事業報告2020年1月1日から2020年12月31日まで
サッポログループ(企業集団)の現況

事業の経過及び成果
当期において、サッポログループは新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、主に業務用ビール売上、ビヤホール、カフェチェーンを始めとした外食店舗売上、自動販売機における飲料売上が大きく減少しました。
一方、ビールでは「サッポロ生ビール黒ラベル」「ヱビスビール」の缶商品売上数量が前期を上回って推移し、新ジャンルでは2020年2月に発売した「サッポロ GOLD STAR」が当初の販売計画を大幅に上回るなど、家庭用商品は好調に推移しました。
また、生活環境の変化や健康意識の高まりを背景にレモン商品の需要が高まり、「ポッカレモン100」「キレートレモン」がともに過去最高出荷を記録しました。
上記の結果、売上収益、事業利益は前期と比較して減収減益となりましたが、主力ブランドの強化に向けた取り組みについては、一定の成果を残すことができました。
なお、営業利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益は、早期退職優遇制度などの実施に伴う一時費用やポッカサッポロフード&ビバレッジ社で計上した固定資産の減損損失により、多額の損失を計上しました。

事業セグメント別の概況
酒類事業



当期の概況
日本国内のビール類総需要は、前期比91%に留まったと推定されます。
ビールでは、業務用ビールの売上数量が減少しましたが、主力の「サッポロ生ビール黒ラベル」の缶製品の売上数量は前期比106%と、好調に推移しました。新ジャンルでは、2020年2月に発売した新商品「サッポロ GOLD STAR」が好評を博し、新ジャンル合計の売上数量は前期比119%となりました。
以上の結果、ビール類合計の売上数量は前期比92%となりました。RTD(※1)では、「男梅サワー」が順調に推移しましたが、主力の「サッポロチューハイ99.99<フォーナイン>」が伸び悩んだことなどから、売上収益は前期を下回りました。和酒では、甲乙混和芋焼酎売上No.1(※2)の「こくいも」、「濃いめのレモンサワーの素」が好調に推移し、売上収益は前期を上回りました。
ベトナムでは、アルコールに対する規制強化や、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受ける中、持続的に利益を創出できる販売体制の確立に取り組みました。
北米のビール類総需要は、アメリカ、カナダともに前期を若干下回ったと推定されます。海外ブランドビールでは、家庭用比率の高いスリーマン社の缶製品が好調に推移し、売上数量は前期を上回りました。サッポロブランドビールでは、新型コロナウイルスの影響を受けた業務用市場の停滞により、売上数量は前期を下回りました。
外食事業では、緊急事態宣言の解除後もリモートワークや新しい生活様式の推進などを背景に来客数が思うように回復せず、引き続き厳しい経営環境が続きました。不採算店舗の閉店や店舗賃料の減額交渉など、徹底したコスト削減にも取り組みましたが、前期と比較して大幅な減収減益となりました。なお、12月末時点の国内店舗数は173店舗(前期末比22店舗減)となりました。
以上の結果、酒類事業の売上収益は2,854億円(前期比448億円、13.6%減)となり、事業利益は24億円(前期比62億円、72.2%減)、営業損失は49億円(前期は77億円の利益)となりました。なお、当期より「その他事業」に区分していた物流事業を「酒類事業」に区分いたします。これに伴い、前期比較につきましては、前年数値を変更後セグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
※1 RTD : Ready To Drinkの略。購入後そのまま飲める缶チューハイなどのアルコール飲料
※2 インテージSRI 甲乙混和芋焼酎市場2019年2月~2020年11月累計販売金額全国SM/CVS/酒DSの合計
食品飲料事業



当期の概況
日本国内の飲料総需要は、前期比93%に留まったと推定されます。
国内飲料では、健康意識の高まりを背景に「キレートレモン」が好調に推移しましたが、自動販売機における売上数量の減少をカバーするには至らず、飲料合計の売上数量は前期を下回りました。
国内食品では、巣ごもり需要によって箱入り・カップ入り商品を中心にスープが伸長し、売上数量は前期を上回りました。レモン食品では「ポッカレモン100」やカクテルの材料が好調に推移し、売上数量は前期を大きく上回りました。プランツミルクでは、豆乳ヨーグルトが貢献し、売上数量は前期を上回りました。
カフェチェーン「カフェ・ド・クリエ」を展開するポッカクリエイト社は、緊急事態宣言発出期間中、都市部を中心に臨時休業や営業短縮を余儀なくされたため、売上収益は前期を下回りました。
以上の結果、食品飲料事業の売上収益は1,259億円(前期比110億円、8.0%減)となり事業損失は26億円(前期は5億円の損失)、営業損失は169億円(前期は12億円の損失)となりました。
不動産事業



当期の概況
首都圏のオフィス賃貸市場では、稼働率及び平均賃料水準は下降トレンドにあります。そのような中、不動産事業では、収益の柱である「恵比寿ガーデンプレイスタワー」をはじめ、首都圏を中心に保有する各物件が高稼働率を維持し、オフィスの賃料水準も高水準を維持しています。一方で、商業施設に関する売上収益は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、減少しました。
また、収益力のさらなる向上に向けて、長期的な視点から物件ポートフォリオの戦略的な組替えを継続し、恵比寿エリアでの賃貸物件取得と価値向上、私募ファンドへのエクイティ投資など成長投資にも取り組みました。
以上の結果、不動産事業の売上収益は233億円(前期比14億円、5.8%減)、事業利益は109億円(前期比1億円、1.1%増)、営業利益は119億円(前期比8億円、6.5%減)となりました。
対処すべき課題
(1)環境変化
世界的な新型コロナウイルス感染症拡大により、先行きが見通しにくい状況です。
国内では、わたしたちの意識や行動に大きな変化が生じ、外出自粛やテレワークの普及による「家族と過ごす時間」や「自分の時間」の増加により、価値観の多様化が一層進みました。また、様々な行動制限が続く中、「普通の日常に戻りたい」という気持ちが累積しており、今後ワクチン接種が進むことで、その反動としての消費拡大が見込まれます。
(2)サッポログループへの影響と機会
新型コロナウイルス禍では、特に緊急事態宣言などの影響により「銀座ライオン」「サッポロビール園」などのビヤホールをはじめ、カフェチェーンといった外食事業への影響が出ています。
一方で、巣ごもり需要の拡大や健康意識の高まりにより、家庭内での酒類・食品飲料や健康関連商品の需要は増加しており、これらの変化を的確に察知し、スピーディに対応することでグループ成長のチャンスにつなげて参ります。
(3)「グループ経営計画2024」への影響
昨年よりスタートした中期経営計画「グループ経営計画2024」は、初年度に新型コロナウイルス禍に見舞われ大きな影響を受けました。
しかし、その中で掲げた成長戦略と事業構造改革の具現化が企業価値向上に繋がることに変わりはありません。経営環境が大きく変化する中、2024年のゴール像は維持しつつ、変化に対して適切に、かつスピーディに対応し続けることにより、中期経営計画達成を目指して参ります。
(4)「グループ経営計画2024」
基本方針
本業集中と強靭化
・ビール事業への経営資源集中
・低収益事業の縮小・撤退と、食をはじめとする成長分野へのシフト
グローバル展開の加速
・海外事業を事業会社に全て移管、一貫したブランドの世界戦略を展開
・北米とアジアパシフィックを中心に収益力強化と共に成長を加速
・グローバル人財の育成
シンプルでコンパクトな企業構造の確立
・小さい本社・わかりやすい組織に再編、BPR・DX(※)の推進
・サッポロホールディングス社は、ガバナンス・事業会社支援・経営資源配分機能に特化
・事業会社に事業推進の機能全てを移管し、機動力を発揮
※BPR=「ビジネスプロセス・リエンジニアリング」の略。既存の組織や制度を抜本的に見直し、業務プロセスを再設計すること。
DX= 「デジタルトランスフォーメーション」の略。IT技術を活用し、ビジネスモデルそのものを変えること。
サステナビリティ経営の推進
・良質原料を自ら作り上げる仕組みなどをはじめとした、社会的価値と経済的価値の両立
・恵比寿、札幌、銀座というゆかりある地域のまちづくり推進
・時代の要請に即した経営の透明性と公正性の進化
財務目標・財務方針・株主還元方針

(5)サッポログループの主要事業での取り組み課題

【国内】「ビール強化」を最優先で継続
●ビール類 :
・ビールでは「サッポロ生ビール黒ラベル」の継続成長と「ヱビスビール」の再成長を、新ジャンルでは「サッポロ GOLD STAR」「サッポロ 麦とホップ」によるおいしさツートップ戦略の推進
●RTD・RTS(※) :
・業務用と家庭用との連動により「濃いめのレモンサワー」「男梅サワー」関連商品の成長を加速
※RTS : Ready To Serveの略。氷を入れて注ぐだけ、又は水や炭酸水で割って飲むアルコール飲料
【海外】「Sapporo Premium Beer」等のプレミアムブランドの浸透とエリア別戦略の推進
●アメリカ :「Anchor」ブランドのパッケージリニューアルや新商品発売による収益構造改善
●カナダ :スリーマン社でのビール、RTDの強化及びコスト構造改革による増収増益継続
【外食】徹底したコスト圧縮と収益力強化に向けた構造改革
●不採算店舗の閉鎖や店舗賃料の減額交渉の実施
●効率的な働き方、適正人員による人件費の抑制
●収益効率の高い新業態の開発・展開を加速

レモン事業に再注力し需要を創造
●国内飲料
・国産原料を用いた無糖茶「TOCHIとCRAFT」シリーズ等、強みのあるブランドに注力
●レモン食品・飲料
・レモンの活用シーン提案や健康価値発信による「ポッカレモン100」「キレートレモン」のさらなる伸長
●加工食品
・スープ以外の新たな食のスタイルの提案
●プランツミルク
・豆乳ヨーグルト「SOYBIO」の認知向上とお客様接点の拡大

恵比寿・札幌・銀座という当社にゆかりある地域でのまちづくりを進めるとともに、新たな戦略投資にも挑戦
●不動産賃貸事業
・ハード・ソフト両面における競争力強化の継続と保有物件の稼働率及び賃料水準の維持向上
・「恵比寿ガーデンプレイス」「サッポロファクトリー」の利便性向上と新たな機能・付加価値の提供による、収益の維持向上とまち全体のブランド価値向上
・保有物件ポートフォリオの戦略的な組替え
●新規事業領域での収益獲得
・私募ファンドへのエクイティ投資など、新たな事業領域での収益獲得




(ご参考)コーポレートガバナンス・ダイジェスト
機関設計
当社は、1998年11月には「指名委員会」及び「報酬委員会」を任意で設置し、取締役の人事・処遇に係る運営の透明性を高め、経営機構の健全性の維持、向上に取り組んでいます。加えて、2015年12月には「社外取締役委員会」を設置し、当社及びサッポログループの経営戦略、並びにコーポレートガバナンスに関する事項などについて、独立社外取締役の情報交換、認識共有の強化を図っています。
また、当社は、2020年3月に監査等委員会設置会社に移行し、取締役会における独立社外取締役の比率を半数まで高めるなどコーポレートガバナンスを一層充実させることに加え、機動的な意思決定を可能とすることを通じて、さらなる企業価値の向上を図っています。
取締役会

指名委員会及び報酬委員会
当社は、取締役の人事・処遇に係る運営の透明性を高め、経営機構の健全性を維持する目的から、取締役会の諮問機関として「指名委員会」と「報酬委員会」を設置しています。両委員会のメンバーは、すべての独立社外取締役(監査等委員である取締役を除く)及び取締役社長の計4名(指名委員会における監査等委員候補者の推薦に際しては、常勤監査等委員をメンバーに加える)で構成し、委員長は独立社外取締役より選出することとしています。なお、監査等委員会設置に伴い、両委員会に選定監査等委員が陪席しています。

コーポレートガバナンス改革の歴史
