事業報告(2021年1月1日から2021年12月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

1.事業の経過及びその成果

当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルスワクチンの普及により経済活動の持ち直しがみられたものの、外食産業や観光産業等は引き続き苦戦しており、景気回復は緩やかなものとなりました。

不動産業界におきましては、一部の商業施設や宿泊施設においては引き続き収益が低迷し、オフィスの空室率も高い水準で推移したものの、不動産投資マーケットは、低金利等を背景に、不動産投資家の旺盛な投資マインドが継続したため、安定した市場を形成しました。

こうした環境のもと、当社グループは、2020年度を初年度とする中長期経営計画に基づき、「変革」と「スピード」をベースに、環境変化に柔軟に対応した進化を通じて、持続的な企業価値向上の実現に注力してまいりました。

その結果、当連結会計年度の連結業績は、営業収益は447,077百万円(前期比107,431百万円、31.6%増)、営業利益114,507百万円(前期比13,910百万円、13.8%増)、経常利益109,581百万円(前期比13,953百万円、14.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益69,564百万円(前期比5,944百万円、9.3%増)となりました。

営業収益につきましては、前連結会計年度及び当連結会計年度に竣工、取得した物件による不動産賃貸収入の増加に加え、販売用不動産の売上が増加したことにより、増収となりました。営業利益につきましては、物件の竣工、取得による不動産賃貸収入の増加及び販売用不動産の売上総利益が増加したことにより、増益となりました。経常利益につきましては、支払利息の増加等により営業外費用が増加いたしましたが、営業利益の増加があったこと等により、増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、税金費用が前連結会計年度に比べ増加したものの、経常利益の増加があったこと等により、増益となりました。

事業別の状況は、次の通りであります。

事業区分別の概況

営業収益
前期比 %増
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事業別売上構成比 %

(単位:

<主な事業内容>

不動産賃貸業務、不動産開発業務、アセットマネジメント業務等

当社グループの中核事業は、東京23区を中心に、約260件(販売用不動産除く)の賃貸物件・賃貸可能面積約132万㎡を活用した不動産賃貸事業であります。マーケットニーズに即した用途バランスと競争優位性を有する賃貸ポートフォリオを再構築する観点から、ポートフォリオの組替をおこなうとともに、耐震・省エネに優れた開発・建替の加速による優良アセットの積み上げに取り組んでおります。また、高付加価値を創出して収益化するバリューアッド事業の強化にも取り組んでおります。

当連結会計年度の新規物件(固定資産)の取得につきましては、リクルート銀座8丁目ビル(東京都中央区)、プライムタワー築地(東京都中央区)、湘南モールフィル(底地)(神奈川県藤沢市)、イトーヨーカドー四街道店(千葉県四街道市)、ヒューリック御茶ノ水ビル(東京都千代田区)、オンワードベイパークビルディング(底地)(東京都港区)、ヒューリック銀座五丁目並木通(東京都中央区)(追加取得)、パスコ目黒さくらビル(東京都目黒区)及びGビル新宿01(東京都新宿区)などを取得いたしました。

開発・建替事業(固定資産)につきましては、ふふ京都(京都市左京区)が2021年1月、HULIC &New UDAGAWA(東京都渋谷区)が2021年3月、HULIC &New SHINJUKU(東京都新宿区)が2021年5月、HULIC &New GINZA 8(東京都中央区)が2021年10月、ふふ箱根(神奈川県足柄下郡)が2021年11月に竣工いたしました。

また、(仮称)柏市新十余二物流開発計画(千葉県柏市)の開発用地を取得したほか、(仮称)銀座6丁目並木通り開発計画(東京都中央区)、(仮称)札幌建替計画(Ⅰ期工事)(札幌市中央区)、(仮称)銀座5丁目みゆき通りビル開発計画(東京都中央区)、(仮称)ヒューリック銀座一丁目開発計画(東京都中央区)、(仮称)野田市中根物流開発計画(千葉県野田市)、(仮称)虎ノ門開発計画(東京都港区)、(仮称)ヒューリック福岡ビル建替計画(福岡市中央区)、(仮称)千駄ヶ谷センタービル建替計画(東京都渋谷区)及び(仮称)札幌建替計画(Ⅱ期工事)(札幌市中央区)などが順調に進行しております。

PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)事業につきましては、(仮称)錦糸町開発計画(東京都墨田区)などが順調に進行しております。

販売用不動産につきましては、Dプロジェクト新三郷(埼玉県三郷市)及び目黒テクノビル(東京都品川区)などを取得し、相鉄フレッサイン大阪なんば駅前(大阪市浪速区)、ヒューリック渋谷宮下公園ビル(東京都渋谷区)、ヒューリック京橋イーストビル(東京都中央区)、Dプロジェクト新三郷(埼玉県三郷市)、日本ヒューレット・パッカード本社ビル(東京都江東区)、DSBグループ潮見ビル(東京都江東区)、仙台ファーストタワー(仙台市青葉区)(底地・出資の持分)、目黒テクノビル(東京都品川区)、ヒューリック麹町ビル(東京都千代田区)(一部)、アリスタージュ経堂(東京都世田谷区)(一部)、ヒューリック神戸ビル(神戸市中央区)(一部)、麹町一丁目ビル(東京都千代田区)、赤坂スターゲートプラザ(東京都港区)及びヒューリック神保町駅前ビル(東京都千代田区)などを売却しております。

このように、当セグメントにおける事業は順調に進行しており、前連結会計年度及び当連結会計年度に竣工、取得した物件によりオフィス等の不動産賃貸収入の増加に加え、販売用不動産の売上も順調に推移したことなどから、当連結会計年度の営業収益は426,711百万円(前期比111,892百万円、35.5%増)、営業利益は131,245百万円(前期比15,870百万円、13.7%増)となりました。

営業収益
前期比 %増
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事業別売上構成比 %

(単位:

<主な事業内容>

保険代理店業務

保険事業におきましては、連結子会社であるヒューリック保険サービス株式会社が、国内・外資系の保険会社と代理店契約を結んでおり、法人から個人まで多彩な保険商品を販売しております。保険業界の事業環境は引き続き厳しい環境にありますが、既存損保代理店の営業権取得を重点戦略として、法人取引を中心に営業展開をしております。

この結果、当セグメントにおける営業収益は3,159百万円(前期比193百万円、6.5%増)、営業利益は792百万円(前期比125百万円、18.7%増)となりました。

営業収益
前期比 %減
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事業別売上構成比 %

(単位:

<主な事業内容>

ホテル及び旅館の運営業務

ホテル・旅館事業におきましては、連結子会社であるヒューリックホテルマネジメント株式会社は「THE GATE HOTEL」シリーズ、ヒューリックふふ株式会社は「ふふ」シリーズ、日本ビューホテル株式会社は「ビューホテル」シリーズを中心に、ホテル及び旅館の運営をおこなっております。

当連結会計年度においては、観光ビジネスにかかる組織再編等を通じてコスト削減をはかったものの、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う一部店舗の一時休業、稼働率の低下、レストランや宴会等のキャンセルが生じたことにより売上が伸び悩みました。

この結果、当セグメントにおける営業収益は16,665百万円(前期比△1,007百万円、5.7%減)、営業損失は7,995百万円(前期は営業損失7,492百万円)となりました。

営業収益
前期比 %減
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事業別売上構成比 %

(単位:

<主な事業内容>

建築工事請負業務、設計・工事監理業務等

その他におきましては、主に連結子会社であるヒューリックビルド株式会社が、当社保有ビル等の営繕工事、テナント退去時の原状回復工事、新規入居時の内装工事を中心に受注実績を積み上げた結果、営業収益は8,496百万円(前期比△1,718百万円、16.8%減)、営業利益は809百万円(前期比△347百万円、30.0%減)となりました。

2.対処すべき課題

今後の経済環境の見通しにつきましては、ウィズコロナ下での経済政策の実行等により緩やかな経済回復が継続する見込みではあるものの、感染の終息時期の見通しが立たないことによる先行き不透明な状況が続くものと想定しております。

不動産事業環境におきましては、働き方やライフスタイルの一部変容により立地条件等の競争環境の変化が進展する可能性がありますが、国内・海外の金利環境に急激な変化が生じる可能性は低いと想定しており、収益不動産の投資市場は引き続き堅調に推移すると考えております。

また、中長期的な外部環境認識としては、①人口減少(労働人口減少)・少子高齢化の進展、②自然災害リスクの増加、③テクノロジーの進展・ライフスタイルの変化、④世界的な不確実性の高まり、⑤温暖化現象の進行等を想定しております。

こうした環境のもと、当社グループは、2020年度を初年度とする中長期経営計画の基本方針である「成長性」「安全性」「収益性」「生産性(効率性)」を高次元でバランスする経営に重点を置き、①ビジネスモデルの進化と賃貸ポートフォリオの再構築、②開発事業及びバリューアッド事業の強靭化、③独自性のある新規事業領域の創造とグループ力の向上、④経営基盤の強化とリスク管理の徹底、⑤社会と企業の共創・共生をはかるサステナビリティを重視したマネジメントを「対処すべき課題」と捉え、「変革とスピードをベースに、環境変化に柔軟に対応した進化を通じて、持続的な企業価値向上を実現する企業グループ」を目指してまいります。

そのために、それぞれの課題に対して、主に以下の戦略に取り組んでまいります。

① ビジネスモデルの進化と賃貸ポートフォリオの再構築

当社グループの中核事業は、東京23区の駅近を中心に保有する不動産を賃貸する不動産賃貸事業であり、本事業をベースとして「安定性」と「効率性」を両立したビジネスモデルの進化をはかっております。

当社グループの所有物件は、駅近の好立地のビルが大宗を占めており、マーケットより常に低い空室率を維持し、安定的な収益を確保しております。更に、CREなど戦略的ソーシングによる着実なポートフォリオの拡充に合わせて、テナントリーシング力を更に強化し、不動産賃貸事業の底支えをはかっております。

また、将来的なエリア間の競争激化に備え、厳選立地、高耐震・高性能、環境配慮、マーケットニーズに即した用途バランスといった要素を備えた更なる競争優位性を有する賃貸ポートフォリオの再構築を進めてまいります。

② 開発事業及びバリューアッド事業の強靭化

開発事業につきましては、保有物件の開発・建替・PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)事業に取り組んでおり、2021年度は10物件が竣工し、2022年度についても7物件が竣工する計画となっております。

今後も、中長期パイプラインの整備に基づき、耐震・環境配慮に優れた開発事業を推進することによって、優良な賃貸ポートフォリオの増強及び開発利益の獲得をはかってまいります。

また、働き方の多様化、企業のオフィス拡張・分散・縮小、ITインフラの充実などに着目して、”借りやすく返しやすいオフィス””すぐに使える先進のオフィス””生産性向上をサポートするオフィス”をコンセプトにした中規模フレキシブルオフィス「Bizflex」のシリーズ展開をおこない、入居テナントがフレキシブルにオフィスを利用できるサービスを開始しており、2021年度には「Bizflex麻布十番 by HULIC」が開業したほか、新たに4物件の開発が確定しております。

バリューアッド事業については、大型バリューアッドとして取り組んでいた「LICOPA鶴見」が開業いたしました。今後も多様なバリューアップ手法に基づく取り組みを強化することによって、安定した利益の創出及び成長ドライバーとしての体制整備をはかってまいります。

③ 独自性のある新規事業領域の創造とグループ力の向上

3Kビジネス(高齢者・観光・環境ビジネス)の一つとして取り組んでいる高齢者ビジネスについては、引き続き多数の高齢者施設を開発、取得及び保有しているほか、ITを活用した業務効率化・科学的介護等を提供するスマートシニアハウジング構想にも取り組んでおります。

観光ビジネスについては、自社運営ホテルの「THE GATE HOTEL」及び「ビューホテル」シリーズや、高級温泉旅館「ふふ」シリーズの開発をおこなっております。また、新型コロナウイルス影響への対応として、観光ビジネスのグループ内再編を通じて経営管理及び運営管理を一貫しておこなう体制を整備しており、今後も効率的な運営を進めていくとともに、アフターコロナの観光ニーズに合致した商品開発による収益回復をはかってまいります。

環境ビジネスについては、CO2排出量ネットゼロ化・耐火木造建築・100年耐久ビルのほか、環境に配慮した取り組みを強化してまいります。

また、新規事業としては、「Bizflex事業(中規模フレキシブルオフィス事業)」に加えて、共働き世帯の増加や幼児教育無償化、教育資金の贈与税非課税制度等を背景に今後の有望な事業として、こどもを対象にした教育関連サービスを提供する「こども教育事業」を推進しており、事業の強化を目的として株式会社リソー教育への追加出資をおこない持分法適用関連会社化しました。

今後も、これらの事業を拡大するとともに、新たな価値創造を提供する新規事業を開拓・軌道化し、グループ連携を活かした収益機会の獲得及びシナジー追求によるグループ総合力の向上をはかってまいります。また、新規事業の軌道化及びグループ力向上の早期実現の手段として、M&Aやアライアンス等を積極的に活用してまいります。

④ 経営基盤の強化とリスク管理の徹底

2021年度に実施した約1,000億円の公募増資により資本増強をはかり、経営基盤の更なる強化を進めております。

また、「内部統制」、「リスク管理」、「コンプライアンス」、「開示統制」についても従前から徹底をはかっており、東証の市場区分再編においては、プライム市場に要求される高いガバナンス水準を充足していたことから、「プライム市場」への移行を選択し、2022年4月4日に移行いたします。

リスク管理に関しては、「事業継続基本計画」(BCP:Business Continuity Plan)に基づき、定期的に訓練を実施する等、今後も有事対応力の向上を進めてまいります。

⑤ 社会と企業の共創・共生をはかるサステナビリティを重視したマネジメント

サステナビリティビジョンに基づき、社会活動の基盤となる商品・サービスを提供することにより、「持続可能な社会の実現」と「企業としての継続的な成長」を目指し、ESGを意識した事業運営と価値創造により、社会課題の解決及び社会価値の創造と企業成長が連動する取り組みを推進しております。

環境への取り組みとしては、「脱炭素社会・循環型社会」の実現に向けて環境配慮経営を推進しており、「RE100」の達成目標を2025年から2024年に前倒ししたことに加え、「CO₂排出量ネットゼロ化」の達成目標を2050年から2030年に前倒しいたしました。今後も脱炭素に向けた取り組みを強化し、自社の非FIT再エネ電源から自社保有ビルへの電力供給をおこなってまいります。また、100年以上安全に使用できるオフィス標準仕様の導入による廃棄物削減、耐火木造建築・植林活動を通じた森の循環による環境負荷の低減に取り組んでまいります。

社会への取り組みとしては、防災への意識の高まりに対応する高耐震ビルへの取り組みを強化しているほか、地域社会をはじめ各ステークホルダーとの関係強化及び社会貢献活動も強化しております。また、人材育成を軸として、健康経営・働き方改革等の取り組み、女性活躍推進法に基づく行動計画策定など、女性や高齢者も等しく能力を発揮できる職場とし、一人当たり生産性の高い企業、人が育つ企業を目指してまいります。

ガバナンスの取り組みとしては、2021年6月に改訂された「コーポレートガバナンス・コード」の各原則を踏まえ、当社の持続的成長・企業価値向上に向けての最適なコーポレートガバナンスを実現するための枠組みを、「コーポレートガバナンス・ガイドライン」において開示しております。ガイドラインを基に健全な企業統治の下で株主の権利に留意し、永続的な企業価値の向上を目指してまいります。

連結計算書類