会的課題である温室効果ガス(GHG)削減のための研究、安全運航を目的とした自律操船の研究等も引き続き行いました。さらに、東京大学内に開設した海事デジタルエンジニアリング(MODE)に関する社会連携講座を通じて技術開発に努めるとともに、モデルベース開発やモデルベース・システムズエンジニアリングの高度な知識を有する人材の育成等にも取り組んでいます。また、2025年4月に大阪大学内に設置した先進海事システム共同研究講座(OCEANS)を通じて、産学連携のさらなる発展を目指しています。

グリーンビジネスへの取組みとしては、アンモニア・水素を始めとするカーボンニュートラルな新燃料の導入及びサプライチェーンの構築、液化二酸化炭素の海上輸送、並びに海洋エネルギー開発について社外パートナーとともに複数の研究開発及び事業開発案件を進めています。その一つとして、グリーンイノベーション基金事業から支援を受け、2024年8月に世界初のアンモニア燃料商用船が竣工しました。また、今後普及が見込まれる洋上風力関連事業についても引き続き積極的に推進します。

(2) 当社グループの対処すべき課題

①中期経営計画の遂行

地政学リスクの高まりを受け混迷を極める世界情勢の中、「物流を止めない」を合言葉に、エネルギー、医療物資や生活必需品を世界中に届け、人々のライフラインを守るべく “Bringing value to life.” を企業理念(ミッション)とし、新たに掲げたありたい姿(ビジョン)「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」を目指して、中期経営計画 “Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -” を進めています。

両利きの経営(AX)と事業変革(BX)から成る「基軸戦略」の下、既存中核事業を深化させると同時に新規成長事業を進化させ、これを「支えの戦略」となる人材・組織・グループ経営の変革(CX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)、エネルギートランスフォーメーション(EX)が支えます。

■中期経営計画 “Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -” 完遂への取組み

経営戦略であるAX~EXの2024年度の主な進捗状況は以下の通りです。2025年度についても「既存中核事業の深化」と「新規成長事業の開拓」を加速していきます。

◆脱炭素社会実現に向けたアンモニアサプライチェーン構築

当社グループは2023年11月にNYK Group Decarbonization Storyを発表し、2030年までにScope1+2で2021年度比45%の温室効果ガス(GHG)排出量削減、2050年までにネットゼロ達成という野心的な目標を掲げ、その達成に向け取り組んでいます。目標達成に向けた船舶燃料転換シナリオに基づき、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からグリーンイノベーション基金事業として助成を受けて開発したアンモニア燃料タグボート「魁」が2024年8月に竣工しました。同船は、アンモニア燃料船として世界初となる実運航中の実証試験・解析を行い、重油使用時と比較して最大約95%のGHG排出量削減を達成しました。

また、2025年2月にはアンモニア燃料アンモニア輸送船(AFMGC)として世界初の定期傭船契約を世界最大級のアンモニアプレーヤー、Yara International ASAのグループ会社であるYara Clean Ammonia Switzerland SAと締結しました。当社は今後もアンモニアの海上輸送に留まらず、多様な側面からアンモニアサプライチェーンの構築に取り組んでいきます。

アンモニア燃料タグボート「魁」

AFMGC本船デザイン

◆成長分野と位置付ける物流分野への投資拡大

当社グループは中期経営計画において物流事業を中核事業と位置付けており、成長エンジンである物流事業への積極投資を続けています。

特に今後も成長が見込まれる自動車やヘルスケア、リテールなどのサービスを強化しており、2024年4月には当社グループの郵船ロジスティクス株式会社のオランダ法人が自動車部品の配送に強みを持つオランダの物流会社Parts Express B.V.を買収しました。郵船ロジスティクス株式会社オランダ法人はベネルクス(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)のお客様を中心に、さまざまなサプライチェーン・ロジスティクスサービスを展開しており、この買収により自動車産業に特化した配送、クロスドックサービスをより深化させます。

また、2024年7月にはベルギーで医薬品倉庫の稼働を開始しました。同倉庫は、自律走行搬送ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robots)や無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)、自動仕分けシステムなどを導入したことで、効率的な保管と省人化を実現しました。欧州における医薬品輸送のハブでもあるベルギーで新たに医薬品倉庫を稼働することで、最先端の医療・医薬品物流をリードし、お客様のニーズに応える高付加価値サービスの提供を目指します。

Parts Express B.V.社

◆脱炭素社会に向けた洋上風力関連事業での貢献

当社では、洋上風力発電事業を、脱炭素化だけでなく「エネルギーの安定確保」、「地方創生と国際競争力の復活」という、日本が直面する課題の解決に取り組む重要事業と位置付けています。当社は洋上風力発電も含めた再生可能エネルギー事業の推進と関連人材の育成をはじめ、港湾活用、船舶関連人材の育成、観光振興、環境保全などの地方創生に取り組んでおり、2024年12月には秋田曳船株式会社と洋上風力事業に必要な船舶保守管理サービスを提供する合弁事業会社としてジャパンオフショアサポート株式会社を設立しました。

海外市場においては2025年1月に、洋上風力発電での作業員輸送船(Crew Transfer Vessel、以下「CTV」)運航の先駆企業であり、スウェーデンに本社を置くNorthern Offshore Group ABの過半数株式を取得し、連結子会社化しました。

これに加えて、2025年3月に台湾の洋上風力発電関連企業である國際海洋股份有限公司(IOVTEC Co., Ltd.)が新規に発行する普通株式を引き受けました。台湾の洋上風力発電市場はアジアにおいて先行しており、同社はこれまでこの市場における数多くのプロジェクトに携わり豊富な実績を積み上げてきました。

当社は、外航海運で得た知見や海外パートナーとの提携を活用するとともに、CTVやトレーニングセンター等の事業を通じ、地域密着の強みを生かした洋上風力発電関連事業を進めています。

作業員運搬船「Transporter」

◆循環型社会の実現に向けた取組み

当社は、循環型社会の実現に向けて本業である海運業で培った技術や知見を新しい分野で生かす取組みを続けています。

宇宙関連事業においては(1)洋上でのロケット打上げ、(2)打ち上げたロケット1段目の洋上回収、(3)衛星データの利活用、の3つの領域で事業化を目指しています。再使用型ロケットの洋上での回収プロジェクトについては、2024年12月に国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙戦略基金事業の1つとして採択されており、今後本格的に研究開発を進めていきます。

また循環型社会の実現を目指し、2024年9月にオオノ開發株式会社と国内で船舶や大型海洋建造物を解体し、鉄スクラップ等のリサイクルを行う船舶リサイクルの事業化を目指して共同検討していくことに合意しました。

今後も当社のコアコンピテンシーを生かし、様々なパートナーと協力し合いながら循環型社会の実現を目指します。

洋上回収イメージ図

オオノ開發 知多解体事業所イメージ

◆2025年7月から客船2隻運航体制へ、またオリエンタルランドとクルーズ事業における業務提携に向けた基本合意書を締結

客船事業では、34年ぶりの新造客船「飛鳥Ⅲ」が2025年7月20日に就航を予定しており、「飛鳥Ⅱ」との2隻体制による運航に向けた準備を着実に進めています。

LNGを含む3種類の燃料に対応したエンジン及び陸上電力受電装置を採用し、環境に配慮した飛鳥Ⅲは、飛鳥クルーズが日本において培ってきたクルーズ文化、和のおもてなしを継承しながらも、多彩なダイニング、エンターテイメント、ウェルネスなど心身を満たすプログラムを備え、より自由により豊かに、新たなる時代のクルーズ価値を創造します。

また、当社、郵船クルーズ株式会社、株式会社オリエンタルランドの3社は、株式会社オリエンタルランドが日本を拠点として2028年度の就航を目指すクルーズ事業において、業務提携に向けた基本合意書を締結しました。

当社グループは、貨物輸送や飛鳥クルーズなどを通じて長年にわたって積み重ねてきた運航実績や高い安全技術を様々な形で活用し、中核事業としての持続的な成長を目指します。

「飛鳥Ⅲ」提供:郵船クルーズ株式会社

◆NYK Energy Ocean株式会社発足

当社は2025年4月1日、ENEOSオーシャン株式会社の原油タンカー以外の海運事業を承継する新会社NYK Energy Ocean株式会社(以下「NEO社」)株式の80%を取得し、NEO社が発足しました。

NEO社はENEOSオーシャン株式会社から承継したLPG船やケミカルタンカー・プロダクトタンカー、貨物船の計47隻を運航します。LPG船は当社で現在運航している15隻と合わせて33隻になり、当社グループは世界最大規模のLPG船運航事業者になります。

当社グループは、エネルギー輸送事業において成長事業と位置付けるLNG及びLPG船事業を中心に取組みを強化するとともに、安定的なエネルギー輸送の責務を果たすことを目標としており、今回のNEO社の子会社化はこの戦略に沿ったものです。ENEOSオーシャン株式会社から承継した100名以上の優秀な人材と47隻の良質な船隊、そしてエネルギー事業を幅広く手掛けるENEOSグループとの連携強化によってシナジーを創出し、エネルギー輸送事業のさらなる成長を目指します。

NEO社ロゴ

LPG船「SUNNY VISTA」

◆電気推進タグボートの運航開始に向けて

当社グループはリチウムイオンバッテリー搭載の電気推進タグボートを建造し、2026年末に運航を開始します。電気推進船で中核となるモータードライブシステム(※)は、これまで舶用向けでの国産化が進んでいませんでしたが、パワーエレクトロニクス分野で業界トップクラスの技術力を持つ株式会社TMEICと協議を重ね、本船向けに新たに開発される技術を採用します。これにより、本船は国内メーカー製モータードライブシステムを搭載する日本初の電気推進タグボートとなります。さらに、本船には国内のタグボートとしては初めて船舶定点保持システム(DPS)を導入し、船体を自動的に一定エリアに留められるようにすることで、乗組員の心理的負担を軽減します。この取組みは、国土交通省の内航変革促進技術開発支援事業の対象事業に採択されています。また、設計・建造・運航までの船舶バリューチェーンを当社グループ内で一貫して担い、電気推進船に必要な幅広い知見を集積していきます。将来的には、こうして培った知見を広く海事産業へ還元し、人手不足や脱炭素といった日本が抱える社会課題の解決に貢献していきます。

※パワーエレクトロニクス技術を利用したドライブ装置とモーターによる駆動方式

モータードライブシステム

◆「35,000人のグループ全社員の能力を挑戦に活かす日本郵船グループ」の実現

当社グループは2023年に、CX2030ビジョンを実現するための「CX Story」を発表し、「35,000人のグループ全社員の能力を挑戦に活かす日本郵船グループ」を実現するために、Diversity & Inclusion(ダイバーシティ・アンド・インクルージョン、以下「D&I」)を経営戦略の重要な柱と位置付けています。

まず、2024年9月にはD&Iについて、当社グループの姿勢を明確にするため、「D&I Promise」を策定しました。また、特に、「Gender」「Marine」「Global」の観点からインクルージョンを進めています。「Gender」については、女性の活躍の場を広げ、より多様な観点を意思決定の過程に取り込むことをトップコミットメントとして発信し、組織として最大限の能力を発揮できる環境を整えていきます。「Marine」については、海技者の活躍促進プロジェクト「CX NEO(NYK Empowering Oceans)」を立ち上げ、海技者が情熱とプライドを持って、長く働きたいと思える会社を実現していきます。「Global」については、引き続き海外人材の本社での活躍促進や、グローバルでの人材公募を進め、適所適材の人材戦略を実行します。

当社グループは今後も人材の多様性と、それを尊重し歓迎するインクルーシブな組織風土の醸成に努め、企業の持続的成長を目指します。

◆「DX銘柄2025」に3年連続選定

当社は2025年4月に経済産業省、東京証券取引所、独立行政法人情報処理推進機構が主催する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2025」において「DX銘柄」に選ばれました。当社がDX銘柄に選定されるのは3年連続となります。今後もデジタルの力を活用して当社グループの中期経営計画を推進し、グループミッション“Bringing value to life.”を追求していきます。

■財務戦略

当社は持続的成長を続ける企業グループを実現するための経営戦略と、資本効率を意識した経営を進めるための新たな財務戦略を掲げています。中長期的な企業価値向上に資する投資対象に対して、2026年度までに総額1.4兆円規模の事業投資を実施します。2023年度以降に約3,300億円の自己株式の取得を実施しましたが、最新の投資機会の見通しや事業環境等を踏まえ、資本効率の一層の向上を目的として、新たに上限1,500億円(株式取得期間:2025年5月9日から2026年4月30日)の自己株式の取得実施を決定しました。またさらなる株主還元拡充を目的として、連結配当性向の目安を2025年度より30%から40%に引き上げるとともに、1株あたりの配当下限金額を年間100円から200円としました。今後も成長投資を進めながら、着実に株主の皆様への還元を行っていくことにより資本効率を高め、さらなる企業価値の向上を目指します。

②遵法の徹底

当社グループは、遵法の徹底を最重要事項と位置付け、当社と国内外にある様々な事業を展開するグループ会社を対象にグローバルなガバナンス体制の構築を目指しており、以下の対策を着実に実行し、法令に則った公正な事業の遂行を徹底することに全力を尽くしてまいります。

  • ・米州・欧州・東アジア・南アジアの各拠点にRegional Management Officeを設置
  • ・ベストプラクティスの共有や課題の速やかな解決を図るため、Regional Governance Officerの下に法務担当や内部監査人を配置
  • ・国内外グループ会社が制定している行動規準に対する誓約書の取得等の活動を継続
  • ・独占禁止法の遵守を徹底すべく、社内各部門・グループ会社にヒアリングを実施し、これらを踏まえた独占禁止法に関する行動指針の作成、研修の実施
  • ・コンプライアンス委員会や遵法活動徹底委員会の開催を通じ、独占禁止法対応に加え贈収賄・ハラスメント防止等、包括的な法令遵守体制の整備・強化

連結計算書類