第155期事業報告(2020年4月1日から2021年3月31日まで)

帝人グループ(企業集団)の現況に関する事項

(1)事業の経過及び成果

1)事業活動の経過及び成果
① 当期の経営成績

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のグローバルレベルでの蔓延により、人々の活動が制限されたこ とで、当期の世界経済は低迷し、高い不確実性の中で推移しました。特に期前半での影響は大きく、その後一旦は持ち直したものの、期後半にかけては再度の拡大により回復ペースは鈍化しました。

帝人グループは、持続可能な社会の実現に貢献し、「未来の社会を支える会社」になるという長期ビジョン のもと、「成長基盤の確立期」と位置付ける2020年度から3か年の中期経営計画を策定しました。その初年度である当期においては、将来の収益拡大に向けた投資として、マテリアル事業領域におけるパラアラミド繊維の生産能力増強の設備投資、北米での自動車向け複合成形材料のテキサス新工場の建設や炭素繊維新工場の立ち上げ準備を進めました。また、ヘルスケア事業領域では武田薬品工業(株)からの糖尿病治療薬販売承継を決定し、事業間の融合分野として再生医療等製品事業への参入を目的とした(株)ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(以下、「J-TEC社」)のTOBによる子会社化を行うなど、大型投資を推し進めました。

帝人グループの当期の連結決算は、COVID-19の影響で繊維・製品事業における医療用防護具(ガウン等) やIT事業が好調であったことに加えて、ヘルスケア事業領域も薬価改定影響を受ける中で底堅く推移しました。一方でマテリアル事業領域においては自動車用途や航空機用途を中心として需要低下の影響を受けました。これらの結果、売上高は前期対比2.0%減の8,365億円、営業利益は同2.3%減の549億円となり、経常利益は同1.2%減の537億円となりました。親会社株主に帰属する当期純損益は航空機需要が長期にわたり低迷するとの見通しに基づく炭素繊維事業の固定資産減損損失の計上等により、67億円の損失(前期は253億円の利益)となりました。

その結果、収益性を示すROEは△1.7%となり中期経営計画最終年度(2022年度)目標(10%以上)を大 きく下回る一方、キャッシュ創出力を示すEBITDAはCOVID-19の影響を受ける中、前期と同水準の1,068億円を維持しました。また、営業利益ROICについては、中期経営計画最終年度目標(8%以上)水準を満たす 8.6%となりました。

② 財政状態

総資産は、炭素繊維事業における減損損失により固定資産が減少しましたが、再生医療等製品事業への進出 を目的としたJ-TEC社の株式取得に伴うのれんの計上や保有株式時価の上昇等もあり、前期末対比322億円増加の10,364億円となりました。

負債は、主に仕入債務の増加等により、前期末対比154億円増加の6,082億円となりました。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純損失の計上により減少しましたが、主要通貨に対する円安の進行に よる為替換算調整勘定の増加や保有株式の時価評価に関わる評価差額の増加等もあり、前期末対比168億円増加の4,283億円となりました。この結果、D/Eレシオは0.9倍、自己資本比率は39.2%となりました。

事業別業績概況

当期における事業別の概況は次のとおりです。

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COVID-19の影響により自動車用途や航空機用途は需要減となるも、期後半における自動車市場の回復に伴い自動車向け販売は回復。各事業において活動抑制等により販管費が減少

EBITDA構成比 %

(単位:

売上高は2,970億円と前期対比306億円の減収(9.3%減)、営業利益は10億円と前期対比149億円の減益(94.0%減)となり、EBITDAは前期対比133億円減の315億円となりました。

アラミド事業分野

アラミド事業分野では、主力のパラアラミド繊維「トワロン」において、タイヤ補強材、摩擦材などの自動車関連や光ファイバーを含む用途全般において販売量が減少しましたが、各市場の回復に伴い販売量が回復しました。

樹脂事業分野

樹脂事業分野では、主力のポリカーボネート樹脂において、期後半から販売量が回復し通期では前期並みを維持しました。また、期後半から主原料であるBPA市況価格が高騰した影響を受け、販売価格改定を進めています。

炭素繊維事業分野

炭素繊維事業分野では、需要が減少した航空機用途において炭素繊維「テナックス」の販売量が大幅に減少したため、風力発電用途やレクリエーション用途等の航空機用途以外への販売を強化しました。将来に向けた航空機向け中間材料開発や北米新工場稼働に向けた先行投資を継続実施しています。

複合成形材料事業分野

複合成形材料事業分野では、期初に、OEM生産大幅減により米国コンチネンタル・ストラクチュラル・プラスチック社(以下、「CSP社」)の自動車部品の生産・販売が大きく影響を受けましたが、SUV・ピックアップトラックをはじめとする米国自動車市場が回復し、大幅に改善しました。米国において比較的高水準の失業給付が継続している影響で、CSP社において工場稼働が回復する中で従業員の確保が課題となっており、定着率改善のための対策を推進しています。

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「フェブリク」を中心に国内医薬品の薬価改定影響があったものの、「フェブリク」の販売や在宅医療の販売が拡大。COVID-19の影響の中、オンラインによる非対面の営業活動等により、販管費が減少

EBITDA構成比 %

(単位:

売上高は1,487億円と前期対比53億円の減収(3.4%減)、営業利益は315億円と前期対比10億円の減益(3.2%減)となり、EBITDAは前期対比9億円減の437億円となりました。

医薬品分野では、国内市場において、高尿酸血症・痛風治療剤「フェブリク」を中心に2020年4月の薬価改定の影響を受けましたが、「フェブリク」や先端巨大症・下垂体性巨人症/神経内分泌腫瘍治療剤「ソマチュリン」が順調に販売量を拡大しました。

* ソマチュリン®/Somatuline®は、Ipsen Pharma(仏)の登録商標です。

在宅医療分野では、在宅酸素療法(HOT)市場において、病院内における感染回避のため在宅医療導入が選択されるケースが増えたことと携帯型酸素濃縮器の展開等により、レンタル台数が伸長しました。在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)市場においては、COVID-19の影響により入院検査数が減少し市場拡大は昨年より鈍化しましたが、開業医向け市場は拡大しており、レンタル台数の増加が継続しています。また、遠隔モニタリング算定要件が緩和され、診療支援ツール「ネムリンク」導入施設が増加しています。

ヘルスケア新事業分野では、人工関節・吸収性骨接合材等の埋め込み型医療機器事業において、期初はCOVID-19の影響による手術延期により販売数量が減少しましたが、第2四半期以降の手術数の回復及び新製品の販売拡大により、累計の売上高が前年比増となりました。

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EBITDA構成比 %

(単位:

売上高は3,149億円と前期対比86億円の増収(2.8%増)、営業利益は175億円と前期対比121億円の増益(223.3%増)となり、EBITDAは前期対比115億円増の239億円となりました。

COVID-19の影響により、テキスタイル、重衣料は苦戦しましたが、医療従事者向けの医療用防護具(ガウン等)の供給が業績に大きく貢献しました。在宅需要にマッチした衣料品販売が堅調で、感染予防に向けた機能性マスクや水処理向けポリエステル短繊維等が好調に推移しました。期初に苦戦した自動車関連部材は期後半にかけて回復が鮮明となり、活動抑制による販管費減も業績に寄与しました。

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EBITDA構成比 %

(単位:

売上高は581億円と前期対比95億円の増収(19.6 % 増)、営業利益は104億円と前期対比26億円の増益(32.9%増)となり、EBITDAは前期対比26億円増の113億円となりました。

ITサービス分野は病院向けを中心にCOVID-19の影響を受けましたが、ネットビジネス分野の電子コミックサービスは、読者層拡大を背景に好調に推移しました。

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売上高は178億円と前期対比5億円の増収(2.7%増)、営業損失は2億円(前期は営業利益3億円)となり、EBITDAは前期対比6億円減の7億円となりました。

東証JASDAQグロース市場に上場しているJ-TEC社をTOBにより子会社化し、期末より連結を開始しました。

2)事業活動以外の活動の経過及び成果

当期における事業活動以外の活動の経過及び成果については、以下のとおりです。

国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」など、グローバルな社会課題の解決に対する、企業への期待と責任は非常に大きなものとなっています。これらの社会課題を踏まえ、帝人グループは、自社にとってのリスクと機会を整理して、経営課題として取り組む5つのマテリアリティ(重要社会課題)とKPIを定めました。これらマテリアリティに対しては、事業を通じてソリューションを提供するとともに、環境負荷の低減やダイバーシティ&インクルージョンなどの基盤強化に取り組んでいます。

環境負荷低減においては、2019年度にCO2、水、有害化学物質及び埋立廃棄物における排出量削減の中長期目標を定めました。世界的に喫緊の課題である気候変動問題に対しては、自社グループのCO2排出量を、2030年度までに総量で20%削減し、2050年度までに実質ゼロにすることを目標に、エネルギー転換や生産性向上などの取り組みを継続強化していくことでこれらの達成を目指しています。2020年度は新たにインターナルカーボンプライシング制度を導入し、CO2排出削減に資する設備投資計画を後押ししていくことにしました。水不足や水質汚染の問題に対しても、2030年度までに自社の淡水取水量売上高原単位の30%改善を目標に掲げ、水使用量の少ない製品の拡大と事業に伴う水の効率的利用を促進するとともに、水リスクが高い地域にある拠点では、水リスク軽減に向けた対策を推進しています。

「ダイバーシティ&インクルージョン」に関しては、組織の活性化とイノベーション創出の加速のため、価値観や経験の異なる多様な人財が一層能力を発揮できる企業風土醸成を目指し、人財の多様化、女性活躍、多様な働き方の実現に取り組んでいます。女性活躍に関しては、2030年度に女性役員10名以上、女性管理職300名以上、マイルストーンとして、2022年度末までに女性役員6名、女性管理職174名というKPIを設定しています。役員候補向け選抜研修に参加する女性を増やしたり、女性リーダーシップ研修等で女性社員のキャリアアップやキャリア継続支援を行ったりした結果、経済産業省と東京証券取引所が共同で女性の活躍推進に優れた企業を選定する「なでしこ銘柄」に4年連続で選定されました。2020年度は新型コロナウイルス感染症対策を契機として、東京と大阪の本社地区を中心にテレワークの利用を急速に拡大しましたが、このような「出社・対面が当然の前提にはならない=New Normal(新常態)」に対応した新しい「働き方」を検討し、早期実現と定着を図る必要性が高まったため、マインドセットと仕事の仕組みの変革に着手しました。具体的には、New Normalに対応した働き方の推進に大きくかかわる「ペーパーレス」「業務可視化」「コミュニケーション」「オフィススペース&ソーシャルディスタンシング」「制度・評価」の5つのテーマについて組織横断的な議論を重ね、多くの課題に対する対策を実施しました。例えば、「コミュニケーション」においては、テレワークが中心になった部署の社員に対して部署のコミュニケーション状態を可視化するためアンケート形式のサーベイを実施し、その結果を踏まえ必要な対策を部署単位で作成してもらう、という取り組みを行っています。こうした施策をとおして社員一人一人が新しい働き方を模索し、行動する活動を積極的に展開しています。

また、帝人グループは、各事業グループや地域の特色を活かした社会貢献活動にも積極的に取り組んでいます。2020年度は「中期経営計画2020-2022」で示したサステナビリティ取り組み方針に照らし合わせ、グループ社会貢献基本方針を改訂しました。学術・教育、スポーツなどを通じた次世代の育成の支援としては、若き科学技術者の育成を目的に創設した公益財団法人帝人奨学会による帝人久村奨学金制度を通じ、60年以上にわたり約1,700人の理工系学生を支援しています。2010年より中国でも奨学金制度を運用しており、2020年度は36人に奨学金を給付しています。さらに、「全国高校サッカー選手権大会」への協賛や、公益財団法人日本ユニセフ協会「子どもの権利とスポーツ原則」への賛同等、青少年のスポーツ支援に取り組んでいます。

その他、社員のボランティア活動を支援する様々な仕組みを継続的に運用しています。

こうした取り組みが評価され、帝人は、FTSE4Good、MSCI ESG Index、DJSI Asia Pacific等複数の国際的な社会的責任投資インデックスに採用されています。

【働き方改革活動のフレームワーク】

(2)財産及び損益の状況の推移

(3)設備投資の状況

当期の設備投資は、アラミド事業及び複合成形材料事業の生産能力増強を目的とした設備投資を中心に603億円実施しました。

(4)資金調達の状況

金融機関からの借入金、普通社債の発行により資金調達を実施しました。借入金の減少等により、有利子負債は前期末比19億円減少し、3,800億円となりました。

(5)経営方針及び対処すべき課題

1)帝人グループが目指す姿

帝人グループは、企業理念に基づき、持続可能な社会の実現に向けて、「環境価値」「安心・安全・防災」「少子高齢化・健康志向」の3つのソリューションを中心に価値を社会に提供し、長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」になることを目指しています。

長期ビジョンを実現するために、帝人グループは、世界的な社会課題とSDGsが掲げるゴールを踏まえ、自社にとってのリスクと機会を整理し、優先的に取り組む5つのマテリアリティ(重要課題)を特定しています。すなわち、重要社会課題である「気候変動の緩和と適応」「サーキュラーエコノミーの実現」「人と地域社会の安心・安全の確保」「人々の健康で快適な暮らしの実現」と重要経営課題である「持続可能な経営基盤のさらなる強化」です。

帝人グループはこれらマテリアリティへの取り組みをとおし、持続可能な社会の実現と企業価値のさらなる向上を目指します。

2)対処すべき課題

2020年2月に「中期経営計画 2020-2022 ALWAYS EVOLVING」(以下、「中期経営計画」)を公表し、中期経営計画期間を「成長基盤確立期」と位置付けました。中期経営計画では、将来の収益獲得のために育成が必要な事業を「Strategic Focus」、既に収益を上げており、さらなる成長を目指す事業を「Profitable Growth」として位置付け、積極的に投資を進める方針を掲げています。

COVID-19の拡大がグローバルレベルで経済、人々の生活、価値観に激的な変化をもたらす中、帝人グループが取り組むマテリアリティ(重要社会課題)である「気候変動の緩和と適応」「サーキュラーエコノミーの実現」「人と地域社会の安心・安全の確保」「人々の健康で快適な暮らしの実現」は変えず、COVID-19によりもたらされた変化を機会と捉え、引き続き3つのソリューション領域への成長投資を加速する必要があると考えています。マテリアル事業領域では、「グリーンリカバリー」の潮流の中で、モビリティの軽量化や、社会インフラにおける高機能素材・軽量化素材への置き換えニーズを着実に捉え、事業が受けたCOVID-19の影響からの回復を加速し、成長軌道への早期回帰を図ります。カーボンニュートラルの実現においては、事業活動による環境負荷を最小限化し、目標達成に向けたロードマップの実行や、水素社会を実現するための技術革新を推進していきます。ヘルスケア事業領域では、COVID-19の感染リスクへの懸念から、受診控えや入院抑制がある中で、帝人グループが目指す地域包括ケアサービスや医療へのデジタルソリューションの提供は、一段とニーズが高まっています。IT事業とのシナジーの追求、マテリアル事業領域の各事業やエンジニアリングとの協創による新規事業なども、着実に取り組んでいきます。

a)中期経営計画における定量目標について

「投資効率」「稼ぐ力」の両面に力点を置き、収益性指標として「ROE」(全社)と「営業利益ROIC」(全社・事業別)、成長性指標として「EBITDA」(全社・事業別)を最重要指標とし、中期経営計画で掲げた2022年度定量目標であるROE10%以上、営業利益ROIC8%以上、EBITDA1,500億円を引き続き目指していきます。ただし、事業環境の変化により2022年度EBITDAのセグメント別見通しを変更しました。マテリアル事業領域では、COVID-19の影響により、炭素繊維事業を含む各事業で計画遅延が生じたことを踏まえ、EBITDA800億円は650億円の見通しに、ヘルスケア事業領域では、武田薬品工業株式会社からの2型糖尿病治療剤4剤の日本における販売承継が大きく寄与することを踏まえ、EBITDA 450億円は600億円の見通しに変更しました。

2021年度の見通し値、2022年度(中期最終年度)の目標値及びセグメント別EBITDA見通し値は次のとおりです。

*1 開示セグメントにおける「繊維・製品」「IT」及び「その他」や「消去又は全社」の区分の合算値を表示しています。

*2 直近見通しに変更しています。

b)中期経営計画における資源投入規模について

成長基盤確立に向けた積極投資方針の下、マテリアル事業領域においては、自動車向け複合成形材料の米国テキサス州への工場新設、炭素繊維の米国サウスカロライナ州への工場新設や、アラミド繊維の設備増強を進めています。ヘルスケア事業領域においては、2021年2月に、武田薬品工業株式会社との間で2型糖尿病治療剤4剤の日本における販売承継に係る契約を締結し、1,330億円を投入しました。また、マテリアル・ヘルスケア・エンジニアリングの融合領域の取り組みとして、J-TEC社を子会社化し、新たに再生医療等製品の事業拡大に取り組んでいきます。

中期経営計画における1,500億円のEBITDA目標の達成、さらには長期目標達成に向けた成長基盤の確立のためには、中期経営計画残り2年においても、引き続きマテリアル・ヘルスケア事業領域の「将来の収益源育成:Strategic Focus」分野への積極投資の継続が必要と考えています。そのため、中期期間(3年累計)における設備投資・M&A枠は、3,500億円から4,500億円に増額します。この投資枠の拡大は、負債調達を原資としますが、一定の財務規律を維持する前提です。安定性・継続性に配慮し配当性向30%を目安とする配当方針も変更しません。

c)ソリューション領域への重点投入

「3つのソリューション」領域については、投入額を全体の85%から90%に増加させることで、社会課題への取り組みを加速し、2030年度までに当該領域の売上高比率を全体の75%まで拡大することを目指します。

d)事業ポートフォリオ

事業分野を「将来の収益源育成:Strategic Focus」と「利益ある成長:Profitable Growth」に大別し、中・長期的視点でのポートフォリオ変革、キャッシュ創出力の拡大に向けた投入資源の配分を継続します。2022年度に「Strategic Focus」分野のEBITDAがグループ全体の15%に、2030年度までに当該分野のEBITDAをグループ全体の1/3以上とすることを引き続き目指します。なお、日本での再生医療のパイオニアであるJ-TEC社を子会社化し、再生医療等製品事業をStrategic Focusに位置付け、展開・拡大を図っていきます。また、「ネシーナ」をはじめとする2型糖尿病治療剤4剤については、安定的に患者さんへお届けできるよう、円滑かつ効率的に武田薬品工業株式会社からの製造販売承認の承継を進めていきます。さらには、糖尿病領域での主要製品群での取り組みをとおし事業基盤を維持・拡大し、薬剤提供のみならず、「Strategic Focus」として手掛ける、糖尿病重症化予防等の生活習慣病の予防に貢献するサービスの拡大も加速します。

e)リスク低減(環境負荷低減)

帝人グループは、持続可能な社会の実現に向けて、人を中心に考え、「Quality of Life」の向上に資する革新的なソリューションを提供するとともに、事業活動に伴う環境、社会への負の影響を最小限とすることを目指しています。気候変動の緩和や適応、サーキュラーエコノミーの実現においては、欧州サステナブル先端技術開発センターを開設し、世界的な地球環境目標の達成に貢献する製品・サービスの研究開発に注力していきます。また、2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、環境負荷低減に関する長期目標に対してロードマップを作成し、達成に向けた削減活動を着実に進めていきます。2020年度には、資源循環の取り組みとして、埋立廃棄物量の削減を新たな目標として設定しました。さらに、当社の自動車向け複合成形材料やアラミド繊維等におけるLCA(ライフサイクルアセスメント)にも積極的に取り組んでいきます。

*1 当社製品使用による、サプライチェーン川下でのCO2削減効果を貢献量として算出しています。CO2削減貢献量を、グループ全体及びサプライチェーン川上におけるCO2総排出量以上にすることを目指します。

*2 2020年3月期統合報告書にて開示済です。

f)経営基盤強化

継続的かつ的確なソリューション提供、市場開拓を加速する仕組みとして、「組織」「シナジー」「技術」「人財」の観点でイノベーションの創出基盤を強化し、事業機会の創出を加速していきます。

「組織」については、2021年4月より「コーポレートビジネスインキュベーション部門」を設立しました。全社的・長期的な視点でのM&A・アライアンスの検討・実施を推進するとともに、次世代を担う新規領域の探索や育成、研究開発や新事業開発を推進し、イノベーション創出の基盤構築を進めていきます。また、当該部門では、新たに連結子会社化したJ-TEC社と、当社ヘルスケア・マテリアル事業領域での技術・事業基盤やエンジニアリング力の「シナジー」を最大限発揮し、再生医療等製品事業の拡大を目指します。

「技術」においては、デジタル技術の展開を加速していきます。当社IT事業の中核を担うインフォコム株式会社との協業体制をさらに強化し、ニューノーマル環境に適したワークスタイルや業務プロセスの導入、研究開発や製造現場の生産性向上、さらにはビジネスモデル変革のために、デジタルトランスフォーメーション(DX)に積極的に取り組んでいきます。

「人財」については、柔軟な働き方を提供し、女性のみならず、多様化する人財が能力を発揮し、活躍できる仕組みを整えることが、イノベーションを創出する企業文化の醸成につながると考えており、国内のみならず、海外においても地域特性に応じた以下の目標を設定し、グループ全体でダイバーシティ&インクルージョンを推進していきます。

*1 取締役、監査役、グループ執行役員・理事

*2 地域別の課題に応じて設定

*3 グループ会社社長を含む上級管理職

*4 既に相当数存在する管理職からグループ執行役員候補として選抜・認定された人財

また、上記目標値以外でも、様々な人種・民族・宗教などの人を公平・平等に扱う「インクルージョン」の観点でも、米国においてシニアマネージャーポジションへのエスニック・マイノリティーの目標数を設定する等、取り組みを強化していきます。

g)主要事業戦略

■全体方針

2020年度は特にマテリアル事業領域においてCOVID-19の影響を大きく受けましたが、炭素繊維を中心とした航空機向け需要の低迷は継続するものの、複合成形材料、アラミド繊維を中心とした自動車向け需要は順調な回復基調にあります。

2021年度は早期にCOVID-19の影響を受ける前の水準への回帰を目指し、中期計画で掲げた「成長基盤確立」に向けた主要課題を具体的な行動計画に落とし込み実行につなげていきます。

また、2型糖尿病治療剤4剤の販売承継、J-TEC社子会社化といった大型投資の効果最大化に向けた取り組みを着実に推進します。

■マテリアル事業領域

■ヘルスケア事業領域

■繊維・製品/IT

連結計算書類