事業報告(2024年4月1日から2025年3月31日まで)
企業集団の現況に関する事項
事業の経過及びその成果
当期におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善による個人消費の持ち直しや、企業収益の改善を背景とした堅調な設備投資等により、景気は緩やかに回復いたしました。一方で、原材料価格の高騰等に伴う物価上昇やアメリカの政策動向の影響等により、先行きは依然として不透明な状況のなかで推移いたしました。
このような状況において、当社グループは、2022年度~2024年度を対象とする中期経営計画「Next2024」のもと、エネルギーとくらしの総合サービス企業グループとして、中核であるガスエネルギー事業や電力・その他エネルギー事業の競争力強化や不動産事業の拡大、低炭素化に貢献する天然ガスシフトの推進などに取り組んでおります。
当期の売上高は、ガス事業において原料費調整によるガス料金単価の下方調整の影響等により、前期に比べ0.7%減の2,544億4千2百万円となりました。
費用面につきましては、主にガス事業において売上原価が減少いたしました。
この結果、営業利益は前期に比べ8.9%増の105億3千万円、経常利益は前期に比べ2.3%増の106億1千1百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に比べ3.4%増の63億6千2百万円となりました。




セグメント別の状況
事業別の業績は、以下のとおりであります。


当連結会計年度末の都市ガス販売量は前期に比べ1.2%増の930,390千㎥となりました。このうち家庭用ガス販売量につきましては、需要期の低気温等により増加したものの、第3四半期までの高気温等による減少により前期に比べ0.8%減の206,437千㎥となりました。一方、業務用ガス販売量につきましては、既存顧客の気温影響による空調需要増や新規顧客の獲得等により前期に比べ3.0%増の601,196千㎥となりました。他の事業者への卸供給ガス販売量につきましては、卸供給先の需要減により前期に比べ3.8%減の122,757千㎥となりました。
以上のような都市ガス販売量の結果と原料費調整によるガス料金単価の下方調整の影響等により、売上高は前期に比べ2.3%減の1,557億5千9百万円となったものの、セグメント利益はひびきLNG基地の減価償却費が減少したこと等により、前期に比べ5.4%増の55億1千9百万円となりました。




売上高はLPG販売単価の上昇等により前期に比べ6.5%増の270億7千2百万円となったものの、セグメント利益は販売促進費が高く推移していること等により、6千5百万円の損失(前期はセグメント損失2億5千3百万円)となりました。



売上高は小売電気事業における販売量の増加等により前期に比べ5.4%増の232億7千4百万円となったものの、セグメント利益は売上原価の増加等により、前期に比べ40.2%減の5億1百万円となりました。



売上高は賃貸用不動産の売却売上が減少したこと等により、前期に比べ0.9%減の423億2千1百万円となったものの、セグメント利益は分譲マンションの販売戸数が増加したこと等により、前期に比べ15.3%増の42億9千9百万円となりました。



その他の事業には、食関連事業(食品販売事業、飲食店事業)、情報処理事業等が含まれております。
売上高は食品販売事業売上の減少等により、前期に比べ1.8%減の251億1百万円となったものの、セグメント利益は販売管理費が減少したこと等により、前期に比べ1.3%増の11億4千5百万円となりました。

対処すべき課題
当社グループは、長期的な経営方針である「西部ガスグループビジョン2030※」、「西部ガスグループカーボンニュートラル2050※」、及び本年3月に公表したグループ中期経営計画「ACT2027※」のもと、未来を変える価値創造や持続可能で豊かな社会の実現に向けて、各施策に鋭意取り組んでおります。
当社グループを取り巻く環境は、カーボンニュートラルの潮流加速やエネルギー情勢の変化、資本市場改革、デジタルの急速な発展など大きく変化している一方、事業基盤である北部九州の経済・産業は活性化しており、新たな事業機会や課題を踏まえた取り組みが必要となっております。特に、カーボンニュートラルに向けたトランジション期における低炭素な天然ガスへのニーズやガス体エネルギーの脱炭素化の必要性は飛躍的に拡大しており、当社グループにとって大きなビジネスチャンスと捉えております。
そのようななか、「ACT2027」の対象期間となる2025~2027年度の3年間は、「ガスエネルギー事業の一層の強化と事業多角化の両立」を目指す期間と定め、ひびきLNG基地能力増強などのインフラ投資に着手し、トランジション需要を最大限獲得するとともに、電力・不動産事業の収益性・効率性向上との両立を実現してまいります。
※「西部ガスグループビジョン2030」(2021年11月公表)、「西部ガスグループカーボンニュートラル2050」(2021年9月公表)及び「ACT2027」(2025年3月公表)は、以下の当社ウェブサイトよりご参照ください。
https://hd.saibugas.co.jp/ir/management_info/strategy/
■グループ中期経営計画「ACT2027」の基本方針と財務目標
「ACT2027」においては、ガスと電力を中心とするエネルギー事業の成長の加速と、不動産事業の安定的な収益確保により利益を最大化するとともに、グループ経営管理の高度化による資本効率の向上に取り組んでまいります。

■グループ中期経営計画「ACT2027」全社戦略の柱と重点取り組み

1 カーボンニュートラルへの取り組み推進
天然ガスによるトランジション需要の獲得を最重要課題と捉え、天然ガスの普及拡大・高度利用、ひびき発電所の稼働などを通じた「エネルギーの低炭素化」に向けた取り組みを推進してまいります。
また、e-メタン導入に向けた実証事業や水素活用などの「ガスの脱炭素化」への取り組みを推進するとともに、PPA事業の推進や電源種の多様化などによる再エネ電源取扱量の拡大を通じて「電源の脱炭素化」にも注力してまいります。
2 エネルギーサプライチェーン・レジリエンスの強化
国際情勢の不安定化や自然災害の頻発・激甚化が進むなか、更なるエネルギーサプライチェーンの強化とレジリエンスの向上に取り組み、ガスの安定供給を通じてお客さま・地域社会の安全・安心を支え続けてまいります。
3 未来に向けた新たな価値の共創
グループのお客さま価値最大化に向け「エネルギー周辺領域」を中心に新たな価値の創造を推進するとともに、財務規律に基づいた戦略的なM&Aなどにより、将来の成長の柱となり得る事業の創出にチャレンジしてまいります。
4 コーポレートガバナンスの強化
多様なステークホルダーからの信頼向上に向け、経営の透明性・公平性を担保するためのグループガバナンスの推進や、統合報告書の発行などによる情報開示の充実・ステークホルダーとの対話に取り組み、コーポレートガバナンスを強化してまいります。
5 地域やお客さまとの「つながり」強化
エネルギー事業を通じて長年培ってきた地域とのつながりを活かして、不動産事業の推進やまちづくり、地域のお困りごと解決に取り組み、当社グループの成長の源泉となる地域活性化と地域・お客さまとの更なるつながり強化を実現してまいります。
また、グループの強みであるリアルなお客さま接点(フロントライン)に、デジタルプラットフォームの強化を通じた接点を融合してお客さまとのつながりを強化し、グループLTV※を最大化するとともに、住まい・生活・食分野を中心により豊かな暮らしに貢献するサービスをグループ各社が連携して提供してまいります。
※ お客さまの生涯において当社グループが提供する価値の合計
6 企業変革に向けたDX戦略の推進
データ・デジタル技術とヒトを掛け合わせ、「サービス・業務プロセス」と「組織風土・マインド」を変革し続け、お客さまの利便性やサービスの向上などを通じて、グループの競争力を強化してまいります。
7 事業ポートフォリオマネジメントの高度化
事業管理単位・責任体制の再構築と、ROICを活用したポートフォリオマネジメントにより資本コストを意識した戦略的な経営資源配分を実施してまいります。
8 ROICツリーマネジメントの推進
ROICツリーを活用したマネジメントを導入し、グループ全従業員参加型で改善活動を推進してまいります。
また、ROICを構成要素に分解し、改善に寄与するドライバーを特定した上で、KPIと重点施策を定めて取り組みを実行してまいります。
9 人的資本経営の強化
「人財」への投資強化により、従業員エンゲージメントを向上し、企業価値を最大化するとともに、多様な人財が幸せに働くことができる環境を整備し、従業員を大切にする企業風土を醸成してまいります。