事業報告(2019年1月1日から2019年12月31日まで)
企業集団の現況に関する事項
1.事業の経過及びその成果
当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境や設備投資などの改善により緩やかな回復基調が続いておりますが、一方で米中問題や中東情勢などの不確実性により、引き続き楽観視できない状況となっております。
不動産業界におけるオフィス賃貸市場は、底堅い需要を背景に引き続き需給がひっ迫しており、都心部を中心として空室率は低い水準を維持しております。
こうした環境のもと、当社グループは、2018年度を初年度とする中期経営計画に基づき、不動産賃貸事業の更なる増強をはかるとともに、開発事業及びバリューアッド事業を積極的に推進した結果、2019年度におきましては、中期経営計画の最終年度にあたる2020年度の経常利益などの目標を1年前倒しで概ね達成いたしました。
その結果、当連結会計年度の連結業績は、営業収益は357,272百万円(前期比69,759百万円、24.2%増)、営業利益88,353百万円(前期比12,788百万円、16.9%増)、経常利益84,645百万円(前期比12,114百万円、16.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益58,805百万円(前期比9,290百万円、18.7%増)となりました。
営業収益につきましては、前連結会計年度及び当連結会計年度に竣工、取得した物件による不動産賃貸収入の増加に加え、販売用不動産の売上が増加したことにより、増収となりました。営業利益につきましては、物件の竣工、取得による不動産賃貸収入の増加及び販売用不動産の売上総利益が増加したことにより、増益となりました。経常利益につきましては、支払利息の増加等により営業外費用が増加いたしましたが、営業利益の増加があったこと等により、増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、税金費用が前連結会計年度に比べ増加したものの、経常利益の増加があったこと等により、増益となりました。
事業別の状況は、次の通りであります。
なお、当連結会計年度の期首をみなし売却日として、当社の連結子会社である株式会社アヴァンティスタッフの当社保有株式の全部を譲渡したことに伴い、同社は当社の連結の範囲から除外されたため、当連結会計年度より「人材関連事業」を報告セグメントから除外しております。
事業区分別の概況
(単位:)
<主な事業内容>
不動産賃貸業務、不動産開発業務、アセットマネジメント業務等
当社グループの中核事業は、東京23区を中心に、約250件(販売用不動産除く)の賃貸物件・賃貸可能面積約138万㎡を活用した不動産賃貸事業であります。賃貸ポートフォリオの増強及び質的向上の観点から、立地を厳選した新規物件取得や建替の推進、開発物件の組み入れを継続するとともに、アセットマネジメントの強化により、更なる不動産価値の向上に取り組んでおります。また、高付加価値を創出して収益化する不動産バリューアッド事業の軌道化へ向けての取り組みも強化しております。
当連結会計年度における建替の状況につきましては、ヒューリック札幌NORTH33ビル(2021年2月竣工予定)、ヒューリック札幌ビル(2023年10月竣工予定)及びヒューリック福岡ビル(2024年12月竣工予定)の建替計画が順調に進行しております。
当連結会計年度の新規物件(固定資産)の取得につきましては、ヒューリック芝公園大門通ビル(東京都港区)、テクノポートカマタセンタービル(東京都大田区)、ヒューリック銀座七丁目昭和通ビル(東京都中央区)、モリンダビルディング(東京都新宿区)、神宮前タワービルディング(東京都渋谷区)、銀座ファーストビル(東京都中央区)、グランドニッコー東京 台場(東京都港区)、第2丸高ビル(東京都中央区)、ヒューリック府中タワー(東京都府中市)、府中データセンター(東京都府中市)、アイオス銀座(東京都中央区)、近畿建物銀座ビル(東京都中央区)及び渋谷 パルコ・ヒューリックビル(東京都渋谷区)などを取得いたしました。
開発事業(固定資産)につきましては、(仮称)宇田川町32開発計画(東京都渋谷区)、(仮称)新宿3-17開発計画(東京都新宿区)、(仮称)銀座6丁目開発計画(東京都中央区)、(仮称)赤坂二丁目開発計画(東京都港区)、(仮称)銀座8丁目開発計画(東京都中央区)及び(仮称)銀座6丁目並木通り開発計画(東京都中央区)などが順調に進行しております。
PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)事業につきましては、(仮称)立誠小跡地開発計画(京都市中京区)、(仮称)両国リバーセンター開発計画(東京都墨田区)及び(仮称)扇町医誠会病院開発計画(大阪市北区)などが順調に進行しております。
販売用不動産につきましては、MG東扇島ロジスティクスセンター(川崎市川崎区)などを取得し、本牧フロント(横浜市中区)、ヒルトン東京お台場(東京都港区)、ヒューリック銀座7丁目ビル(東京都中央区)(一部)、リバーサイド品川港南ビル(東京都品川区)、ヒューリック豊洲プライムスクエア(東京都江東区)、ヒューリック錦町ビル(東京都千代田区)及びMG東扇島ロジスティクスセンター(川崎市川崎区)などを売却しております。
このように、当セグメントにおける事業は順調に進行しており、前連結会計年度及び当連結会計年度に竣工、取得した物件による不動産賃貸収入の増加に加え、販売用不動産の売却も順調に推移したことなどから、当連結会計年度の営業収益は335,127百万円(前期比78,057百万円、30.3%増)、営業利益は95,711百万円(前期比14,646百万円、18.0%増)となりました。
(単位:)
<主な事業内容>
保険代理店業務
保険事業におきましては、連結子会社であるヒューリック保険サービス株式会社が、国内・外資系の保険会社と代理店契約を結んでおり、法人から個人まで多彩な保険商品を販売しております。保険業界の事業環境は引き続き厳しい環境にありますが、既存損保代理店の営業権取得を重点戦略として、法人取引を中心に営業展開をしております。
この結果、当セグメントにおける営業収益は2,989百万円(前期比△1,067百万円、26.3%減)、営業利益は619百万円(前期比△977百万円、61.2%減)となりました。
(単位:)
<主な事業内容>
建築工事請負業務、設計・工事監理業務、ホテル運営業務等
その他におきましては、連結子会社であるヒューリックビルド株式会社が、当社保有ビル等の営繕工事、テナント退去時の原状回復工事、新規入居時の内装工事を中心に受注実績を積み上げておりますほか、連結子会社である日本ビューホテル株式会社、ヒューリックホテルマネジメント株式会社及びヒューリックふふ株式会社等がホテル、高級温泉旅館の運営をおこなっております。
この結果、営業収益は24,725百万円(前期比11,797百万円、91.2%増)、営業利益は596百万円(前期比240百万円、67.3%増)となりました。
2.対処すべき課題
当社グループは、2018年度を初年度とする中期経営計画に基づき、不動産賃貸事業の更なる増強をはかるとともに、開発事業及びバリューアッド事業の軌道化を実現した結果、2019年度におきましては、中期経営計画の最終年度にあたる2020年度の経常利益などの目標を1年前倒しで概ね達成いたしました。
2020年度におきましては、更なる成長戦略を志向し、2020年度を初年度とする新中長期経営計画を策定し、ビジネスモデルの進化と賃貸ポートフォリオの再構築、開発事業及びバリューアッド事業の強靭化、独自性のある新規事業領域の創造とグループ力の向上、経営基盤の強化とリスク管理の徹底、社会と企業の共創・共生をはかるサステナビリティを重視したマネジメントを実践のうえ、「変革」と「スピード」をベースに、環境変化に柔軟に対応した進化を通じて、持続的な企業価値向上を実現する企業グループへと進化してまいります。
そのために、主に以下の戦略に取り組んでまいります。
① 不動産賃貸事業の強化
当社グループの中核事業は、東京23区の駅近を中心に保有・管理する賃貸物件を活用した不動産賃貸事業であり、今後はマーケットニーズに即した用途バランスと競争優位性を有する賃貸ポートフォリオの再構築をおこなってまいります。
また、賃貸事業をベースとした「安定性」と「効率性」を両立したビジネスモデルの進化をはかってまいります。
当社グループの所有物件は、駅近の好立地のビルが大宗を占めており、かつメインテナントがみずほフィナンシャルグループで安定していることもあって、マーケットより常に低い空室率を維持し、安定的な収益を確保しております。建替・開発物件につきましては、2019年度は6物件が竣工し、2020年度についても9物件が竣工する計画となっており、更なる営業収益の増強をはかることが可能となっております。
また、当社はマーケットより常に低い空室率を維持しておりますが、CREなど戦略的ソーシングによる着実なポートフォリオの拡充に合わせて、テナントリーシング力を更に強化し、不動産賃貸事業の底支えをはかっております。
② 開発事業及びバリューアッド事業の強靭化
中長期パイプラインの整備を基にした耐震・省エネに優れた開発事業を推進することによって、優良な賃貸ポートフォリオの増強及び開発利益の享受をはかってまいります。
また、バリューアッド事業については、多様なバリューアップ手法に基づく取り組みを強化することによって、安定した売却利益の創出及び成長ドライバーとしての体制整備をはかってまいります。
③ 独自性のある新規事業領域の創造とグループ力の向上
3Kビジネス(高齢者・観光・環境ビジネス)の一つとして取り組んでいる高齢者ビジネスにおきましては、引き続き多数の高齢者施設を開発、取得及び保有しております。
観光ビジネスにおきましては、2019年9月に日本ビューホテル株式会社を完全子会社化し、浅草ビューホテルを含めた不動産及び運営事業をグループ化するとともに、自社運営ホテルの「THE GATE HOTEL」シリーズや、高級温泉旅館「ふふ」シリーズの開発にも引き続き積極的に取り組むことで、観光ビジネス領域での事業拡大をはかっております。
環境ビジネスにおきましては、高い耐震性・CO2排出量の削減・100年耐久を実現する環境配慮・BCP対応ビルの開発、耐火木造建築の活用のほか、2025年に「RE100」を達成するべく、再生可能エネルギー設備への投資をおこない、当社グループ企業が入居するビルへの電力供給に取り組む予定です。
今後も、3Kビジネスを拡大するとともに、新たな価値創造を提供する新規事業を開拓・軌道化し、グループ連携を活かした収益機会の獲得及びシナジー追求によるグループ総合力の向上をはかってまいります。また、新規事業の軌道化及びグループ力向上の早期実現の手段として、M&Aやアライアンス等を積極的に活用してまいります。
④ 経営基盤の強化とサステナビリティ経営の実践
従来からの事業展開に加えて、「内部統制」、「リスク管理」、「コンプライアンス」、「開示統制」についても、引き続き徹底をはかってまいります。特にリスク管理に関しては、「事業継続基本計画」(BCP:Business Continuity Plan)を制定しており、定期的に訓練を実施する等、有事対応力の向上を更に進めてまいります。
また、「コーポレートガバナンス・コード」の各原則を踏まえ、当社の持続的成長・企業価値向上に向けての最適なコーポレートガバナンスを実現するための枠組みとして、「コーポレートガバナンス・ガイドライン」を制定しております。ガイドラインを基に健全な企業統治の下で株主の権利に留意し、永続的な企業価値の向上をめざしてまいります。
そのほか、サステナビリティの考え方を重視したバランス経営を実践すべく、環境に配慮したビジネス展開、地域社会をはじめ各ステークホルダーとの関係強化、強固なガバナンス体制の構築など、バランスのとれたESG経営を基に社会的ニーズに対応した価値創造を進めており、更に、日本将棋連盟及び障がい者スポーツ団体への支援など、社会貢献活動も強化しております。併せて、人材育成を軸として、健康経営・働き方改革等の取り組み、女性活躍推進法に基づく行動計画策定など、女性や高齢者も等しく能力を発揮できる職場とし、一人当たり生産性の高い企業、人が育つ企業をめざしてまいります。
<ご参考>新中長期経営計画(2020~2029)
ヒューリックグループはこのたび、新長期経営計画(2020-2029)及び新中期経営計画(2020-2022)を策定いたしました。
本計画は、不動産賃貸事業を核としたビジネスモデルを発展進化させ、永続的な企業価値の更なる増大を目指していくものです。
本計画の位置づけ
・前長期計画の“経常利益目標850億円”を4年前倒しでほぼ達成(前中期計画は1年前倒し)
・新長期計画(2020-2029)を策定(フェーズⅠとして、新中期計画(2020-2022)をスタート)



基本戦略の概要
1. ビジネスモデルの進化と賃貸ポートフォリオの再構築
・賃貸事業をベースとした「安定性」と「効率性」を両立したビジネスモデルの進化
・マーケットニーズに即した用途バランスと競争優位性を有する賃貸ポートフォリオの再構築
・低金利下での含み益の活用による一部実現化を通じたポートフォリオの組替及び長期的な賃貸事業比率の向上
2. 開発事業及びバリューアッド(VA)事業の強靭化
・中長期パイプラインの整備を基にした開発事業の推進による賃貸ポートフォリオの増強及び開発利益の享受
・耐震、省エネに優れた開発・建替の加速による、優良アセットの積み上げ
・多様なバリューアップ手法に基づく大型VA案件への取組み強化による、安定した売却益の創出及び成長ドライバーとしての体制整備
3. 独自性のある新規事業領域の創造とグループ力の向上
・新たな価値創造を提供する新規事業の開拓・軌道化
・グループ連携を活かした収益機会の獲得及びシナジー追求によるグループ総合力の向上
・新規事業の軌道化及びグループ力向上の早期実現の手段として、M&A・アライアンス等の積極活用
4. 経営基盤の強化とリスク管理の徹底
・強固な財務基盤の維持と多様な資金調達手段の確保
・効率的運営が可能な機動性のある組織体制の維持と多様な人的リソースを活用した生産性向上
・事業の多様化に対するリスク管理及びマーケット変化時におけるB/Sコントロールの徹底
5. 社会と企業の共創・共生を図るサステナビリティを重視したマネジメントの実践
・ESGを意識した事業運営と価値創造による社会課題の解決及び社会価値の創造と企業成長が連動する取組みの推進