事業報告(2021年10月1日から2022年9月30日まで)
企業集団の現況に関する事項
当連結会計年度の事業の状況
事業の経過及びその成果
当連結会計年度は、創業50周年を機に刷新した経営理念とともに策定した中期経営計画2023(以下、中計2023)の2年目に当たります。基本方針である「VCP(*)経営」「連結経営」「新常態経営」に基づき、当社グループの成長を通じて社会課題を解決し、「レジリエントで持続可能な社会」を目指した取り組みを進めております。
当社グループの基盤事業であるリサーチ・コンサルティング事業・金融ソリューション事業については、価値提供力に磨きをかけるとともに、シンクタンクとしての政策提言機能の強化、成長領域であるDX事業、ストック型(知的資産を活用した汎用サービス提供)事業、海外事業などへの先行投資を進めています。
新型コロナウイルス感染拡大の長期化やロシアによるウクライナ侵攻はわが国経済に様々な影響を及ぼしていますが、当連結会計年度の当社グループ業績に大きな影響はありません。ポストコロナの「新常態」への流れは、当社グループにとっての事業機会でもあると捉え、中計2023の基本方針に沿って取り組み、成果も顕在化し始めています。
成長事業の牽引役と位置づけたDX事業では、民間、公共、金融の3つの重点テーマを設定し、例えば民間向けには、DXコンサルティングとクラウド移行を組み合わせた支援や、ビッグデータ分析を採り入れたデジタルマーケティングなどに積極的に取り組み、化学、保険、電力など幅広い業種のお客様に対し、DX化の的確な推進やAIの活用、ビッグデータを活用した予測・予兆型経営等への実績を重ねています。また、公共向けでは、当社グループの中核2社である当社と三菱総研DCS株式会社が連携し、中央省庁や地方公共団体のDX関連案件の受注実績をあげており、取り組みを進めています。
(*)VCP:価値創造プロセス(Value Creation Process)の略。社会課題を起点に、その解決と未来社会の実現をゴールとして、お客様や社会への提供価値の向上と持続的成長を目指す、当社グループの価値連鎖の展開過程を意味する。
このような結果、当社グループの当連結会計年度における業績は、売上高は116,620百万円(前年度比13.2%増)、営業利益は9,165百万円(同33.7%増)、経常利益は10,493百万円(同38.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は7,707百万円(同53.9%増)となりました。
なお、当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下、収益認識会計基準)等を適用しており、当連結会計年度の売上高は2,582百万円増加、営業利益、経常利益、税金等調整前当期純利益はそれぞれ1,030百万円増加、親会社株主に帰属する当期純利益は567百万円増加しております。当影響を除いた場合においても、増収増益となりました。詳細は、法令及び当社定款第16条に基づき、当社ウェブサイト(https://ir.mri.co.jp/ja/stock/meeting.html)に掲載しております「第53回定時株主総会招集ご通知に際してのインターネット開示事項」の「連結注記表(会計方針の変更に関する注記)」に記載のとおりです。

セグメント別の業績
セグメント別の業績は次のとおりであります。
シンクタンク・コンサルティングサービス
主要な事業内容
政策や一般事業に関する調査研究及びコンサルティング



当連結会計年度は、官公庁分野のコロナ関連AIシミュレーションを含む大型案件や5Gその他次世代通信分野の実証案件、再生エネルギーに係る調査案件、医療・介護等のヘルスケア関連案件等の伸長により、売上高(外部売上高)は48,548百万円(前年度比20.2%増)、経常利益は5,190百万円(同23.7%増)となりました。
なお、収益認識会計基準等の適用により、当連結会計年度の売上高は285百万円減少、経常利益は7百万円減少しております。
ITサービス
主要な事業内容
ソフトウェア開発・運用・保守、情報処理・アウトソーシングサービス



当連結会計年度は、金融向けシステム基盤更改案件などが売上に貢献し、売上高(外部売上高)は68,072百万円(前年度比8.6%増)、経常利益は5,301百万円(同57.7%増)となりました。
なお、収益認識会計基準等の適用により、当連結会計年度の売上高は2,867百万円増加、経常利益は1,037百万円増加しております。






対処すべき課題
(1) 人財の確保・育成
人財は、当社グループの成長の源泉となる重要な資産です。今後成長を目指すDX事業など民間分野を中心とした事業等を担う人財の確保と育成が最優先の課題と捉えています。
そのため、新卒・キャリア採用の強化、社員個々の志向に応じた育成・成長を支援する当社独自の「FLAPサイクル(*)」の導入・実践などの施策に取り組んでいます。また、複線型キャリアをベースとし、それぞれに役割を配したジョブ型の人事制度へ移行しました。引き続き、働き方改革を推進して従業員のエンゲージメントを強化・向上し、優秀な人財が存分に能力を発揮・活躍できる一層魅力的な環境を備えた企業グループを目指します。
(*)FLAPサイクル:自身の適性や業務に必要な要件を「知る」(Find)、スキルアップに必要な知識を「学ぶ」(Learn)、目指す方向に「行動する」(Act)、新たなステージで「活躍する」(Perform)という一連の循環で一人ひとりのキャリア形成を促す当社独自の方法論。
(2) 事業変革の加速
当社グループは、基盤事業による収益を拡大しながら成長事業に投資し、中長期的に次代のコア事業を育成していく両利き経営を推進しています。中期経営計画2023で成長事業と位置づけているDX事業、ストック型(知的資産を活用した汎用サービス提供)事業、海外事業への取り組みをさらに進捗させるため、基盤事業について、選択と集中を進め、品質・生産性向上を図る改革を加速し、リソースのポートフォリオ転換を図ります。
(3) 研究・提言力、研究開発の強化
研究・提言活動は、VCP経営における価値連鎖の起点であり、さらなる強化が必要と認識しています。そのため、「時間」「人」「ネットワーキング」の観点からリソース投入(投資)を強化します。具体的には、国内外の研究機関・大学などと積極的に共同研究・提言や人財交流などをさらに進めます。
また、成長事業の一つに位置づけたストック型事業は、開発したサービス事業等の拡大に伴って利益率を高められる“投入人員に依存しない”事業収益構造を目指すものです。その実現には新事業開発等のための継続的な研究開発投資が不可欠であり、新たなアプリケーションやAIエンジン、ソフトウェアへの開発投資を進めてまいります。
(4) 事業基盤の強化
成長事業の拡大には、当社グループ内のみならず、グループ外のパートナーとの連携・協業を推進し、事業基盤を強化することが必要です。そのため、出資や共同企業体(JV)の設立、M&Aなど、資本を活用する戦略的投資を実行し、オーガニックとノンオーガニックの両方で成長を追求してまいります。2022年4月には専任組織としてコーポレートベンチャーオフィスを設置、先端技術を有するスタートアップ企業との協業にも一段と注力しています。
(5) 新たな事業や事業拡大に応じたリスク対応力の強化
事業ポートフォリオ改革や質的な変革に伴い、従来にない大型事業の遂行機会が増加しており、プロジェクトマネジメントの重要性が高まっています。また、新事業の取り組みにおいては、当社グループにとって対応経験・知見の蓄積がないリスクに直面する可能性があり、リスクの早期把握・迅速な対応が求められます。
品質の維持・向上のため、個別案件の管理に加えて、社員の教育や技術向上、リスク管理機能の強化に努めてまいります。
中期経営計画
前述のとおり、当連結会計年度は、「中期経営計画2023」(以下、中計2023)の2年目に当たります。中計2023の対象期間は2021年9月期から2023年9月期までの3カ年ですが、経営理念に基づき、5年さらにはその先を見据えた戦略と位置づけて策定しました。
中計2023では、目指す企業像と社会像を定め、財務・非財務・社会の3つの価値創造を目指しています(下図参照)。

3つの価値創造を目指すうえでの基本方針を以下のとおり定め、取り組んでいます。
- ①VCP経営:「価値創造プロセス」を重視した経営
- ②連結経営:連結経営に基づく競争力・基盤強化
- ③新常態経営:ポストコロナ社会への変革の先駆け
2023年9月期の取り組み
VCP経営では、8分野(ヘルスケア、人財、エネルギー、都市・モビリティ、情報通信、食農、循環、レジリエンス)について、重点的に取り組みます。
具体例としては、エネルギー分野において、電力自由化を踏まえた卸電力市場での価格情報提供サービスを事業化し、10月に株式会社MPXとして分社化いたしました(60頁の「トピックス」参照)。
中計2023の2年間で様々な取り組みが進捗してきた一方、課題も明らかになってきました。最終年の2023年9月期は、人財不足への対応や事業変革を加速し、課題に対処してまいります。具体的には、大きく「人財」「研究・提言」「R&D」「事業基盤」の4分野で成長投資を進めていきます。
「人財」では、採用の強化、働き方改革、キャリア開発機会の倍増などの施策をとり、独自の人財育成モデルの確立やベンチャーキャピタルへの派遣などを進めます。「研究・提言」では、より積極的に社会課題を提起するとともに解決策を提示し、事業機会拡大にも結び付く活動を活発化します。「R&D」では、例えば、DX事業、経済・技術基盤研究、さらにインターネット関連の最新技術研究などに取り組んでまいります。「事業基盤」は、DX・社会実装における重点領域の基盤やパートナーの拡大、出資、JV、M&A等を含んだ戦略的投資などを検討・推進してまいります。