事業報告(2024年4月1日から2025年3月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過およびその成果

当社グループは、2024年、長期的な方向性を見据えながら、中期経営計画の今後2ヵ年の内容をアップデートし、計画に掲げた取組みを強力に推進してまいりました。

当年度の連結収支の状況については、収入面では、販売電力料が増加したことなどから、売上高(営業収益)は4兆3,371億円となりました。これに営業外収益を加えた経常収益合計は前年度を2,981億円上回り、4兆4,544億円となりました。

支出面では、他社購入電力料が増加したことなどから、経常費用合計は3兆9,227億円と、前年度に比べて5,323億円の増加となりました。この結果、経常利益は5,316億円となりました。

また、英国で配電事業を行うエレクトリシティ・ノース・ウエスト社の株式の一部を売却したことに伴い、614億円を特別利益に計上いたしました。

この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は4,203億円となりました。

当年度の期末配当については、株主還元方針のもと、1株当たり30円といたしたいと存じます。

事業別の状況

エネルギー事業

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業績

総販売電力量(小売販売電力量と他社販売電力量の合計)は1,560億kWhと前年度に比べて15.8%増加しました。

ガス販売量(家庭用分野と法人用分野の合計)は、167万トンとなり、概ね前年度並みとなりました。

収入面では、販売電力料が増加したことなどから、売上高は3兆5,407億円と、前年度に比べて2,050億円の増収となりました。支出面では、他社購入電力料が増加したことなどから、経常費用は増加しました。この結果、経常利益は4,113億円と、前年度に比べて1,725億円の減益となりました。

当年度の取組み

原子力発電事業については、美浜発電所、高浜発電所および大飯発電所の7基全てのプラントが運転を継続しております。

原子力プラントの高経年化対策については、法律に基づいた技術評価を実施し、安全性を確認したうえで運転を行っております。また、2023年6月に改正された関連法令に基づき見直しが行われた安全規制や運転期間に関する制度に対しても、適切に対応を進めております。

今後とも、原子力プラントの安全・安定運転および安全性・信頼性のより一層の向上に取り組んでまいります。

美浜発電所

再生可能エネルギーに関して、水力発電事業については、設備更新によって最大出力を増加させた新丸山発電所が営業運転を開始し、また、奥多々良木発電所3、4号機では長期脱炭素電源オークションを活用した設備更新を進めてまいりました。

洋上風力発電事業については、昨年12月に山形県遊佐町沖での洋上風力発電事業者公募において事業者に選定されたほか、新たに北海道松前沖、檜山地方沖および島牧沖において、地域のみなさまや関係行政機関からのご意見を賜わりつつ、環境保全に十分配慮しながら事業実施の可能性を検討してまいりました。

また、昨年5月には国内の太陽光発電事業を投資対象としたファンドを設立するなど、太陽光発電によるコーポレートPPA(電力購入契約)の一層の拡大に取り組んでいるほか、昨年12月からは紀の川蓄電所の運転を開始するなど、電力需給の安定化や再生可能エネルギーの導入加速に貢献しております。加えて、系統用蓄電池をはじめとした分散型リソースの運用については、E-Flow合同会社※1がAIを活用したシステムを通じ、卸電力取引市場、需給調整市場および容量市場※2において最適な市場取引を行っております。

国外においては、スペインの大手電力会社イベルドローラ社から株式を取得し、ドイツにおけるヴィンダンカー洋上風力発電事業へ参画いたしました。加えて、再生可能エネルギー事業におけるリーディングカンパニーである同社と戦略的協業に関する覚書を締結し、グローバルな事業拡大の取組みを始めております。

一方で、英国の配電会社エレクトリシティ・ノース・ウエスト社の株式の一部売却により売却益を獲得するなど、ポートフォリオの組替えも機動的に進めております。

火力発電事業については、南港発電所1~3号機の長期脱炭素電源オークションを活用した設備更新が決定し、本年3月をもって既存設備を廃止いたしました。高経年化が進んでいる姫路第一発電所は、最新の高効率コンバインドサイクル機への設備更新の検討を開始いたしました。

また、水素の利活用として、姫路第二発電所での水素混焼発電実証の取組みを進め、当年度は、水素混焼発電に必要となる設備の設計・製作、据付および試運転を行い、大阪・関西万博期間中の実証試験開始に向けて、着実に準備を進めてまいりました。

※1
2023年4月設立。VPP事業、系統用蓄電池事業、再エネアグリゲーション事業の3事業に重点を置き、2030年度までに全国で分散型エネルギーリソースの市場取引量250万kW、売上高300億円を目指しております。
※2

卸電力取引市場:発電事業者と小売電気事業者が電力量(kWh)を取引する市場。

需給調整市場:一般送配電事業者が周波数調整や需給調整を行うための調整力(⊿kW)を効率的に調達・運用する市場。

容量市場:将来にわたる日本全体の供給力(kW)を効率的に確保する市場。

ご家庭のお客さまへのサービスについては、従来のオール電化住宅向けなどのメニューに加え、省エネ給湯機エコキュートのリース料金と一定量までの電気料金がセットになったサブスクリプション(定額)メニュー「はぴeセット」を推進いたしました。さらに、昨年4月には蓄電池のリース料金と一定量までの電気料金がセットになった「はぴeセット ストレジ」の提供を開始し、サービスラインナップを拡充いたしました。また、当社の電気とガスをセットにして提案活動を展開し、年度末時点での関電ガスの契約件数は約163万件となりました。

法人のお客さまへのサービスについては、脱炭素の計画策定から具体策の実行までをトータルサポートする「ゼロカーボンパッケージ」において、より一層サービス内容の充実を図ってまいりました。具体的には、太陽光発電オンサイトサービス※3、コーポレートPPA、分散型エネルギーリソースの最適制御等を行うエネルギーマネジメントシステムである「SenaSon」、法人のお客さま等が所有する車のEV化を支援する「カンモビパッケージ」のサービス拡充に取り組みました。また、タイ、ベトナムに加え、昨年11月には新たにインドネシアに現地法人を設立し、東南アジアを中心に海外進出する日系企業の工場に対して、最適なエネルギーシステムの構築・運用に関するソリューション提案を通じて、省エネ・省コスト・省COなどの多様なニーズにお応えする取組みを推進しております。

中核会社の株式会社関電エネルギーソリューションにおいては、全国300を超える地点でユーティリティサービスを提供しており、病院やデータセンター等の大型案件への注力、首都圏活動の強化など、事業拡大に努めてまいりました。また、本年3月には、大規模なお客さま設備の運転制御を、当社が遠隔で代行し最適運用する「おまかSave-Pro」をリリースするなど、サービスの高度化にも取り組んでおります。

※3
お客さまの建物の屋根などに、当社が太陽光発電設備を設置、所有したうえで、設置後の運用・メンテナンスまでをワンストップで行うもので、初期投資ゼロで太陽光発電による電気をご使用いただけるサービス。

送配電事業

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業績

収入面では、エリア需要の増加などにより、託送収益が増加したことなどから、売上高は3,891億円と、前年度に比べて472億円の増収となりました。支出面では、需給調整取引に伴う費用や修繕費が増加したことなどから、経常費用は増加しました。この結果、経常利益は557億円と、前年度に比べて682億円の減益となりました。

当年度の取組み

関西電力送配電株式会社では、高経年化設備の計画的更新やネットワークの次世代化を着実に推進し、電力の安全・安定供給に取り組んでまいりました。また、託送事業の進化・変革に向けた取組方針として、「Future Initiatives」を策定いたしました。

託送事業については、2023年4月から導入された託送料金制度のもと、効率化等におけるトップランナーとなるべく、DXの活用等によって、さらなるコスト構造改革の推進とカイゼンを通じた生産性向上にも取り組んでまいりました。また、需給収支の構造的な課題に対しては、調整力調達費用の低減に向けた取組みを進めてまいりました。

託送事業以外では、当社設備を活用した事業領域の拡大を図ることに加え、多機能型スマートポール(通信基地局やWi-Fi、カメラ、街路灯などを搭載)の大阪・関西万博会場での活用をはじめとした、サービス・プロバイダーとしての新たな価値の提供を行うことで、お客さまや社会の幅広い課題解決に貢献してまいります。

信貴八尾線

情報通信事業

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業績

収入面では、株式会社オプテージにおいて、eo電気の燃料費調整額が減少したことなどから、売上高は2,235億円と、前年度に比べて17億円の減収となりました。支出面では、株式会社オプテージにおいて、容量拠出金が増加したことや、委託費等の販売管理費が増加したことなどから、経常費用は増加しました。この結果、経常利益は469億円と、前年度に比べて5億円の減益となりました。

当年度の取組み

2023年5月に米国CyrusOne(サイラスワン)社と関西電力サイラスワン株式会社を設立し、現在、ハイパースケールデータセンター事業の第1号案件として、京都府精華町での事業開発を進めております。昨年9月に土地造成工事に着手しており、2027年度中の営業開始を目指しております。

中核会社の株式会社オプテージにおいては、FTTHサービス「eo光」について、昨年10月にオンライン申込専用の新プラン「eo光シンプルプラン10ギガコース」の提供を開始するなどして、約171万件のお客さまに選ばれております。さらに、本年4月からは、eo光テレビ新コース「CSベーシック」「CSプレミアム」を追加し、サービスラインナップを拡充いたしました。

MVNO事業については、「mineo(マイネオ)」において本年3月から基本データ容量で選ぶプラン「マイピタ」に50GBコースを追加するなどし、約135万件のお客さまに選ばれております。

また、法人向け事業については、2026年1月から都市型データセンター「曽根崎データセンター」を新たに運用開始する予定のほか、2026年度中には「生成AI向けコンテナ型データセンター」を開設し、「AI学習用GPUサーバ」の提供を予定しております。

曽根崎データセンター(完成予想図)

生活・ビジネスソリューション事業

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業績

収入面では、関電不動産開発株式会社の住宅分譲事業において、引渡戸数の増加や販売単価が向上したことなどから、売上高は1,836億円と、前年度に比べて271億円の増収となりました。支出面では、関電不動産開発株式会社の住宅分譲事業において、商品原価等の売上原価が増加したことなどから、経常費用は増加しました。この結果、経常利益は262億円と、前年度に比べて38億円の増益となりました。

当年度の取組み

安心・快適・便利な生活やビジネスを実現する様々な事業を展開しております。

中核会社の関電不動産開発株式会社においては、住宅分譲事業では、関西圏、首都圏でタワーマンションなどの販売が好調に推移するとともに、関西初の全邸オール電化かつZEH仕様の戸建住宅やマンションに加え関電グループのVXサービスを組み入れた「スマートエコタウン星田」の開発を行ってまいりました。

賃貸事業では、築50年超のオフィスビル「堂島関電ビル」でテナントのみなさまと協働し「ESG×SDGs」に配慮した大規模リニューアルを実施いたしました。また、堂島浜や難波等の関西圏での再開発プロジェクトの推進や首都圏での複合施設の再開発に向けた準備を行っております。

海外事業についても、米国や豪州等で様々な住宅開発や賃貸事業に参画し、日系企業の幹事会社としての事業推進にも着手しております。

スマートエコタウン星田

対処すべき課題

当社グループは、2021年3月、5ヵ年の実行計画として「関西電力グループ中期経営計画(2021-2025)」を策定しました。その後、国際情勢を受けたエネルギー市場の不安定化や脱炭素化の潮流、デジタル技術の一層の進展等、当社を取り巻く事業環境の変化を踏まえ、昨年4月、計画のアップデートを行いました。

2025年に入り、計画の最終年度を迎えましたが、国際社会の分断や金利・物価の上昇等により、経営環境は一段と不透明さを増しています。

この状況を踏まえ、計画に掲げた目標を達成するため、当社グループは、エネルギーの安全・安定供給の責務を果たしながら、取組みの3本柱である「ゼロカーボンへの挑戦(EX)」、「サービス・プロバイダーへの転換(VX)」、「強靭な企業体質への改革(BX)」を一層加速してまいります。

引き続き、コスト構造改革や既存事業の深化などの足元で利益を生み出す事業活動を展開するとともに、2024年度に実施した公募増資による資金も活用し、成長事業への投資等を通じ、将来の成長に向けた足掛かりをしっかりと築いてまいります。

2025年度は、中期経営計画のその先を見据え、2035年「中長期の目指す姿」の実現に向けた事業展開について集中的に議論を進め、さらなる飛躍への道を切り拓いてまいります。

2025年度取組み-EX:Energy Transformation

  • 「関西電力グループゼロカーボンロードマップ」に基づき、脱炭素化を牽引

2025年度取組み-VX:Value Transformation

  • 既存事業の周辺領域・重なり合う領域で、お客さまや社会の脱炭素ニーズの多様化・高度化をふまえた新たな価値提供を加速

2025年度取組み-BX:Business Transformation

  • 「人」、「しくみ」、「財務」の視点で、経営のリーダーシップのもと、4つの「高める」の取組みおよびDX推進・コスト構造改革等を加速

中期経営計画の進捗状況

事業運営の大前提 ガバナンス確立とコンプライアンス推進
  • 業務改善計画の完遂に加えて、組織風土改革・内部統制の取組みを両輪で推進
  • 様々な環境変化とリスクへの確実な対応
取組みの3本柱 KX:Kanden Transformation

利益の成長ドライバーと成長イメージ

  • 脱炭素化の潮流加速、電力需要増加の見立て等、経営環境の変化を機会と捉え、2024年度に公募増資を実施しました。
  • 短中期的には、原子力利用率向上や送配電の安定的な利益確保および成長事業への投資で成長してまいります。
  • 中長期的には、エネルギートランジションを実現する新しい技術、分野でチャンスをつかみ成長してまいります。
  • 株主のみなさまへの還元も、着実に成長させてまいりたいと考えております。

当社グループは、株主のみなさまのご期待にお応えできるよう、これら取組みを力強く推し進め、企業価値の向上に全力を尽くしてまいります。

株主のみなさまにおかれましては、引き続き、ご理解とご支援を賜わりますようお願い申しあげます。

(ご参考)
業務改善計画の進捗状況について
  • ・当社は、新電力顧客情報の不適切な取扱い、独占禁止法違反行為を踏まえ、2023年5月、8月に業務改善計画を提出いたしました。
  • ・2023年5月に「公正な競争の実現に向けたトップコミットメント」を宣言しており、このコミットメントのもと、役員および社員が新たな事業ルールに対する意識・行動変革を行うとともにルールを遵守する仕組みを構築し、浸透させながら、再発防止策に掲げた各取組みについて、計画通り実施しております。
  • ・これらの取組みについては、外部人材が過半数を占める、取締役会、監査委員会、コンプライアンス委員会により、実効的なものとなっていると評価されております。また、電力・ガス取引監視等委員会からも、実効的に進めていると評価され、業務改善計画提出から1年間の集中改善期間のフォローアップは終了しております。
  • ・今後も改善を図りながら、グループ一丸となって、再発防止に向けて全力で取り組んでまいります。

新電力顧客情報の不適切な取扱いによる電気事業法違反の再発防止策

  • 託送情報に係る情報システムの物理的分割等
  • 情報システム開発・運用プロセスにおける対策
  • ソリューション本部において同様の事案を起こさないために速やかに行った措置
    (業務運用および情報システムの総点検、コンプライアンス研修と継続して研修を行う仕組みの整備、従業員の声を拾い上げるための対話活動の強化、業務の適切性を確保するためのチェック体制の強化、委託先への対応)

特別高圧電力および高圧電力の取引に関する独占禁止法違反の再発防止策

  • 社内規程等の整備(独占禁止法遵守のための仕組み整備)
  • 教育・研修等の充実(独占禁止法の理解促進およびコンプライアンス意識の再徹底)
  • 予防機能の強化(独占禁止法違反防止のための支援体制の強化)
  • 監視機能の強化(チェック機能の強化)

通底する発生原因を踏まえた共通の再発防止策 実績は2025年3月末時点の情報を記載

  • 公正な競争の実現に向けたトップコミットメントの発信
  • 内部統制の強化
    • ・コンプライアンス推進本部およびチーフコンプライアンスオフィサーの設置、内部監査の強化、内部統制基盤、リスク管理の強化・高度化、企業集団の内部統制強化。(内部統制部会を計19回開催)
  • 組織風土の改革
    • ・社長を議長とする「組織風土改革会議」を設置(計37回開催)し、組織風土に影響を与える重要課題の解消に向けた施策展開、各職場の取組みの支援、全社的な啓発活動の展開を順次実践。
  • 外部人材を活用した取組みの実施状況および実効性の検証
    • ・取締役会による特別監督として、執行側から業務改善計画の実施状況の報告を受け、助言・指導を実施。
    • ・監査委員会による特別監査として、一連の改革の取組状況について定期的かつ必要に応じて報告を求め、常勤監査委員がその内容を監査委員会に報告。また、役員が関与する不正(マネジメントオーバーライド)に対する内部統制上の予防、早期対処の観点から、監査委員会の内部監査部門等に対する指示権限を明確化し、執行に対する牽制、監査機能を強化。
    • ・コンプライアンス委員会が、必要なモニタリングと見直しを継続的に実施。

連結計算書類