事業報告(自 2019年3月1日 至 2020年2月29日)

会社の現況に関する事項

1. 主要な事業内容(2020年2月29日現在)

当社の製品は、データベース開発支援ツール「SI Object Browser」シリーズ、 ECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」、 Web-ERPパッケージ「GRANDIT」、そしてプロジェクト管理パッケージ「SI Object Browser PM」という4つの市場・製品群から構成されています。

「SI Object Browser」と「SI Object Browser PM」はパッケージの販売と保守及びクラウドサービスの提供を主体とした事業形態です。「SI Web Shopping」、「GRANDIT」はこれらに加えてお客様のニーズに合わせてカスタマイズを行いソリューションとしても提供しています。前者が高い利益率、後者が売上拡大の牽引事業という役割をバランスさせ、市場環境の変化に対応し、幅広い技術を習得しやすい製品構成になっています。

2. 事業の経過及びその成果
(全般)

当事業年度の業績は、売上高4,554,211千円(前期比12.0%増)、売上総利益1,755,649千円(前期比15.7%増)、営業利益661,225千円(前期比21.5%増)、経常利益664,678千円(前期比19.2%増)、当期純利益458,560千円(前期比20.8%減)となり、売上高、経常利益ともに過去最高となりました。

当期は、中期経営計画「Break 2018」の2年目で、ここで掲げた①「既存事業のシェア拡大」、②「海外拠点の確立」、③「AI事業の確立」、④「社員のスキル向上」、⑤「国内TOPの合理化企業」という5つの目標に向かって取り組んでいます。堅調な市場環境を背景に既存事業を拡充しながら、その収益をAI事業や新製品開発、社員教育、合理化推進といった将来を見据えた展開に投資しています。

また、当期からESG(環境・社会・ガバナンス)活動として、子供たちにプログラミング教育を行っている非営利団体「CoderDojo」に当社のプログラミングスキル判定サービス「TOPSIC」の無償提供をしています。

「TOPSIC」が若い世代のプログラミング技術向上に貢献できることを大いに期待しています。さらに、日本のプログラミング力向上のために、「TOPSIC」を利用して企業・学校対抗プログラミング大会「PG BATTLE」を昨年度に引き続いて開催しました。今年度は444チーム、1,332人もの参加者が集まり、プログラマーの祭典として大きなイベントに成長しつつあります。

社内の環境作りとしては、女性が働きやすい制度の構築や障害者雇用及び外国人雇用など、ダイバーシティの推進にも積極的に取り組んでいます。男性の育児休暇取得・育児在宅勤務の推奨、育児休暇取得後の女性の復職率100%、有給休暇取得率79.2%、副業制度など、ワークライフバランスを保ちながらやりがいを持って長く働ける企業を目指しています。これまでにプラチナくるみん認定やトモニン認定、テレワーク先駆者100選企業などの実績があります。当社では、引き続きこれらのESG活動を経営における重要事項の1つと捉え積極的に取り組んでいます。

以上の結果、当事業年度の業績は、堅調な事業環境を背景に全社的な業務効率、開発効率の改善が進み、高い利益率を確保できたことから3年連続で過去最高の売上高、経常利益となりました。

続きを見る閉じる

セグメント別の業績

各セグメント別の業績は、次のとおりです。なお、第1四半期会計期間から、EC・オムニチャネル事業はE-Commerce事業に、ERP事業はERP・AI事業に名称を変更しています。

また、前期までその他に含めていたAI事業のうち、AISI∀ Anomaly Detection(アイシアAD)事業については、第1四半期会計期間からERP・AI事業に含める方法に変更しています。従って、各報告セグメントの当期及び前期の営業利益又は損失は、変更後の金額を記載しています。

売上高
前期比 %増
詳細はこちらを閉じる

(単位:

Object Browser事業は、データベース開発支援ツール「SI Object Browser」、データベース設計支援ツール「SI Object Browser ER」、統合型プロジェクト管理ツール「SI Object Browser PM」及びアプリケーション設計ツール「SI Object Browser Designer」の4製品から構成されています。

「SI Object Browser」と「SI Object Browser ER」は、ソフトウェア開発の生産性を向上させるツールとして業界で多く利用されており、安定した収益源となっています。最近は、クラウドの普及に伴ってクラウド市場での利用拡大を図っています。

「SI Object Browser PM」は、発売以来着実に市場浸透が進み、市場からも高い評価を得て導入企業実績は190社を超えました。本製品の強みは、プロジェクト管理の事実上の世界標準であるPMBOKの管理エリアを統合していることです。ERPのノウハウ・構想力がないと作れないという参入障壁があるため、このコンセプトで競合する製品はほとんどありません。これまで顧客のサーバーに導入するオンプレミス型が中心でしたが、今年はサブスクリプションモデルとなるクラウドサービス型の提供を増やしており、中期経営計画で掲げたストック型ビジネスの拡大を着実に実行しています。

アプリケーション設計ツール「SI Object Browser Designer」は、ソフトウェア開発におけるCADという新しい発想の製品です。今後、ソフトウェア業界がCADを用いて設計作業を行うようになることを見込んで、既に特許を取得しています。IT業界の人手不足が深刻になる中、生産性を高めるツールとして注目されています。2019年6月14日から完全Web化した最新版をリリースし、クラウド専用サービスとして提供しています。完全Web版は、旧版の課題であったパフォーマンスを改善しており、設計作業の生産性を大幅に向上させるツールとして販売を拡大しています。

また、既存システムの画面イメージをAIで画像認識して設計データとするAI製品「AISI∀ Design Recognition(アイシアDR)」と「SI Object Browser Designer」の組み合わせにより、既存システムの設計書をリバース生成することができます。当社でも既存製品の設計書を「AISI∀ Design Recognition(アイシアDR)」使って「SI Object Browser Designer」に移行し、効果を実証しており、運用コスト削減を実現するリバースエンジニアリングツールとして、今後さらなる普及拡大が期待できます。

当期はマーケティングを強化する方針のもと、前期は控えたネット広告などを積極的に行っており、急速にクラウドによる受注が増加しています。継続的な売上高及び営業利益が見込めるため、ストック型ビジネスとして安定した事業収益をあげています。ビジネスをクラウド事業にシフトする際は一時的に売上・利益が減少する作用が働きますが、長期的ビジョンのもと来期以降もクラウドへの事業シフトを推進していく方針です。

以上の結果、Object Browser事業の売上高は767,495千円(前期比3.6%増)、営業利益は326,913千円(前期比3.6%減)となりました。

売上高
前期比 %増
詳細はこちらを閉じる

(単位:

E-Commerce事業は、日本初のECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」を主力製品として構成されています。EC市場は堅調に発展し続けており、この先もさらに伸びるものと思われます。市場の拡大につれて競争が激化して採算悪化に陥る同業他社が多い中、20年以上もECサイト構築事業を行ってきたノウハウを生かして、大規模なECサイトを着実に稼働して売上を増やす技術力が評価されています。また、昨年より実施している開発手法の見直しや業務改善の取り組みが奏効し、営業利益率を年々向上させることに成功して、利益率の高いビジネスに変革しています。今後は、他事業にも同様の取り組みを展開し、全事業においても利益率の改善に取り組んでいく方針です。

以上の結果、E-Commerce事業の売上高は829,781千円(前期比14.4%増)、営業利益は205,845千円(前期比50.4%増)となりました。

売上高
前期比 %増
詳細はこちらを閉じる

(単位:

前期より、ERP・AI事業は、Web-ERPパッケージ「GRANDIT」とAI製品シリーズであるディープラーニング異常検知システム「AISI∀ Anomaly Detection(アイシアAD)」を主力製品として構成されています。「GRANDIT」はコンソーシアム方式なので、同一製品を複数のコンソーシアム企業が販売しています。当社は「GRANDIT」の企画・開発から携わった開発力と製造業向けの知識、ノウハウを強みに、生産管理アドオンモジュールを自社で開発し、当社のお客様だけでなく他のコンソーシアム企業にも販売してきました。2019年8月には、製造業での、生産、販売、据付・設置、アフターサービスの業態に一気通貫で対応できる以下のアドオンモジュールをバージョンアップおよび新規リリースしました。

  • 生産管理アドオンモジュール
  • 工事管理アドオンモジュール
  • 原価管理アドオンモジュール
  • 継続取引管理アドオンモジュール

これらの製品の効果で製造業、工事・エンジニアリング業、プロジェクト単位で業務を行う業種向けに販売数が増えています。当社の強みは、自社内の基幹業務に「GRANDIT」を利用し、当社の自社開発パッケージ「SI Object Browser PM」と密接に連携させた上で、「継続取引管理アドオンモジュール」も利用することにより、自らIT企業における理想的な合理化モデルを実現しています。この連携モデルを「IT テンプレート」として製品化し、IT企業への導入も増えています。

また、当社では社員が開発した優れたプログラムを商品化する「買い取り制度」があります。当期はその第一号として、「GRANDIT」のソースコードを一切変更せずに、お客様の特別な仕様を簡単に追加開発できる「コーディングレス開発ツール」を商品化し販売開始しました。これにより、追加開発における従来のプログラミング負荷を20~30%削減でき、ERPビジネスでの価格競争力強化に大きく貢献するものと期待できます。

最近では、クラウド上に基幹業務システムを構築するケースがほとんどです。当社でも「GRANDIT」や「SI Object Browser PM」をアマゾンウェブサービス(AWS)クラウドに移行し、その構築・運用ノウハウをベースに、インターネットイニシアティブ「GIO インフラストラクチャーP2」、アマゾンウェブサービス(AWS)クラウドやマイクロソフト「Azure」などお客様のシステム要件に合った複数のクラウドサービスを提案し、単なるシステム構築だけでなく運用も含めてワンストップでサポートするパートナー企業として事業拡大を行っています。また、2019年3月からは「GRANDIT」サブスクリプションモデルも提供しています。ノウハウや機能はそのままに、より低コストかつ短納期での導入が可能となるため、中小企業も含めてターゲット範囲を拡大しています。

前期より、ERPとRPAの親和性の高さからフリーミアムモデル(無償版を提供して普及促進し、高機能版にアップグレードしてもらうビジネスモデル)である「Intelligent Automation Cloud Express(旧:RPA Express)」の販売パートナーとして米国のWork Fusion社の国内第1号代理店となりました。当社内でもこの製品を使って業務改善を実現しています。当社で作成したロボットモジュールを提供していくほか、個別の導入サービスを行いながらERPビジネスの補完ツールとして拡販しています。

新事業としては、2018年10月からディープラーニング異常検知システム「AISI∀ Anomaly Detection(アイシアAD)」の販売を開始しています。当期からこの事業をERP事業と統合して、ERPビジネスで蓄積された業務ノウハウを武器に製造業へのAIビジネスの展開を行っています。これまでに多くの企業から、工場で行っている目視検査を代替できないかという引合いを受け、案件をこなしながらノウハウを蓄積して製品強化、ソリューション力向上を行っています。

以上の結果、ERP・AI事業の売上高は2,914,530千円(前期比12.6%増)、営業利益は183,006千円(前期比11.7%増)となりました。

売上高
前期比 %増
詳細はこちらを閉じる

(単位:

その他の事業には、プログラミングスキル判定サービスの「TOPSIC」、その他の研究開発費投資が含まれています。

  • プログラミングスキル判定サービス「TOPSIC」

日本のIT人材は2030年には78万人不足すると言われており、現在でもIT業界は深刻な人手不足の状態にあります。この状況を解決するためには、まずはプログラミング力を身につけたエンジニアを増やし、育てていくことが重要だと当社は考えています。日本のIT人材育成を目的とした事業として2018年よりプログラミングスキルを判定できるオンラインテストサービス「TOPSIC」を新規事業としてスタートしました。

「TOPSIC」はオンライン・リアルタイムで受験者のプログラミングスキルを判定できるクラウドサービスです。企業の中途採用者のスクリーニングや社員のプログラミング教育などのニーズをとらえて、売上高は順調に推移しています。

また、前期から「TOPSIC」を利用したプログラミング力を競うイベント「PG Battle」をスタートしており、第1回(前期)は、企業・学校から260チーム780名の参加がありました。当期からはスポンサー制度を導入し、20社の企業の協賛を得ることができました。スポンサー制度により規模を拡大し、当期は444チーム1,332名の参加に拡大しています。「PG Battle」は、日本におけるプログラミング人材の育成、増加に貢献するための持続可能な事業として、今後も拡大していきたいと考えています。

また、小学校、中学校といった各教育現場での「プログラミング」の必修化を見据え、2019年4月から「TOPSIC」の「アカデミックプラン」と「研修サービスプラン」を開始し、法政大学や多摩大学、立教池袋中学・高等学校に導入するなど教育現場への事業拡大も順調に進んでいます。本製品はサブスクリプション型の収益モデルとなっており、サービス開始から契約社数は順調に増加し続けており、着実に成長する製品となっています。

(ご参考)
次年度の見通し

来期は中期経営計画「Break2018」の最終年度としてAIなどの研究開発費、既存製品の拡充、社員教育、社内合理化の推進など、将来のための投資を積極的に行う計画でした。しかしながら、社会経済情勢は新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに見通しが不透明になっています。当社の事業に対する直接の影響は小さく、足元の需要は今のところ引き続いて堅調です。しかし、今後リーマンショックを超える景気の減退も想定した上で、その際でも事業への影響を最小限に抑えるために、当初の“攻め”の計画を見直し、“守り”のスタンスに切り替えてまいります。

2021年2月期の業績予想については、事業環境の変化による影響を鑑み、レンジ形式により開示しております。IT業界にはコロナショックなどの影響が遅れてやってくる傾向があり、来期に作用する影響が限定的だった場合は、”守り”のスタンスにより利益重視することで影響をカバーでき、レンジ上限の数値となります。一方、リーマンショックを超えるほどの市場悪化が早期に到来した場合は、その時期と程度に応じてレンジの下側に振れると想定しています。

2021年2月期の業績見通しは以下となります。

売上高

4,750,000~5,000,000千円

(前期比4.3~ 9.8%増)

営業利益

680,000~750,000千円

(前期比2.8~13.3%増)

経常利益

683,000~753,000千円

(前期比2.8~13.3%増)

当期純利益

477,000~525,000千円

(前期比4.0~14.5%増)

続きを見る閉じる

対処すべき課題

当社の中長期的な経営戦略達成のための対処すべき課題は以下のとおりであります。

(1)AI事業の本格化

現在、人工知能シリーズ「AISI∀」のサービスを2つリリースしていますが、さらに収益性の高いサービスを次々とリリースすることにより、AIを大きな事業の柱としていきます。

(2)クラウド事業の本格化

現在、クラウド型のサービスとして、プログラミングスキル判定サービス「TOPSIC」、プロジェクト管理システム「SI Object Browser PM」、設計支援ツール「SI Object Browser Designer」、デザイン認識AI「AISI∀ Design Recognition(アイシアDR)」をサービスインしています。今後、これらのサービスの売上を拡大するとともに、AIを使った新製品をクラウドサービスとして提供することで、クラウド事業の比率を大きく高めていきます。

(3)リスク管理の徹底

「SI Object Browser PM」のリスクマネジメント機能を活用して、見積、受注(契約)、及びプロジェクトの各工程において、リスクの早期把握及び迅速な対応を行う仕組みを導入し、失敗プロジェクトを発生させないようにしています。第25期には大きな成果を得ることができましたが、今後も全社員がしっかりと遵守し、運用徹底するように指導していきます。

(4)働きやすい環境作り

当社の経営方針でもあるので、「働き方改革」という言葉が使われるずっと以前より、働きやすい環境作りに努力してきました。働き方改革は生産性向上と対をなすものであり、今後も働きやすい環境作りと生産性を高められる環境作りを重要課題として追求していきます。

(5)海外展開

当社は、プロダクトベンダーなので、創り出した製品・サービスを国内だけでなく海外展開できるポテンシャルがあります。Object Browserシリーズの各製品や新サービス「TOPSIC」などは、すでに多言語(中国語や英語)対応しており、海外での利用を想定した製品としています。これまで、リスクを抑えるために、海外拠点を作るような直接投資ではなく、提携先との協力関係による拡販を図ってきましたが、ローリスク・ローリターンでなかなか成果が上がっていません。日本という限られた市場だけにとどまらず、世界に拡販していくために、ある時点でより積極的な海外展開を行う必要があると考えています。

(6)内部統制システムの強化

当社は、クリーンな会社であると自負しています。健全経営こそが企業を長期繁栄に導くと考えており、内部統制システムの強化を重要な経営課題としています。その基本理念に基づいた「内部統制システムの基本方針」を策定しており、適時見直しを行い必要に応じて改定を行っています。また、プライバシーマークの取得、「リスク管理規程」、「経営危機管理規程」、「適時開示規程」など継続的な関連規程の制定と改善を行っております。財務報告に係る内部統制報告書制度対応のため、必要に応じ社内体制を見直し、定期的に監査人との協議も行っております。引き続き、これらのルールを遵守して実行するために、社員教育や啓蒙活動を行ってまいります。

(7)開発体制の拡充

IT業界は、ここ数年好景気が続いていました。こうした市場環境の良さにより、特にERP事業では好調な引合いに対応できず、案件を辞退するケースがあります。そのため、社員並びにパートナー企業を含めた開発体制の強化が重要です。第25期には強化プランを立てて取り組んできましたが、引き続き継続して実施してまいります。

(8)コロナショックの影響を最小限にとどめる

上記の(1)~(7)までは当社が対処すべき課題ですが、コロナショックによる影響の大きさに応じて、(1)から(7)を実施するための投資を抑制して利益確保を重視するような対策を優先します。

続きを見る閉じる

計算書類