事業報告(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)
企業集団の現況に関する事項
事業の経過および成果
当期は「2026中期経営計画」の初年度として、「地方公共団体情報システムの標準化対応」、「次世代ソリューションの開発」、「事業基盤拡充」の3本の柱をベースとして事業を推進してまいりました。
「地方公共団体情報システムの標準化対応」
当社のコア事業である公共分野においては、地方公共団体情報システムの標準化対応(自治体システム標準化対応)を進めています。これまで延べ100数十団体にのぼるWebRings(当社行政システム)導入済みのお客様のシステム移行に向けた準備を進めてまいりましたが、システム導入段階における各種品質テストの結果、各種連携機能等、当社の品質基準を充足しない事象が発生したことにより、緊急の品質対策を行なっております。この影響で、標準化移行の作業スケジュールを見直ししており、一部の自治体においては稼働時期が後ろ倒しとなりますが、住民サービスへ影響をきたさぬよう安全・安心なシステムを確実にご提供してまいります。
「次世代ソリューションの開発」
自治体向け行政システム「WebRings」の次世代版となる「つながる」をコンセプトとしたシステム開発を進めています。標準化対応後、多くの自治体様に「WebRings」をご利用頂けるよう、AI活用を前提に、品質を最優先に、ユーザー様のニーズにきめ細かに対応し、多様化する行政事務、法改正等に機動的な対応が可能となるよう、各種連携機能を充実させることにより、開発中の次世代ソリューションとの地域DX化への支援を目指しております。また、株式会社三菱総合研究所と共同で地方部における高齢者層の移動の利便性向上を目的としたオンデマンド交通の実証実験の実施や、「地域共創ポータル」を活用した地域社会の課題を解決するソリューションの実装に向けた取り組みを行ってまいりました。
「事業基盤拡充」
事業基盤の拡充では、パートナーシップ推進の効果を発揮させ、アライアンス先も活用した顧客数の拡大・顧客基盤の強化に向けた取り組みを実施してまいりました。社内IT基盤の高度化を推進し、セキュリティリスクを低減する社内インフラの整備や、生成AIを活用した高品質・短期間を実現する開発環境の構築を進めてまいりました。また、標準化対応において発生した品質課題についても、現行、次世代の各システム開発における徹底した品質向上に向けたプロセス改革、体制強化を図ってまいります。
一方、これらの中計施策を強力に推進するために、2025年4月には当社の財産である人材を早期に育成し登用するべく、エンジニアの専門性の評価を主軸とする人事制度への改定を行いました。専門職を人材育成の柱とするほか、外部人材の登用・活用による当社事業戦略の推進、シニア人材の活用を進めてまいります。
なお、当社は2024年4月に東京都中央区日本橋蛎殻町に本社を移転しました。創立60周年を境に、歴代の東京本社と創業以来の中核拠点である横浜事業所に代わる、将来を見据えた当社の中核拠点をとしての新本社には、アイネスグループの本部機能を集約し、グループ経営の意思決定迅速化を図るとともに、中期経営計画のビジョンである「挑戦・進化し続ける企業」を体現し、経営基盤強化と企業価値の向上を目指してまいります。
当期の売上高は前期と概ね同水準の405億63百万円となりました。業種別連結売上高は下表のとおりです。公共分野につきましては、グループ会社におけるアウトソーシング事業の一部撤退に伴う減収はあったものの、標準化対応システムの導入による増収等により、198億73百万円(前期比7.4%増)となりました。
民間分野につきましては、保険業向けのシステム開発や運用案件の受注減および小売業向けシステム開発案件の減収等により206億89百万円(同6.2%減)となりました。
商品・サービス別では、標準化対応システムの導入によりシステム開発が増加し、大型BPO案件の減少などにより運用が減少およびグループ会社におけるアウトソーシング事業の一部撤退によりその他が減少しました。
損益面においては、主に前年度に計上したファシリティコストの反動減により、営業利益は35億36百万円(前期比22.9%増)、経常利益は36億8百万円(同32.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は24億36百万円(同35.7%増)となりました。
【業種別連結売上高】

(注)当期より、管理会計区分の変更に伴い、従来「金融」「産業」に区分していた売上高を、民間分野へ表示しました。前期についても同様に組替再表示しております。
対処すべき課題
① 当社グループの経営環境について
2025年度以降も当社を取り巻く国内ITサービス業界全体は堅調に拡大すると見込まれています。公共分野においては、「地方公共団体情報システムの標準化対応」が進展し堅調に推移するとともに、標準化対応後の自治体DXが本格化すると予測されています。また、民間分野においても、近年のDX投資需要は底堅く推移しており、ソフトウェア市場を中心に大規模なシステム開発計画が見込まれています。
② 当社グループの経営戦略について
当社グループは、「創造と和と挑戦をもって お客さまからの信頼をもとに未来をひらき、世界中のお客さまと感動と喜びを分かち合い、豊かで安全・安心な社会の創生に貢献する」という経営理念に基づき、事業活動を通じた社会課題解決と、ITテクノロジーを活用した新たな価値の創造に取り組んでいます。
2025年度は、「2026中期経営計画」の2年目にあたるところ、計画達成に向けて「住民サービスの安全・安心を最優先とした標準化計画の推進」、「次世代WebRingsの開発」、「AI活用による品質向上」、「人的資本投資」に注力してまいります。
【住民サービスの安全・安心を最優先とした標準化計画の推進】
地方自治体情報システム標準化方針に則り、当社の自治体向けソリューションWebRingsの標準化対応開発を進め、2025年度より本格的に標準化システムへの移行を進めていきます。標準化対応期間中の当社の移行支援団体総数は概ね変更なく、全国の拠点網を活用するとともに、プロジェクト体制の強化を図り、アライアンス先の企業とも連携することにより、住民サービスの安全・安心を最優先とした標準準拠システムへの移行支援を進めてまいります。
【次世代WebRingsの開発】
自治体システム標準化後を見据えた次世代WebRingsの開発を引き続き進めてまいります。自治体職員の事務負荷軽減に留まらず、自治体を中心とした民間事業者との連携、関連自治体・地域との連携、AIを活用した付加価値の高い機能を組み込むなど、多種多様な住民ニーズ、住民の安全・安心につながるソリューションの提供を目指します。
また、三菱総合研究所との協業関係を深化させ、シンクタンク×ITの実行力を発揮し、住民の課題解決・地域のデジタル化を推進する「地域共創DX」にも取り組んでまいります。
【AI活用による品質向上】
事業基盤拡充に向けた取り組みとして、エンジニア不足の課題を解決するよう、AIを活用した生産性向上・品質向上については当初計画より前倒しで取り組み、品質強化を推し進めてまいります。
AIによる品質分析・進捗課題抽出、コード生成機能を活用したプログラムバグ修正支援・テスト支援などにより、品質向上と生産性向上を図り、品質・顧客を最重視して取り組んでまいります。
【人的資本投資】
「2026中期経営計画」に基づく人的資本投資の戦略として、①自律型人材の育成・戦略的配置、②多様な人材の確保、③評価制度の見直しを推進しています。2025年度に改定したエンジニアの専門性を基軸とした人事制度を中心に、「AI×DX企業」をリードする人材の育成、リスキルに取り組んでまいります。
社員一人ひとりが輝き、持続的に成長し、活躍することのできる環境・企業風土を醸成し、さらなる成長企業として当社グループは、挑戦・進化してまいります。