事業報告(2024年4月1日から2025年3月31日まで)
企業集団の現況に関する事項
(1)事業の経過およびその成果
事業報告の内容を分かりやすくお伝えするため,当社ホームページ上で,映像とナレーションによるビデオ映像を公開いたしておりますので,以下をご参照ください。
2024年度のわが国経済は,一部に弱めの動きもみられましたが,雇用・所得環境の改善などもあり,緩やかな景気回復が継続しました。一方で,海外景気の減速などによる景気の下振れが懸念されております。
燃料価格につきましては,足元では低位に推移しておりますが,地政学リスクをはじめとする国際的な政治情勢の変化などにより,ボラティリティ(変動性)・不確実性が高い状態が継続しております。また,物価・労務単価・金利の上昇などにより投資環境の不透明性が増しております。さらに,再生可能エネルギーの大量導入による電気の流れの複雑化などにより,適切な電力品質の維持が難しくなっております。
中長期的には,GX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展などにより電力需要の見通しは増加傾向に変化しており,エネルギー安定供給確保,経済成長,脱炭素を同時実現するべく「GX2040ビジョン」や「第7次エネルギー基本計画」が閣議決定されました。また,電力システム改革の検証結果が取りまとめられ,安定供給確保や脱炭素化に必要な投資を確保していく仕組みを整備するとの方向性が示されております。
当社は,このような事業環境の変化に対応し,ステークホルダーのみなさまとともに持続的な成長を実現するため,2025年4月に企業理念を改定いたしました。新たな企業理念のもと,経営ビジョン2.0の達成に向けグループ一体となって,電力の安定供給確保,分散・循環型システムが併用された安全で安心な脱炭素社会の実現,事業構造の変革を通じた新たな収益源の獲得・拡大,電化等による需要創出に取り組んでおります。
新たな企業理念につきましては,以下をご参照ください。
2024年度の電力供給につきましては,必要な電力を調達・確保するとともに,水力発電所の安定的な運用やJERAによる継続的な燃料確保に向けた取り組み,送変電設備や周波数変換所等の運転・保守の確実な実施などにより,年度を通じて安定的に電力を供給することができました。
浜岡原子力発電所につきましては,従前より自主的に地震・津波対策や重大事故対策に取り組んでまいりましたが,原子力規制委員会が策定した新規制基準を踏まえて,さらなる安全性向上対策を進めております。
3・4号機については,原子力規制委員会による新規制基準への適合性確認審査を受けており,2023年9月の基準地震動に続き,2024年10月に基準津波が「おおむね妥当」と評価されました。12月からはプラント関係の審査が行われており,着実に前進しております。引き続き,適合性確認を早期にいただけるよう最大限努力するとともに,審査対応などにより必要となった追加の設備対策についても,可能な限り早期に実施してまいります。
また,現場対応力の強化に向けた教育・訓練の充実や防災体制の整備を図るとともに,住民避難を含む緊急時対応の実効性向上に向けて,国・自治体との連携を強化しております。
加えて,経営層が原子力安全のリスク評価・対応策を審議する枠組みを構築し,ガバナンスやリスクマネジメントの強化を図っております。また,社外有識者の知見を安全性向上に活用するため,アドバイザリーボードを設置し,経営的観点および現場における技術的観点から,それぞれアドバイスをいただいております。
これらの取り組みを通じて,浜岡原子力発電所の再稼働への歩みを確実に進めてまいります。
再生可能エネルギーの拡大につきましては,グループ一体となって,2017年度比で「2030年頃に保有・施工・保守を通じた320万kW(80億kWh)以上」を目指して取り組んでおり,2024年度末時点における進捗は,目標の320万kWに対して約113万kW(約35%)となっております。
ご参考 新規制基準適合性確認審査への対応
福島第一原子力発電所の事故の反省と教訓を踏まえ,原子力規制委員会が設置され新規制基準が施行されました(2013年7月)。新規制基準への適合性確認審査は,下図①,②,③があり,事業者からの申請後,原子力規制委員会が段階的に実施します。地震・津波関係の審査で基準地震動・基準津波(安全上重要な施設の耐震・耐津波安全性を確保するうえでの基準となるもの)が確定したため,2024年12月からは,地震や津波などの審査結果を踏まえた,プラント関係の審査が行われております。
●審査の流れ
審査会合開催状況につきましては,以下をご参照ください。
https://www.chuden.co.jp/energy/nuclear/hamaoka/anzen/shinkisei/shinsajokyo/
2024年度の当社連結収支の状況につきましては,連結売上高(営業収益)は,燃料費調整額(燃調収入)等の減少はあったものの,販売電力量の増加などから,前年度と比べ1.6%増加し3兆6,692億円となりました。
連結経常損益は,燃料価格等の変動が電力販売価格に反映されるまでの期ずれについて差益が減少したことや,中部電力ミライズにおける電源調達ポートフォリオの組み替えによる費用削減効果等の減少,中部電力パワーグリッドにおける需給バランス調整などを適切に実施するための調整力確保費用の増加などから,前年度と比べ2,328億円減少し2,764億円の利益となりました。
なお,期ずれを除いた連結経常損益は,2,640億円程度の利益と,前年度と比べ1,070億円程度の減益となりました。
また,子会社などにおける有価証券評価損64億円を特別損失に計上しました。
この結果,親会社株主に帰属する当期純損益は,前年度と比べ2,010億円減少し2,020億円の利益となりました。
2024年度の収支状況や業績の詳細につきましては,以下をご参照ください。



ミライズ
(中部電力ミライズ株式会社およびその子会社,関連会社)
〔事業の内容〕
電力・ガスの販売と各種サービスの提供
〔業績〕
2024年度の中部電力ミライズの販売電力量は,中部エリア内外における契約獲得および気温影響による空調設備の稼動増などから,前年度と比べ3.9%増加し1,079億kWhとなりました。
中部電力ミライズおよびその子会社,関連会社の合計の販売電力量は,中部エリア外を中心とした契約獲得などから,前年度と比べ5.5%増加し1,173億kWhとなりました。
売上高につきましては,燃調収入等の減少はあったものの,販売電力量の増加などから,前年度と比べ2.5%増加し2兆9,622億円となりました。
経常損益は,電源調達ポートフォリオの組み替えによる費用削減効果等が減少したことなどから,前年度と比べ867億円減少し1,170億円の利益となりました。
〔2024年度の取り組み〕
電気・ガスなどのお届けを通じて築いてきたお客さまとのつながりをもとに,お客さまの暮らしを豊かにするサービスや,ビジネス上の課題解決を実現するサービスを提供し,新たな価値をお届けしております。
ご家庭のエネルギー最適化を提案し,快適で安心な生活の実現を支援するために「中部電力ミライズショップ」を2024年4月にオープンし,12月には,お客さま一人ひとりに便利でお得な毎日をお届けするためにご家庭向け銀行サービス「カテエネBANK」の提供を開始しました。
脱炭素の実現に向けては,CO2フリー電気をお届けする「ミライズGreenでんき」,電気を効率的にご利用いただくためのデマンドレスポンスサービス「NACHARGE」などを提供しております。また,EV充電事業を拡大するため,新たに「ミライズエネチェンジ株式会社」を設立いたしました。
経営環境は依然として不透明な状況が継続しているものの,燃料価格が安定的に推移していることや,中部電力グループ全体で取り組んでいる経営努力などを踏まえ,2023年度に引き続き,電気料金などの負担軽減策を実施いたしました。具体的には,特別高圧・高圧とご家庭を中心とした低圧のお客さまの電気料金の割引に加え,ライフステージの変化を迎えたお客さまの暮らしを支えるためのキャンペーンなどを行いました。2025年度においても,電気料金などの負担軽減策を実施するとともに,お客さまのニーズに応じた魅力的なサービスの開発・提供に努めてまいります。

「カテエネBANK」は,住信SBIネット銀行のBaaS(Banking as a Service)を活用した,中部電力ミライズの銀行サービスです。口座開設いただき,電気・ガス料金の口座振替などを設定いただくと,カテエネポイントが貯まるお得なサービスです。
※中部電力ミライズは住信SBIネット銀行を所属銀行とする銀行代理業者です。
※「BaaS」とは,事業会社などが,銀行のシステムに接続することで,金融サービスを自社サービスの一部として提供できるようにする仕組みです。
※ポイント還元の条件・還元率・算定方法の詳細は,HPをご確認ください。
パワーグリッド
(中部電力パワーグリッド株式会社およびその子会社,関連会社)
〔事業の内容〕
電力ネットワークサービスの提供
〔業績〕
2024年度の中部エリアの需要電力量は,気温影響による空調設備の稼動増などから,前年度と比べ1.5%増加し,1,245億kWhとなりました。
売上高につきましては,再生可能エネルギー特別措置法にもとづく購入電力の卸電力取引市場への販売単価の上昇などから,前年度と比べ6.3%増加し9,632億円となりました。
経常損益は,需要電力量の増加に伴う託送収益の増加はあったものの,需給バランス調整などを適切に実施するための調整力確保費用の増加などから,前年度と比べ480億円減少し475億円の利益となりました。
〔2024年度の取り組み〕
再生可能エネルギーの導入拡大や設備の高経年化が進む中において,日々の設備保守を確実に行うとともに,他の一般送配電事業者等との連携も含めた系統運用・需給調整により,中部エリアの安定供給に加え,全国の安定供給にも寄与してまいりました。
また,中部エリアにおける電力需給の中長期的な見通しが大きく変化する中においても,将来にわたり電力の安定供給と脱炭素を両立していくため,電力系統の次世代化に向けた取り組みを実施しております。具体的には,他エリアとの電力融通の拡大に向けた設備の増強を進めるとともに,人口減少や省エネ等に起因する電力需要の減少や分散型電源の導入拡大といった地域ごとの実情に応じ,設備形成の最適化を進めております。
さらに,GXやDXの進展等による電力需要増加に早期に対応するために,「中部地方のウェルカムゾーンマップ」を公開いたしました。これを,特別高圧供給をご希望されるお客さまや,自治体等とのコミュニケーションツールとして活用するなど,より良い連系サービスの提供に努め,中部エリアの経済成長に貢献してまいります。
中部地方のウェルカムゾーンマップ:
JERA
(株式会社JERAおよびその子会社,関連会社)

(株式会社JERAおよびその子会社,関連会社)
〔事業の内容〕
燃料上流・調達から発電,電力・ガスの販売
〔JERAによる当社業績への影響〕
JERAによる当社連結経常損益への影響は,燃料価格の変動が電力販売価格に反映されるまでの期ずれについて差益が減少したことなどから,前年度と比べ1,115億円減少し673億円の利益となりました。なお,期ずれを除いたJERAによる連結経常損益への影響は470億円程度の利益となりました。
(注1)JERAは持分法適用関連会社のため,JERAの売上高は当社連結財務諸表へ計上されません。
〔2024年度の取り組み〕
燃料上流・調達から発電,電力・ガス販売にいたるバリューチェーンの最適運用,効率的運営に努めつつ,安定的な燃料調達などエネルギーの安定供給確保における重要な役割も担っております。
燃料制約や需給ひっ迫の回避に向けては,最新鋭の火力発電設備へのリプレース,火力発電所における補修点検時期の調整やボイラ等重要設備の重点巡視等を通じ,安定的な供給力の確保に取り組むとともに,需給変化を迅速に捉え,JERAの子会社であるJERA Global Marketsを通じた機動的な調達や,認定供給確保事業者としての戦略的余剰LNGの確保など,安定的な燃料供給に努めております。
また,エネルギーの安定供給を確保しながら,2050年時点で国内外の事業から排出されるCO2を実質ゼロとするJERAゼロエミッション2050に向けた取り組みを進めております。
まずは発電時にCO2を排出しない燃料であるアンモニア転換の技術確立と商用運転開始を目指し,碧南火力発電所4号機において,アンモニア20%転換の実証試験を実施いたしました。引き続き,燃料アンモニアの製造や調達,輸送に向けた協業の検討を進めるなどサプライチェーン構築にも取り組んでまいります。
また,再生可能エネルギーの拡大に向けて,JERA Nexを発足させるとともに,英国のbpとの間で,JERA Nex bpを設立して両社の洋上風力発電事業を統合することに基本合意いたしました。
(注2)JERAゼロエミッション2050は,脱炭素技術の着実な進展と経済合理性,政策との整合性を前提としております。
JERAは,引き続き,自ら脱炭素技術の開発を進め,経済合理性の確保に向けて主体的に取り組んでまいります。
JERAゼロエミッション2050の詳細やその達成に向けた取り組みにつきましては,以下をご参照ください。
(2)対処すべき課題
中部電力グループは,経営ビジョン2.0において,2030年度連結経常利益の2,500億円以上への拡大とバランスの取れた事業ポートフォリオの構築を掲げており,利益成長を積極的に追求することを目指しております。2025年度は,その実現に向けて策定した中期経営計画の最終年度であり,引き続き,国内エネルギー事業において安定的な利益の確保に取り組むとともに,新成長領域やグローバル事業において収益の拡大などに努め,「連結経常利益2,000億円以上,ROIC3.2%以上」の達成を目指してまいります。
また,将来にわたり選ばれ続ける企業であるために,お客さまのご期待に応えるサービスの提供や利益成長を踏まえた株主還元などに努めるとともに,資本効率の向上や情報開示の充実などを通じて企業価値を高めてまいります。さらに,事業環境の変化に応じ,経営資源を戦略的に投入するなど,柔軟に対応し,ステークホルダーのみなさまとともに,中長期的な社会の持続的な発展に貢献してまいります。
経営ビジョン2.0および中期経営計画の詳細やその進捗状況につきましては,以下をご参照ください。
経営ビジョン:
https://www.chuden.co.jp/corporate/cor_policy/bus_vision/
中期経営計画:
https://www.chuden.co.jp/corporate/cor_policy/management/
「GX2040ビジョン」および「第7次エネルギー基本計画」が閣議決定され,電力システム改革の検証などが行われております。また,脱炭素化に伴うエネルギー需給構造の転換によりGXやDXが進展しており,中長期的な電力需要の見通しも増加傾向に変化しております。
このような中,中部電力グループは,「S(安全性の確保)+3E(エネルギー安定供給・経済効率性・環境適合性)」の実現に向けた設備形成などを加速するとともに,これに資するエネルギー政策や電気事業制度に関する提言を行ってまいります。
【S+3Eの実現に向けた取り組み】
中部電力グループは,特定の電源に依存せず,多様かつバランスの取れた電源構成が重要であるとの考えにもとづき,エネルギー安全保障に寄与し脱炭素効果の高い再生可能エネルギーや原子力発電の最大限の活用などに取り組むとともに,供給力・調整力として重要な役割を担う火力発電の活用継続とその着実な脱炭素化を推進してまいります。
再生可能エネルギーの拡大については,2017年度比で「2030年頃に保有・施工・保守を通じた320万kW(80億kWh)以上」を目指し,投資環境を見極めながら開発に取り組むとともに,グループ会社による太陽光発電設備の保守・施工などを進めてまいります。
浜岡原子力発電所については,今後も,地域のみなさまのご理解をいただけるようコミュニケーションを図り,安全確保を大前提に早期の再稼働に向けて取り組んでまいります。
また,電力需要の趨勢に応じて安定供給に必要な火力発電の維持等や燃料の確保に加え,JERAゼロエミッション2050のもと,非効率石炭火力の停廃止や水素・アンモニアのサプライチェーンの構築を含むゼロエミッション電源の追求などに取り組んでまいります。
さらに,系統の次世代化や経済合理的な設備形成を進めるとともに,電力需給の大きな転換を踏まえ,ウェルカムゾーンの公表を通じた大型需要の適地誘導等のより良い連系サービスの提供に取り組んでまいります。加えて,太陽光発電をはじめとした自然変動電源の予測精度向上,他の一般送配電事業者と連携した広域的な需給運用の拡大などにより,中部エリアを中心に全国の安定供給の維持に寄与してまいります。
東京中部間(50・60Hz地域間)を
連系する飛騨変換所(容量90万kW)
鉄塔の建替工事の様子
【浜岡原子力発電所の再稼働に向けた取り組み】
浜岡原子力発電所については,「福島第一原子力発電所のような事故を二度と起こさない」という固い決意のもと,安全性向上対策を進めております。
3・4号機については,原子力規制委員会による新規制基準への適合性確認審査の審査会合において,基準地震動に引き続き基準津波も「おおむね妥当」と評価され,これらにもとづくプラント関係の審査に進んでおります。
今後も,新規制基準への適合性確認を早期にいただけるよう最大限努力するとともに,地域のみなさまのご理解をいただけるようコミュニケーションを図り,安全確保を大前提に浜岡原子力発電所の早期の再稼働に向けて取り組んでまいります。
発電所見学会
(防波壁を説明している様子)
菊川市放射線防護施設稼働訓練
(福祉車両を用いて訓練している様子)
地域のイベントへの出展
(地域イベントでPRしている様子)
能登半島地震を踏まえた代替取水訓練
(取水槽へ取水管を投入している様子)
【地域課題解決に向けた取り組み】
中部電力グループは,エネルギー事業とさまざまなサービスを掛け合わせた新たなサービスをお届けすることで,新たな価値の創出を目指しております。
不動産事業については,2025年4月に不動産事業本部を設置し,日本エスコンおよび中電不動産とともに,グループの強みを活かしたまちづくりを推進してまいります。
また,資源循環・上下水道・森林などの地域インフラ事業については,さまざまなパートナーのみなさまと連携して,地域のみなさまの安全・安心・利便性向上につながる取り組みを推進してまいります。
今後も,これらの取り組みを通じて,地域課題の解決に貢献してまいります。
名古屋市瑞穂区でのまちづくりの開発(中電不動産)
中部電力グループは,脱炭素社会の実現,社会課題の解決,大規模災害時における事業継続やサイバーセキュリティの高度化など,ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点を踏まえた事業経営を深化させることで,SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献し,持続的な成長と企業価値の向上に努めてまいります。
今後とも,お客さまや社会からの信頼が事業運営の基盤であることを肝に銘じ,コンプライアンス経営を徹底するとともに,企業の社会的責任(CSR)を果たすことで,ステークホルダーのみなさまとともに,社会の持続的な発展(サステナビリティ)に貢献してまいります。
中部電力グループのCSR・サステナビリティの取り組みにつきましては,以下をご参照ください。