事業報告(2019年6月1日から2020年5月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

(1) 事業の経過および成果

当連結会計年度(2019年6月1日から2020年5月31日まで)における世界経済は、全体として非常に緩やかながらも景気の拡大・回復が続いておりましたが、2020年1月以降、新型コロナウイルス感染症の発生により経済活動が一変、経済成長率は急落いたしました。

わが国経済も、消費税増税や大型台風の襲来などによる影響から景気後退にあったところ、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が加わり、大幅に悪化いたしました。

また、金融市場におきましても、新型コロナウイルス感染症の拡大により、新興国通貨の下落や株式市場の混乱など、大きな影響が生じました。

当社グループでは、人々の生活に不可欠な農園芸業、ひいては食料を支える根幹の事業者であるとの認識のもと、持続的な研究開発や生産活動と、グローバルな営業展開を行いました。特に、新型コロナウイルス感染症の拡大後は、在宅勤務や時差勤務の推進やウェブ会議の活用、直営店での一部営業自粛など、ステークホルダーの方々の感染防止を最大限図りつつ、必要な事業の継続に努めました。

このような状況のなか、当社グループの当連結会計年度における業績は、その他事業の造園緑花分野では、事業規模が引き続き拡大しましたが、国内卸売事業と小売事業は、猛暑や台風などの天候不順により前期比減収となりました。また、海外卸売事業では、ドル、ユーロの主要通貨に加え、新興国通貨の下落による円高により、売上高に対し約22億円のマイナス影響があったことなどから、前期比減収となりました。以上の結果、売上高は616億67百万円(前期比10億78百万円、1.7%減)となりました。また、営業利益は、販売費及び一般管理費は減少したものの減収と粗利益率の低下を受け、74億82百万円(前期比2億35百万円、3.1%減)となりました。経常利益は、80億70百万円(前期比2億60百万円、3.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は、資産売却益の減少などにより、60億94百万円(前期比7億62百万円、11.1%減)となりました。

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セグメント別の業績の概要

売上高 163 70 百万円
前期比 4 74 百万円
%減
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(単位:

事業内容

国内の種苗会社等への農園芸商材(野菜種子・花種子・球根・苗木・農園芸資材)の卸売

レタス「ブルラッシュ」

国内卸売事業は、猛暑や台風、暖冬などの天候不順の影響などから、販売が全般的に低調となり、前期比減収となりました。

品目別では、野菜種子は、ブロッコリー、レタスなどが増加しましたが、トウモロコシ、ニンジンなどが減少しました。花種子は、ジニアなどは増加しましたが、パンジーなどが減少しました。農園芸資材は、一部に台風災害による復興需要はありましたが、暖冬による被覆材等の秋冬需要の消失により、低調に推移しました。一方、営業利益は、粗利益率改善と経費減少により、前期比増益となりました。

これらの結果、売上高は163億70百万円(前期比4億74百万円、2.8%減)、営業利益は51億76百万円(前期比2億51百万円、5.1%増)となりました。

売上高 368 29 百万円
前期比 12 93 百万円
%減
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(単位:

事業内容

海外の種苗会社等への農園芸商材(野菜種子・花種子・苗木)の卸売

トルコギキョウ「アンバーダブル モヒート」

海外卸売事業は、ドル、ユーロの主要通貨に加え、新興国通貨の下落による円高の影響などから、前期比減収となりました。営業利益も、減収を受け、前期比減益となりました。

地域別の状況をみますと、アジアでは、ヒマワリ、ホウレンソウなどは増加しましたが、販売時期の変更からニンジンなどが減少したほか、アジア通貨下落の影響もあり、前期比減収となりました。北中米では、ヒマワリ、トルコギキョウなど、花種子は増加しましたが、ブロッコリー、メロンなどの野菜種子が減少し、全体では前期比減収となりました。欧州・中近東では、ブロッコリー、カボチャ、トマト、トルコギキョウなどが大きく伸び、円高の影響を打ち返し、前期比増収となりました。南米につきましては、カボチャ、ブロッコリー、ペッパーなどの販売が伸び、現地通貨ベースでは前期比増収となりましたが、現地通貨安の影響を大きく受け、円ベースでは大幅な減収となりました。

これらの結果、売上高は368億29百万円(前期比12億93百万円、3.4%減)、営業利益は111億19百万円(前期比4億94百万円、4.3%減)となりました。

売上高 55 60 百万円
前期比 3 98 百万円
%減
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(単位:

事業内容

ホームセンター・通信販売・直営ガーデンセンターを通じた園芸愛好家への園芸商材(野菜種子・花種子・球根・苗木・園芸資材)の販売

ホームガーデン分野は、収益性の向上を目指し種子の販売提案を積極的に展開した結果、野菜種子、花種子とも売上が増加しました。一方、猛暑や台風などの天候不順により、苗木や園芸資材の販売が不振となり、全体の売上高は前期比減収となりました。

通信販売と直営店ガーデンセンター横浜の直売分野では、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、新規顧客獲得などの巣ごもり需要の取り込みはあったものの、直営店において春の園芸シーズン最盛期に営業を一部自粛したこと、加えて台風などの天候不順もあったことなどから、売上高は前期比減収となりました。

営業損益は、粗利益率改善と経費削減により、赤字幅が縮小しました。

これらの結果、売上高は55億60百万円(前期比3億98百万円、6.7%減)、営業利益は6百万円改善し、10百万円の損失(前期は16百万円の営業損失)となりました。

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事業内容

造園工事・管理・その他

造園緑花分野は、前期比、大幅な増収増益となりました。これは、新型コロナウイルス感染防止のため、工事や維持管理業務の作業抑制、指定管理先の公園や運動場施設の一部閉鎖などの影響を受けましたが、指定管理先が増加したことや、民間・公共工事及び維持管理業務も順調に推移したことなどによるものです。

これらの結果、売上高は29億6百万円(前期比10億88百万円、59.9%増)、営業利益は前期比1億30百万円改善し、1億3百万円(前期は26百万円の営業損失)となりました。

なお、造園緑花分野は、2018年11月より、サカタのタネ グリーンサービス株式会社が行っております。

次に当社グループの研究・開発についてご報告いたします。

主力商品である野菜と花の品種開発は研究本部、農園芸資材の開発はソリューション統括部が担当し、全世界の市場に向けた品種の育成、農園芸資材の開発を行っております。研究・開発拠点として、日本国内では静岡県掛川市をはじめ5か所に、海外では北米、南米、欧州、アジア圏など、13か所に農場を配しております。

当社の理念である「心と体の栄養」を世界の人々に届けることを目標に、サカタオリジナルの価値ある商品開発を進めてまいります。

当連結会計年度の主な研究内容および成果は、次のとおりであります。

【野菜】

当連結会計年度は、一般社団法人日本種苗協会主催の第70回全日本野菜品種審査会におきまして、コマツナ「C9-055」、ネギ「K9-046」、レタス「M8-053」が1等特別賞を受賞いたしました。その中から特に優秀な品種として、コマツナ「C9-055」およびネギ「K9-046」が農林水産大臣賞も受賞し、国内外における高いシェア獲得の原動力でもある研究開発力が評価されました。

新品種におきましては、耐病性に優れかつ食味が極上のカブ「二刀(にとう)」、高温期でも安定した果実サイズで裂果に強く、安定した品質を持つミニトマト「キャロルムーン」、肥大力、結球力に優れ形よく高冷地の初夏どりに適したレタス「ペネトレイト」、収量性、食味、作業性に優れるバイカラーのスイートコーン「ゆめのコーンビッグ85」、収量性、品質、栽培特性および収穫・作業調整に優れるコマツナ「さくらぎ」、食味に優れ収量性、秀品率の高い黄化葉巻病耐病性の大玉トマト「かれん」、収量性が高く耐病性、品質の優れたチンゲンサイ「頼光」、低温伸長性があり萎黄病に強いことから夏冬両方の課題に貢献するミズナ「極早生水天」、包葉性、生育の揃いに優れ省力化に貢献するカリフラワー「オーナメントホワイト」など、オリジナル性を重視した品種を数多く発表いたしました。

海外市場におきましては、日本国内で開発された品種のみならず、海外の各農場で育成された品種が現地市場でご好評を頂き、販売増加に貢献しております。米国ではバンガード社からレタスプログラムを取得し、北米市場の育種強化に加えて、日米伯の3拠点の連携によりグローバルでの品種育成を加速させてまいります。

トマト「かれん」

コマツナ「さくらぎ」

【花】

当連結会計年度は、農林水産省および公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会主催の令和元年度 民間部門農林水産研究開発功労者表彰において、当社と千葉県 佐瀬農園が日持ち性と輸送性に優れたトルコギキョウの品種の開発により農林水産大臣賞および園芸研究功労賞を受賞いたしました。

また、一般社団法人日本種苗協会主催の第65回全日本花卉品種審査会ではビオラ「ピエナ ディープマリーナ」、トルコギキョウ「M7-118」が、続く第66回審査会ではペチュニア「バカラiQ ストロベリー」が1等特別賞を受賞いたしました。

新品種におきましては、世界初、八重咲の無花粉タイプトルコギキョウの開発をはじめ、当社の高度な育種技術を駆使し、ペチュニアとカリブラコアの属間雑種「ビューティカル」とベゴニア種間雑種「バイキング」を新シリーズとして発表することが出来ました。さらに母の日の贈答用で新たな需要を喚起するコンパクトなポットカーネーション「サンセットブライト」「カスタード」の他、トルコギキョウ8品種、サンパチェンス4品種、ペチュニア4品種、ハボタン、カンパニュラ、アネモネ、キンギョソウで新品種を発表いたしました。

「バイキング」

「ビューティカル」

【ソリューション】

当社では、2018年7月より、株式会社ワビットと業務提携し、農業用環境制御システム「アルスプラウト」の普及活動をすすめております。

当連結会計年度は、農業情報学会が主催する「農業イノベーション大賞2020」におきましてクラウド連携型DIY環境制御システム「アルスプラウト」の普及が評価され、優秀賞(新技術分野)を受賞いたしました。

従来の環境制御システム※1は、大規模ハウス専用のものが主流であり、日本の農業で多く用いられる中小規模ハウスでは、初期に発生するコストが高く、またトラブル発生時のメンテナンスが難しいなど、課題がありました。一方、「アルスプラウト」は、自分で組み立てをおこなうキットで提供されるDIY型であり、購入コスト、設置コストを抑えることができ、また、メンテナンスも比較的容易に行えます。農業人口減少に伴う人手不足解消やスマート農業の普及が拡大するよう、今後も商品の開発と推進を行っております。

この他にも、全国で着々と普及が進んでいる「高機能液肥シリーズ」、固化培土「プラントプラグ」、『Seedfun.』シリーズ「はじめてさんのかんたんタネまきキット」※2など、生産現場における様々な課題解決を目的としたサカタオリジナル商品の提案をすすめております。

※1ハウス内の温度・湿度・CO2・日射などのデータをモニタリングし、ハウス内環境を最適に制御するシステム

※2「TOPICS」47ページ参照

「制御ノード 現地事例」

「内気象ノード 現地事例」

「高機能液肥シリーズ」

「プラントプラグ」

(2) 設備投資の状況

当連結会計年度に実施いたしました設備投資の総額は、33億34百万円であります。

主な内容は、当社の次期以降に完成が予定されている基幹システム構築への投資(7億67百万円)となります。

(3) 資金調達の状況

当社は、運転資金、借入金の返済などに必要な資金は自己資金の充当および金融機関からの借入により調達しております。

また、一部の子会社におきましては、金融機関から運転資金などの借入を行っております。

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対処すべき課題

国内の農業分野は、農業人口の減少や高齢化に歯止めがかからず、耕作放棄地の再生も思うように進んでおりません。日本の農業が競争力を取り戻し、持続的成長をとげるためには、生産性の向上、効率化が必須課題となります。このため、栽培における環境制御システムの導入や、AI(人工知能)、ICT(情報通信技術)の活用の可能性が注目されております。

また世界的には、農薬や穀物種子を含むアグロケミカル産業の多国籍大手による業界再編の動きも見られる一方、国際的な枠組みにおいては持続可能な開発に向け、食料の安定確保や栄養の改善が重要課題と位置付けられており、各企業にも貢献が求められております。

これらを実現するためには、付加価値の高い種苗の安定供給がますます重要となっており、種子を提供する種苗会社の社会的な役割がこれまで以上に高まりつつあります。

今後、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大ペースや終息への見通しが不透明であり、各国景気や消費動向へのインパクトが懸念されております。このような中、人々に心の栄養をもたらす花、身体の栄養をもたらす野菜へのニーズはむしろ高まっており、その種苗を提供する当社は、より一層グローバルに重要な役割を担っていると言えます。

当社グループではこうした状況の下、下記に掲げた課題に取り組みながら、持続的な研究開発活動とグローバルな営業展開をさらに推し進めてまいります。また、新型コロナウイルス感染症の拡大により起こるであろう生活様式や産業構造、事業環境の変化をとらえ、柔軟に対応することによって、より高い収益力と健全な財務体質を兼ね備えた種苗業界のリーディングカンパニーを目指してまいります。

①高収益ビジネスモデルの確立

生産者が安心して栽培を実現し、高い収益の確保につなげられるよう、当社では高品質で、オリジナル性の高い種苗を継続的に創出する研究体制の構築を行っております。

また、新たにトップシェアを狙う戦略品目の開発・拡販に努め、経営資源の重点戦略品目への集中とアジアを中心とした新興国市場における成長機会の取り込みによる高収益体制を確立いたします。

②各地域における健全な収益構造の構築と重点戦略の推進

成長市場における市場拡大、成熟市場における高収益モデルの確立を行うことによって、アジア・北米・南米・欧州アフリカの各地域における健全な収益構造を確立いたします。また、成熟市場においては戦略品目におけるシェアの拡大、新興市場においては野菜や花の消費需要喚起と地域栽培環境に応じた商品の開発等、具体的な重点戦略を立案、実行いたします。

③安定供給と効率化を実現するサプライチェーンインフラの整備

種子の安定供給を実現する生産体制・技術・機能を強化し、効率的なグローバルサプライチェーンマネジメント体制の実現に向けた仕組みづくりを行い、コストと在庫の削減を目指します。

④グローバルカンパニー実現に向けた人材育成、組織、マネジメント体制の構築

日本国籍のグローバルカンパニー実現に向けた人的資源の管理体制の構築や、経営体制の整備とグループマネジメントの高度化をさらに進めます。

⑤経営の効率化を実現するグローバルIT基盤の整備

情報系、会計、サプライチェーン管理のシステムを再整備し、グローバルに最適な事業管理、経営判断を支援するITシステム基盤を構築します。

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連結計算書類