事業報告(2025年4月1日から2026年3月31日まで)
当社グループの現況に関する事項
(1) 当社グループの事業の経過及びその成果
① 当期の業績
当期の世界経済は全体として緩やかな成長が維持されましたが、米国トランプ政権の関税政策及び地政学リスクの高まり等の影響で不確実性が高まりました。米国経済は景気拡大が緩やかになる中、関税政策及び政府機関の閉鎖等により経済活動への影響が見られました。中国経済は輸出と政府の景気刺激策に支えられましたが、特に不動産関連産業の不振から成長率は低下傾向となりました。欧州経済はドイツの製造業の不振等が影響して低い成長に留まりました。日本経済は回復基調ではありましたが力強さに欠けました。
このような事業環境のもと、ライナー&ロジスティクス事業及び自動車事業等における減益により、当期の連結業績は、売上高2兆4,236億円(前期比6.4%減)、営業利益1,386億円(前期比34.3%減)、経常利益2,111億円(前期比57.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益2,117億円(前期比55.7%減)と前期と比べて減収減益となりました。
② 各事業別の概況
●ライナー&ロジスティクス事業
定期船事業
コンテナ船部門では、Ocean Network Express Pte. Ltd.(ONE)において、期初は米中関税の影響を背景とした前倒し出荷が発生したことから、一時的に需要が上振れし、荷動きは比較的堅調に推移しました。しかしながら、その反動による需要の落ち着きに加え、新造船の竣工が相次いだことにより船腹供給が増加し、市場全体では需給バランスが次第に緩和基調へと転じました。このような需給環境の変化を受け、第2四半期以降は荷量が伸び悩むとともに、運賃水準も軟化し、市況は調整局面が継続する状況となりました。
国内ターミナルでは取扱量が前期と比べて減少しました。また海外ターミナルでは、順次ONEへのターミナル移管を進めました。
これらの結果、定期船事業全体では前期と比べて、増収減益となりました。
航空運送事業
航空運送事業では、2025年8月1日を効力発生日として、当社連結子会社であった日本貨物航空株式会社とANAホールディングス株式会社との株式交換が完了したことにより、2026年3月期第2四半期以降の業績には日本貨物航空株式会社を含みません。
これらの結果、航空運送事業全体では前期と比べて減収減益となりました。
物流事業
航空貨物取扱事業では、米国のデミニミスルール撤廃に伴い米国向けEコマース貨物需要が減退した一方、アジア発のスポット貨物需要もあり、取扱量は前期並みとなりました。スポット仕入価格の下落により、利益水準は前期と比べて上昇しました。
海上貨物取扱事業では、積極的な取扱規模拡大に加え、アジア域内の活発な荷動きにより、前期と比べて取扱量は増加した一方、需給環境の悪化により、利益水準は低下しました。
ロジスティクス事業は、主に欧州地域、東南アジア地域の一部において経済見通しの不透明さから主要顧客の荷量が落ち込んだ結果、利益水準は前期を下回りました。
これらの結果、物流事業全体では前期と比べて、減収減益となりました。
●自動車事業
自動車船事業では、完成車の生産・販売が堅調に推移したことにより、海上輸送需要は旺盛でした。顧客の輸送要望に柔軟に対応しつつ、最適な配船計画及び本船運航により、高い船舶稼働率を維持しました。また、脱炭素燃料船の導入に継続して取り組むとともに、環境負荷の低いバイオ燃料等を活用し、温室効果ガス(GHG)排出削減に努めました。自動車物流事業では、欧州、トルコ、上海、シンガポール、インド等におけるターミナル事業が堅調に推移しました。さらに、将来の物流需要に対応するため、スペインのバルセロナにおけるターミナル開発案件や、欧州のInternational Car Operators N.V.による自動型立体駐車場建設案件など、積極的な投資を実施しました。一方で、自動車船事業では、米国の追加入港税やインフレに伴う荷役費等のコスト上昇の影響を受けました。また、自動車物流事業では、米国の関税政策の影響を受けたメキシコ事業のほか、インドネシア、タイ及び一部中国のターミナルにおいて、取扱台数が減少しました。
これらの結果、自動車事業全体では前期と比べて減収減益となりました。
●ドライバルク事業
ドライバルク事業では、ケープサイズ市況が、鉄鉱石及びボーキサイトの堅調な荷動きに支えられ前期を上回りました。パナマックスサイズ以下の市況は、ブラジル出し大豆の荷動き及び石炭在庫の積上げが一巡後は低調に推移したものの、前期と比べて回復しました。一方、一部船型における収益性低下や前期比で円高に推移した影響を受けました。
これらの結果、ドライバルク事業全体では前期と比べて減収減益となりました。
●エネルギー事業
エネルギー事業では、VLCC(大型原油タンカー)は、OPEC+の減産巻戻し完了や地政学リスクに端を発したマーケット上昇及びそれを捉えたスポット成約、また利益水準の高い複数の固定契約更改により、前期比で増益となりました。石油製品タンカーは、中東における地政学リスクを背景とした市況の下支えにより安定的に推移し、前期並みの水準を維持しました。VLGC(大型LPGタンカー)は、米中間の対立の結果LPGのトレードフローが変化し、米国からインド・東南アジアへの長距離輸送の増加により船腹需給が引き締まり、市況は前期を上回りました。LNG船は、安定的な収益を生む長期契約に支えられて順調に推移しました。また、新造船へのリプレース需要の高まりや、運航効率の観点から船隊構成の見直しを進め、旧型船の一部で係船や売船を実施しました。海洋事業は、FPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)、シャトルタンカーが順調に稼働するとともに、FPSOについては新規FPSOが稼働し、一時的な利益を計上しました。
これらの結果、エネルギー事業全体では前期と比べて増収増益となりました。
●その他事業
不動産事業
新規オフィスビルの竣工等で増収となった一方、連結子会社再編に伴う影響等により減益となりました。
その他の事業
その他の事業は、船用品・船用資材販売事業が好調を維持したものの、燃料油販売事業は前期を上回る水準には至りませんでした。客船事業では、飛鳥Ⅱの最後の世界一周クルーズを催行、2025年7月に飛鳥Ⅲが就航し、飛鳥Ⅱとの2隻運航を開始しました。一部台風の影響を受けたクルーズもありましたが、2隻とも概ね順調に催行しました。飛鳥Ⅱは11月、飛鳥Ⅲは2月に船体整備のために入渠しました。なお、飛鳥Ⅲの就航に向け準備費用を計上しました。
これらの結果、その他の事業の業績は、前期と比べて減収減益となりました。
※各事業別の詳細につきましては、「事業別業績」(28ページ)をご参照ください。
③ 安全と環境技術への取組み
船舶の安全運航、環境保護、乗組員の健康は、当社グループのサステナビリティ経営の根幹です。
高度化する海運業界の安全要求を踏まえ、独自の安全規格を発展させた「NAV9000 Plus」を通じ、引き続き環境に配慮した安全・確実な海上輸送を実現します。また、AI活用やデータドリブンな安全・効率運航が重要視される中、船舶のサイバーセキュリティ対策を強化することで、将来の自律運航を見据えた高度な安全性と信頼性の構築を図っています。
当社は安全運航を支える重要な要素として人材(船員)育成を掲げ、独自の研修プログラムやインド・フィリピンにおける研修施設の拡充を通じて、高度な運航技術を要するLNG船やVLCC、次世代燃料船にも対応出来る幹部職員等、幅広く優秀な船員の育成と確保に努めています。
当社グループでは、㈱MTI、㈱日本海洋科学を始めとするグループ各社や社外パートナーと連携し、サステナビリティ経営に資する取組みや、最先端の研究を日々行っています。
社会的課題であるGHG排出削減や安全運航を目的とした自律運航に関する研究等も引き続き行いました。さらに、東京大学の海事デジタルエンジニアリング講座(MODE)や大阪大学の先進海事システムデザイン共同研究講座(阪大OCEANS)を通じて技術開発と人材育成を進めています。また、内閣府が関係省庁と連携して推進する経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)における船舶DXの取組みに加え、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が実施する研究開発とSociety5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE)の枠組みでも、次世代造船用AIロボットの開発やAIシミュレーション基盤の研究開発を進めています。
グリーンビジネスへの取組みとしては、アンモニア・水素を始めとするカーボンニュートラルな新燃料の導入及びサプライチェーンの構築、液化二酸化炭素の海上輸送、並びに海洋エネルギー開発について社外パートナーとともに複数の研究開発及び事業開発案件を進めています。その一つとして、グリーンイノベーション基金事業から支援を受け、2024年8月に竣工した世界初のアンモニア燃料商用タグボート「魁」に続き、2026年11月には同じくアンモニアを燃料とする外航アンモニア輸送船の竣工を予定しています。また、今後普及が見込まれる洋上風力関連事業についても引き続き積極的に推進します。
(2) 当社グループの対処すべき課題
①中期経営計画の遂行
地政学リスクの高まりを受け混迷を極める世界情勢の中、エネルギーや生活必需品を世界中に届け、人々のライフラインを守るべく “Bringing value to life.” を企業理念(ミッション)とし、新たに掲げたありたい姿(ビジョン)「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」を目指して、中期経営計画 “Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -” を進めています。
両利きの経営(AX)と事業変革(BX)から成る「基軸戦略」の下、既存中核事業を深化させると同時に新規成長事業を進化させ、これを「支えの戦略」となる人材・組織・グループ経営変革(CX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)、エネルギートランスフォーメーション(EX)が支えます。
■中期経営計画 “Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing -” 完遂への取組み
経営戦略であるAX~EXの2025年度の主な進捗状況は以下の通りです。2026年度についても「既存中核事業の深化」と「新規成長事業の開拓」を加速していきます。
◆脱炭素社会実現に向けたアンモニアサプライチェーン構築
当社グループは脱炭素社会の実現に向けた有力な次世代燃料の一つとしてアンモニアに注力し、製造・輸送・供給を含む燃料アンモニアバリューチェーン全体における事業開発に取り組んでいます。
アンモニア燃料船の開発に関しては、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金の助成を受ける40,000㎥級アンモニア燃料アンモニア輸送船(Ammonia-Fueled Medium Gas Carrier:AFMGC)の建造が順調に進行しており、2025年にはアンモニア燃料主機と補機の搭載も完了しました。高い環境性能と世界最高水準の安全対策を備えたAFMGCは、2026年11月の竣工後、世界最大級のアンモニアプレーヤーであるYara International ASAのグループ会社であるYara Clean Ammonia Switzerland SAに定期傭船される予定です。
また、商用燃料アンモニア輸送船に関しては、2025年12月には、当社グループのNYK Bulkship (Asia) Pte. Ltd.が株式会社JERAと、アンモニア輸送船2隻に関する定期傭船契約の基本条件合意書を締結しました。本合意に基づき、米国で製造される低炭素アンモニアを、碧南火力発電所(愛知県)へ海上輸送する計画を推進します。本計画は、商用燃料アンモニア輸送として先駆的な取組みであり、日本のエネルギートランジションの実現を後押しします。
アンモニア燃料アンモニア輸送船
CGイメージ図
当社は、アンモニア燃料船を中核に、将来の燃料供給・輸送需要を見据えたアンモニアサプライチェーンの社会実装を着実に進め、持続的な成長と企業価値向上を目指します。
◆バイオ燃料の長期使用・保存に関する実証を経て、本格活用の段階へ
当社は、バイオ燃料B24(バイオ由来成分を24%混合)について、複数の船種において長期使用に関する実証を重ね、安定的な運用に向けた知見を蓄積しました。また、その一環として、シンガポールの非営利団体Global Centre for Maritime Decarbonisationと共同で、船上における長期使用及び保存に関する実証を行いました。その結果、技術的な安全性並びに長期運用の実現可能性を確認しました。これらの検証結果を踏まえ、現在は自動車専用船を中心にバイオ燃料の本格的な活用を進めており、使用量を拡大しています。
さらに2026年度には、バイオ由来成分100%のバイオ燃料B100について、酸化劣化や長期保管時の品質安定性への配慮がより重要であることを踏まえ、実運航における約1年間の検証を実施する予定です。
当社は、既存船舶インフラを活用し、バイオ燃料及びLNG燃料を、燃料転換期における現実的かつ即効性のある対応手段として位置付けています。第三者認証により持続可能性及びGHG排出削減効果が客観的に担保された低・脱炭素燃料は、欧州規制対応に活用できるほか、環境価値として分離し、お客様に提供することで新たな価値の創出も可能であり、脱炭素の推進と企業価値の向上の双方に資するものとなります。これらの取組みを通じ、当社は海運業界の脱炭素化を着実にリードしていきます。
◆洋上風力発電を支える作業員輸送船の建造で3D技術を本格適用
当社は、洋上風力発電事業を支える作業員輸送船(Crew Transfer Vessel:CTV)の建造において、設計から建造まで一貫して3D技術を活用する新たな取組みを進めています。
船の構造や機器配置、作業のしやすさを事前に3D上で確認することで、設計変更や手戻りを減らし、効率的で確実な建造を実現しました。
また、建造途中でも3Dデータを活用して品質を確認し、安全性の向上につなげています。さらに、完成後の点検や保守にも活用できる「3Dデジタル完成図書」を整備することで、運航開始後の管理効率向上も期待されます。本取組みを通じて、成長が見込まれる洋上風力分野において、安全で信頼性の高い輸送サービスを支えると同時に、当社の技術力と競争力を強化していきます。
作業員輸送船 本船写真(上)と
3Dモデル(下)の比較
◆飛鳥Ⅲ就航
客船事業では、34年ぶりの新造客船「飛鳥Ⅲ」が2025年7月に就航しました。
「飛鳥Ⅲ」では日本のクルーズ船で初となる船位保持制御システム、ポッド推進器や陸上電源受電装置、さらに世界の中型客船で数少ないLNG燃料に対応したエンジンを搭載し、環境に配慮したクルーズを実現します。
1991年に就航した初代「飛鳥」が日本におけるラグジュアリークルーズの礎を築き、続いて2006年に「飛鳥Ⅱ」が就航し、客船文化の発展を支えてきました。「飛鳥Ⅱ」、「飛鳥Ⅲ」の2隻体制の始動により、ラグジュアリー市場における競争力をさらに高めるとともに、より多くのお客様に“最幸時間”を提供する体制を強化していきます。
新造客船「飛鳥Ⅲ」
提供:郵船クルーズ株式会社
◆NYKバルクシップパートナーズ株式会社発足
NYKバルクシップパートナーズ株式会社は、当社グループにおけるドライバルク船事業の中核会社として、2026年4月に発足しました。
旭海運株式会社、八馬汽船株式会社、三菱鉱石輸送株式会社の3社が事業統合し、長い歴史に裏打ちされた知見と人材を結集することで、ドライバルク輸送分野における競争力の一層の強化を図ります。海上輸送業、船舶管理業、船主業を主な事業とし、当社が100%出資する完全子会社としてグループ戦略と一体で事業を推進します。保有隻数21隻及び船舶管理隻数約90隻を基盤に、安全運航の徹底と高品質なワンストップサービスの提供を通じ、安定的かつ持続的な収益創出と顧客価値の最大化を目指します。
NYKバルクシップパートナーズ株式会社
会社ロゴ
ドライバルク船「KEY HUNTER」
◆LNG輸送事業を通じた環境負荷低減と企業価値向上の両立
当社は、クリーンエネルギー需要の拡大を背景に、LNG輸送事業を重要な成長分野の一つと位置付けています。
2025年12月にはノルウェーの大手船主であるOcean Yield ASと協業し、米国の大手LNG生産事業者であるCheniere Energy Inc.の完全子会社であるCheniere Marketing International LLPに複数隻の新造LNG運搬船を長期定期傭船する契約を締結しました。長期輸送契約に基づくLNG船の運航を通じて、安定的な収益基盤を構築するとともに、グローバルなLNGサプライチェーンを支えていきます。
北米を起点とするLNG輸送は、地政学的分散やエネルギー安全保障の観点からも重要性が高まっており、当社は高度な安全運航ノウハウと豊富な実績を活かし、信頼性の高い輸送サービスを提供しています。今後もLNG需要の中長期的な成長を取り込みつつ、環境負荷低減と企業価値向上の両立を図ります。
LNG運搬船「QUEST KIRISHIMA」
◆バルセロナ港に次世代完成車ターミナル建設
2025年5月に自動車物流事業における欧州拠点の強化を目的として、スペイン・バルセロナ港において完成車ターミナルの27年間の運営権を取得しました。2028年に稼働予定の完全自動立体駐車場を建設し、再生可能エネルギー活用により環境に配慮した効率的な自動車輸送を実現します。本事業は、西地中海エリアにおける完成車物流需要への対応力向上を図るものであり、北欧港湾に集中する既存物流の補完的役割を担う拠点として位置付けています。バルセロナ港は、海上輸送に加え鉄道・内陸輸送との接続性を有しており、欧州域内外を結ぶ物流拠点としての利便性を備えています。当社は、完成車物流及びターミナル運営におけるこれまでの知見を活かし、安定的な運営を通じて顧客ニーズへの対応力を高めるとともに、自動車物流事業の基盤強化を進めていきます。
当社グループが運営する
欧州の完成車ターミナル拠点
◆欧州物流企業Waldenグループのヘルスケア物流事業の買収
当社グループは、中核事業と位置付ける物流事業の成長を担う存在として、郵船ロジスティクスグループ(以下、YLグループ)を中心に事業基盤の強化を進めています。
その一環として、2025年12月、欧州物流企業Waldenグループのヘルスケア物流事業を買収し、同事業を担う42社をYLグループ傘下に迎え入れました。
本買収により、欧州12カ国に展開する医薬品・医療機器物流の高品質ネットワークと、YLグループが有するグローバルな物流基盤及び運営ノウハウを融合させることで、温度管理や各国規制への対応が求められる高度な物流ニーズへの対応力を一層高めています。
ヘルスケア物流は今後も着実な成長が見込まれる分野であり、本件はYLグループの一層の成長を通じ、物流事業全体の収益基盤の拡大と付加価値の向上に資するものです。今後も当社グループは、成長分野である物流事業への戦略的投資を継続していきます。
欧州ヘルスケア物流事業
◆先進のクラウドとプラットフォームの導入による経営基盤の刷新
当社は、グローバル競争の激化や経営環境の不確実性が高まる中、データに基づく迅速な意思決定を根幹としたデータドリブン経営の実現を目的に、クラウド型の統合基幹業務システムや財務・経営管理の統合支援プラットフォームをはじめとした複数の先進的なデジタル基盤を導入し、社内システム基盤を刷新しました。
本取組みでは、本社及び国内外子会社3社と、その他船舶保有のための特別目的会社も合わせた約350社の会計基幹システムをクラウドへ移行し、財務・会計領域の主要機能を統合することで、従来分散していた会計基盤を一元化しました。これにより、業務の標準化と効率化を進めるとともに、経営管理における高度な計画・分析を可能とする体制を構築しています。また、クラウドの特長である定期的な機能更新を活用することで、稼働後も最新技術を継続して取り込める仕組みを整えました。
当社グループは今後も、業務プロセスの標準化とAI活用による定型業務の自動化を進め、より高度な分析・判断・提案を行う業務体制への転換を図ります。中期経営計画の実行を支える基盤として、データドリブン経営のさらなる高度化と企業価値向上に取り組んでいきます。
◆CX Neo ~海技者の活躍促進プロジェクト~
当社は、中核事業の深化と新規事業の開拓を両輪とする基軸戦略を支えるCXの一環として、海技者の活躍促進を目的としたプロジェクト「CX Neo」を推進しています。本プロジェクトでは、安全運航を支える高度な専門性と使命感を備えた人材が、長期にわたり情熱と誇りを持って働き続けられる会社であることを目標に、海技者に求める人物像の再定義を行うとともに、働き方、キャリアの柔軟性、船内環境といった多面的な課題の検討と改善に取り組んでいます。具体的には、船上経験を基礎とした陸上業務との往来を含むキャリアパスの整備や、就労・居住環境の改善を進めています。
また、当社は2004年から女性を海上職として採用しており、現在では30名超が海上・陸上を問わず全世界で活躍しています。2025年4月には、矢野美希一等機関士を機関長に登用しました。140年の歴史を持つ当社で女性の機関長登用は初めてです。今後も、多様な人材が活躍できる職場環境づくりと人材育成を推進していきます。
矢野美希 機関長
■財務戦略
当社は持続的成長を続ける企業グループを実現するための経営戦略と、資本効率を意識した経営を進めるための新たな財務戦略を掲げています。中長期的な企業価値向上に資する投資対象に対して、2026年度までに総額1兆4,800億円の事業投資を実施します。2023年度以降2026年4月末までに約4,800億円の自己株式の取得を実施し、また2025年度よりさらなる株主還元拡充を目的として、連結配当性向の目安を30%から40%に、1株当たりの配当下限金額を年間100円から200円に、それぞれ引き上げました。今後も投資機会と事業環境を勘案したうえで、機動的な追加還元策の実施を判断します。
②遵法の徹底
当社グループは、遵法の徹底を最重要事項と位置付け、当社と国内外にある様々な事業を展開するグループ会社を対象にグローバルなガバナンス体制の構築を目指しており、以下の対策を着実に実行し、法令に則った公正な事業の遂行を徹底することに全力を尽くしてまいります。
- ・米州・欧州・東アジア・南アジアの各拠点にRegional Management Officeを設置
- ・ベストプラクティスの共有や課題の速やかな解決を図るため、Regional Governance Officerの下に法務担当や内部監査人を配置
- ・国内外グループ会社が制定している行動規準に対する誓約書の取得等の活動を継続
- ・独占禁止法の遵守を徹底すべく、社内各部門・グループ会社にヒアリングを実施し、これらを踏まえた独占禁止法に関する行動指針の作成、研修の実施
- ・コンプライアンス委員会や遵法活動徹底委員会の開催を通じ、独占禁止法対応に加え贈収賄・ハラスメント防止等、包括的な法令遵守体制の整備・強化