事業報告(2023年4月1日から2024年3月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

事業の経過およびその成果

当社グループは、新電力顧客情報の不適切な取扱いによる電気事業法違反等ならびに特別高圧電力および高圧電力の取引に関する独占禁止法違反のコンプライアンスに関わる不適切な事案について、昨年5月および同年8月に業務改善計画を経済産業省に提出し、グループ全体で業務改善計画に掲げる諸施策を着実に進めてまいりました。また、二つの不適切な事案に通底する課題への対応として内部統制の強化や組織風土の改革等に力を尽くしております。二度とこのような問題を起こさない、真にコンプライアンスを徹底できる企業へと再生できるよう、これからも引き続き真摯に取り組んでまいります。

当社グループを取り巻く事業環境に目を向けますと、国際情勢を受けた燃料市況の不安定化に加え、脱炭素化の潮流やデジタル化の急進により、先行き不透明な状況が続いております。こうした中において、「関西電力グループ中期経営計画(2021-2025)」の取組みを着実に進捗させ、長年取り組んできた原子力7基体制を実現するとともにコスト構造改革等による成果が表れてきております。

当年度の連結収支の状況については、収入面では、販売電力料が増加したことなどから、売上高(営業収益)は4兆593億円となりました。これに営業外収益を加えた経常収益合計は前年度を1,081億円上回り、4兆1,563億円となりました。

支出面では、原子力利用率の上昇や燃料価格の低下などにより火力燃料費や他社購入電力料が減少したことなどから、経常費用合計は3兆3,903億円と、前年度に比べて6,645億円の減少となりました。この結果、経常利益は7,659億円となりました。

また、和歌山発電所建設計画の中止を決定したことに伴い、1,264億円を特別損失に計上いたしました。

この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は4,418億円となりました。

当年度の期末配当については、株主還元方針のもと、1株当たり25円といたしたいと存じます。

事業別の状況

エネルギー事業

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業績

小売販売電力量は、需要数が増加したことなどから、1,172億kWhと前年度に比べて5.1%増加しました。その内訳を見ると、「電灯」については、314億kWhと前年度に比べて1.7%増加しました。また、「電力」については、858億kWhと前年度に比べて6.4%増加しました。
ガス販売量は、家庭用分野と法人用分野を合わせて168万トンとなり、前年度に比べて10.0%増加しました。
収入面では、販売電力料が増加したことなどから、売上高は3兆3,356億円と、前年度に比べて2,259億円の増収となりました。支出面では、原子力利用率の上昇や燃料価格の低下により火力燃料費が減少したことなどから、経常費用は減少しました。この結果、経常利益は5,838億円と、前年度に比べて6,112億円の増益となりました。

当年度の取組み

原子力プラントについては、特定重大事故等対処施設を含む安全対策工事を完了し、昨年8月に高浜発電所1号機、同年10月に同2号機の本格運転を再開いたしました。これにより美浜発電所、高浜発電所および大飯発電所の全てのプラントが運転を行っており、7基体制を実現することができました。
当社の原子力プラントの高経年化対策については、法律に基づいた技術評価を実施し、安全性を確認したうえで運転を行っております。また、昨年6月に改正された原子炉等規制法において、高経年化の安全規制について見直しが行われましたが、これに対しても適切に対応してまいります。
今後とも、原子力プラントの安全・安定運転および安全性・信頼性の一層の向上に取り組んでまいります。

高浜発電所

再生可能エネルギーの開発等については、国内において、KDS太陽光合同会社によるコーポレートPPA(電力購入契約)に活用する太陽光発電設備の開発を進め、昨年7月に1号機が営業運転を開始いたしました。また、水力発電事業では、黒部川第二発電所3号機の設備更新など最大出力増加に取り組みました。和歌山県沖での洋上風力発電事業や北海道古平町と余市町での陸上風力発電事業では、地域からの意見を踏まえつつ、環境保全に十分配慮しながら事業性を検討してまいりました。
国外においては、フィンランドのアラヤルヴィ陸上風力発電事業は昨年12月に商業運転を開始いたしました。また、スペインのビルバオ港沖での浮体式洋上風力実証プロジェクトおよびノルウェーのゴリアテヴィンド浮体式洋上風力発電実証事業へ参画するとともに、オドフェル・オーシャンウィンド社への出資参画にも取り組んでまいりました。
ご家庭のお客さまへのサービスについては、従来のオール電化住宅向けなどのメニューに加え、省エネ給湯機エコキュートのリース料金と一定量までの電気料金がセットになったサブスクリプション(定額)メニュー「はぴeセット」等の推進に加え、新たに蓄電池のリースと電気をセットにした「はぴeセット ストレジ」の提供を発表いたしました。加えて、当社の電気とガスをセットにした「なっトクパック」の提案活動を展開し、年度末時点での関電ガスの契約件数は160万件となりました。
法人のお客さまへのサービスについては、脱炭素の計画策定から具体策の実行までをトータルサポートする「ゼロカーボンパッケージ」において、太陽光オンサイトサービス※1やコーポレートPPA、お客さまが所有する分散型エネルギーリソースの最適制御等を行うエネルギーマネジメントシステムであるSenaSonなど、より一層サービス内容の充実を図りました。
加えて、昨年4月にE-Flow合同会社※2を設立し、分散型エネルギーリソースを最適に運用し、需給調整市場等の各種市場取引を推進しております。
中核会社の株式会社関電エネルギーソリューションにおいては、ユーティリティサービス事業について、収益の拡大に向け、大型案件の受注推進に加え、中小規模案件の獲得や首都圏での活動強化など顧客基盤の構築に取り組むとともに、節水・節湯自動管理システム「ぴたっとOU」等の新サービスを推進いたしました。

  • ※1:お客さまの建物の屋根などに、太陽光発電設備を設置、所有したうえで、設置後の運用・メンテナンスまでをワンストップで行うもので、初期投資ゼロで太陽光発電による電気をご使用いただけるサービス。
  • ※2:昨年4月設立。VPP事業、系統用蓄電池事業、再エネアグリゲーション事業の3事業に重点を置き、2030年度までに全国で分散型エネルギーリソースの市場取引量250万kW、売上高300億円を目指しております。

送配電事業

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業績

収入面では、託送料金の改定などによる託送収益の増加があったものの、需給調整取引の単価下落により販売電力料が減少したことなどから、売上高は3,418億円と、前年度に比べて1,280億円の減収となりました。支出面では、需給調整市場の単価下落により購入電力料が減少したことなどから、経常費用は減少しました。この結果、経常利益は1,240億円と、前年度に比べて1,692億円の増益となりました。

当年度の取組み

関西電力送配電株式会社では、高経年化設備の計画的更新やネットワークの次世代化を着実に推進し、電力の安全・安定供給に取り組んでまいりました。令和6年能登半島地震に際しては、現地に約730名(協力会社を含む)の作業員を応援派遣し、被災地の電力復旧に貢献いたしました。
託送事業においては、2023年度に導入された新たな託送料金制度のもと、効率化等におけるトップランナーとなるべく、さらなるコスト構造改革とカイゼンを通じた生産性向上にも取り組んでまいりました。また、需給収支における課題に対しては、調整力調達費用の低減に向けた取組みを推進してまいりました。
託送事業以外では、「バングラデシュ国低炭素社会実現のためのダッカ配電マスタープラン策定プロジェクト」の業務を受託するなど、着実に事業領域を拡大いたしました。

下小鳥線No.47鉄塔

情報通信事業

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業績

収入面では、株式会社オプテージにおいて、株式会社関電セキュリティ・オブ・ソサイエティを吸収合併したことによりホームセキュリティサービスの収益が増加したことや、FTTHサービスの収益が増加したことなどから、売上高は2,253億円と、前年度に比べて25億円の増収となりました。支出面では、株式会社関電システムズにおいて、システム開発案件が増加したことなどから、経常費用は増加しました。この結果、経常利益は474億円と、前年度に比べて44億円の増益となりました。

当年度の取組み

中核会社の株式会社オプテージにおいては、FTTHサービス「eo光」について、超高速(10ギガ/5ギガ)コースを関西173市町村で利用可能とするなど、販促活動の推進により関西のFTTH(戸建向け・5ギガコース以上)において約6割のシェアを確保しております。
また、モバイル事業「mineo」は10周年を控え、約130万回線をご利用いただいております。法人向け事業については、大阪市内に都市型データセンター「曽根崎データセンター」の建設を進め、2026年1月に運用開始を予定しております。

生活・ビジネスソリューション事業

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業績

収入面では、関電不動産開発株式会社の住宅分譲事業において、引渡戸数が増加したことや、賃貸事業において、ホテルの稼働率が向上したことなどから、売上高は1,564億円と、前年度と比べて70億円の増収となりました。支出面では、関電不動産開発株式会社の住宅分譲事業において、売上原価や委託費が増加したことなどから、経常費用は増加しました。この結果、経常利益は223億円と、前年度に比べて14億円の増益となりました。

当年度の取組み

安心・快適・便利な生活やビジネスを実現する様々な事業を展開しております。特に、中核会社の関電不動産開発株式会社においては、超高層タワーマンション「シエリアタワー中之島」や、首都圏のオフィス建替えプロジェクト「関電不動産渋谷ビル」の開発を推進いたしました。
また、海外においても住宅開発・賃貸事業を展開しており、米国・豪州にて6件の事業に参画いたしました。

シエリアタワー中之島(完成予想図)

対処すべき課題

当社グループは、2021年3月、5ヵ年の実行計画として「関西電力グループ中期経営計画(2021-2025)」を策定しました。
この3年間、当社グループは、計画に掲げた取組みの3本柱である、「ゼロカーボンへの挑戦(EX)」、「サービス・プロバイダーへの転換(VX)」、「強靭な企業体質への改革(BX)」の実行に努めるとともに、前半3ヵ年の財務目標をいずれも達成するなど、着実に取組みを進めてまいりました。
昨今、国際情勢を受けたエネルギー市場の不安定化に加え、脱炭素化の潮流やデジタル技術の一層の進展等により、当社を取り巻く事業環境は、時々刻々と変化し続けています。
これらを踏まえ、本年4月、長期的な方向性を見据えながら、さらなる成長への道筋を確かなものとするため、中期経営計画をアップデートしました。これからの後半2年間は、EXでは、本年4月に改定したゼロカーボンロードマップに基づき、脱炭素化を牽引するとともに、VXでは、分散型サービスプラットフォームをはじめとするエネルギー事業でのVXに加え、データセンター事業等、エネルギー領域に捉われない領域へ挑戦し、新たな価値をご提供してまいります。また、経営基盤の強化に向けたBXの取組みとして、コスト構造改革、DXの推進等に加え、人財基盤の強化、仕事の進め方の改革等に力を尽くしてまいります。

ゼロカーボンへの挑戦

EX: Energy Transformation

「関西電力グループ ゼロカーボンビジョン2050」の実現への道筋を定めた「関西電力グループ ゼロカーボンロードマップ」を本年4月に改定し、「2030年度におけるサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量50%削減」を含むチャレンジングな目標を新たに設定しております。本ロードマップに基づき、取組みをさらに加速させていくことで、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。

サービス・プロバイダーへの転換

VX: Value Transformation

エネルギー分野のみならず、幅広い事業領域において、徹底してお客さま視点に立ち、ニーズや課題に向き合うことで、新たな価値を提供してまいります。そのため、エネルギーや不動産、情報通信など、グループの強みを生かしながら、以下に向けた取組みを推進いたします。

強靭な企業体質への改革

BX: Business Transformation

経営基盤の強化、競争力の向上に向けて、「人」「しくみ」「財務」の視点で取組みを進めていく所存です。
引き続き、DXの推進や、コスト構造改革をはじめとした「財務」面の取組みを推し進めるとともに、「人」と「しくみ」の面でも、「人財基盤の強化」や「仕事の進め方の改革」に力を尽くすことで、強靭な企業体質への改革を成し遂げてまいります。

当社グループは、総力を結集して、これら3本柱の取組みを力強く推進し、次なる飛躍に挑んでいく決意です。そして、株主のみなさまのご期待にお応えできるよう、企業価値の向上に全力を尽くしてまいります。
株主のみなさまにおかれましては、引き続き、ご理解とご支援を賜わりますようお願い申しあげます。

(ご参考)
業務改善計画の進捗状況について

  • 行為規制遵守への対策
    • 託送情報システムの物理的分割は、2023年度末に要件定義を完了する等、2027年度のシステム運用開始等に向け、計画どおり進捗しております。
    • 情報システム開発・運用プロセスにおける対策として、コンプライアンスリスクをシステム設計、テストへ反映する仕組み、ユーザーからの不具合申告を促進する仕組みを昨年6月に導入いたしました。
    • 営業部門(ソリューション本部)において、以下の各取組みを行っております。結果を今後の取組みに反映し、内容を充実、更新してまいります。

      ・業務運用および情報システムの総点検として、コンプライアンスの観点から数千件の社内規程やマニュアルの見直しを実施いたしました。

      ・コンプライアンス意識の定着と行動の喚起を目的とした研修について、計画どおり実施しております。

      ・従業員の声を拾い上げるための対話活動の強化として、役員とミドルマネジメント層、ミドルマネジメント層と所属員間の双方向コミュニケーションを実施しております。

      ・業務の適切性を確保するためのチェック体制の強化として、各部門において、社内標準の運用状況に係る業務チェックシートを作成し、ルールの順守、浸透状況、改善要望の把握などを実施しております。

      ・委託先向けの業務マニュアルおよび手順書を確認するとともに、研修およびコミュニケーションを実施しております。

  • 独占禁止法遵守への対策
    • 独占禁止法遵守のための仕組みとして2022年6月に社内規程を制定し、競合他社との接触に係るルール等を整備のうえ、同規程の運用状況等に関するモニタリングを実施しております。
    • 独占禁止法の理解促進およびコンプライアンス意識の再徹底のための教育・研修の充実として、対象層に応じた内容、方法により、正確な知識付与、意識啓発を実施しております。
    • 支援体制の強化として、継続的に、法律相談および内部通報制度の活用を慫慂するとともに、昨年8月から法務部門による重要会議モニタリングとして、対象会議の傍聴や資料・議事録確認を実施しております。
    • 監視機能の強化として、2022年度下期以降、全部門を対象に順次内部監査を実施しております。また、コンプライアンス委員会が委嘱する外部弁護士による監査を実施しております。
  • 通底する課題への対応
    • (1)内部統制の強化
      昨年7月、コンプライアンス推進本部およびチーフ・コンプライアンス・オフィサーを設置いたしました。「内部統制部会」を計13回開催(本年4月末時点)し、3線管理体制の整備・強化、リスク管理の見直し、グループ会社の内部統制強化に取り組んでおります。コンプライアンス研修の実施、社内リニエンシー導入による内部通報制度の充実・強化等を行っております。
      経営監査室の体制充実・強化等を行うとともに、外部コンサルによる助言・指導や国際基準に基づく外部評価を実施し、監査品質の向上を行っております。
    • (2)組織風土の改革
      社長を議長とする「組織風土改革会議」を計19回開催(本年4月末時点)し、全役員・全従業員が、職位や所属の垣根を越えて自身の思いや気付きを率直に語り合えるような組織風土を創り上げるため、具体的には、事業部門およびコーポレート部門から集められた「組織風土改革キーパーソン」による部門横断的な検討体制により、組織風土に影響を与える「重要課題」を抽出のうえ、解消に向けた施策の整理等を行いました。今後、「制度」と「意識」の両面から詳細検討を行い、実践につなげてまいります。
      また、組織風土改革会議の議論の様子を適宜、社内サイトにて発信する等、改革の「自分事化」を図っております。
    • (3)外部人材を活用した取組みの実施状況及び実効性の検証
      いずれも社外人材が過半数を占め、議長または委員長を務める監督側機関により、業務改善計画の取組みについて、客観的な視点で検証できる体制を構築しております。
      • <取締役会>
        特別監督として、取締役会開催に併せて、個別の再発防止策の進捗状況はもとより、上記(1)(2)の取組状況についても報告を求め、フォローアップするとともに、追加的な対策や改善措置の策定、実施について助言・指導を行っております。
      • <監査委員会>
        特別監査として、法令等の遵守状況に加え、一連の改革の取組状況について、定期的かつ必要に応じて報告を求めることとし、その実効性、浸透、定着度合いについて、常勤監査委員が組織風土改革会議、内部統制部会をはじめとする関連会議等に出席し、適宜、意見表明や監査での気付きをフィードバックするとともに、監査委員会にその内容を報告するなどしております。
        また、役員が関与する不正(マネジメントオーバーライド)に対する内部統制上の予防、早期対処の仕組みが必要との観点から、本年1月の取締役会にて、監査委員会の内部監査部門等に対する指示権限を明文化する旨を決議いたしました。
      • <コンプライアンス委員会>
        業務改善計画に掲げる再発防止策の実施状況について、本年3月のコンプライアンス委員会に報告し、実効性を高めるための助言・指導を受けております。

連結計算書類