事業報告(2022年1月1日から2022年12月31日まで)

企業集団の現況に関する事項

1.事業の経過及びその成果

当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。経営成績に関する説明における前期との比較は、当該会計基準等を適用する前の前連結会計年度の数値を用いて算定しております。

詳細については、「電子提供措置事項のうち法令及び定款に基づく書面交付請求による交付書面に記載しない事項 連結注記表 3.会計方針の変更に関する注記」をご参照ください。

当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルスワクチンの普及により、行動制限が緩和され経済活動の持ち直しがみられたものの、ウクライナ問題を一因とするエネルギー価格の高騰やインフレの兆しなど、依然として先行きが不透明な状況が続いております。

不動産業界におきましては、一部の商業施設や宿泊施設においては引き続き収益が低迷し、オフィスの空室率も高い水準で推移したものの、不動産投資マーケットは、低金利等を背景に、不動産投資家の旺盛な投資マインドが継続したため、安定的に推移いたしました。

こうした環境のもと、当社グループは、2020年度を初年度とする中長期経営計画に基づき、「変革」と「スピード」をベースに、環境変化に柔軟に対応した進化を通じて、持続的な企業価値向上の実現に注力してまいりました。

その結果、当連結会計年度の連結業績は、営業収益は523,424百万円(前期比76,346百万円、17.0%増)、営業利益126,147百万円(前期比11,640百万円、10.1%増)、経常利益123,222百万円(前期比13,640百万円、12.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益79,150百万円(前期比9,586百万円、13.7%増)となりました。

営業収益につきましては、前連結会計年度及び当連結会計年度に竣工、取得した物件によりオフィス等の不動産賃貸収入が安定的に推移したことに加え、販売用不動産の売上が増加したことにより、増収となりました。営業利益につきましては、物件の竣工、取得によりオフィス等の不動産賃貸収入が安定的に推移したことに加え、販売用不動産の売上総利益が増加したことにより、増益となりました。経常利益につきましては、営業利益の増加に加え、賃貸解約関係収入の増加等により営業外収益が増加し、増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、建替に関連する特別損失や税金費用が前連結会計年度に比べ増加したものの、経常利益の増加があったこと等により、増益となりました。

事業別の状況は、次の通りであります。

事業区分別の概況

営業収益
前期比 %増
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事業別売上構成比 %

(単位:

<主な事業内容>

不動産賃貸業務、不動産開発業務、アセットマネジメント業務等

当社グループの中核事業は、東京23区を中心に、約260件(販売用不動産除く)の賃貸物件・賃貸可能面積約136万㎡を活用した不動産賃貸事業であります。マーケットニーズに即した用途バランスと競争優位性を有する賃貸ポートフォリオを再構築する観点から、ポートフォリオの組替をおこなうとともに、耐震・省エネに優れた開発・建替の加速による優良アセットの積み上げに取り組んでおります。また、高付加価値を創出して収益化するバリューアッド事業の強化にも取り組んでおります。

当連結会計年度の新規物件(固定資産)の取得につきましては、ヒューリック渋谷宇田川町ビル(東京都渋谷区)(追加取得)、日立ソリューションズタワー(東京都品川区)、ヒューリックみなとみらい(横浜市中区)、鈴乃屋本店ビル(東京都台東区)、ワンズモール(千葉県千葉市)及びLF板橋(底地)(東京都板橋区)などを取得いたしました。

開発・建替事業(固定資産)につきましては、HULIC &New GINZA NAMIKI6(東京都中央区)が2022年5月に竣工いたしました。

また、銀座コア(東京都中央区)を取得し、権利者と銀座コア再開発の共同事業に関する基本協定等を締結し、事業パートナーとして参画することを決定しました。そのほか、(仮称)新宿318開発計画(東京都新宿区)及び(仮称)三郷物流開発計画(埼玉県三郷市)の開発用地を取得したほか、(仮称)千駄ヶ谷センタービル建替計画(東京都渋谷区)、(仮称)福岡ビル建替計画(福岡市中央区)、(仮称)札幌建替計画(2期工事)(札幌市中央区)、(仮称)銀座ビル建替計画(東京都中央区)及び(仮称)心斎橋開発計画(大阪市中央区)などが順調に進行しております。

PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)事業につきましては、東京都と渋谷区実施の「都市再生ステップアップ・プロジェクト(渋谷地区)渋谷一丁目地区共同開発事業」において、基本協定締結のうえ事業推進中であるほか、(仮称)錦糸町開発計画(東京都墨田区)(2023年1月竣工済)などが順調に進行しております。

販売用不動産につきましては、FKDショッピングモール宇都宮インターパーク店(栃木県宇都宮市)などを取得し、池袋東急ハンズ(東京都豊島区)、Bleu Cinq Point(東京都港区)、ヒューリック小舟町ビル(東京都中央区)(一部)、リーフみなとみらい(横浜市西区)及びFKDショッピングモール宇都宮インターパーク店(栃木県宇都宮市)(一部)などを売却しております。

このように、当セグメントにおける事業は順調に進行しており、前連結会計年度及び当連結会計年度に竣工、取得した物件によりオフィス等の不動産賃貸収入は安定的に推移したことに加え、販売用不動産の売上も順調に推移したことなどから、当連結会計年度の営業収益は493,143百万円(前期比66,431百万円、15.5%増)、営業利益は139,779百万円(前期比8,534百万円、6.5%増)となりました。

営業収益
前期比 %増
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事業別売上構成比 %

(単位:

<主な事業内容>

保険代理店業務

保険事業におきましては、連結子会社であるヒューリック保険サービス株式会社が、国内・外資系の保険会社と代理店契約を結んでおり、法人から個人まで多彩な保険商品を販売しております。保険業界の事業環境は引き続き厳しい環境にありますが、既存損保代理店の営業権取得を重点戦略として、法人取引を中心に営業展開をしております。

この結果、当セグメントにおける営業収益は3,616百万円(前期比456百万円、14.4%増)、営業利益は1,040百万円(前期比247百万円、31.2%増)となりました。

営業収益
前期比 %増
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事業別売上構成比 %

(単位:

<主な事業内容>

ホテル及び旅館の運営業務

ホテル・旅館事業におきましては、連結子会社であるヒューリックホテルマネジメント株式会社は「THE GATE HOTEL」シリーズ、ヒューリックふふ株式会社は「ふふ」シリーズ、日本ビューホテル株式会社は「ビューホテル」シリーズを中心に、ホテル及び旅館の運営をおこなっております。

当連結会計年度においては、コロナ感染者の増加に伴う行動制限の影響がありましたが、稼働・客室単価とも回復してきております。

この結果、当セグメントにおける営業収益は27,635百万円(前期比10,970百万円、65.8%増)、営業損失は5,099百万円(前期は営業損失7,995百万円)となりました。

営業収益
前期比 %減
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事業別売上構成比 %

(単位:

<主な事業内容>

建築工事請負業務、設計・工事監理業務等

その他におきましては、主に連結子会社であるヒューリックビルド株式会社が、当社保有ビル等の営繕工事、テナント退去時の原状回復工事、新規入居時の内装工事を中心に受注実績を積み上げた結果、営業収益は7,627百万円(前期比△868百万円、10.2%減)、営業利益は607百万円(前期比△202百万円、24.9%減)となりました。

2.対処すべき課題

今後の経済環境の見通しにつきましては、新型コロナウイルスと共存する「ウィズコロナ」の浸透により、経済活動の持ち直しがみられる一方で、世界的なエネルギー・食糧価格の高騰や世界経済減速の影響などにより、依然として先行きが不透明な状況が続くものと想定しております。

また、不動産事業環境におきましては、金利変動を背景とした不動産市況の先行きに注意をする必要がありますが、不動産投資家の投資マインドは底堅く、収益不動産の投資市場は引き続き概ね堅調に推移すると考えております。

こうした環境のもと、当社グループは、2023年度から中長期経営計画(2020-2029)のフェーズⅡに位置する新中期経営計画(2023-2025)をスタートさせ、①高品質の賃貸ポートフォリオ構築と柔軟な収益構造を維持・強化、②開発・建替、バリューアッド物件のパイプライン充実。出口を多様化して確実に収益化、③新規事業領域の取組み強化による収益源の多様化、④格付水準の維持を目線とした財務健全性の確保とリスク管理、⑤環境対応、人的資本育成対応などサステナブル経営の一層の深化、の5点を「対処すべき課題」と捉え、更なるレベルアップをはかってまいります。

そのために、それぞれの課題に対して、主に以下の戦略に取り組んでまいります。

① 高品質の賃貸ポートフォリオ構築と柔軟な収益構造を維持・強化

当社グループの中核事業は、東京23区の駅近を中心に保有する不動産の不動産賃貸事業であり、本事業をベースとした「安定性」と「効率性」を両立したビジネスモデルの進化をはかりながら、環境変化に柔軟に対応した収益構造を維持・強化してまいります。

当社グループの所有物件は、駅近の好立地のビルが大宗を占めており、マーケットより常に低い空室率を維持し、安定的な収益を確保しております。更に、CRE等戦略的ソーシングによる着実なポートフォリオの拡充に加え、多様な投資スキームを駆使した物件取得により、不動産賃貸事業の拡大をはかってまいります。

また、本格的な人口減少等環境変化に対応した競争優位性のある高品質の賃貸ポートフォリオ構築のため、今後も継続的に物件の入れ替えを実施することで、2029年に高耐震建物比率100%、オフィス比率50%、重点エリア比率50%、2030年に再エネビル比率100%を目指し、引き続き空室率1%未満を堅持してまいります。

② 開発・建替、バリューアッド物件のパイプライン充実。出口を多様化して確実に収益化

開発事業につきましては、保有物件の開発・建替・バリューアッド・PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)事業に取り組んでおり、2022年度は6物件が竣工し、2023年度についても14物件が竣工する計画となっております。新たに策定した新中期経営計画(2023-2025)では、2025年末までに100物件超の開発・建替案件に目途をつける計画としており、今後も、中長期パイプラインの整備に基づき、耐震・環境配慮に優れた不動産開発を推進することによって、優良な賃貸ポートフォリオの増強及び開発・建替利益の獲得をはかってまいります。

また、開発・建替物件の竣工本格化に備え、既存の公募リート、私募リートに加えて、ファンドの活用や物流リートの組成など出口戦略の多様化により、開発・建替利益を確実に実現するとともにバランスシートのコントロールをおこなってまいります。

③ 新規事業領域の取組み強化による収益源の多様化

高齢者ビジネスについては、引き続き多数の高齢者施設を開発、取得及び保有しているほか、ITを活用した業務効率化・科学的介護等を提供するスマートシニアハウジング構想にも取り組んでおります。

観光ビジネスについては、自社運営ホテルの「THE GATE HOTEL」及び「ビューホテル」シリーズや、高級温泉旅館「ふふ」シリーズの開発・運営をおこなっており、ウィズコロナの観光ニーズに合致した商品開発による収益回復をはかってまいります。

また、中規模フレキシブルオフィス「Bizflex」のシリーズ展開をおこない、入居テナントがフレキシブルにオフィスを利用できるサービスを開始しており、2021年度に開業した「Bizflex麻布十番 by HULIC」がリースアップしたほか、新たに4物件の開発が確定しております。

更にこどもを対象にした教育関連サービスを提供する「こども教育事業」は、2022年度に当社が事業予定者として決定した「渋谷一丁目地区共同開発事業」において、株式会社リソー教育、コナミスポーツ株式会社との業務提携に基づき、こども向けワンストップサービスを提供する「こどもでぱーと」の第一号を手掛けることを計画しております。

今後も、これらの事業を拡大するとともに、新たな価値創造を提供する新規事業を開拓・軌道化し、グループ連携を活かした収益機会の獲得及びシナジー追求によるグループ総合力の向上をはかってまいります。また、新規事業の軌道化及びグループ力向上の早期実現の手段として、M&Aやアライアンス等を積極的に活用してまいります。

④ 格付水準の維持を目線とした財務健全性の確保とリスク管理

2022年度に日本格付研究所(JCR)より取得している当社の外部格付が「AA-」格に格上げになり、経営基盤の更なる強化を評価いただきました。今後も健全な財務基盤を維持しながら、中長期的な収益の維持・向上を実現してまいります。

また、「内部統制」、「リスク管理」、「コンプライアンス」、「開示統制」についても従前から徹底をはかっております。

リスク管理に関しては、「事業継続基本計画」(BCP:Business Continuity Plan)に基づき、定期的に訓練を実施する等、今後も有事対応力の向上を進めてまいります。

⑤ 環境対応、人的資本育成対応などサステナブル経営の一層の深化

サステナビリティビジョンに基づき、社会活動の基盤となる商品・サービスを提供することにより、「持続可能な社会の実現」と「企業としての継続的な成長」を目指し、サステナビリティを意識した事業運営と価値創造により、社会課題の解決及び社会価値の創造と企業成長が連動する取り組みを推進しております。

環境への取り組みとしては、「脱炭素社会・循環型社会」の実現に向けて環境配慮経営を推進しており、「RE100」を2023年に実質達成することに加え、2030年の「全保有建物の使用電力の100%再生可能エネルギー化」を目指し、自社で新規に開発・保有するFIT制度を活用しない再エネ電源から自社保有ビルへの電力供給をおこなってまいります。また、100年以上安全に使用できるオフィス標準仕様の導入による廃棄物削減、耐火木造建築・植林活動を通じた森の循環による環境負荷の低減に取り組むほか、水素・蓄電池活用の研究も進めてまいります。

社会への取り組みとしては、建物の耐震性能強化やBCP対策を重要な課題と認識して積極的に取り組んでまいります。耐震性能強化につきましては、2029年までに高耐震建物比率100%の目標を掲げておりますが、そのマイルストーンとして2025年末までに建替予定建物を除いた高耐震建物比率100%に取り組んでまいります。BCP対策につきましては、今般、富士山噴火に伴う降灰対策を策定いたしました。防災以外では、地域社会をはじめ各ステークホルダーとの関係強化及び社会貢献活動も重視しております。人的資本については、人材育成のための種々取り組みを実践してまいります。また、健康経営・働き方改革等の取り組み、女性活躍推進法に基づく行動計画策定など、女性や高齢者も等しく能力を発揮できるバイアスのない職場としてまいります。さらに、一級建築士をはじめとした高い専門性を有する人材集団、一人当たり生産性の高い企業、人が育つ企業を目指してまいります。

ガバナンスの取り組みとしては、2021年6月に改訂された「コーポレートガバナンス・コード」の各原則を踏まえ、当社の持続的成長・企業価値向上に向けての最適なコーポレートガバナンスを実現するための枠組みを、「コーポレートガバナンス・ガイドライン」において開示しております。ガイドラインを基に健全な企業統治の下で株主の権利に留意し、永続的な企業価値の向上を目指してまいります。

連結計算書類